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第一章 井の中の使徒

第一章 十七話 行き当たり

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 この街にはいくつかの盗賊組織があるらしく、今の俺たちには、特に目星がついていないので、他に、ユーリと同じような事件が起こるその現場を目撃しようと、通りを歩くことにした。


 「この街って、意外と人口多いよな。そんなに王都へ入るのが難しいのか?」

 「そうなんですーー。一般の人が何年か働いてやっとその額になるんですよ? それだから、この街を通っていく、金持ち野郎から奪うのが手っ取り早いって言うわけですよ。まあ、いろんな人が、王都へ行く前に、この街を経由していくので、栄えてるっちゃ栄えてるんですけどね」


 「そんな王都まで近いのか?」

 ユーリはここに住んでいる期間が長いらしく、色々と教えてくれる。

 「はい、王都プレシオラまでは、あそこの小さい山を越えたらすぐですよ」


 「じゃあ、フィリー。さっさとこの同盟を終わらせて向かわないと」

 ルカが、俺とユーリの間に来ると、力強く言った。


 「あなた方にそんな大金があるようには見えませんが……」

 ユーリがにやりと、俺たちを見る。


 その目がライアンを捉えたところで……………。



 「勝手に吠えとけ、小娘が!!!」

 ライアンは、俺たちは特別な目的で来ているから、王都に入れることを、本当はユーリに自慢したいのだろうけど、その気持ちを抑えるようにして、短くて唸る。

 「ーーはっ? あなたにだけは言われたくないんですけど。ないんでしょ?」

 ユーリがライアンに睨み返す。

 ーー多分それはあなたの名前のせいじゃないですかね、ナイアンさん。



 来てみた市場は結構な人混みができていて、スリが横行しそうな状態だった。

 しかし、


 「多分ここはないですね」

 「おい、なんでだよ?」

 ユーリのキッパリした態度に、俺たちは驚く。


 「こんな誰もがつねに財布に意識がある中で、盗んだことがバレたら袋叩きですよ。逃げる道もそこまでありませんし」

 それに、盗みが見つかったら、袋叩きですよ。盗みをするようなやつでも、みんな、正義ぶって、自分の裏の行動を肯定したくなるもんなんです………………。


 そうなったら、通りにいるみんな、怖いですよ?

 ユーリが、周りを見回したながら、そう言う。


 「お前も、そうなのか?」


 「…………………、へっ????」

 俺は、何気なく思ったことが、口に出ていたようだった。


 見ると、ユーリの顔は若干、赤くなっており、その挙動は慌ただしい。

 「フィリーさん、何言ってるんですか? 私はただそうものを目撃しただけですよ。それよりも、私が必死に稼いだお金を盗んだ輩を、真剣に探してくださいよ」

 俺がこのまま、ユーリの方を見てみると、ユーリは腕の指を曲げてこちらを睨んでくる。

 そのままだと、引っ掻きられかねないような気がする。


 そう言われてしょうがなく、俺は視線をユーリから、周りへと移した。


 そういえば通りには、意外と顔をスカーフで隠しているやつがいる。

 「なんで、みんな顔を隠しているんだ?」

 「それは、素顔を隠したいからですよ。この街で盗みや暴力沙汰は、よくあることなので。誰かに目をつけられないようにかと」

 ユーリはやや、俺を疑い深い目を見つめたまま答える。


 「お前、別に素顔を隠さなくていいのか?」

 俺から見ても、ユーリは顔の整った女の子の部類の、上位に入る。

 普通に周りから、目をつけられそうな気がするが…………。


 「お前っていうの、やめてください。ユーリです。そこらへんは乙女の秘密です」

 秘密か。
 なら、別に無理に知る必要はないかな。 

 「あっそう」


 「うわっ、なんか素っ気なさすぎじゃないですか~?」


 トントントン

 俺の肩を何かが叩く。

 見ると、杖だ。

 「なんかウーリって言う人、ルカより全然面倒くせーじゃん」

 なんで杖で、俺の肩を叩くんだよ。

 ていうか、ここで俺にそれを言っても………………、


 「聞こえてますよ、ナイアン」

 やっぱり。

 「私"ユーリ"です。でも、私が思うにそこの人は、素の自分をあなた方に隠しているんじゃないかと……」


 「マジかよ!!」
 と、俺。

 「このルカ偽物かよ!!!」
 と、ライアン。


 「あんたたち、いい加減にしないと、今後一切回復魔法を使ってあげないからね」


 そう言って、ルカも杖で、俺たちの背中を突く。

 そんな杖を冒涜するような、使い方をしていいのかよ。知らんけど。


 俺の背中を突く、ルカの力が結構強い気がする。


 「「ホントっすみませんっ!!!!」」


 そんな様子をユーリはどこら羨ましそうに見ていた。




 ドガーン!!!!

 何かが壊れるような音が、街の端の方から聞こえてきた。

 「やっぱり中心街じゃなかったか」

 ーーやっぱりって言うなら、最初からそこに向かえばいいのに……。

 俺はユーリにそう突っ込みたくなった。



 俺たちが音がした場所へと駆けつけてみると、ある程度武装をしつつも、ひどく傷を追った五、六人の一いちパーティーがいた。

 今からクエストへ向かうとしていたところだったらしい。


 彼らによると、盗賊からの襲撃を受けたらしい。

 この場の至るところに魔法を使った形跡がある。


 前にも言ったが、俺たちは、金に困っていないのでクエストを受けたりしないが、クエストをこなすことを稼ぎ口や生き甲斐にしている連中もいる。


 「少し休憩したら、すぐにダンジョンに潜るぞ。まだ俺達には使わずに温存しておいた回復薬(ポーション)も効果上昇(レリクシール)もあるんだから。取られた分以上に稼ぐぞ」

 パーティーのリーダーらしき人物が指揮をあげようと声を出す。


 俺たちがその怪我で、危ないのでは……、と声をかけても、彼らは大丈夫です、の一点張り。

 「まあ、毎回こんな感じですよ」

 ユーリがそういうものの、なんともお人好しな連中である。

 彼らのような人たちが、盗賊業が成り立つ一因なのかもしれない。


 「私、多分どの盗賊か、わかっちゃいました。多分あいつらだと思うので、今から、やつらアジトに乗り込みに向かいますか?」


 えっ…………。
 アジトに乗り込む…………。

 「俺たちが、アジトになんて、…………大丈夫なのか?」

 アジトといえば、盗賊のような輩が、沢山たむろっている場所だ。

 しかし、俺たちは四人しかいない。


 「結構実力はあると思いますよ。だから、フィリーさんたちに掛かってます。頑張ってください♡ この街では、悪名な奴らですので」

 「お前は??」

 ライアンが、ユーリはどれだけ戦えるのか、と訊ねる。

 「私は戦いにはなれていないので」

 「はあーー」

 まじかよ。

 そんな俺のため息を無視して、ユーリは俺たちの先頭で歩き始めると、勝手に道案内をした。


後書き

短くてすみません。
午後にも更新します。
キャラ増えると、筆が進むはずなんですけどね…………

次回予告 「盗賊襲撃」

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