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第二章 交錯・倒錯する王都

第二章 四十九話 一番近くにいた者

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 俺から見てこの人は気さくで誰にもおちゃらけて、楽しそうな人だった。

 多分相手の態度に合わせて、やり過ぎることのない、適度なやり取りの仕方を知っているんだ。
 

 セロに対してはからかうような、それで持って過保護なお兄さん的な発言をする。険悪なムードを醸しつつもその裏には何か強い絆があるのでは、と俺は思っていた。
 
 確か、この人はセロの陣営からスチュアーノさんの陣営に最近移ったって言ってたっけ。
 
 移ってからもセロとは温和ではないものの、そこまで険悪な関係ではなかったはずだ。
 
 それに街の人曰く、スチュアーノさんが王都で暴動を起こそうとしているから、監視役として移ったのだとか。

 スチュアーノさんよりもこの人の方が、陣営のリーダーに向いていると言っている人さえもいた。

 
 スチュアーノさんとも親しげな様子だったし、何よりも楽しげだった。

 この人はどんな環境にも対応できていて、それでいてそれぞれ状況を楽しめるような、風流者。

 多分その人は自分の選択に後悔を微塵もしていない。

 というか、することが馬鹿げている、と言ったくらい適応している。
 

 王とも何やら親しげなやり取りをしていたのを俺は見ていたし、仕事はサボらないような、おちゃらけつつもやることはしっかりやるような人だと、俺は思っていた。
 

 俺は敵の剣がかろうじて急所は外されたらしく、俺の意識は一向に遠のく気配はないが、身動きが取れない。

 しかし先程のような精神的なものではなく、肉体的なものによって。
 

 確かスチュアーノさんはこの人は戦闘能力は並の人以下だが、行動力や機動性においては国一と言っても過言ではないと言っていた気がする。
 

 全然強かったじゃないか。

 そう評価を与えた本人に、間違った定義付けをしていたことを証明させられたかのようにしてやられた俺もスチュアーノさんもやられている。

 なんともまあ皮肉的だ。
 
 誰もこの人の真意を見抜けていなかったのだと思う。

 しかし、誰からも信頼を勝ち得ていた彼は何を望んでの行動なのだろうか。
 

 彼の周りにあった貴重品(アイテム)は八割がた砕け散り、彼自身からも軽く血が滴る。
 

 「シス…………」

 セロ、自らを縛っていた鎖を引きちぎるかのように重く、空気を震わせないようにととどまっていた沈黙を蹴散らすように、目の前に立つ者の名を苦々しげに、それでもって紡ぎ出すように、儚さを漂わせて口にした。
 

 名前を呼ばれ、仮面とは呼ぶに呼ばれないものをつけた格好をしている彼が、自らの名前に反応してセロを見る。

 シスの顔には、いつものおちゃらけた雰囲気などなく、何か決意を決めた固い表情をしていた。

 「シス」

 もう一度同じ名を、今度はセロも、しっかりと骨のある口調で口にした。

 「俺が事を起こさなければ、君はハッピーエンドを迎えられない」

 簡潔な言葉だった。

 目的が明確であり、それは本人に向けられたものであり、自分自身への戒めの言葉でもあった。

 その分、その言葉には強い気持ちが込められていた。
 

 「いつから…………」

 セロの目に絶望の色が浮かぶ。

 「いつからでもない。そんなものは始まってすらいないのだ。過去にもこれからも」
 

 俺にはその言葉の真意が分からなかった。
 しかし、分かったことが一つだけあった。

 
 スチュアーノさんは、"シスはあの仮面の人物に討ち取られ、どこかでシスと入れ替わり、今日のフィルセたちを試す計画を乗っ取られた"と言っていた。

 しかし、違うのだ。

 
 もとから仮面の人物など存在しない。
 最初から最後までシスだったのだ。

 
 あの時、スチュアーノさんはすぐさま仮面を外して、もともと考えていた計画を中止しようとしたが、シスさんは仮面を外そうとしなかった。
 

 スチュアーノさんの考えに訂正すらしなかった。

 
 あの長槍使いからは、ゼノと呼ばれていた。

 多分この人は最後まで仮面を外さないつもりだったのだろう。
 シスという人物を死んだことにしたかったのだろう。
 

 「さっきの魔法はどうやって防いだ?」

 先程の大量の水を使った魔法のことだろう。

 セロがたくさん言いたいことがある中で、しかしそれができないことは分かっているといった表情で声を出す。

 しかし、それはいつものエネルギッシュなものではなかった。

 「そんなものは簡単だ」

 その瞬間、セロに落胆の色が現れ始める。

 「すべての原因はこの王都にある。これはそのうちの一つでしかない」

 シスが王都の中心部へ振り返る。

 「ここでは王の力で、五大明騎士以外のいかなるものは武器を使えない。それ以上に、五大明騎士ですらこの街に一片も傷を与えることはできない。これが君への質問の答えだ」

 やや言葉足らずではあったが、俺には分かった。
 街の住人が避難していたのと同じようにどこかの家の屋内に入って凌いだということだろう。
 
 セロは沈黙を続ける。

 「そしてここで俺みたいな、武器を使えるやつがいたらどうだ? そこらの街の数十倍、俺の身は安全だ。戦闘能力に乏しくてもな」

 セロは固まったままだった。

 「ただ俺はセロちゃんに幸せになってほしい。そこまでの過程で犠牲にしなければならないものがあるとしても」
 

 セロはシスの瞳を直視する。

 「大丈夫。お前とはまた会える日がきっと来る。それにセロちゃん。この世界にはまだ君の知らないことだらけだ。楽しいことや感動すること、時には悲しくて涙を流すようなことがこの先たくさん待っているはずだ。だから大丈夫。絶望と縁のある俺が言うんだ。大丈夫。また会える日まで元気でな」


 それだけいうと、シスは万が一の貴重品(ポーション)を取り出した。

 そして自身に使いながら、長槍のやつが滑っていった方へ、シスも歩き出す。
 
 
 クーレナさんが竜車を進めて俺の近くまで来る。

 「追うだけの力は残っていますか?」

 クーレナさんに止血の魔法をかけてもらう。
 剣でやられたとは言え、まともに食らったのはたったの一太刀だ。
 まだ全然やれる。
 
 シスを何としてでも捕まえて、事情を説明してもらわなければならない。

 何が何でも…………。


 俺たちは同じようにスチュアーノ、セロと回収していく。
 
 しかしセロはというと、俺たちが目に入ると前に倒れ込んだ。
 抱きとめると、スースーと寝息を立てているのが分かった。

 「体力的にも精神的にも魔力的にも限界ですね」

 クーレナさんがセロをそっと竜車の上に寝かせながら、地竜にやつらを追わせる。
 

 「シスのやつ。絶対この王都から逃しません」

 すでに満身創痍のスチュアーノさんが力強く言う。
 

 「ライアンたちは一体どこにいるんだ?」

 あいつ、普段は粋がっているくせに全然活躍していない。

 「それが先程通信をしてみたら、結界門の外で、全員武装状態で待機していたそうです。まあ、王都では私たちは役に立たない分、よい判断であったとは思いますが……。それはやつらが結界門に行った場合です。未だやつらが結界門に向かっているかどうかが不確定な分、半数ほどに王都内でやつらと衝突するよう、場所を指示しました」

 なるほど、クーレナさんこの戦闘に参加していない分、別のことをしてくれていたらしい。

 
 「『クーレナ、やつらと遭遇しました。できる限りのことはお姉さんたちがやってみます』」

 貴重品(アイテム)からイルさんの声が聞こえた。

 
 さらに竜車をすすめると、突如、俺たちの頭上を五つほどのレーザービームが通り過ぎた。

 強大な魔力。
 俺は不思議に思って後ろを振り返ったが、そこには誰もいない。

 
 セロはここにいるし、誰が何のためにやったのか分からない。
 急いで先を急いだ。
 

 
 現場につくと、予想外の状態になっていた。

 フードをかぶった少女を戦闘にイルさんとルカ、それにスチュアーノさんとセロのそれぞれの陣営のものが武器を手に、やつらを街と外界を遮る結界まで追いやっていた。
 
 よく見ると、その少女は俺が王都の中心部で見かけ声をかけようとした少女であり、王都の辺境で歌を歌っていた少女だった。
 

 やつらはというと、傷は深くはないものの所々から血を流し、武器は持っておらず、両手を開いて上げていた。

 「ウヌラルド。流石にここまでは想定していなかった」

 シスの口から槍使いへ絶望の色が漏れる。

 「王家の加護、とか聞くだけでヤバ目っしょ。注意怠るなっての」

 槍使いは威嚇するかのように、シャーシャーと唸る。

 「そもそも、彼女の存在すら忘れてた」


 クーレナさんもこの状況が理解できていないように周りをキョロキョロと見渡す。
 
 やつらの後ろには魔獣をも通さない結界がそびえ、目の前には数十もの武器が待ち構える。
 彼らには何か清々しさのようなものがあった。

 
 「あれは、イスタルシア様」

 スチュアーノさんが一人、その少女の名前を口にした。

 この人が唯一、この状況を理解できているようだった。

 
 俺はやつらを気にしつつ、スチュアーノさんの方を向く。
 クーレナさんも同じようなことをした。

 どうやら彼女のことを知っている人は少なそうだ。

 「言っていませんでしたが、彼女唯一この国で代々血を受け継ぐ王家の人物です。僕たち五大明騎士には"ロット"を含め、秘密にしていた決まり事があります」

 多分スチュアーノさんの声量だと、ルカたちには届いていないと思う。

 内容によっては、あとで教えてあげよう。

 「現国王であるシェレンベルクさんは、実は王家の血を引いていません。イスタルシア様がお若いため、代わりに国王をやっているのです。そしてこの"ロット"というものは、シェレンベルクさんが考案したものです。ただの庶民の娯楽だけでなく、僕たちにも関係のある役割を担っています」

 「そんなこと、セロ様からも伺っていません。初耳です」

 クーレナさんから、セロ様という言葉が聞こえたが、薄々気づいていたので触れないでおく。
 
 「それは、シェレンベルクさんが王の座を退いてからのことです。何があってシェレンベルクさんが王を辞めるのかは存じませんが、その時にイスタルシア様を王の座に据えると」

 「それと"ロット"何の関係が?」
 
 「この国には、五人の五大明騎士がいるが、シェレンベルクさんは王ーーというか、イスタルシア様ーーの、直属の部下が必要だと考えておられる。五人も強力な部下がいては、身内で争いが起こりかねないと。だから、シェレンベルクさんが王を辞めるときに、それまでの僕たちの成績を記録してある"ロット"のクリスタルが公平に、一つの陣営を選ぶということらしい」

 「ということ以前に、私たちに王家の者の存在すら知らされていないんですけど」

 クーレナさんが今聞いたことにひどく驚いた様子でさらに訊ねる。

 「ああ、それはですね。"王家の加護"とは、強大故に自信の身をも滅ぼしかねないものらしい。それがまだ幼い者となると、予想もつかないそうなので、今は普通の人に紛れて普通の人と同じように暮らしていると聞いていた」

 なるほど、見るからに来ている服装がそこらの人と変わらないのだ。

 しかし、彼女の周りでは強大な魔法陣が展開されている。

 「僕も久しぶりに彼女の姿を見たくらいです」

 俺たちは竜車から降りて近づいていく。
 

 どうやら、彼女が展開した魔法がこの街の秩序とも言えるシェレンベルクさんの魔法に干渉して、この場だけ武器が使用できるようになっているらしい。

 シスは俺たちの方をちらっと見て、すぐに空を見た。

 俺もつられて俺を見ると、さっきまでの雨雲はどこへやら、雲ひとつない、碧天がどこまでも広がっている。

 それを見て諦めでもついたのか、何か決心したように頷くと口を開いた。

 「今、俺に聞きたいことあるでしょ?」
 

 それを聞いて、スチュアーノさんが一歩前に出る。

 「お前のその能力はなんですか?」

 外見は穏やかそうに見えて、言葉の奥には全然穏やかでないものをまとっていた。

 「おう、まずはそれだったな。俺のことをまだ何も教えてなかった」

 それはいつものシスの口調だった。
 シスは全く変わってしまったわけではなかった。

 「俺はあらゆるものを、通常よりも効果を上げて使うことができる。その分耐久性を犠牲にしてな。そういう体質らしいんだ。…………、と、そういうと語弊があるな。俺はそのものの含有量を制限(リミッター)を緩めて多く引き出すことができる。だから、短時間でたくさん消費するというわけだ。結局のところ消費量を多くしているだけで普通の人と扱っている量は変わらない。なぜって、その分早く破壊してしまうからな」

 そう聞くと、先程なぜシスさんが強かったのか分かった。
 

 普通なら一年ほどかけて効果を微量ずつしか発することできない貴重品(アイテム)がもつ効果をたった十数分で全て使い切ったということだからだ。
 

 「俺はあんたの言うとおり、戦闘能力が高いわけではない。そして、この能力も生まれついた体質だ」 

 先程、「上限解放(ドーピング)」と言っていた意味がわかった。
 

 「初めの頃はチーズや味噌など、発酵食品が早く作れるだけの能力だと思ってたさ。だけど、触れたそういうモノならなんでも効果を発揮する。炭石にだって、世に七種類しかない伝説級の貴重品(アイテム)にだって、俺があんたから貰ったこの剣だって、硬度や鋭さ、刃の強さを、耐久性を犠牲に強くできる。おっと、あのワインの毒は淡い期待とただの余興だ」

 シスはスチュアーノさんを名指ししながら、色々と種明かしをしてくれる。

 スチュアーノさんは怒ることもできず、ただあっけにとられている。


 俺たちのただシスさんの語りに飲まれるままに固まったまま誰一人として動けないでいる。


 「あんたのあの貴重品(アイテム)は正直、効果を知った時は焦ったよ。あんたは知らずに終わったようだが、色々効果がある中で、俺はある効果があることを知った。「『心理探求(トゥルースオブマインド)』、目の前にいる人物の心が読めると言うやつだ。そして、俺の能力を使ってでも破壊するのに一ヶ月を要した。俺はひやひやだったぜ。いつ何度にその鉱石の能力が発動するか。でもよく分からんが、その力が開放されることはなかった。今思えば何か条件があったのかもな。でもその間、あんたは通常以上に密度の濃いいろいろな恩恵を授かったはずだぜ。何せ、与えられる効果を前倒ししただけだからな」

 今はその鉱石無き、首元のネックレスをスチュアーノさんが触れる。
 

 「貴殿はなぜ武器が使えておる?」

 イスタルシアと呼ばれる少女が見上げるようにシスを見て、問う。


 「君、セロちゃんとは比べるほどじゃないけど、可愛いね。君がどうこれから成長していくのか、陰ながら応援しようかな。まあ、二番目だね。と、そう、それは俺たちがあの結界門をくぐっていないからだ」

 確か、ナルさんが結界門について説明してくれたときに、あの門をくぐったときに武器は姿を消し、魔法の対象になると……。

 「では、なぜここにいる?」

 「それはいろいろ、面倒だから後回しな」

 シスが軽く言った。

 「あとは……」 

 「お前の目的を吐け」

 スチュアーノさんが我に返ったように威圧的に言った。

 「あー、はいはい。俺がここまでした理由を知りたいんだろ? 一つ目は、俺たちはこの王都にある重要な古文書を取り戻すこと。シェレンベルクさんが隠していたもので、皆さんはそんなものの存在すら知らなかったもの。しかも原本以外は、シェレンベルクさんが全て抹消したというね。……それについては、あんたらの王に聞け」

 「僕らの王がそんなことをすると思いますか? シス、あなたは騙されています」

 「あんたがなんと言おうと、俺は変わらねえし、変えることもできねえ。ただ、あんたは物事の真を見ていない」

 「簡単に言うと、お前らが王とやらに騙されてるだって」

 槍使いが言葉の横槍を入れてくる。


 スチュアーノさんは怒りを抑えてどうにか一呼吸置く。


 「ではなぜ、そのようなことをシスは知っているのですか?」

 「そんなこと、とことん見ている世界が違うからだ」

 至極当然のように言う。


 「シス、あなたは一つ目と言いましたね。ならば二つ目は」

 ナルさんが武器を構えながら、先を促す。

 「ははっ。二つ目は俺たちが取られたものを取り返しただけだ…………」


 そこで、話が終わったかのように口を閉ざす。

 「シス、まだお前との話は終わってない」

 はあ、とシスはため息をつく。 

 「誰も戦闘は望んでいない」

 しばしの沈黙。


 「何をいうかと思えば、お前が言うか」

 スチュアーノさんがボロボロの体を気にも止めず、さらに拳を光らせ始める。
 
 クーレナさんがこれ以上は危ない、と急いで止めに入った。

 「ありがとうな、クーレナ。お前とも長く過ごせて……。俺はお前のことも好きだぜ」

 しかし、クーレナさんはシスを一瞬睨むとスチュアーノさんの方を向く。

 「と、そこのお嬢さんの質問に答える時間が来たかな」

 シスの後ろで、手のひらをカラにしていたはずのウヌラルドが手を振り下ろすと、手から貴重品(アイテム)が飛び出す。

 俺たちが突撃しようとした瞬間、空色の壁が立ちはだかった。

 シスが使っていた『絶対防御(フォービデゥン』だ。

 「俺は、いつか壊れるものならなんでも、能力の適用範囲内だ。たとえそれが王シェレンベルクさんの魔法でも。毎日見回りの時間、長い間じっくり合理的に消費させ続ければ……。そして、耐久性を失う瞬間、それが今だ!!!!」


 そしてシスが後ろの防御壁を思い切り蹴ったその瞬間、防御壁の一部が砕け散ってなくなり、王都の外を誤魔化していた錯覚が消え、王都の外がちらりと見える。

 しかし壁の先に道はなく、奈落へと繋がる滝壺だ。
 

 イスタルシアが魔力を高める。

 世間一般の防御貴重品(ぼうぎょアイテム)なら壊すことができるのだろう。

 シスの言うようには、貴重品(アイテム)には一定の耐久値があり、それを超える衝撃を与えれば耐えきれずに壊れるのだと。
 

 しかし、イスタルシアよりも奴らのほうが早かった。

 「皆さんたちには、とことん捕まりたくないんでね。でもまた、会う機会があるだろうね」

 そう言い残すと、なんの躊躇もなく二人は奈落の底へ飛び込んでいった。
 
 一テンポ遅れて、イスタルシアの魔法がやつらが使った『絶対防御(フォービデゥン)』を破壊した。

 
 俺たちは彼らが作った結界の切れ目から外を覗き込んだ。
 なんの小細工も無く本当に飛び込んだようだった。
 
 底が深く、もう奴らの姿は見えない。
 俺の経験上、風が荒れ狂い、落下中にどうこうできるようなことではなかったと思う。

 そこまで到達すれば確実に死ぬ。
 

 奴らが何を盗んだのか、シスさんの真意がまだはっきりとは俺には分からなかった。

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