上 下
39 / 59
第5章 気になる方は年下の男の子

第7話  姉妹の卒業後

しおりを挟む
 ローベル伯爵家の二人の姉妹たちは、無事に何事もなく学園を卒業。

生まれてから育った実家の屋敷を、それぞれ離れて嫁ぎ先で暮らし始めることになった。

来年の結婚式前には、1度実家に里帰りして6月に式の予定。
結婚式は、2人で同時にすることにした。
仲の良い姉妹が、各自かくじの婚約者たちにお願いをしたのだ。

「お願いがあります。
私たち姉妹は、お互いにはげまし合ってここまで成長したのです!」

「ええ、ですから結婚式も新たな出発として一緒にしたいのですわ!」

この話を婚約者たちの両親にすると、感動してよい嫁が来ると泣いたそうだ。

「エミリーお姉様、良かったですわ。
1度だけですみますわよ。
別々にすると面倒ですものね」

「シモーヌ、決して面倒だから一緒にしたとは言わないことよ。
ロベール伯爵家が、ケチと思われますからね」

姉妹は実家の負担を思い、合同で結婚式をすることを二人の間で決めていたのだ。
勿論もちろん、ロベール伯爵の家族たちも誰も知らない。

これは、姉妹だけの秘密の約束事。

  
 侯爵令嬢クロエはと言うと、すっかりラファエルの花壇かだんとりこになった。
自分が水をやり綺麗に咲く花たちを、でるのが楽しくてたまらない様子。

ラファエルの考えが、逆に裏目うらめにでてしまった。

あれほどに、腰を痛めていてうめいていたはずなのにー。
椅子いすまで持ち込んで準備万端ばんたんで乗り込む、そんな令嬢をあきれて彼はどうするか考え込む。

「ノマイユ侯爵令嬢、貴女は部活はどうしましたの?
前はどちらに所属してましたか?
どうして、そちらに行かないのです?!」

ラファエルは、頭に浮かぶ疑問を令嬢に次々とした。

「あちらは、私が居なくても困りませんわ。
大勢の令嬢がお茶して、お話するだけで退屈ですの。
こちらの花が、私を待って下さいますわ!フフフ」

はぁ~、待ってないわよ!

どうしたら脳天気のうてんきな考えになるのよ。
まさかこの娘、入部したいなんて言わないわよね?!

「ノマイユ侯爵令嬢、悪いけど貴女の部活に戻りなさい。
この花壇は、私だけで事はりてるのよ」

彼は厄介払やっかいばらいのために、必死になり説得を開始した。

「ロベール伯爵令息、私をこの部に入れてください。
どうか、お願いします!」

彼女は、この幸せな時間を奪われたくなかった。

「お・と・わ・り!!
さぁ、帰ってよ、あっちに廃部届けを出しないでしょう。
まだ席があるわよね。
迷惑なの、わかった?!」

ラファエルは手を振ると、一人作業の続きを始める。

「嫌です、私は何かをしたいのです。
でも何をしていいか、そんな時に花壇に水をやりキラキラ輝く花にせられたのです!
うわべの会話をして笑う令嬢たちよりも、花は私に安らぎを与えたのですわ」

ノマイユ侯爵令嬢の気持ちは、痛いほどわかるわ。
馬鹿な令嬢たちの話よりは、花の方が数倍もいい。

でも、こうして一緒にいると何時かは変な噂になる。
きっと近い時期に、想像できて目に浮かんで見えるわ。

友人の二人の姉たちは、もう卒業して学園にはもういないのよ。
言い訳が出来ないし、この令嬢はいったい何を考えてるの。

「私は男なの、女性なら断らないわ!
男女が二人きりでは、変な噂になるに決まってる。
貴女は、まだ婚約者がいないでしょう。
よく考えなさいな!
婚約者が出来たら、またコチラに来なさいね」

ラファエルは、ノマイユ侯爵令嬢の持ち込んだ小さな椅子を花壇の外に出した。
クロエは泣きそうな顔をし、椅子を持って花壇から離れていく。

可哀想かわいそうだけど令嬢のためだわと、ラファエルは去り行くクロエを見ていた。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!ー新たなる王室編ー

愚者 (フール)
恋愛
無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! 幼女編、こちらの続編となります。 家族の罪により王から臣下に下った代わりに、他国に暮らしていた母の違う兄がに入れ替わり玉座に座る。 新たな王族たちが、この国エテルネルにやって来た。 その後に、もと王族と荒れ地へ行った家族はどうなるのか? 離れて暮らすプリムローズとは、どんな関係になるのかー。 そんな彼女の成長過程を、ゆっくりお楽しみ下さい。 ☆この小説だけでも、十分に理解できる様にしております。 全75話 全容を知りたい方は、先に書かれた小説をお読み下さると有り難いです。 前編は幼女編、全91話になります。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

頑張らない政略結婚

ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」 結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。 好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。 ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ! 五話完結、毎日更新

アリシアの恋は終わったのです【完結】

ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。 その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。 そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。 反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。 案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。 ーーーーー 12話で完結します。 よろしくお願いします(´∀`)

処理中です...