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第6章 薔薇とドクダミを君へ
第13話 気づかされる想い
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クロエは兄嫁に自分の刺した刺繍を、誕生日に贈ることが叶った。
ラファエルが、親切丁寧に教えてくれたおかげだ。
彼女が刺繍した中でも、これは間違いなく1番の出来だった。
最後まで仕上げなれず、過去に家族の他はラファエルに贈った個性的な薔薇のハンカチのみ。
そして、いま渡したハンカチだけだった。
途中で仕上げられず捨てていた刺繍ばかりで、自分自身も大いにダメだと反省している。
「クロエ様、嬉しいわ。
有り難うございます、中を見ても宜しいかしら?!」
兄嫁は嬉しそうにハンカチを見ると、兄に見せて輝くばかりの笑顔で話しかけていた。
「まーぁ、貴方、見て下さいな!小枝にとまる小鳥たちを、何て可愛らしいの!!
クロエ様、大事に使いますわね。ありがとう、私のためにー!!」
彼女は嬉しさのあまり、義理の妹に感謝のキスを頬にそっとした。
「クロエ!すごく上手ではないか!?
誰かに教わったのか?!」
流石に男性のラファエルとは言えずに、ステラの名を出した。
季節は巡り、クロエとステラが学園を卒業するまで3か月後に差し迫っていた。
クロエは、まだ婚約者がいない状態。
例の第2王子は、評判の悪いあの伯爵令嬢と婚約をした。
周りはノマイユ侯爵令嬢が、相応しいと口々に話題に出している。
彼女にとっては、この噂は迷惑この上なかった。
「ステラ。
最近私を哀れんだ目で、皆さまは見るのよ。
それに、卒業パーティーの同伴相手を決めなくてはいけないわ。
ロベール伯爵令息とは無理だから、お兄様か父上に頼もうと思うの?」
ダンスパートナーに悩む親友に、彼女は勇気を出すように励まし助言する
「ローベル伯爵令息に、頼んでみたら!?
なにも婚約者でなくとも良いではないですか?!
進展してませんが、最近は会話も二人で自然に出来てます。
焦らずにね、クロエ」
ステラはラファエルがクロエの気持ちに、ここまで返事をしないのに苛立っていた。
2歳下の身分が伯爵だからか、そんなのより当人同士の気持ちが1番ではないのか。
側にいる彼女の悩み顔に、怒りが込み上げてくる親友だった。
そんななかでクロエが1人の中庭を歩いて、彼が居るだろう花壇を目指していた。
「ノマイユ侯爵令嬢、お話をしても宜しいですか?」
彼は確か男爵令息で、クラスが同じだったはずね。
「何かご用かしら?」と、クロエは立ち止まり男爵令息に返事をする。
「あ、あのう。
私はずっとノマイユ侯爵令嬢に好意を持ってました。
卒業パーティーのパートナーになって頂けませんか?」
男爵令息は、赤らんだ顔でクロエを誘っている。
初めて話す、男性からのダンスパートナーのお誘い。
彼女はクラスメートとしか思えない相手に、差し障りなく断りを入れた。
「偉そうに!
第2王子に相手にされないし、婚約者もいないくせにー!!」
急に態度を豹変して、自分に対して怒鳴りつけてくる。
その突然の罵倒に驚き過ぎて、その場から体が動けなくなって震えだしてしまう。
周りが言い争いを見て、直ぐに先生に伝えようと誰かが走り出す。
ラファエルがちょうど花壇に向かう途中で、クロエの話が道すがら耳に入ってきた。
「た、大変よ!!
あの男爵令息はタチが悪いわ。
毎日、令嬢に卒業パーティーのパートナーを誘ってるわよ。
誰も相手にしないから、今回はかなり変な様子なのよ!!」
「えー!何方が絡まれておりますの?!お可哀想ですわ!」
「ノマイユ侯爵令嬢よ!
先生に早く、お知らせしなくてはー!!」
慌てて話している令嬢たちの話を聞いて、彼は顔色を変えた。
ノマイユ侯爵令嬢が危ない目にあっている、急いで助けに行かなくては!!
周りの景色が見えなくなるほど、無我夢中で騒ぎのする方向を駆け足で走った。
「どうせ!誰も踊る相手なしの壁の花のくせにー!!
俺が誘ってやってんだぞ!!
有り難く受けろよー!」
クロエの腕を掴もうとした瞬間に、頬を殴るラファエルが間に入ってきた。
「誰がー!!お前みたいな者の誘いを受けるか!
鏡で顔を見てからにしろ!
不細工なくせに乱暴を女性にするとは、許さないからなぁー!!」
正直過ぎる発言に、周りの野次馬たちは男爵令息の顔を見る。
殴られ後ろに転がった男子生徒に、批判の声があがっていた。
「ノマイユ侯爵令嬢?!
お怪我や何かされませんでしたか?!」
彼はクロエの肩に触り、慰めると彼女が火がついたように泣き出した。
「うっ、怖かったですわー!!
ロベール伯爵令息ー!!
うわぁ~ん!!!」
男爵令息は先生たちに捕まり、何処かに連れていかれた。
「大丈夫ですか?!
ノマイユ侯爵令嬢!!」と、先生が2人を心配し話しかける。
「ええ、ロベール伯爵令息が助けて下さいました。
彼がいなかったらと思うと…。
ぐずん、うっ。
うぁっ~、わぁ~んー!!」
泣き止まない侯爵令嬢に、どうしていいのか動揺する先生にラファエルが言う。
「先生方、私がノマイユ侯爵令嬢をお宅まで送り届けますよ。
私は、姉たちを通じての友人なんです」
彼に一先ず頼んだ先生は、男爵令息を厳しく処罰すると約束をしてくれた。
その後ステラも話を何処からか聞きつけて、真っ青になり慌てて現れた。
2人で泣き止んだクロエを、ノマイユ侯爵邸に無事に送り届けたのだった。
この一件は、二人の運命の日になる出来事になる。
ラファエルが、親切丁寧に教えてくれたおかげだ。
彼女が刺繍した中でも、これは間違いなく1番の出来だった。
最後まで仕上げなれず、過去に家族の他はラファエルに贈った個性的な薔薇のハンカチのみ。
そして、いま渡したハンカチだけだった。
途中で仕上げられず捨てていた刺繍ばかりで、自分自身も大いにダメだと反省している。
「クロエ様、嬉しいわ。
有り難うございます、中を見ても宜しいかしら?!」
兄嫁は嬉しそうにハンカチを見ると、兄に見せて輝くばかりの笑顔で話しかけていた。
「まーぁ、貴方、見て下さいな!小枝にとまる小鳥たちを、何て可愛らしいの!!
クロエ様、大事に使いますわね。ありがとう、私のためにー!!」
彼女は嬉しさのあまり、義理の妹に感謝のキスを頬にそっとした。
「クロエ!すごく上手ではないか!?
誰かに教わったのか?!」
流石に男性のラファエルとは言えずに、ステラの名を出した。
季節は巡り、クロエとステラが学園を卒業するまで3か月後に差し迫っていた。
クロエは、まだ婚約者がいない状態。
例の第2王子は、評判の悪いあの伯爵令嬢と婚約をした。
周りはノマイユ侯爵令嬢が、相応しいと口々に話題に出している。
彼女にとっては、この噂は迷惑この上なかった。
「ステラ。
最近私を哀れんだ目で、皆さまは見るのよ。
それに、卒業パーティーの同伴相手を決めなくてはいけないわ。
ロベール伯爵令息とは無理だから、お兄様か父上に頼もうと思うの?」
ダンスパートナーに悩む親友に、彼女は勇気を出すように励まし助言する
「ローベル伯爵令息に、頼んでみたら!?
なにも婚約者でなくとも良いではないですか?!
進展してませんが、最近は会話も二人で自然に出来てます。
焦らずにね、クロエ」
ステラはラファエルがクロエの気持ちに、ここまで返事をしないのに苛立っていた。
2歳下の身分が伯爵だからか、そんなのより当人同士の気持ちが1番ではないのか。
側にいる彼女の悩み顔に、怒りが込み上げてくる親友だった。
そんななかでクロエが1人の中庭を歩いて、彼が居るだろう花壇を目指していた。
「ノマイユ侯爵令嬢、お話をしても宜しいですか?」
彼は確か男爵令息で、クラスが同じだったはずね。
「何かご用かしら?」と、クロエは立ち止まり男爵令息に返事をする。
「あ、あのう。
私はずっとノマイユ侯爵令嬢に好意を持ってました。
卒業パーティーのパートナーになって頂けませんか?」
男爵令息は、赤らんだ顔でクロエを誘っている。
初めて話す、男性からのダンスパートナーのお誘い。
彼女はクラスメートとしか思えない相手に、差し障りなく断りを入れた。
「偉そうに!
第2王子に相手にされないし、婚約者もいないくせにー!!」
急に態度を豹変して、自分に対して怒鳴りつけてくる。
その突然の罵倒に驚き過ぎて、その場から体が動けなくなって震えだしてしまう。
周りが言い争いを見て、直ぐに先生に伝えようと誰かが走り出す。
ラファエルがちょうど花壇に向かう途中で、クロエの話が道すがら耳に入ってきた。
「た、大変よ!!
あの男爵令息はタチが悪いわ。
毎日、令嬢に卒業パーティーのパートナーを誘ってるわよ。
誰も相手にしないから、今回はかなり変な様子なのよ!!」
「えー!何方が絡まれておりますの?!お可哀想ですわ!」
「ノマイユ侯爵令嬢よ!
先生に早く、お知らせしなくてはー!!」
慌てて話している令嬢たちの話を聞いて、彼は顔色を変えた。
ノマイユ侯爵令嬢が危ない目にあっている、急いで助けに行かなくては!!
周りの景色が見えなくなるほど、無我夢中で騒ぎのする方向を駆け足で走った。
「どうせ!誰も踊る相手なしの壁の花のくせにー!!
俺が誘ってやってんだぞ!!
有り難く受けろよー!」
クロエの腕を掴もうとした瞬間に、頬を殴るラファエルが間に入ってきた。
「誰がー!!お前みたいな者の誘いを受けるか!
鏡で顔を見てからにしろ!
不細工なくせに乱暴を女性にするとは、許さないからなぁー!!」
正直過ぎる発言に、周りの野次馬たちは男爵令息の顔を見る。
殴られ後ろに転がった男子生徒に、批判の声があがっていた。
「ノマイユ侯爵令嬢?!
お怪我や何かされませんでしたか?!」
彼はクロエの肩に触り、慰めると彼女が火がついたように泣き出した。
「うっ、怖かったですわー!!
ロベール伯爵令息ー!!
うわぁ~ん!!!」
男爵令息は先生たちに捕まり、何処かに連れていかれた。
「大丈夫ですか?!
ノマイユ侯爵令嬢!!」と、先生が2人を心配し話しかける。
「ええ、ロベール伯爵令息が助けて下さいました。
彼がいなかったらと思うと…。
ぐずん、うっ。
うぁっ~、わぁ~んー!!」
泣き止まない侯爵令嬢に、どうしていいのか動揺する先生にラファエルが言う。
「先生方、私がノマイユ侯爵令嬢をお宅まで送り届けますよ。
私は、姉たちを通じての友人なんです」
彼に一先ず頼んだ先生は、男爵令息を厳しく処罰すると約束をしてくれた。
その後ステラも話を何処からか聞きつけて、真っ青になり慌てて現れた。
2人で泣き止んだクロエを、ノマイユ侯爵邸に無事に送り届けたのだった。
この一件は、二人の運命の日になる出来事になる。
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