【完結】君はバラより美しく!     ドクダミよりもたくましい?

愚者 (フール)

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第6章 薔薇とドクダミを君へ

第11話  粘着質な令嬢

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 静かな部屋に、重々しい空気と緊張感が漂っている。

側で見守るピエールもこの中にいて、思わず喉元のどもとをゴクリと鳴らす。

ちょうど、12時の時計の音が鳴り響くのであった。

ノマイユ侯爵令息は時計の音を聞いて、実に自然に誘いをかけた。

「おぉ、昼の時間だね!?
ロベール伯爵令息、お昼をご馳走ちそうするよ。
よく使う店が近くにあるんだ。
義兄におごらせておくれよ。
ピエール殿、宜しいだろう?!」

宜しくないし、全く私の話を無視してないか?
私の話が、聞こえてない訳はないよね。
物凄く自分本意ではないか、この人。

やっぱりこんな感じが、あのクロエ嬢によく似ている。

「エッ、はい!
ラファエル君、良かったね?!
ゆっくりお昼に行ってきなさい」

お~い、ピエール殿は助けてくれないの?
長いものに巻かれろ的な、考えの方だったのか。

もう、人に頼っては駄目だわ。
絶対に食事中にもう一度、ハッキリと否定するんだ自分!

ラファエルは決心を新たに、ノマイユ侯爵令息の後ろをついていく。

  そこはラファエルが、初めて入る立派なレストランであった。
上流貴族のみが許される会員制。
ラファエルは、中流と上流の差をまざまざと感じ取った。

クロエ嬢の相手には、自分は相応ふさわしくない。
彼女はこの事を理解して、私に好意を持ってるのだろうか。

私の母は何故、クロエ嬢を女性として未来の妻にと考えたのか。
わからない、女性はあまり深く考えずに感情的になりやすいもの。

「ロベール伯爵令息は、どれにする?
遠慮はいらないよ」

値段も書いてないメニュー。
気に入ったから、価格も聞かずに宝石をあんなに買っていた。

ラファエルは、自分がみじめに感じてくる。
こんな思いを平民たちは、きっと毎日感じているのだろうか。
全然食欲はないし、食べたくなかった。

「すみません、私は飲み物だけで結構です」

ラファエルは、飲み物なら支払い出来ると思った。

「遠慮は無用だ!
君は若いし、たくさん食べてくれたまえ!」

侯爵令息は、ラファエルが遠慮しているんだと勘違いをしていた。

「いいえ、遠慮してません!
私と侯爵令息では、好みが合いませんよ。
ハッキリと言います。
妹君とは、住む世界が違いすぎる。
彼女は現実に気づけば、私には興味がなくなるはずだ」

侯爵令息はラファエルの顔を見て、彼の感情を読み取ろうとしていた。

「そんなのは当たり前だ。
クロエも私もわかっている。
わかっていて、クロエは君が好きなんだ。
あの子は、昔から一途いちずなところがある。
1度好きになると、しつこいぞぉー!」

兄は妹の性格をよく知っていたから、だからこそラファエルを直接見てみたかった。

「ですよね?!
この前も私をまだ好きなのかって聞いたら、ハイと答えました。
冷たくしても、実に打たれ強いですよ」

兄は、妹がそんなに彼を好きなのかと話を聞き思った。

ラファエルと話しをしていて、少し理解した。

「君は妹にとって、新しいぴょんちゃんなんだょ…」

ぴょんちゃん?なんなのそれは?!

またワケわからんことを、この令息は話してるわ。

ラファエルは、話さないで聞く方にてっした。

「ぴょんちゃんは、ウサギのぬいぐるみでな。
亡くなった祖母が、クロエに3歳の誕生日に贈った物だ」

クロエの兄が話すには、今も手元に置き大事にしてるらしい。
ぬいぐるみはボロボロで、家族が皆で捨てろと言っても頑固がんこでまったく聞かないそうだ。

私は、ボロボロの小汚ないウサギの代わりなの?!

しかし、クロエ嬢の名前のセンスの無さにガッカリした。
ウサギのぴょんちゃん、子猫のみぃ~ちゃんか。
口許に笑みを浮かべて話を聞いていた。

彼はアホらしくなり、もう意地を張るのをやめてしまった。
どうせ、一生来れない高級店。

「はぁ~!ぴょんちゃんの代わりなのですね。
私は…。令息のお話を聞いていたら、何やらお腹が空きました。
侯爵令息、料理は令息がお決め下さい」

ラファエルは料理を待ちながら、侯爵家の兄妹はかなり天然で変わり者ではと思い始めた。
 
  
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