【完結】君はバラより美しく!     ドクダミよりもたくましい?

愚者 (フール)

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第6章 薔薇とドクダミを君へ

第7話  素敵な肖像画

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 休み明け学園で1人ランチをするラファエルに、2人の令嬢たちが声をかけた。

「あらっ?元気そうじゃないの!ほっとして、安心した。
ここに、座ってもいいわよ!」

彼は周辺には聞こえないように、ひそひそ言葉で笑みを浮べて話しかけてきた。

「ロベール伯爵令息、有り難うございます。
あれからモルガンを、ボコボコにしたらスッキリしました。
もう、許しましたわ!」

ステラはその後の馬車の中での事を、ラファエルと食事をする間に細やかに報告した。

「おやまぁ!
モルガン様に文句を言われそう。
貴女、とてもいいお顔をしていてよ!
ほんと男女の関係って、面倒くさいわねぇー!
ノマイユ侯爵令嬢は、こんな私をまだ好きなの?!」

横で美味しいそうに食べていた、天然ボケボケ令嬢に質問する。

「えぇ!私はロベール伯爵令息みたいに、正直な方を尊敬します。浮気したら言って下さいませ。
その前に、嫌いになったら話して下さいな」

ラファエルは、クロエのその能天気のうてんきな態度を鼻で笑った。

「貴女もつくづく物好きね。
 私はまだ振られた事はないの。
出来れば一生経験はしたくないけどね」

少し静かに食べていたら、クロエがお願いをラファエルにしてきた。

「ロベール伯爵令息、前に仰っていた肖像画を見てみたいです。
あれから想像していたら、どうしても気になってしょうがないのです!」

余程気になっていたのか、真っ直ぐに飾り気なくお願いをする。
ラファエルは、かえって気持ちが良いとクロエの話を聞き感じるのであった。

「貴女も、変わってる。
いいわよ、何時がいいの?」

「私とモルガンもいいですか?
まだ、気まずくって…。
皆さんとご一緒なら、ダメですか?!」

ステラも気になっていたし、これでモルガンとの仲が改善しないかと願っていたのだ。

「みんなで、いらっしゃいな!
私の美少女振りを見せてあげるわよ!」

ラファエルが承諾しょうだくすると、二人は声をあげて喜んだ。
 
 3日後に4人で、ロベール伯爵邸にてお茶会をすることにした。
あの観劇から2週間経っていた。

「ようこそいらっしゃい。
此方へどうぞ!」

ラファエルが指定した場所には、肖像画がたくさん掛かっていた。
カーテンが掛かっていたのを開けると、2枚の肖像画が3人の瞳に映った。

1枚は美しい美少女が遠くを見て微笑ほほえむ絵画で、まるで天使のような可愛らしさである。

反対に薔薇の中で水をかけている、少女と庭師の様なお爺さんの楽しげな絵だった。

「綺麗と愛らしいの絵だわ~!!」

クロエは、絵に対して素直な感想をべた。

「フフフ、有り難う!
この絵たちは、秘密の絵よ。
ロベール家には、居てはいけない少女だから…」

そんなラファエルは、絵を寂しげに見ていた。

「そんなー!
こんなに素敵な絵なのにか?!」

モルガンが残念そうに言うと、隣でステラも同じ表情をしていた。

「でもね、私が当主になったら堂々と見せるわよ!
両親はこれを見ると、私にしたことをいて辛くなるんですって。
馬鹿よね、本人の私は全然悔いてないのに!」

ラファエルの目には、怒りや呆れの複雑な色合いを込めながら絵に向かい話しをする。

「男性でも女心がわかるから、モルガンの本音を引き出してくれたのよ。
感謝してますの、ラファエル様。
私たちの絆を深めて下さいましたもの」

「ああ、そうだとも!
私の嘘を暴いてくれたからな」

二人は自然と手を繋ぎお互いに、ラファエルに感謝していた。

「ふーん、あんたたち!
今度は、キチンとお互いに何でも話しなさいよ。
二人はいつか、ひとつになるんでしょう?
ちゃんと、神様に誓いなさいよ!」

ラファエルが女言葉で叱ると、茶会のお茶をいれていたメイドたちは笑った。

「若様、準備がお出来にましたよ」

「良かったですわ。
本音を出せる方が、3人も出来ましたわね」

「末永く、若様をお願いします!」

3人の年配メイドたちは、客人たちに笑顔でお辞儀をした。

「もう、かなわないわよ。
3人の魔女たちにはね?!
お茶の支度したくを有り難うね」

そう話すとラファエルは、席に着くようにうながす。
気心きごころ知った4人のお茶会は、楽しくゆったりと時間が過ぎていった。
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