【完結】君はバラより美しく!     ドクダミよりもたくましい?

愚者 (フール)

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第5章 気になる方は年下の男の子

第4話  予期せぬ鉢合わせ

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  貴族のご令嬢にはあまり縁のない手芸店に、護衛とメイドを一人つづ連れて来ていた。

「ねぇ、クロエ。
刺繍ししゅう糸を買って、何を作るおつもりなの?」

「ロベール伯爵令息にハンカチを、再度薔薇ばらの模様にいどみますわ!
そしてあやまります!」

強い意志を感じ、ステラは無表情になる。
クロエったら、絶対にロベール伯爵令息に気があるわ。
彼の方は、絶対にクロエを邪険じゃけんしていてウザい令嬢だと思ってる。
友として、どうしたらよいか頭と胸が痛む。

「謝るのはいいとして、ハンカチはやめといたら?
また、彼に鼻で笑われるわよ。
他にしたらどうかしら?」

「いいえ、頑張りますわ!
どうしても、やはり女の矜持きょうじが許しませんのよ!」

ステラは、その気持ちがよくわかる。

私もあのハンカチの薔薇の刺繍には、驚愕きょうがくして女性としてみじめな気分になったわ。

この子、意外に頑固がんこな性格をしているのね。

「ええ、好きにしなさいな。
くだったら、私がなぐめてあげる」

あぁ、近い未来が見えそうだわ。
泣きじゃくって、私に話しにくる姿がー。

「少しのど渇かない?
近くでお茶でもしましょう」

クロエが誘うと、ステラはいいお店があると明るく答えた。

「そうだわ、いい場所があるの!平民の店だけどね。
貴族の方も通うわ。
店の中は綺麗でお料理も美味しいし、とても格安なのよ!」

2人は、お供を連れて歩きだした。
街を歩く人たちの楽しげな様子に、クロエも心がほんの少し軽くなりだした。

「クロエ、あそこよ!
あのお店、外でも食べれるのよ。
まだ遠くてわからないけど、素敵な感じでしょう?!」

ステラが店を指差した後に近づくと、そこには3人の姿が目に入った。

その一人は、よく知っている顔であった。

あれはまさしく、ロベール伯爵令息だわ。
側にいる2人は存じない方々だけと、仲が良いのか楽しそう。
私には、今まで見せたこともない笑顔。
クロエは、ボーッと立ち止まりラファエルを見ていた。

ステラはそんな友人を見て、視線をロベール伯爵令息に戻した時に。
知らない令嬢の手をとると、彼が微笑みながら指に指輪をはめている。

えー!ロベール伯爵令息に彼女がいたの?!

それをもう一人の初老の紳士は、その様子を嬉しそうに笑って眺めていた。
まさか、婚約指輪なのかしら?
どこの指にしてるのか、此方こちらからでは全く見えないわ!

ステラとクロエもその場に立ちすくむと、離れた場所の光景に目を見開いた。

どのくらいの時間か判断できないが、クロエの震える声が横から聞こえた。

「ステラ、あの方は誰に見えますか?」

隣の友人を見たら、顔色が青白かった。

「クロエ、顔色が悪いわ。
違う店で、休みましょう?」

「ステラ、ロベール伯爵令息に見えませんか?」

ダメだわ、ちゃんと返事しなくては友人の為にならない。
決心して、ステラはハッキリと言う。

「ロベール伯爵令息よ!
偶然ね、こんな場所でお会いするなんて…」

「やっぱり、彼よね?!
あれは、彼女かしら?
指輪を…、渡していたわよね?」

今日は、彼のために刺繍糸を買いに行った矢先やさきにこれとは。


「そう見えるけど憶測おくそくよ。
気になるなら、こちらから話しかけてみる?!」

ステラはクロエが、振られるならハッキリした方が良いと考えた。

「クロエ!
あちらの小さなカフェで、メイドと中に入って先にお茶をしていなさい。
私は、ロベール伯爵令息に挨拶してくるわ!」

ステラは護衛を連れて、ラファエルに向かっていくのであった。
 
 その時、3人は女性の指にあるルビーを穴が開くまで見つめた。

「ここまでのクオリティーのルビーは希少きしょうだよ。
ロベール伯爵領は、これから必ず注目されることになるだろう!」

ピエールはそう話すと、笑顔で指輪を見ていた。

「本当に綺麗ですわ!
こんな貴重なお品を、見せて頂き有り難うございます!」

孫娘も宝石が大好きなので、ワクワクして指輪を目を輝かし嬉しげに見ていた。

「父より、早く見せて貰い感謝しますよ。
ブリエとは、これから長い付き合いになりそうですね。
ピエール殿!!」

ロベール領で発見されたルビーを、研磨けんましカットされ指輪にした品を見せてくれた。

  話が盛り上がった時に、ステラがラファエルに声をかけに行った。

「ご機嫌よう、ロベール伯爵令息!!
偶然にお姿を見ましたので、御挨拶に来ましたの」

突然にクロエの友人の伯爵令嬢に声をかけられ驚いた。

「これは伯爵令嬢、お久しぶりです。
わざわざ、ご丁寧に有り難うございます」

ラファエルは、クロエの友人によそよそしく挨拶を返した。

「まぁ、綺麗なルビーの指輪ですか。
もしかして、御婚約指輪ですか?!」

彼は、伯爵令嬢の変な質問に不快になる。

「アハハハ、伯爵令嬢はご冗談を!
彼女に、対して失礼ですよ」

「フフフ、ロベール伯爵令息なら光栄ですわ!
でも、私では釣り合いませんわね?」

ラファエルの横に座る令嬢は、口元を隠しながら微笑んだ。

「孫娘がいいなら歓迎しますぞ!身分が釣り合いませんで、誠に残念ですがなぁ」

初老の紳士も話に割って入ってきた。

「そんな関係ですよ。
彼らは私の大事な知り合いです。
無粋ぶすいな考えはおやめなさい。
それと侯爵令嬢に謝罪は不必要ですので、今後は話しかけないようにお願いしますとお伝えください。
ではご機嫌よう、伯爵令嬢!!」

ラファエルは、ステラにこの場を去るように言葉をかけた。

「ええ、今から彼女に会いますから伝えますわ。
では、失礼します!」

ステラは、護衛を連れてクロエのいるカフェへ歩いて行く。

「あの様におっしゃって平気ですか?
いま、侯爵令嬢って仰いませんでした?」

ピエールの孫娘は、ラファエルを思いやってただしたのである。
自分を何か勘違いしているのではと、孫娘は顔色を曇らせていた。
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