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第5章 気になる方は年下の男の子
第3話 平民と貴族
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翌日の朝、ラファエルは独りで朝食をとっていた。
ブリエは開店が10時からだが、責任者ピエールは誰よりも早く店にきている。
彼は特別な顧客や新規でも高額な取引き以外は、なかなか店の表に出てこない。
しかしながら、責任者として何回かは店の様子を見に行くのだ。
ラファエルは、その幸運な時間帯にピエールと奇跡的に出会えた。
ロベール伯爵の馬車が、ブリエの前に泊まる。
「いつも、有り難う。
帰りは辻馬車を捕まえるよ」
彼は馭者に伝えると、裏にまわり従業員用の入口の扉のベルを鳴らす。
扉の近くには、身元を調べて中に入れる従業員がいた。
ブリエは高級宝石店、窃盗などに用心する所為だ。
ラファエルはもう顔見知りなので、難なく店に入って行く。
伯爵令嬢のお見舞いに、プリンやケーキの入った箱をメイドに持たせてやって来た。
「クロエ、お見舞いに来てくれて嬉しいわ!
ごめんなさい、風邪は嘘なの。
婚約者の親戚が、王都に観光に来ていてね。
私を紹介したいと言われて休んだのよ」
理由を話しながらペコペコ謝るので、クロエは怒る気もしなくなった。
反対にラファエルを思いだし、暗い顔になる。
友人のステラは、彼女の様子が少し変なのが気になった。
メイドがクロエの見舞いお菓子とお茶を出すと、察したのか二人きりにしてくれた。
「クロエの持ってきたお菓子は、美味しそうね。
食べながら話を聞くわ。
私が休んでた日に何かあったわね?!」
「え、何でわかるの?」と、クロエは驚いたふうに訊いてきた。
ラファエルとの花壇のやり取りを、目の前にいる友人に詳しく話した。
「それは、クロエが悪いと思うわ。
それに人に謝罪を頼むのは、ロベール伯爵令息は気分がよくないわよ」
「私も言った後に後悔したの。
ロベール伯爵令息は、今頃まだ怒ってるかもね」
落ち込んだ友人に、伯爵令嬢はこれから街に出歩きに行こうと誘った。
ブリエで宝石のそれぞれの特徴を教わっていた時に、ピエールの孫娘が訪ねてきた。
昼を3人で、外に食べに行こうという話になった。
孫娘はピエールから宝石の話を聞かされているのか、ラファエルと話が弾んでいた。
そんな若い二人を見守る紳士は、ある一件のレストランに入った。
「ここは、外で町並みを見ながら食事が出来る人気店だ。
友人が経営者なんだよ」
人気店だけあり、中は混んでいた。
しかし、彼が入ると直ぐにいい席に案内された。
「さぁ、好きなものを選びなさい。
宝石好きが集まったのだから、食べながら楽しく語ろうではないか」
ピエールは、ご機嫌でワインを頼んでいた。
「まぁ、おじい様ったら!
昼間から、もうお酒ですの?」
孫娘は、祖父を咎めるような表情をして忠告する。
「いいではないか!
3人が初めて揃ったのだから!
今日は特別だよ、アハハ!」
陽気に笑っているのを、2人は顔を見合わせて笑っていた。
「ロベール伯爵令息は、学園でも秀才って有名ですよ。
同じ年齢で2学年上なんて凄いことですわ。
ねぇ、お祖父様!」
「だから覚えも早いのか。
ロベール伯爵は、良い息子さんをお持ちだな」
美味しそうな料理が並べられ、楽しく会話をする3人。
「こうして外の人々を見て、食事するなんて初めてですよ!
恥ずかしい様な不思議な感覚です。
ピエール殿がお誘いしてくれなかったら、これからもなかった経験です」
ラファエルは貴族だ。
いつもは、中か個室のレストランで食事をしてきていた。
「ここは庶民の店だからね。
でも、どちらかというと貴族よりだ。
よく見てごらん、客層も身なりが良いだろう?!」
ラファエルは周りを見ると、貴族の中流と変わらない服装だった。
「そうですね。
そのうちに、貴族という身分も無くなるかも知れませんね」
考え深げに話すと、ピエールは驚いた表情をラファエルにした。
「ほーぉ!次期伯爵がそんな考えをするとはね?!
君は、あまり身分には拘らないんだね」
「私も話を聞いて、ビックリしましたわ!
学園では、平民と貴族はクラスが別々にされていますもの」
孫娘は、学園で露骨に身分で差別された話をしてくれた。
「それはいけない事だ!
私は、人は本来は平等であるべきと思う。
父は口にはしないが、領民や使用人には親切だ。
自慢ではないが、我が家は質素な生活を心掛けているよ。
その分を、領民たちが必要な物や事柄に使っている」
ラファエルは、身分格差がもどかしかった。
「有り難う!
ロベール伯爵の様な方が増えたら貧困も少なくなるわね。
私たちは、まだ幸せな方よ」
「お前の言うとおりだな。
ブリエは客を選ばない。
王だろうが平民だろうが、客は客だ。
それを誇りに王都1と呼ばれるまでになった。
それは、私のポリシーだよ!」
ラファエルは、ピエールに力強く頷いた。
だから私が初めてブリエに入った時に、何も言わず店員は宝石を見せてくれたのか。
ピエール殿も店の方々も素晴らしい。
あの宝石と同じくらい、それ以上に美しく光輝く魂を持っている。
まさかこの後に、こんな平民の店で偶然にも知り合いに会うとは思いもよらなかった。
ブリエは開店が10時からだが、責任者ピエールは誰よりも早く店にきている。
彼は特別な顧客や新規でも高額な取引き以外は、なかなか店の表に出てこない。
しかしながら、責任者として何回かは店の様子を見に行くのだ。
ラファエルは、その幸運な時間帯にピエールと奇跡的に出会えた。
ロベール伯爵の馬車が、ブリエの前に泊まる。
「いつも、有り難う。
帰りは辻馬車を捕まえるよ」
彼は馭者に伝えると、裏にまわり従業員用の入口の扉のベルを鳴らす。
扉の近くには、身元を調べて中に入れる従業員がいた。
ブリエは高級宝石店、窃盗などに用心する所為だ。
ラファエルはもう顔見知りなので、難なく店に入って行く。
伯爵令嬢のお見舞いに、プリンやケーキの入った箱をメイドに持たせてやって来た。
「クロエ、お見舞いに来てくれて嬉しいわ!
ごめんなさい、風邪は嘘なの。
婚約者の親戚が、王都に観光に来ていてね。
私を紹介したいと言われて休んだのよ」
理由を話しながらペコペコ謝るので、クロエは怒る気もしなくなった。
反対にラファエルを思いだし、暗い顔になる。
友人のステラは、彼女の様子が少し変なのが気になった。
メイドがクロエの見舞いお菓子とお茶を出すと、察したのか二人きりにしてくれた。
「クロエの持ってきたお菓子は、美味しそうね。
食べながら話を聞くわ。
私が休んでた日に何かあったわね?!」
「え、何でわかるの?」と、クロエは驚いたふうに訊いてきた。
ラファエルとの花壇のやり取りを、目の前にいる友人に詳しく話した。
「それは、クロエが悪いと思うわ。
それに人に謝罪を頼むのは、ロベール伯爵令息は気分がよくないわよ」
「私も言った後に後悔したの。
ロベール伯爵令息は、今頃まだ怒ってるかもね」
落ち込んだ友人に、伯爵令嬢はこれから街に出歩きに行こうと誘った。
ブリエで宝石のそれぞれの特徴を教わっていた時に、ピエールの孫娘が訪ねてきた。
昼を3人で、外に食べに行こうという話になった。
孫娘はピエールから宝石の話を聞かされているのか、ラファエルと話が弾んでいた。
そんな若い二人を見守る紳士は、ある一件のレストランに入った。
「ここは、外で町並みを見ながら食事が出来る人気店だ。
友人が経営者なんだよ」
人気店だけあり、中は混んでいた。
しかし、彼が入ると直ぐにいい席に案内された。
「さぁ、好きなものを選びなさい。
宝石好きが集まったのだから、食べながら楽しく語ろうではないか」
ピエールは、ご機嫌でワインを頼んでいた。
「まぁ、おじい様ったら!
昼間から、もうお酒ですの?」
孫娘は、祖父を咎めるような表情をして忠告する。
「いいではないか!
3人が初めて揃ったのだから!
今日は特別だよ、アハハ!」
陽気に笑っているのを、2人は顔を見合わせて笑っていた。
「ロベール伯爵令息は、学園でも秀才って有名ですよ。
同じ年齢で2学年上なんて凄いことですわ。
ねぇ、お祖父様!」
「だから覚えも早いのか。
ロベール伯爵は、良い息子さんをお持ちだな」
美味しそうな料理が並べられ、楽しく会話をする3人。
「こうして外の人々を見て、食事するなんて初めてですよ!
恥ずかしい様な不思議な感覚です。
ピエール殿がお誘いしてくれなかったら、これからもなかった経験です」
ラファエルは貴族だ。
いつもは、中か個室のレストランで食事をしてきていた。
「ここは庶民の店だからね。
でも、どちらかというと貴族よりだ。
よく見てごらん、客層も身なりが良いだろう?!」
ラファエルは周りを見ると、貴族の中流と変わらない服装だった。
「そうですね。
そのうちに、貴族という身分も無くなるかも知れませんね」
考え深げに話すと、ピエールは驚いた表情をラファエルにした。
「ほーぉ!次期伯爵がそんな考えをするとはね?!
君は、あまり身分には拘らないんだね」
「私も話を聞いて、ビックリしましたわ!
学園では、平民と貴族はクラスが別々にされていますもの」
孫娘は、学園で露骨に身分で差別された話をしてくれた。
「それはいけない事だ!
私は、人は本来は平等であるべきと思う。
父は口にはしないが、領民や使用人には親切だ。
自慢ではないが、我が家は質素な生活を心掛けているよ。
その分を、領民たちが必要な物や事柄に使っている」
ラファエルは、身分格差がもどかしかった。
「有り難う!
ロベール伯爵の様な方が増えたら貧困も少なくなるわね。
私たちは、まだ幸せな方よ」
「お前の言うとおりだな。
ブリエは客を選ばない。
王だろうが平民だろうが、客は客だ。
それを誇りに王都1と呼ばれるまでになった。
それは、私のポリシーだよ!」
ラファエルは、ピエールに力強く頷いた。
だから私が初めてブリエに入った時に、何も言わず店員は宝石を見せてくれたのか。
ピエール殿も店の方々も素晴らしい。
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