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第5章 気になる方は年下の男の子
第1話 クロエの苛立ち
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土から芽が顔を出す春の季節。
学園で姉たちとランチをするのも、残り半年になっていた。
ロベール伯爵の子供らは、楽しく昼食を食べながら話をしている。
突然、明るくハッキリした女性の声で挨拶をされた。
「ご機嫌よう、ロベール伯爵家の方々。
お昼を、御一緒しても宜しいですか?」
この声で判断が出来るのは、ノマイユ侯爵令嬢だった。
「ええ、どうぞ。
今日はお一人ですか?!
いつも御一緒の伯爵令嬢は、どうかされましたか?!」
長女エミリーは、1つ空いていた椅子を指し示した。
「はい、彼女は風邪をひいたのでお休みです。
季節の変わり目ですしね。
でも、春になり暖かくなりました。
ロベール伯爵令息、あの花壇に種を撒きましたの?」
クロエは、何気なく話題をラファエルに振ってきた。
「今日は薔薇の下に咲かす、花の種を撒きますよ。
我が家の庭にあったのをわけて貰い、多年草の苗も植える予定です。
薔薇はもう既に、2月に苗を植えてあるのでね」
「まぁ、植物にお詳しいですわね!
ロベール伯爵令息は!」
クロエは感心して、ラファエルに話しかけた。
「ラルは幼い頃に、よく庭師のお爺さんと庭いじりしてましたものねぇ」
ラファエルと次女シモーヌが会話をする。
「私も植えるのを、お側で見学しても宜しいでしょうか?」
ノマイユ侯爵令嬢が、楽しげにお願いをする。
「土掘って植えて水をかけるだけですよ。
何も令嬢が見て、楽しい事はないと思います。
やめときなさい!」
ラファエルは、素っ気なく言うのであった。
「構いませんわ!
我が屋敷でも綺麗な花が咲いてますが、どう育っていくのか関心がございますの」
物好きなご令嬢だ、メイド達が話していたなぁ。
若い頃は何を見ても楽しくて、よく笑っていた時代があったと。
今は年寄りになったわと、嘆いていたっけ。
この令嬢も、やっている所を1度見せたら満足するだろう。
「いいですよ、ただし絶対に花壇には入らないで下さいね!
部外者だし、静かに邪魔しないようにお願いしますよ。
ノマイユ侯爵令嬢!」
クロエは、ラファエルの許可に喜んで返事をした。
ラファエルは時間がないので、クロエを待たずに先に進めていた。
やはり話だけで来ないのか、気まぐれだよな!
「ロベール伯爵令息、ご機嫌よう!」
ノマイユ侯爵令嬢が声をかけても、黙って黙々と土を堀って苗を植えている。
遅れたので怒っているのかしら、クロエが何度も声をかけたが振り返りもしない。
わざとなのか、本当に聞こえないのか。
無視されるのにイラついたクロエは、約束を破り花壇の中に入りラファエルの腕をとった。
「ロベール伯爵令息!
何度も呼んでおりますのよー!!」
その声にやっと気づいたラファエルは、すぐに侯爵令嬢に怒鳴り付けた。
「ちょっと、花壇に入らないでと言ったわよね!
そこには種が撒いてあるのよ。
それにヒールの足跡で、メチャクチャになってるじゃない。
見てよ、道を作ってあるのがわからないの?
もう最低、早く花壇から出ていってよ!!」
ラファエルは、クロエを怒鳴りながら荒れた花壇だけを見ていた。
「そんな言い方はないわ!
私は貴方が気付かないから、ここまで来たのよ!」
言い返したクロエに、ラファエルは冷たく返した。
「邪魔するな!
静かに見てと言ったわよね。
貴女こそ、その我がままな自分勝手な性格を直しなさい!
でないと、一生涯独りで生きていく事になりそうよ。
もう、ここには来ないでー!」
ラファエルの言葉に、クロエは涙を流して花壇から走って出ていく。
花壇の外に出たクロエは、1度振り返りラファエルに向けて罵倒した。
「ロベール伯爵令息の、馬鹿ぁー!!」
捨て台詞だけが、花壇にいるラファエルに向けられた。
もう何よ、あれ!
馬鹿は貴女の方でしょう!
ああ~、メチャクチャですわ。
私の大事な花壇がー!
かわいい花たちが…。
なんて可哀想に、今すぐに綺麗にしますからね。
ラファエルは泣いて逃げた、侯爵令嬢を完全に無視して修復を始めるのであった。
そんなクロエは何度も振り返り、ラファエルが呼び掛けるのを待っていた。
たが、ラファエルは花だけを見ていたのだった。
彼女は諦めて泣きながら、トボトボ下を向き一人で歩きだす。
どうしてなの!?
私はロベール伯爵令息と、仲良くお花の話を聞きたかっただけなのにー!
クロエの目からは、涙が次々に溢れて止まらなくなっていた。
学園で姉たちとランチをするのも、残り半年になっていた。
ロベール伯爵の子供らは、楽しく昼食を食べながら話をしている。
突然、明るくハッキリした女性の声で挨拶をされた。
「ご機嫌よう、ロベール伯爵家の方々。
お昼を、御一緒しても宜しいですか?」
この声で判断が出来るのは、ノマイユ侯爵令嬢だった。
「ええ、どうぞ。
今日はお一人ですか?!
いつも御一緒の伯爵令嬢は、どうかされましたか?!」
長女エミリーは、1つ空いていた椅子を指し示した。
「はい、彼女は風邪をひいたのでお休みです。
季節の変わり目ですしね。
でも、春になり暖かくなりました。
ロベール伯爵令息、あの花壇に種を撒きましたの?」
クロエは、何気なく話題をラファエルに振ってきた。
「今日は薔薇の下に咲かす、花の種を撒きますよ。
我が家の庭にあったのをわけて貰い、多年草の苗も植える予定です。
薔薇はもう既に、2月に苗を植えてあるのでね」
「まぁ、植物にお詳しいですわね!
ロベール伯爵令息は!」
クロエは感心して、ラファエルに話しかけた。
「ラルは幼い頃に、よく庭師のお爺さんと庭いじりしてましたものねぇ」
ラファエルと次女シモーヌが会話をする。
「私も植えるのを、お側で見学しても宜しいでしょうか?」
ノマイユ侯爵令嬢が、楽しげにお願いをする。
「土掘って植えて水をかけるだけですよ。
何も令嬢が見て、楽しい事はないと思います。
やめときなさい!」
ラファエルは、素っ気なく言うのであった。
「構いませんわ!
我が屋敷でも綺麗な花が咲いてますが、どう育っていくのか関心がございますの」
物好きなご令嬢だ、メイド達が話していたなぁ。
若い頃は何を見ても楽しくて、よく笑っていた時代があったと。
今は年寄りになったわと、嘆いていたっけ。
この令嬢も、やっている所を1度見せたら満足するだろう。
「いいですよ、ただし絶対に花壇には入らないで下さいね!
部外者だし、静かに邪魔しないようにお願いしますよ。
ノマイユ侯爵令嬢!」
クロエは、ラファエルの許可に喜んで返事をした。
ラファエルは時間がないので、クロエを待たずに先に進めていた。
やはり話だけで来ないのか、気まぐれだよな!
「ロベール伯爵令息、ご機嫌よう!」
ノマイユ侯爵令嬢が声をかけても、黙って黙々と土を堀って苗を植えている。
遅れたので怒っているのかしら、クロエが何度も声をかけたが振り返りもしない。
わざとなのか、本当に聞こえないのか。
無視されるのにイラついたクロエは、約束を破り花壇の中に入りラファエルの腕をとった。
「ロベール伯爵令息!
何度も呼んでおりますのよー!!」
その声にやっと気づいたラファエルは、すぐに侯爵令嬢に怒鳴り付けた。
「ちょっと、花壇に入らないでと言ったわよね!
そこには種が撒いてあるのよ。
それにヒールの足跡で、メチャクチャになってるじゃない。
見てよ、道を作ってあるのがわからないの?
もう最低、早く花壇から出ていってよ!!」
ラファエルは、クロエを怒鳴りながら荒れた花壇だけを見ていた。
「そんな言い方はないわ!
私は貴方が気付かないから、ここまで来たのよ!」
言い返したクロエに、ラファエルは冷たく返した。
「邪魔するな!
静かに見てと言ったわよね。
貴女こそ、その我がままな自分勝手な性格を直しなさい!
でないと、一生涯独りで生きていく事になりそうよ。
もう、ここには来ないでー!」
ラファエルの言葉に、クロエは涙を流して花壇から走って出ていく。
花壇の外に出たクロエは、1度振り返りラファエルに向けて罵倒した。
「ロベール伯爵令息の、馬鹿ぁー!!」
捨て台詞だけが、花壇にいるラファエルに向けられた。
もう何よ、あれ!
馬鹿は貴女の方でしょう!
ああ~、メチャクチャですわ。
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なんて可哀想に、今すぐに綺麗にしますからね。
ラファエルは泣いて逃げた、侯爵令嬢を完全に無視して修復を始めるのであった。
そんなクロエは何度も振り返り、ラファエルが呼び掛けるのを待っていた。
たが、ラファエルは花だけを見ていたのだった。
彼女は諦めて泣きながら、トボトボ下を向き一人で歩きだす。
どうしてなの!?
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