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第4章 婚活と未来への道
第8話 宝石店ブリエ
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クラレンス公爵令嬢ことプリムローズとフルール店長兼責任者ポレット夫人は、男女ラファエルの話を聞き何だが同情した。
「ラファエル様をすっかり誤解しておりましたわ。
ただの変態だと、ずーっと思ってました。
申し訳ございません!」
公爵令嬢の丁寧な謝罪に、本人はどうして良いか悩んでしまう。
「イヤだぁ、いいのよ。
きっかけは母親だけどね。
話を聞いてわかるでしょう?
若き日の青春って感じよ!」
ここの屋敷の当主であるラファエルは、ケーキを食べる手をとめて公爵令嬢を見て言うのであった。
「ある意味強運ですわね、ラルは!
しかし、宝石商になった経緯には驚きました。
ロベール領のルビーとサファイアは、エテルネルでは稀少価値があり有名ですからね」
領地で採れる宝石はクオリティーが高く、ロベール伯爵はブリエにしか売らないと国中の評判であった。
「私はね、恩人を心から尊敬して愛してるの。
彼が私に声をかけてくれたから、今の私があるのよ。
庭師のジョンとピエールは、私を変えてくれたわ。
フフフ、愛する妻もね!」
美しいサファイアの瞳がまた追憶を思い出すように閉じ、物語のような話を続けた。
父と息子は、王都1の宝石店ブリエの前で馬車から降りた。
「懐かしいなぁ。
私たち夫婦は、結婚指輪をここで作ったんだ。
一生の物だから、最高の品をと思ってな。
アリシアは贅沢を好まない。
だから持っている少ない宝石は、ブリエの品物だけだ」
知らなかった、母は結婚指輪しかしていない。
他の夫人達に比べて、かなり質素だった。
「父上は、宝石より素晴らしい物を持ってますね。
きっと、母上も同じでしょう。
だからこそ、最高の品を求めるのでしょうか。
私ももし妻を娶るなら、ブリエの宝石に負けない方を探したいと願っております」
息子の話に、父モーリスは顔を赤らめた。
生意気にというかの様に、息子の頭をポンと軽く叩いてから店に入って行った。
「いらっしゃいませ!
ロベール伯爵様とご子息様。
よくおいで下さいました!」
ピエールは仕立ての良い服を着て、にこやかに挨拶をしてくれた。
「何度か顔を会わせてますが、私のような中流貴族では足が遠のいていましてな。
息子から話を聞きました。
ピエール殿、どうか鍛えてくれませんか?
宜しくお願い致します!」
伯爵である父が、平民のピエールに深く頭を下げてお願いをしてきた。
「頭をお挙げてください。
中でお茶でも、伯爵様とご令息。
さぁ、どうぞ!」
前にも通された個室に入った時と、少し調度品が変わっている。
子供の私にも判断できる、素晴らしい品がさりげなく置かれていた。
「お掛けください。
ラファエル君、君の事を調べさせて頂きましたよ。
気分を害されたらお許しを。
ここは高額な品を扱うのでね」
ピエールは、申し訳なさそうに話してきた。
「いいえ、当たり前です。
私は恥じることはない。
ですから、存分に調べて欲しいのです」
ラファエルが答えると、ピエールは朗らかに笑った。
「嬉しいですよ。
私の息子は宝石には関心がなく、違う道に進みました。
神はそんな私を、哀れんだのでしょうか?
ご子息様と出会わせて頂いた。
私からも心から感謝します!」
無言で話を聞いていた父が、驚く事を話し出した。
「まだ世間は知らないが、家族には話してます。
我が領地に、どうもルビーが出たらしい。
しかし、どの位価値があるのかはわかりません。
ピエール殿!貴方の人柄を信じ、ブリエで調べては貰えませんか?
宝石の知識はさっぱりなのです。
これで少しでも、領民たちの暮らしが助かれば嬉しいと思ってます」
父は昔から周りの人に優しい、領地の民たちも慕ってくれている。
私も、父の様な良き当主になれるのだろうか?
「私は是非とも思いますが、店の主人に伺ってから正式に返事を致します。
了解が出ましたから、ご子息様は私が宝石の初歩から教えます。
学園がありますので、その時間を考え予定を決めていきましょう」
父とピエール殿が、握手を交わして話は終わった。
ラファエルの宝石鑑定の修行が、正式に決定した記念の日となった。
彼はその後、貴族たちから信用される宝石鑑定人になるのだった。
「ラファエル様をすっかり誤解しておりましたわ。
ただの変態だと、ずーっと思ってました。
申し訳ございません!」
公爵令嬢の丁寧な謝罪に、本人はどうして良いか悩んでしまう。
「イヤだぁ、いいのよ。
きっかけは母親だけどね。
話を聞いてわかるでしょう?
若き日の青春って感じよ!」
ここの屋敷の当主であるラファエルは、ケーキを食べる手をとめて公爵令嬢を見て言うのであった。
「ある意味強運ですわね、ラルは!
しかし、宝石商になった経緯には驚きました。
ロベール領のルビーとサファイアは、エテルネルでは稀少価値があり有名ですからね」
領地で採れる宝石はクオリティーが高く、ロベール伯爵はブリエにしか売らないと国中の評判であった。
「私はね、恩人を心から尊敬して愛してるの。
彼が私に声をかけてくれたから、今の私があるのよ。
庭師のジョンとピエールは、私を変えてくれたわ。
フフフ、愛する妻もね!」
美しいサファイアの瞳がまた追憶を思い出すように閉じ、物語のような話を続けた。
父と息子は、王都1の宝石店ブリエの前で馬車から降りた。
「懐かしいなぁ。
私たち夫婦は、結婚指輪をここで作ったんだ。
一生の物だから、最高の品をと思ってな。
アリシアは贅沢を好まない。
だから持っている少ない宝石は、ブリエの品物だけだ」
知らなかった、母は結婚指輪しかしていない。
他の夫人達に比べて、かなり質素だった。
「父上は、宝石より素晴らしい物を持ってますね。
きっと、母上も同じでしょう。
だからこそ、最高の品を求めるのでしょうか。
私ももし妻を娶るなら、ブリエの宝石に負けない方を探したいと願っております」
息子の話に、父モーリスは顔を赤らめた。
生意気にというかの様に、息子の頭をポンと軽く叩いてから店に入って行った。
「いらっしゃいませ!
ロベール伯爵様とご子息様。
よくおいで下さいました!」
ピエールは仕立ての良い服を着て、にこやかに挨拶をしてくれた。
「何度か顔を会わせてますが、私のような中流貴族では足が遠のいていましてな。
息子から話を聞きました。
ピエール殿、どうか鍛えてくれませんか?
宜しくお願い致します!」
伯爵である父が、平民のピエールに深く頭を下げてお願いをしてきた。
「頭をお挙げてください。
中でお茶でも、伯爵様とご令息。
さぁ、どうぞ!」
前にも通された個室に入った時と、少し調度品が変わっている。
子供の私にも判断できる、素晴らしい品がさりげなく置かれていた。
「お掛けください。
ラファエル君、君の事を調べさせて頂きましたよ。
気分を害されたらお許しを。
ここは高額な品を扱うのでね」
ピエールは、申し訳なさそうに話してきた。
「いいえ、当たり前です。
私は恥じることはない。
ですから、存分に調べて欲しいのです」
ラファエルが答えると、ピエールは朗らかに笑った。
「嬉しいですよ。
私の息子は宝石には関心がなく、違う道に進みました。
神はそんな私を、哀れんだのでしょうか?
ご子息様と出会わせて頂いた。
私からも心から感謝します!」
無言で話を聞いていた父が、驚く事を話し出した。
「まだ世間は知らないが、家族には話してます。
我が領地に、どうもルビーが出たらしい。
しかし、どの位価値があるのかはわかりません。
ピエール殿!貴方の人柄を信じ、ブリエで調べては貰えませんか?
宝石の知識はさっぱりなのです。
これで少しでも、領民たちの暮らしが助かれば嬉しいと思ってます」
父は昔から周りの人に優しい、領地の民たちも慕ってくれている。
私も、父の様な良き当主になれるのだろうか?
「私は是非とも思いますが、店の主人に伺ってから正式に返事を致します。
了解が出ましたから、ご子息様は私が宝石の初歩から教えます。
学園がありますので、その時間を考え予定を決めていきましょう」
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