【完結】君はバラより美しく!     ドクダミよりもたくましい?

愚者 (フール)

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第4章 婚活と未来への道

第7話 ばたばたカップル奮闘記

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 庭園からの長い距離を、  顔に汗を流し息切れをして2人は会場にたどり着いた。

「ノマイユ侯爵令嬢を探すぞ!
彼女に何かあったら、私たちの責任問題になりかねん!」 

「ちょっと、友人が襲われかかってんのよ!
いざとなったら、相手を殴ってでも止めてよね!
私も助太刀すけだちしますからー!!」

婚約者の新たな一面をみて驚く、なんて気の強い女だ。
それは友人を思う気持ちからだと、そんな彼女に思いを新たにした。

片っ端からクロエとその男を聞き出す、その2人のその顔は鬼気迫ききせまりかなり恐ろしかった。

「それなら少し前に、2階にあがって行きましたわよ。
彼女はシャンパンを飲んで、とってもご機嫌で楽しそうだったわ」

知らない男女が、2人に有力な情報を与えてくれた。

「それはいかんな。
2階には、具合が悪い人用に部屋がある。
確か、ベッドを置いてなかったっけ?!」

えー、何ですって!
クロエ、貴女お酒飲んでるの?!
彼女は、お酒がお強かったかしら?

「どうしよう!
早く見つけないと、クロエ様がー!!」

伯爵令嬢は、顔に血の気がひいているのを自分でも感じた。

「ステラ、助けに行くぞ!
すべての部屋を開けて探すんだ!
ノックしても、居留守をするかもしれんからな!
部屋の中を、全部確認する。間違ったら謝ればいい!」

婚約者の指示に、なんて頼もしいの。
意外な一面だわ。
こんな、彼の本性を知れたなんて!

いけない、今は急がなくては…。
クロエ様の純潔じゅんけつが危ない!
もしかしたら、お嫁に行けなくなってしまう。
そんな事になったら、私はどうしたらいいの?!

  2人はまたもや息を切らし、階段を上がりきると部屋の確認を始めた。

「ねぇ、困ったわ!
居ないか、ひと違いばかりよ。
それに服をはだけていた人もいたし、見たくないモノを見た気分よ」

伯爵令嬢は、半泣きになりながらも部屋を調べていった。

「ここが最後だ!
彼女はここに居る。
覚悟はいいか、ノックするぞー!!」

婚約者がノックをしようとすると、中から男女の言い争う声がしてきた。

「この、この声はクロエ様よ!
早く行きますわよ!
クロエ様ー、助けに参りましたわぁ~!!」

絶叫して前に立つ婚約者を突き飛ばし、先に友人の伯爵令嬢が突入とつにゅうして部屋に。
部屋に押し入ると、クロエがワインボトルで男にりかける瞬間であった。

「うわぁ~ん、ステラ様!
この人、変態なのよ!
怖いよぉー~!!」

その状況を見て、2人はお前の方が怖いよ。
それで殴ったら、その人は死ぬと同時に思った。

「お前ら、勝手に入るな!
無礼者ぶれいものー!!」

男が、2人に向かい怒鳴り付けてきた。

「お前こそ!!
私たちの連れを、ここに連れ込んで何しようとしてんだぁー!」

「そうよ!まさか、この子の純潔か目当てだったの!
最低よ!悪魔!変態ー!!
許せませんわーー!!」

伯爵令嬢とは、思えない言葉でののしっている。

その騒ぎで、主催者の伯爵が護衛を連れて急ぎやって来た。

「き、貴様ー!
何故、我が屋敷にいるのだ?!
貴様は招待しておらんぞ!
不法侵入ふほうしんにゅうだ、捕らえよ~!!」

伯爵は男を指差し、護衛に命令をした。

3人は安心したのか、その場に座り込んだ。
女性たちは腰が抜けて、立つことも出来ない有り様だった。

 
  別室で3人は、男について伯爵に話をしていた。

「すみません。
私が信じて、ノコノコついて行ったのが悪いのです。
そんな恐ろしい方なんて…。
2人とも、助けに来てくれて有り難う。クズっ」

落ち着き冷静になると、恐怖がよみがえりたまらなくなり泣き始める。

「あれほど、ご注意したのにクロエ様のバカ!!
心配しましたのよ!
本当に良かったですわ、ご無事でー!!ウーッ!」

伯爵令嬢も安心したせいか、一緒に二人で泣き出した。

「生きた心地がしなかったよ。
まだ、心臓がドキドキしている。
本当に君が無事で安心した。
ステラもノマイユ侯爵令嬢も、泣かないで伯爵様もお困りだよ?!」

   それから少し落ち着いたら、3人は宿に戻って行った。

「泣いたり叫んだりしたので、お腹が空きましたわ!」

クロエの呑気のんきな話に、2人はあきれながらもつい笑い出した。

「あんな事がありましたのに、クロエ様は精神が図太ずぶといんですね。フフフ」

「久しぶりに動きまわり、お腹が空いたなぁ。
反省会を兼ねて食事をするか!
アハハハ」

「はい!食事をしたら気分も晴れるかも?
容姿ようしが良く、優しい方には注意しますわ。
怖い思いをしないと、わからないなんて。
駄目な私ですわね。
お二人には助けて頂き、感謝しきれません!」

彼女は反省して、二人に謝るのである。
初めての隣国の旅行は、ほろ苦い思い出となった。
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