28 / 59
第4章 婚活と未来への道
第5話 密談は休憩室で
しおりを挟む
メイドの休憩室に、彼はお菓子を持ってふらっと現れた。
「まぁ、ラファエル様。
ずいぶん久しぶりに、こちらにご訪問ですわね!」
幼い頃に相談にのってくれた彼女らは、もうすっかりいい年だ。
3人とも、ロベール伯爵家の従事する者たちと結ばれて子供たちもいる。
「うん、久しぶり。
これ、良かったら食べてよ!」
ラファエルは、クッキーの入った紙袋を照れながら渡す。
「有り難うございます。
ラファエル様も、御一緒にお茶を致しませんか?」
このロベール家は、メイドたちに優しい労働体制をしている。
他家のメイド達が聞いたら、泣いて代わってと言われるほどだ。
普通メイドたちは、休憩時間はまず無いに等しいのだ。
次期当主の若様に、メイドたちが飲むお茶を勧めるなんて有り得ない。
そのアットホームな態度の主人達に、仕える人たちは尊敬の念を持ち敬っていた。
「相談にのって欲しい。
父の機嫌のよい時を知りたいんだ。
私には、父の感情がわからない。
いつも普通すぎてね。
よく言えば温厚篤実、悪く言えば腹黒い!」
メイド達は腹黒はないだろう、まして実の父にと思う。
「若様、父上さまに対して腹黒はないですよ。
そうですね。
旦那様は、基本いつも平常心のお方です」
「ええ、ですから機嫌なんて関係ありませんよ。
正直にお話すれば、宜しいかと存じますよ。
若様は、何かおねだりをしたいのでしょうか?」
ラファエルに対して、幼い頃から見てるだけあって鋭い。
この3人のメイド達には、彼は頭があがらなかった。
「君たちには負けたよ。
私は宝石商になる勉強をしたいのだ。
もう王都にある宝石店の方が、親から承諾を貰えたら教えてくれる話はついてる」
この話には、3人のメイド達がかなり驚いた顔をした。
「若様、それは無理ではないかと思いますよ」
「ラファエル様は、次期伯爵になられるのに宝石商なんて駄目ですわ!」
「お話を聞き、心臓が止まりそうになりましたよ。
変なご冗談を言わないで下さいませ!」
ラファエルはこの3人だから話したのに、信じてくれないし頭ごなしに反対にするわでムッとするのである。
「子供の頃からの夢だ!
ドレスを着れなくなり、せめて宝石をと思ったからだ。
どうして、伯爵と宝石商が両立出来ないと思うのだ!
まだ、何もしていないではないか!」
ラファエルの本心に、3人はビックリしてそれから笑い出した。
「ホホホ、では伯爵にはなるんですね!」
「それなら賛成ですわよ。
ラル様が伯爵様を継ぎさえすれば!!」
「私たちは、若様が御当主になるのを願ってますのよ。
でも、ドレスをまだ諦めてなさそうなお顔をしてますわね。フフフ」
ラファエルは3人を見て、少し照れ笑いをした。
「ねぇ、よく見てよ。
私の方がドレス似合いそうじゃない。
そこら辺の本物の令嬢よりもね。
貴女達も、本当はそう思うでしょう?」
若様のひさびさの女言葉に、ますます笑い出すメイド達であった。
夕食は静かであった、誰か何か朗らかになる話題を提供してくれないかなぁ。
ラファエルは、この後に父に相談する決心をしていた。
「そうですわ。
確か今頃は、ノマイユ侯爵令嬢が隣国のザィールでパーティーに出席されてるはずですわ」
母アリシアは、思い出したように話題を出してきた。
「あらっ?お母様、本当!
まぁ、今日でしたわね。
素敵な出会いがあると宜しいのですが?!」
「あんなに、ご令嬢は美しくて愛らしいんですもの。
今頃は殿方にダンスでも、申し込まれてますわよ」
長女エミリーが話に続くと、次女シモーヌも話に続く。
「私も二人の娘を持つものとして、侯爵令嬢のお幸せを祈るよ。お前達も、自分の婚約者を大切にしなさい」
父モーリスは娘に諭すように言い、微笑んで娘たちを見る。
「父上、お願いがございます。
食後に、私のお話を聞いては頂けませんか?」
ラファエルは今だと思い、父モーリスに話しかける。
「なんだラファエル、この場では言えぬことなのか?」
父は息子の緊張した表情を見て、疑念が湧くのである。
「いえ、ですが。将来に関する事でして、二人きりでゆっくりと話がしたいのです」
母アリシアも気になるのか、話に割って入ってきた。
「ラル、私たちも家族ですよ。
話せるならここで話しなさい。
何を聞いても驚きませんよ」
母はこう言うが、絶対に驚くに決まっている。
ラファエルは、どうせ反対されるなら一気にまとめた方がよいと判断する。
彼は見かけ女性ぽいが、性格は結構男らしく潔い性格をしていたのだ。
「父上、私は宝石鑑定人になりたいのです。
勿論、伯爵の跡継ぎとして勉強も致します。
学園に通う間は、自由にさせては頂けませんでしょうか?」
長男の衝撃的なお願いに、皆は食事中の手がとまり静まる。
「お前、何故知ってるのだ!
頭の良いお前だ。
まさか領地に、ルビーが出た事を知っているとは。
自分で調べたのか、ラファエル!」
ラファエルは一瞬、父の言葉を呆然と聞いていた。
はい?ルビーって何のこと?
「もしかしたらと思っておりました。
あの地形で鉱物が出るのではと思ってましたが、やはり出ましたか。ハハハ」
ラファエルは、嘘も方便で適当に話を合わせてみた。
私って、もしかしてもしかしたら強運の持ち主なのねー!!
驚きと笑いを、堪えるのが辛過ぎる。
神様は、私を見ていらっしゃるのね~!!
「コホン!
王都にある宝石店ブリエの責任者が、親の承諾を貰えたら宝石鑑定を教えて下さるそうです!」
父モーリスは、息子の先見の明に驚きを隠せない。
こいつは天才だ、それもブリエとな。
ブリエは、この国1番の宝石店ではないかー!
「許可するぞ!
次期当主が、宝石鑑定が出来れば価値を不当にするのは無理だ。
ラファエル、お前は若いのに凄い。
私が14歳の頃は、ただ父の言いなりだった」
「この母も、お前の能力には言葉がありません。
しっかりと頑張るのですよ!」
「お兄様は私の自慢です。
学園でも、お兄様は優秀だと皆が言っております!」
可愛い弟セドリックの純粋な瞳に、ラファエルは顔をひきつるのである。
おおっ神よ、お許し下さい。
必ずやこのご恩を、いつの日か良い行いでお返し致します。
ラファエルは、難なく自分の目的を達成したのであった。
遥か遠く国で、婚約者を探している。
ノマイユ侯爵令嬢はどう過ごしているのか。
ロベール伯爵家は、ラファエルの話題ですっかり忘れていたのであった。
「まぁ、ラファエル様。
ずいぶん久しぶりに、こちらにご訪問ですわね!」
幼い頃に相談にのってくれた彼女らは、もうすっかりいい年だ。
3人とも、ロベール伯爵家の従事する者たちと結ばれて子供たちもいる。
「うん、久しぶり。
これ、良かったら食べてよ!」
ラファエルは、クッキーの入った紙袋を照れながら渡す。
「有り難うございます。
ラファエル様も、御一緒にお茶を致しませんか?」
このロベール家は、メイドたちに優しい労働体制をしている。
他家のメイド達が聞いたら、泣いて代わってと言われるほどだ。
普通メイドたちは、休憩時間はまず無いに等しいのだ。
次期当主の若様に、メイドたちが飲むお茶を勧めるなんて有り得ない。
そのアットホームな態度の主人達に、仕える人たちは尊敬の念を持ち敬っていた。
「相談にのって欲しい。
父の機嫌のよい時を知りたいんだ。
私には、父の感情がわからない。
いつも普通すぎてね。
よく言えば温厚篤実、悪く言えば腹黒い!」
メイド達は腹黒はないだろう、まして実の父にと思う。
「若様、父上さまに対して腹黒はないですよ。
そうですね。
旦那様は、基本いつも平常心のお方です」
「ええ、ですから機嫌なんて関係ありませんよ。
正直にお話すれば、宜しいかと存じますよ。
若様は、何かおねだりをしたいのでしょうか?」
ラファエルに対して、幼い頃から見てるだけあって鋭い。
この3人のメイド達には、彼は頭があがらなかった。
「君たちには負けたよ。
私は宝石商になる勉強をしたいのだ。
もう王都にある宝石店の方が、親から承諾を貰えたら教えてくれる話はついてる」
この話には、3人のメイド達がかなり驚いた顔をした。
「若様、それは無理ではないかと思いますよ」
「ラファエル様は、次期伯爵になられるのに宝石商なんて駄目ですわ!」
「お話を聞き、心臓が止まりそうになりましたよ。
変なご冗談を言わないで下さいませ!」
ラファエルはこの3人だから話したのに、信じてくれないし頭ごなしに反対にするわでムッとするのである。
「子供の頃からの夢だ!
ドレスを着れなくなり、せめて宝石をと思ったからだ。
どうして、伯爵と宝石商が両立出来ないと思うのだ!
まだ、何もしていないではないか!」
ラファエルの本心に、3人はビックリしてそれから笑い出した。
「ホホホ、では伯爵にはなるんですね!」
「それなら賛成ですわよ。
ラル様が伯爵様を継ぎさえすれば!!」
「私たちは、若様が御当主になるのを願ってますのよ。
でも、ドレスをまだ諦めてなさそうなお顔をしてますわね。フフフ」
ラファエルは3人を見て、少し照れ笑いをした。
「ねぇ、よく見てよ。
私の方がドレス似合いそうじゃない。
そこら辺の本物の令嬢よりもね。
貴女達も、本当はそう思うでしょう?」
若様のひさびさの女言葉に、ますます笑い出すメイド達であった。
夕食は静かであった、誰か何か朗らかになる話題を提供してくれないかなぁ。
ラファエルは、この後に父に相談する決心をしていた。
「そうですわ。
確か今頃は、ノマイユ侯爵令嬢が隣国のザィールでパーティーに出席されてるはずですわ」
母アリシアは、思い出したように話題を出してきた。
「あらっ?お母様、本当!
まぁ、今日でしたわね。
素敵な出会いがあると宜しいのですが?!」
「あんなに、ご令嬢は美しくて愛らしいんですもの。
今頃は殿方にダンスでも、申し込まれてますわよ」
長女エミリーが話に続くと、次女シモーヌも話に続く。
「私も二人の娘を持つものとして、侯爵令嬢のお幸せを祈るよ。お前達も、自分の婚約者を大切にしなさい」
父モーリスは娘に諭すように言い、微笑んで娘たちを見る。
「父上、お願いがございます。
食後に、私のお話を聞いては頂けませんか?」
ラファエルは今だと思い、父モーリスに話しかける。
「なんだラファエル、この場では言えぬことなのか?」
父は息子の緊張した表情を見て、疑念が湧くのである。
「いえ、ですが。将来に関する事でして、二人きりでゆっくりと話がしたいのです」
母アリシアも気になるのか、話に割って入ってきた。
「ラル、私たちも家族ですよ。
話せるならここで話しなさい。
何を聞いても驚きませんよ」
母はこう言うが、絶対に驚くに決まっている。
ラファエルは、どうせ反対されるなら一気にまとめた方がよいと判断する。
彼は見かけ女性ぽいが、性格は結構男らしく潔い性格をしていたのだ。
「父上、私は宝石鑑定人になりたいのです。
勿論、伯爵の跡継ぎとして勉強も致します。
学園に通う間は、自由にさせては頂けませんでしょうか?」
長男の衝撃的なお願いに、皆は食事中の手がとまり静まる。
「お前、何故知ってるのだ!
頭の良いお前だ。
まさか領地に、ルビーが出た事を知っているとは。
自分で調べたのか、ラファエル!」
ラファエルは一瞬、父の言葉を呆然と聞いていた。
はい?ルビーって何のこと?
「もしかしたらと思っておりました。
あの地形で鉱物が出るのではと思ってましたが、やはり出ましたか。ハハハ」
ラファエルは、嘘も方便で適当に話を合わせてみた。
私って、もしかしてもしかしたら強運の持ち主なのねー!!
驚きと笑いを、堪えるのが辛過ぎる。
神様は、私を見ていらっしゃるのね~!!
「コホン!
王都にある宝石店ブリエの責任者が、親の承諾を貰えたら宝石鑑定を教えて下さるそうです!」
父モーリスは、息子の先見の明に驚きを隠せない。
こいつは天才だ、それもブリエとな。
ブリエは、この国1番の宝石店ではないかー!
「許可するぞ!
次期当主が、宝石鑑定が出来れば価値を不当にするのは無理だ。
ラファエル、お前は若いのに凄い。
私が14歳の頃は、ただ父の言いなりだった」
「この母も、お前の能力には言葉がありません。
しっかりと頑張るのですよ!」
「お兄様は私の自慢です。
学園でも、お兄様は優秀だと皆が言っております!」
可愛い弟セドリックの純粋な瞳に、ラファエルは顔をひきつるのである。
おおっ神よ、お許し下さい。
必ずやこのご恩を、いつの日か良い行いでお返し致します。
ラファエルは、難なく自分の目的を達成したのであった。
遥か遠く国で、婚約者を探している。
ノマイユ侯爵令嬢はどう過ごしているのか。
ロベール伯爵家は、ラファエルの話題ですっかり忘れていたのであった。
10
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
大好きなあなたを忘れる方法
山田ランチ
恋愛
あらすじ
王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。
魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。
登場人物
・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。
・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。
・イーライ 学園の園芸員。
クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。
・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。
・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。
・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。
・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。
・マイロ 17歳、メリベルの友人。
魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。
魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。
ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。

【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中


一番悪いのは誰
jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。
ようやく帰れたのは三か月後。
愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。
出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、
「ローラ様は先日亡くなられました」と。
何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・

働かなくていいなんて最高!貴族夫人の自由気ままな生活
ゆる
恋愛
前世では、仕事に追われる日々を送り、恋愛とは無縁のまま亡くなった私。
「今度こそ、のんびり優雅に暮らしたい!」
そう願って転生した先は、なんと貴族令嬢!
そして迎えた結婚式――そこで前世の記憶が蘇る。
「ちょっと待って、前世で恋人もできなかった私が結婚!?!??」
しかも相手は名門貴族の旦那様。
「君は何もしなくていい。すべて自由に過ごせばいい」と言われ、夢の“働かなくていい貴族夫人ライフ”を満喫するつもりだったのに――。
◆メイドの待遇改善を提案したら、旦那様が即採用!
◆夫の仕事を手伝ったら、持ち前の簿記と珠算スキルで屋敷の経理が超効率化!
◆商人たちに簿記を教えていたら、商業界で話題になりギルドの顧問に!?
「あれ? なんで私、働いてるの!?!??」
そんな中、旦那様から突然の告白――
「実は、君を妻にしたのは政略結婚のためではない。ずっと、君を想い続けていた」
えっ、旦那様、まさかの溺愛系でした!?
「自由を与えることでそばにいてもらう」つもりだった旦那様と、
「働かない貴族夫人」になりたかったはずの私。
お互いの本当の気持ちに気づいたとき、
気づけば 最強夫婦 になっていました――!
のんびり暮らすつもりが、商業界のキーパーソンになってしまった貴族夫人の、成長と溺愛の物語!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる