【完結】君はバラより美しく!     ドクダミよりもたくましい?

愚者 (フール)

文字の大きさ
上 下
25 / 59
第4章 婚活と未来への道

第2話  恩人との出会い

しおりを挟む
  彼は以前に、馬車の中で発見した例の宝石店に入って行った。

「いらっしゃいませ。
どんなモノをお探しですか?!」

店員がラファエルを、客だと思い声をかけてくる。
どうしょうか、客のふりして店内の宝石だけ見てみよう。

「すみません。
姉の誕生日祝いを探しています。
ちょっと、参考に見てみても宜しいですか?」

店員は可愛らしい少年に、笑顔で静かに見るならと許可をくれた。

ラファエルは静かに礼を述べると、宝石を見始める。
ここにいる方は、どうやって宝石の勉強をしたんだろうか?
代々の家柄で、継承していたりするのかな。

凄く綺麗な品ばかり、でもどんな宝石が上等なのかいまいち判断できない。
色が付いたものは、濃いのが高いんだよね。
やはり微妙に、一点一点が濃さ違うようだ。
後は輝きか、カットの仕方で別物になる。

あんなに偉そうにあの令嬢に説教して、自分は宝石を見るしか出来ないなんてなさけないな。
ラファエルは、今まで何事も順調だった。
初めて、自分自身に挫折感ざせつかんを味わっていた。

「やぁ君、ずいぶん熱心に宝石を眺めているね!」

1人の紳士が、ラファエルに話しかけてきた。

「すみません、あまりにも綺麗で美しくて魅了されました。
どうしたら、宝石鑑定人になれるのだろう?」

ラファエルは、つい本音がぽっりと口から出てしまった。

「宝石鑑定士になりたいのか?!
なら、親御さんの承諾しょうだくがいるな。
君は、まだ成人前の学生さんだよね」

ラファエルは、この人は店の関係者かと推測すいそくした。

「はい、14歳でまだ学生です」

ラファエルがそう話すと、黙って初老の紳士はうなく。

そして、宝石店の奥に私を案内してくれた。

「まぁ、座りたまえ。
私は、ここの店を預かっている者だ。
名はピエール。
私は、実は平民でね。
昔、窓先に飾ってあった宝石を毎日眺めていたんだ。
ある時責任者に声をかけられて、店内の掃除から始まりこの地位についたんだよ」

懐かしそうに、ラファエルに自分の事を話してくる。

「そうだったんですか。
私は、すっかり元から代々の跡継ぎかと思いました」

ピエールは、笑ってラファエルの素性を今度は聞いてきた。

「う~ん見た感じ、平民ではなさそうだなぁ。
着ているものが、かなり上等だ。君は、もしかして貴族かね?」

ピエールは職業がら、身分を当てる感覚が鋭かった。

ラファエルは、正直に全てを話してみるつもりでいた。
これは神が、私に与えた機会だと思ったからだ。

「名前はラファエル・ロベールです。
ロベール伯爵家の長男です。
将来は伯爵家を継ぐように言われてますが、私は弟を伯爵にと考えております。
宝石商になり、色々な国へ行き沢山の宝石たちと出会いたいのです」

ラファエルは、初めて将来の夢を語った。

父でもなく、家族でもない。
今日、初めて出会った赤の他人だ。

「伯爵か、平民の私では想像出来ない身分の世界だな。
なにも伯爵を、弟さんに渡さなくてもいいんではないかなぁ。
君が両立すればいいさ。
宝石商になっても、稼げる保証はないよ。
保険に、伯爵の地位を持っていればいい」

ラファエルは、ピエールの柔軟な考えに驚いた。
そんな事を思い付きもしなかったからだ。
確かに宝石商になった時に、伯爵の地位は信用される。

「なりたいです、両方。
自分に出来るかはわからない。
でも可能性があるなら、試してみたいです」

ピエールの顔を真剣に見ながら、自分の思いを語る。

「いい目をしてるね。
きっと、私も君と同じ目をしていたんだな。
私も昔、同じ言葉を恩人に言った事があるんだよ」

ラファエルは、彼の話を理解した。
私は、昔の彼と一緒なんだと。

「お願いします。
どうか、宝石について教えてくれませんか?
私に出来る事なら、何でも手伝いますから!」

ラファエルは、ピエールに頭を下げた。

「頭をあげなさい。
先ずは親御さんの承諾を貰ったら、また来なさい。
約束しよう、私が君を一からきたえて一人前にしてあげるよ」

ラファエルは未来が開けて嬉しさを隠しきれずに、ピエールに明るく返事をする。
その時はピエールの嬉しい申し出に、嬉しくてそれ以上考えられなかった。

  しかし、家に帰り独りになると現実に戻った。

父のモーリスは、自分からこの話を聞いてどう思うのだろうか?!
次期伯爵が宝石鑑定士になりたいなんて、自分なら馬鹿げた事を言うなと怒鳴ると思う。

部屋の窓ガラスに映る自分の顔は、暗く沈んだ表情があった。
そんな窓に写るもう一人の自分に、心から問うのだった。

「お前は、あきらめるのか…。夢を…」

そんな事を考えて、彼は自然と口から言葉が出た。


    
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

大好きなあなたを忘れる方法

山田ランチ
恋愛
あらすじ  王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。  魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。 登場人物 ・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。 ・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。 ・イーライ 学園の園芸員。 クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。 ・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。 ・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。 ・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。 ・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。 ・マイロ 17歳、メリベルの友人。 魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。 魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。 ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

働かなくていいなんて最高!貴族夫人の自由気ままな生活

ゆる
恋愛
前世では、仕事に追われる日々を送り、恋愛とは無縁のまま亡くなった私。 「今度こそ、のんびり優雅に暮らしたい!」 そう願って転生した先は、なんと貴族令嬢! そして迎えた結婚式――そこで前世の記憶が蘇る。 「ちょっと待って、前世で恋人もできなかった私が結婚!?!??」 しかも相手は名門貴族の旦那様。 「君は何もしなくていい。すべて自由に過ごせばいい」と言われ、夢の“働かなくていい貴族夫人ライフ”を満喫するつもりだったのに――。 ◆メイドの待遇改善を提案したら、旦那様が即採用! ◆夫の仕事を手伝ったら、持ち前の簿記と珠算スキルで屋敷の経理が超効率化! ◆商人たちに簿記を教えていたら、商業界で話題になりギルドの顧問に!? 「あれ? なんで私、働いてるの!?!??」 そんな中、旦那様から突然の告白―― 「実は、君を妻にしたのは政略結婚のためではない。ずっと、君を想い続けていた」 えっ、旦那様、まさかの溺愛系でした!? 「自由を与えることでそばにいてもらう」つもりだった旦那様と、 「働かない貴族夫人」になりたかったはずの私。 お互いの本当の気持ちに気づいたとき、 気づけば 最強夫婦 になっていました――! のんびり暮らすつもりが、商業界のキーパーソンになってしまった貴族夫人の、成長と溺愛の物語!

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...