【完結】君はバラより美しく!     ドクダミよりもたくましい?

愚者 (フール)

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第4章 婚活と未来への道

第1話  ステラの婚約者

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 クロエは、友人とその婚約者とメイド達を引き連れて隣国ザィールを訪れている。

年末に友人の婚約者が、知り合いになったザィールの伯爵の屋敷でのパーティーに招待を受けていた。
そこには、大勢の人々がつどうようだ。

「クロエ様。身元がしっかりした方々ですから御安心下さい。
私たちが、近くにおりますからね」

友人の伯爵令嬢が、クロエを気づかってくれる。

「はい、この度は誘って頂き有り難うございます。
伯爵令息もご無理言い、本当にすみません。
あつかましく、一緒に付いて来てしまいまして…」

侯爵令嬢が申し訳なさそう話すと、前から軽快けいかいな笑い声がしてきた。

「アハハハ、いやいや失礼。
噂では第2王子のご執心しゅうしんのご令嬢に嫌がらせをしてると伺いました。
それは誤解だったんですな。
素敵な殿方との、良い出会いがあるといいですね」

友人の婚約者は、3歳年上で包容力ほうようりょくを感じた。
やはり、年上の方は頼りがいがありますわ。

ザィールの町並みも、祖国とはそんなには変わりはない。
言葉が違うだけで、なんだか異国情緒があるわね。

私の知らない世界が、目の前に広がっている。
彼女は初めての外国に、心が浮き立つのであった。

ザィールの伯爵がクロエ達に泊まるように誘ってくれたが、せっかく他国に来たので宿をとることにした。
コチラの伯爵が手配してくれたので、ザィールでも有名な由緒正しき宿。

「クロエお嬢様、立派なお宿ですわね。
今日は観光に行かれる予定ですが、私も付き添わなくて宜しいのですか?」

メイドは、馬車酔いをして顔色が良くなかった。

「大丈夫よ、貴女はここで休んでなさい。
1人ではないのだから、安心して寝てなさいね」

そう言うと、メイドを安心させて静かに部屋を出た。

 彼女は友人とその婚約者とで、有名な場所を観光めぐりをした。

カフェでお茶をしてたら、水を少しこぼし手をく。
うっかり、ラファエルの刺繍したハンカチを使ってしまう。

クロエは何故か、そのハンカチと普段使いの2枚を持ち歩いていたのだ。

「素晴らしい刺繍ししゅうですな。
ノマイユ侯爵令嬢が作られたのですか?」

婚約者殿が、クロエのハンカチの薔薇の刺繍に目を奪われた。

「あっ、いいえ。
友人から、もらいましたの。
他の方が見られても、そんなに出来が素晴らしいのかしら?!」

友人も婚約者の話に、ハンカチを見せてとクロエに話しかける。

「まぁ、凄いわ!
まるで、本物の薔薇が咲いてるみたい。
ここまで細かく繊細に刺せるなんて!
根気こんきがいるし、まさに職人並みですわよ」

友人のめ言葉に、クロエはこれには驚く。
これを男性が作ったなんて、言っても信じてくれないわよね。

「ねぇ、クロエ様。
この刺繍をされた方を、私にも御紹介して下さい。
ぜひとも、先生になってほしいですわ。
きっと、素敵な素晴らしい貴婦人なんでしょう!」

友人の話に、クロエの表情がひきつる。

「いいではないか!
君の友人に、こんな素晴らしい刺繍ができる方が加わるなんて!
ノマイユ侯爵令嬢、私からも宜しく頼むよ」

どうしましょう、本当の事を話した方がいいのかしら?!
嘘をどうつけばいいのか、クロエは手に汗をかいていた。

「き、貴婦人ではないの。
駄目だわ、私は嘘をつけない。
だから、ここだけの話にして下さいませね。
他言無用たごんむようですわよ!」

クロエを見て二人は、何かを不思議に感じる。

「こ、これを刺繍された方は…。男性の方です。
お姉様たちと幼い頃に、妹ごっこ遊びで一緒に刺繍を習ったそうですわ」

クロエは、ついラファエルの事を言ってしまった。

「えーえっ、男性なのですか?
この素晴らしい刺繍を、男性がー!」

「男の方がこの繊細な薔薇をー!どんなお方ですの、クロエ様!」

二人は興味津々きょうみしんしんで、クロエの返事に目を輝かせた。   
まだお聞きになるの、これでお仕舞しまいいではないの~!!

「えーと、年下の方です。
とても可愛らしくて、ドレスをもし着たらまさしく令嬢ですわ!」

クロエは日頃ラファエルに思っていた感想を、二人に素直に語ってしまう。

「年下ですの?
それも、ドレスが似合う方?
もしかしたら、ラファエル・ロベール伯爵令息ではない!?」

クロエの友人は、もの凄く勘が鋭かった。

最近クロエとご訪問した、ロベール伯爵家。
確か今回の旅行をすすめたのも、結果報告もしたいと言っていた友人。

間違いない、ラファエル様はひそかに皆から天使と呼ばれている美少年。

「なんで、私は一言も名前を仰ってませんわ。
ステラ様、どうしてすぐにわかりますの?」

クロエは真実を告げないまま、答えを話し出したのである。

「なるほど、あのロベール伯爵令息か。
姉上たちには、それは優しいと評判だ。
ありえるな、妹ごっこね」

婚約者殿も、ラファエルの姿を思い出し納得をする。

「しかし、くやしいわね。
男性でここまでの腕前ですもの。クロエ様もでしょう?
クロエ様、刺繍は失礼ですけど下手ですわ。
私も普通だから、何も言えないけどね」

なかなか手厳しい指摘をする友人に、クロエは自分の刺繍の話をする。

「このハンカチをお借りしたので、代わりに私が薔薇の刺繍をしたハンカチを御礼に贈りましたの」

クロエは話すと、赤い顔をしてうつむいた。

「それは喜ばれたのでは?
こんな美しいご令嬢から、手作りで贈られたのだから!」

婚約者殿が話すと、クロエは眉間にシワを寄せて言い返してきた。

「ちっとも喜んでません。
ハンカチを見て、鼻で笑うかのように言いましたの。
個性的な薔薇ね。
有り難うと、取ってつけたようなお礼を言われましたわ!」

それを聞いて友人の伯爵令嬢は、笑いをえながらクロエに言う。

「まぁまぁ、正直なお方ね。
確かにクロエ様とロベール伯爵令息のでは、薔薇と雑草ほどに違いますわよ。
あ、これは失礼致しました」

友人だからの本音なのか、聞いていたクロエは思わずムッとしてしまう。

「驚いたことにダンスも女性パートも出来るし、お料理やお菓子も完璧ですわ。
そしてラファエル様は、高笑いして私にこう仰ったわ。
そこらの令嬢には負けないわ~と!
私は正真正銘しょうしんしょうめいの女性なのに、完全に負けましたの!」

これを聞いていた二人は、口をポカーンと開けて興奮したクロエを見ていたのだ。

どうやら声が目立ったのか、周辺の客は聞き耳を立てて聞いていた様子。

彼女はそれに気づくと、ますます羞恥心しゅうちしんで顔が赤くなるのである。
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