【完結】君はバラより美しく!     ドクダミよりもたくましい?

愚者 (フール)

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第3章 子猫の飼い主さん

第4話  ブチ切れラファエル

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  黙々と集中して真剣に勉強していると、外から扉を叩く音がした。
もう、勉強をしてるのに何なのよ。
扉を開けると、メイドが1人立っている。

「どうしたの、勉強してる時はほっといてと言ってるぞぉ!」

ラファエルは強く男言葉を使うが、似合ってなく滑稽こっけいであった。

「奥様が、至急居間にお呼びです。ラファエル様!」

「私は、疲れて寝てるみたいと伝えなさい。
ノックしても返答がなかったとね。いいわね!」

ラファエルは、そう話すと扉を閉めようとした。

「お待ち下さい!
皆さん、困っておられまして行ってあげて下さい。
どうかお願いします!」

メイドが、ラファエルに頭を下げながら嘆願たんがんしだした。

「貴女、あの令嬢に何を言えって言うのよ。
あの方は姉たちが連れて来たの。私は何の関係ないのよ、わかる?」

「聞きたくないですが、聞こえてしまいました。
お嬢様の婚約者まで、ノマイユ侯爵があの令嬢の婚約者リストに入れたそうです。
令嬢から父上にあたる侯爵に、断るように頼んだ会話をしてました」

「何よそれは!
人の婚約者にまで、手を伸ばそうとしたの?
汚いわね、やり方が…。
ちょっと身分の高い奴は、だから気に入らないのよ!
行くわよ、あの令嬢にハッキリ言ってやらないとね!」

ラファエルの怒りの態度を見て、メイドは焦っていた。

「ラファエル様、私が話したのは内密に願います」

メイドはペコペコ頭を下げて、ラファエルに頼んでいる。

「言わないわよ。
姉たちも、どうして災難を自分たちで呼び寄せるのかしら?
お人好しも、そろそろ卒業して欲しいわよ。
ねぇ、貴女もそう思わなくって?!」

ラファエルが言いながらメイドを睨むと、メイドもそう思ったのか気まずそうに頷く。

 ラファエルが、居間に不機嫌な顔で姿を現した。

母アリシアが、隣に座るように空いた場所を軽く叩いた。

「ラファエル。貴方のクラスメートたちの中で、ノマイユ侯爵令嬢にご紹介出来そうな殿方がいらっしゃるかしら?」

母の話に、ラファエルは呆れて憤慨ふんがいした。

「母上、私と友人達の仲を悪くさせるのですか?
だいたい自分の伴侶も、探せないとは情けない。
お・こ・と・わ・りします!」

ラファエルの痛烈な否定に部屋が静まり返ると、微かに泣き声がしてきた。

「す、すみません。
ロベール伯爵令息の仰る通りですわ。
私ったら、他家で何を話してるんでしょう。
どうか、今日の事はお忘れになって下さいませ!」

「ノマイユ侯爵令嬢、外国語は何ヵ国を話せますの?」

ラファエルの突然の質問に、女性たちは目を丸くする。
何の関係があるのか不思議がって考えていると、侯爵令嬢が話す。

「アルゴラ、ウィルスターはそこそこ。
ザィールは、完璧とは言えません。
ですが、会話はなりたちますわ」

その答えにラファエルは、大きく頷くとキッパリといい放った。

「では何処の国でも良いから、学園の休みに行って探しなさいよ。
貴女の伴侶を自分自身でね。
もう、それしかないわ。
覚悟を決めなさいよね。
自分で動かなきゃ、幸せはやって来ないのよ!
わかったかしら?」

ラファエルの言うことは正しかった。
正しいからこそ、痛烈な意見にクロエは心が痛むのだった。

ロベール家の女性たちも自分の息子、弟の話に納得するしかない。

流石さすがは女心を持つ男の強さを感じ、未来のロベール伯爵は大丈夫だと母は安心をする。

 クロエは悩んだ。
外国なんて行ったことがない。

1人で行って、どうやって殿方に何を話せばいいかわからない。
絶対に無理ではないだろうか。

いつもパーティーでは、兄がエスコートしてくれた。
私は兄の横にいて、笑っていただけだわ。

「あの~、一緒に行っては頂けませんでしょうか?」

4人はこの令嬢は、この中の誰を誘ってるの?

ロベール家の家族たちは、目で探りあっている。

「ロベール伯爵令息は、外国のお言葉を話せますでしょう?
お願いします!」

はぁ~、嘘でしょう!?

普通は常識的に考えて、男なんて誘わないわよ。
私が女の子みたいに、可愛いから勘違いしてるの?

まあね、そこらの不細工な女の子より私の方が全然上だしね。

「ノマイユ侯爵令嬢、私はこれでも男なのよ。
そりゃ可愛くて美しいけど、私にドレスを着て付き添えって仰るの?
貴女にも、お友達がいるんでしょう。
その子と観光がてら探しなさいよ。
もう、甘えんじゃないわよぉー!」

ラファエルは女言葉を炸裂さくれつして、侯爵令嬢に怒鳴りつけた。

「すみません、あまりにも女性っぽくって勘違いしました。
そうですよね、変ですわね。
クスクス」

クロエの話の内容と笑い声に、ラファエルは真面目にキレた。

「貴女ね、これじゃ父親も大変よ。
娘がこんなにボケボケではね。
しっかりした年上をと思うのは、当たり前!
あんたは、後妻が良くお似合いよ。
甘やかしてくれるもの。
母上、姉上たち!
もう私を呼ばないで、勉強が大変なのよ。
わかるでしょう?
私は普通の学生ではない、2学年も上と勉強してるのよ!
そういう訳で、部屋に戻るわね!」

ラファエルはそう言うだけ言う
と、部屋を出てしまった。

部屋の中に残された4人は、微妙な空気に襲われていた。
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