【完結】君はバラより美しく!     ドクダミよりもたくましい?

愚者 (フール)

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第2章 不思議な花壇と捨てられた子猫

第6話  可哀想な捨て猫

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 部活動の時間になり、彼は先生から園芸部として使わない部屋を借りることになった。

汚れていい服に着替え、エプロンを上からつけた。
靴も長靴に代えるためくわと一緒に持つ、首には汗を拭く手ぬぐいに帽子をかぶった。

奇妙なのか好奇心の目線を感じつつ、あの花壇に真っ直ぐに向かう。
季節は秋になりドクダミの白い花はなく、葉っぱだけがいっぱいに植わっている。

これは確かに、やりがいがあるな!

冬前には終わらせたい、ラファエルは花壇に入ると鍬を地面に打ちつけた。
硬い土に掘るのに、手がしびれてくる。

これは掘るのに時間がかかる。
根が何処まで下なのかも、全くわからない。
地道にいくしかないと、ラファエルは覚悟を決めた。

ただドクダミと土しか目に入らない集中力で、周りが変な目で見ていても気にならなかったのである。

「ラル、馬車が迎えに来てるわよ!
まぁ貴方、汗だくじゃない?!」

「このにおいがドクダミね。確かに臭うわ。
さぁ、今日はもう終わりにしなさい!」

姉たちの呼びかけに、やっと気づいたようだ。

「ゴメン、夢中になってたよ。
直ぐにかたすから、近くのベンチに座って待っていて下さい」

彼は、急いで着替えに部室に行った。

馬車でラファエルに、何度も声を掛けたのに気づかない事に驚いていた。 

「今度からは少し周りを見て、のんびりやりなさいな」

「あなた見ていて、怖かったわよ」

弟の鬼気迫る姿に、姉妹は驚き暫くは作業を見ていたのだった。

「すみません、少しムキになりました」

帰りの馬車は窓を開けても、かすかにドクダミの香りがただっている。

姉妹は仕方無く、カワイイ弟の為にその匂いを我慢がまんすることにした。

 入学当時から首席だったが、2学年も飛び級なのでトップをとるのが難しかった。
周辺も、そこは理解を示していた。
彼はそれなりに努力をして、学年で3番にまでなっていった。

ドクダミとの戦いは、あれから2ヶ月で2/3まで除去している。

季節は11月の半ばになっていた。
週2日の2時間では、かなり頑張っていると自分に言い聞かせていた。

 ラファエルは姉たちを待たせないように、早めに道具を片づけ始めた。

 すると、どこからか猫らしき声が聞こえる。
なんだか気になり、鳴き声のする方へ足を向ける。

鳴き声が弱々しくて聞いていて、自分の胸がドキドキしてきた。
大丈夫かなぁ、死にかけてないよね。

木の下で丸まってる、白っぽい子猫が泣いていた。

「みゃ~、みゃ~」

ラファエルは、少し汚れている子猫を抱き抱える。
見ると、綺麗な青いリボンを首に巻いてあった。

「お前は男の子なんだ。
お腹が空いてるんだね。
可哀想に、屋敷に戻ったらミルクあげるからもう少しだけ頑張ってね!」

ラファエルが話しかけると、猫はみゃ~とか細く返事を返した。

「お待たせしました。
お姉様たち!!」と、話すと腕の中に大人しくいる子猫が鳴いた。

「あらまぁ、その子猫はどうしたの?!」

長女エミリーは、弟の腕の中をのぞく。
 
「この子、飼い猫だったのかしらね。
綺麗で上等そうな、リボンを付けているわ!」

次女シモーヌも、一緒に覗いて話しかけた。

帰りの馬車の中では、話題はすっかり子猫になっていた。

「花壇で作業していたら鳴き声がしたので、行ってみたら木の下にいたのです。
あまりに弱々しくて、つい連れてきてしまいました」

子猫は目をつぶり、静かにラファエルに抱かれて寝ていた。

「学園の中で、誰かが飼っていたのかもね。
ラル、屋敷に連れ帰ってお父様やお母様が何て仰るかしら?!」

「我が家では、動物を飼った事がないわ。
お二人とも、生き物をお嫌いなのかもしれないわよ!」

姉たちは、ラファエルに色よい返事を揃ってしなかった。

「お姉様たち、飼えないなら飼い主を探します。
それまで屋敷に置いてくれるように、一緒に頼んでくれませんか?どうか、お願い致します」

ラファエルが子猫のために、姉たちに頭を下げるのだった。

滅多めった我儘わがままを言わず、幼い時は自分たちの太った体型をせるために力を貸してくれた弟。

姉妹は、今こそラファエルに恩返し出来ることを心から喜ぶのである。
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