【完結】君はバラより美しく!     ドクダミよりもたくましい?

愚者 (フール)

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第2章 不思議な花壇と捨てられた子猫

第4話  不思議な花壇

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 新学年になり弟セドリックが、学園に入学する。
緊張気味で、末っ子は朝食を皆でとっていた。

「セドリック、全然食べてないではないか。
そんなんでは、授業中にお腹が空くぞ!」

父のモーリスは、食が進まない1番下の子を気にして注意した。

「父上、セドリックは学園が初日で緊張してるんですよ。
あめ玉でも持って行きなさい。
休み時間に、お腹が空いたら食べてね。
誰かに言われたら、喉が痛いからと言えば許してくれるよ」

ラファエルは、小さい自分用の飴を1つ渡した。

「ラル、そんなの渡して大丈夫なの?
学園では、お菓子の持ち込みは禁止よ」

長女エミリーは、心配そうに聞いてきた。

「アハハハ、皆は内緒でやってますよ。
セドリック、なるべくバレないようにね。
それに今日だけだよ、緊張するのは。
友達が出来たら、きっと毎日が楽しくなるさ!」

セドリックは表情を明るくし、兄ラファエルの話しに返事をする。

「兄上、ありがとう。
あめ玉は気を付けて食べるね。
なんか少しお腹が空いたし、気分が軽くなったみたいだ!」

セドリックは、兄の言葉を魔法みたいだと感じる。

「ラル、お前の方こそ緊張しているんではないか?
無理をするんでないぞ」

私は中等部2年生の予定が、飛び級を許されて高等部1年生になった。
私自身はこのままでいいと断るが、学園では 優秀な者は繰り上げになることを示したいそうだ。

迷惑な話だが、姉たちと1年だけでも同じ学部で通えるのは魅力的だった。
周りが期待しすぎなので、大変になったら戻れる条件で書類にサインをした。

「ラルと同じ高等部なんて、夢のように信じられないわね。
私たちも姉として鼻が高いわよ。ねっ、シモーヌ!」

「ええ、エミリー姉様。
ラル、勉強がわからなかったら教えるわ。
でもね、答えられなかったらゴメンね!」

2人の成績って…。自力で頑張ろうかしら?

 学園に着いて、馬車を4人で降りておのおの学部に別れた。

高等部の男子学生たちは背が高いわね。
仕方ないか、まだ私は14歳だもんね。
2歳上って結構な差なんだと、他の男子生徒たちをラファエルは興味深げに見渡した。

 姉たちと歩いていたら皆が私たちを見て、こそこそと話しているようだ。

「ご覧になって!
ロベール伯爵家の方々よ。
あれが、秀才と名高いラファエル様よ。
なんか、可愛らしいわね!」

「お肌なんて、私よりツルツルして女の子みたいだわ!」

「お姉様たちも美人だしね!」

この人たちは、姉たちのおデブ時代を知らないのよね~。
フフン、私のドレス姿もだけど!

もしあのロベール家のバタバタを見たらどう言うかしら、きっと吹き出して笑うに違いないわよ。

この秘密は、墓場まで持っていかなくてはいけないわね。
ラファエルは、独り胸の中で思いながら教室へ向かい歩く。

 緊張した高等部の生活は、意外に順調に滑り出した。

担任の先生が同級生たちに、無理やり学年を上にあげられたラファエルの話を真剣にしてくれたからだ。

そんな気の毒な2歳年下のラファエルを、クラスメートたちが弟の様に扱ってくれる。
勉強がわからなくて悩んだ顔をすると、誰かが直ぐに教えてくれた。
笑顔でお礼を言うと、何故かいつも頭を撫でられる。

ひそかにクラスメートたちから天使と呼ばれ愛でられていることを、彼本人だけは気づかなかったのだ。

  お昼だけは、姉たちと一緒に食べていた。
本日の話題は、末っ子の弟セドリック。

「セドリックは大丈夫かなぁ?
友達は出来たみたいだけど」

ラファエルは、弟の引っ込み思案が気になる。

「私たちは、セドリックに似た感じでしたわ。
ラル、貴方はお母様に性格が似たのね」

長女エミリーが食事をとめて話すと、次女シモーヌも続く。

「高等部でも物怖じもせずに普通に過ごしてるし、ある意味大物ね。
あっ、鈍感か!」

3人は、お互いに笑いだした。

「きゃーっ、冷たいわ。
貴女、わざと水をかけたわね!
殿下~!!」

その声に笑いをやめて、声をする方に顔を向ける3人。

「クスクス、嫌だわ。
何処に殿下がいるのかしら?
それに貴女が、私に当たって来たのよ。
ねぇ皆さん、ご覧なっていたわよね?」

「ええ、いきなり後ろに来るんですもの。
貴女こそ、言いがかりはやめてよ。
本当におかしな方よね」

「もう、殿下は卒業されましたわ。
幻覚でも見えるの?
大丈夫かしら、あ・た・ま・は!
医者に、診て貰いなさいよ」

3人の女子生徒たちは、代わる代わるに1人の令嬢に文句を言ってくる。
濡れたドレスをハンカチで拭き、目からは涙を流しているようだ。

「姉上たち、あの令嬢って1年前の例のご令嬢ですか?」

ラファエルは、見覚えのある顔を姉妹に確認した。

「ええ、彼女よ。
殿下が卒業してから、ほぼ毎日の光景よ。
誰も助けてくれないわ。
一人も友人がいないの。
毎日、殿下にベッタリでしたからね」

「そうそう、男にびて女は無視ではねぇ。
ラルも、ああいう女性に手を出しては駄目よ。
女性の裏の顔を、よく見てからお選びなさい」

2人の姉たちは、ラファエルの知らなかった一面を見せて冷静に助言する。

やっぱり、女性は怖いわぁ~。
こんな、出来事を見せられたからかしら。
今は、男で本当は良かったかもと思ってきたわ。

しかし、あの優しい姉たちにもこんなに言われるなんて。
彼女は、どれだけ嫌われてるのよ?!

 ラファエルは、高等部に通いだしてから気になる場所があった。

1人で休憩時間に中庭を散歩すると、どうしても見てしまう。
この花壇は、昔は何が咲いていたんだろうか?

荒れた花壇は何だか寂しげで、ラファエルに語りかけてくる様な気がした。
側に寄ると独特な臭いがする。

ラファエルには、その魚が腐ったような臭いに覚えがあった。
今は季節から外れていて、花は咲いてない。

亡くなった庭師のジョン爺と、一緒に掘り起こした記憶が…。
確か、それはドクダミだった。

 
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