【完結】君はバラより美しく!     ドクダミよりもたくましい?

愚者 (フール)

文字の大きさ
上 下
12 / 59
第2章 不思議な花壇と捨てられた子猫

第2話  息子の成長

しおりを挟む
 屋敷に帰る馬車の中で、姉たちは安心したのか。
先程の殿下に怒鳴られたのを思い出したか、また泣き出してしまった。

なかなか泣き止まない様子で、ラファエルは姉妹を優しくになぐめたのである。

「姉上たちは、何も悪くないのです。
お泣きになりなさるな。
それにしても、第2王子と一緒にいた女性はなんなんですか?
近くにいたら犯人扱いとは、初めて見た方ですがあまり賢そうに見えませんね!」

ラファエルは、大好きな姉たちを泣かした王子とその令嬢に腹を立てていた。
こちらも、腹の虫が収まらない様子。

「ラル、助けに来てくれてありがとう。
貴方が殿下に毅然きぜんとした態度でいたので、対処できたのです。
私たちは、怖くて違うとしか言えなかったのよ」

可哀想に、相手はこの国の王子様ですもの。
あのままだったら、姉たちは無実なのに泣いて謝っていたかもしれないわ。

「ラルは、もうすっかり立派な紳士ね。
それに、勇敢でとても優しいわ。
王子よりも王子様のようでしたよ。
私は、この国の王子たちは尊敬致しませんわ」

次女シモーヌは、目から涙を流し続けて弟に感謝している。

私も幼い時は王子様に憧れていたけど、あれって絵本の中の話しだけね。
現実ってあの程度なのね。
なんか、想像と違い凄くがっかりしましてよ!
お姉様たちは、もう完璧に王子を軽蔑けいべつしているようだわ。

  夕食の時にこの話題が出たのは、王家よりロベール家に例の件の詫び状が届いたからだった。

「そうか、お前たちも災難だったな。
貴族の間でも噂になっておるぞ。
第1王子は女癖が悪い。
第2王子は粗暴そぼうで、側にいる令嬢は礼儀知らずな頭が足りないと言われているようだ」

父モーリスは、半ばあきれ顔で家族に噂話してくる。

「私も、そのご令嬢の噂を聞きましたわ。
婦人会の御婦人たちが話されてます。
どうも嫌われて、学園で誰かに水を掛けられてるそうですわ」

母アリシアは、姉二人にそんな恥知らずな行為はしないように言い聞かせていた。

「お姉様たち。
父上や母上のお話は、事実なのですか?
私は中等部ですから、よく知りませんでした。
水をかけられるとは、よほど恨みでもあるんですか?その令嬢に…」

女同士の醜い所業しょぎょうに、恐ろしさを感じてしまう。

「彼女は、ほとんどの女子生徒たちに嫌われてるわ。
何かあると、なんでも殿下に泣きつくのよ。
あれでは、令嬢たちだって面白くないわね」

長女エミリーはしかめっ面をして、弟ラファエルに詳しく彼女の話をした。

「殿下もそんな彼女を守る騎士になり、自分に酔ってるの。
周りはバカバカしくて、冷たい目で二人を見ているわよ」

次女シモーヌは眉間にしわ寄せて、家族全員を見ながら説明するのだった。

「どちらが王になっても、あまり尊敬はされません。
皆さまは、ただ黙って静観してる様子ですわね」

母は不敬になる言葉を、堂々と言ってのけた。

「私たちの身分では、どうも出来ん。
できる方は、唯一筆頭公爵の戦の神であろう。
あの方には、王とて逆らえない。
公爵の妻は、あの大国アルゴラの元第1王女殿下であられる。
我が家は、静かに自分たちを守っていこうぞ。
ラル、お前は立派な後取りだ。
姉たちを、こうして助けたのだから!」

父は微笑み、息子の成長を喜びを表した。

あの男女がこんなにも正義感が強くなって、幼い頃のドレス姿をふと思い出す。
密かに手で、目頭に出てくる涙を押さえていた。

そんな会話をイマイチ理解できない、幼い次男は兄がめられていることだけはわかっていた。

「お兄様、大好きです!
僕はおおきくなって、お兄様の様になりたいです」

可愛らしい弟セドリックは、優しい兄を目を輝かせて見ている。
その純な汚れなき瞳を見て、良心が痛むラファエル。

あぁ~どうしよう、困っちゃうわ。
セドリックを私の代わりに伯爵になって貰って、私は宝石商になりたいんだけど…。

だって、宝石ってキラキラして綺麗でしょう!
ドレスは泣く泣く諦めたのだから、せめて宝石ぐらいはいいわよね!

ラファエルは、宝石の種類の勉強を内緒でしていたのである。
家族は誰ひとり、そんな彼のたくらみを知らなかった。
  
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約解消は君の方から

みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。 しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。 私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、 嫌がらせをやめるよう呼び出したのに…… どうしてこうなったんだろう? 2020.2.17より、カレンの話を始めました。 小説家になろうさんにも掲載しています。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

大好きなあなたを忘れる方法

山田ランチ
恋愛
あらすじ  王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。  魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。 登場人物 ・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。 ・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。 ・イーライ 学園の園芸員。 クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。 ・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。 ・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。 ・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。 ・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。 ・マイロ 17歳、メリベルの友人。 魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。 魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。 ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

働かなくていいなんて最高!貴族夫人の自由気ままな生活

ゆる
恋愛
前世では、仕事に追われる日々を送り、恋愛とは無縁のまま亡くなった私。 「今度こそ、のんびり優雅に暮らしたい!」 そう願って転生した先は、なんと貴族令嬢! そして迎えた結婚式――そこで前世の記憶が蘇る。 「ちょっと待って、前世で恋人もできなかった私が結婚!?!??」 しかも相手は名門貴族の旦那様。 「君は何もしなくていい。すべて自由に過ごせばいい」と言われ、夢の“働かなくていい貴族夫人ライフ”を満喫するつもりだったのに――。 ◆メイドの待遇改善を提案したら、旦那様が即採用! ◆夫の仕事を手伝ったら、持ち前の簿記と珠算スキルで屋敷の経理が超効率化! ◆商人たちに簿記を教えていたら、商業界で話題になりギルドの顧問に!? 「あれ? なんで私、働いてるの!?!??」 そんな中、旦那様から突然の告白―― 「実は、君を妻にしたのは政略結婚のためではない。ずっと、君を想い続けていた」 えっ、旦那様、まさかの溺愛系でした!? 「自由を与えることでそばにいてもらう」つもりだった旦那様と、 「働かない貴族夫人」になりたかったはずの私。 お互いの本当の気持ちに気づいたとき、 気づけば 最強夫婦 になっていました――! のんびり暮らすつもりが、商業界のキーパーソンになってしまった貴族夫人の、成長と溺愛の物語!

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

処理中です...