【完結】君はバラより美しく!     ドクダミよりもたくましい?

愚者 (フール)

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第2章 不思議な花壇と捨てられた子猫

第1話  言いがかり王子様

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 あれから月日は流れ、ラファエルは中等部1年生13歳に成長していた。
そんな話を懐かしく思い出すラファエルには、弟セドリックが生まれている。

上の姉たちは3つ違いなので16歳になり、なんと長女エミリーは侯爵家嫡男ちゃくなんと婚約をした。

次女シモーヌは、同じ身分の伯爵家の嫡男とコチラも婚約。

2人とも太ることなく性格の良さもあってか、婚約者に愛されて学園卒業後に嫁ぐことになっている。

ロベール伯爵家は比較的裕福な方なので、娘たちの持参金には不自由しない。

母アリシアが、そこはしっかりと節約をしていた。

何事もなく穏やかに、ロベール伯爵家の子供たちは末っ子のセドリック以外は学園に通っている。

その学園生活を脅かす、事件が起きようとしていたのをラファエルも姉たち自身も知るよしもなく過ごす。

 中等部の教室で静かに本を読んでいたラファエルに、同じクラスメートたちがあわてて声をかけた。

「大変だぞ、ラファエル!
お前の姉たちが、第2王子と言い争いになっているぞ!」

ラファエルは、読んでいた本を落としながらクラスメートたちに聞き返す。

「えーっ、どうして!
お姉様たちが…!」

「何でも王子の好きな女性に水をかけたそうで、謝れって言われて大騒ぎだぞ!」

「どうしよう?
中等部の者が、勝手に高等部には行けない。
お姉様たちを、助けられないではないかー!!」

ラファエルは、知らせに来てくれたクラスメートに思わず叫んだ。

「ラファエル、落ち着けよ。
特別許可を担任の先生からもらえ!
お前なら入学時からずっと首席だし、何とか融通ゆうずうしてくれるかもしれない!」

1人の違うクラスメートが、ラファエルに案を出してくれた。

「うん、ありがとう。
今から直ぐに行くよ。
絶対にお姉様たちは、そんな事はしない。
早く、助けに行かなくては!!」

ラファエルはクラスメート達に礼を言うと、教室を飛び出して行く。

担任の先生に訳を話して、許可証をなんとか貰い姉妹の処へ急ぎけ出した。
中等部の制服で目立っていた、すれ違う生徒たちはラファエルを目で追うのだった。


  人だかりがある、あそこに間違いない。
ラファエルは人を押し退けて、二人の姉たちを呼んだ。

「お姉様たち、大丈夫ですか!?」

ラファエルの姿を見て、姉妹は半泣きの目を向けて叫んだ。

「ラルー!
大変なの、私たちは何もしてないのよ!」

姉妹が、ラファエルに抱きつきながら懸命に説明しだした。

姉たちの目の前には、キラキラした王子らしい人物が怒った顔をしていた。

「なんだ、君!
中等部ではないか。
高等部に来るのは、違反ではないかね!」

偉そうに注意をする年上の男子学生にひるむことなく、ラファエルは冷静に答えた。

「これを見てください。
許可は、先生から貰ってますよ。
私はラファエル・ロベールです。
ここにいる者たちの弟です。
殿下、姉たちは何をしてお叱りを受けているんですか?
それに、発言の許しを下さいませんか?」

「許そう。
私の隣にいる彼女に、水をかけたそうだ。
謝って、もらおうか!」

横いる令嬢に目をやると、確かにドレスの正面右側の裾色が少しだけ変わっていた。

「お姉様たちは、そんな事を本当にされたのですか?」

一応、確認のために姉妹に訊くラファエルに、長女エミリーは即答する。

「いいえ、するわけないわ!」

「ただ普通に二人で歩いていたら、いきなり怒鳴り付けられたのよ!」

二人の姉妹は、弟に身の潔白けっぱくを涙ながら話すのだった。

姉たちがするわけない、この人たちは誤解をしているのだ。

「本当に姉たちだったのですか?
証拠はあるのですか?
もし、違っていたら問題になりますよ」

13歳とは思えない冷静な物言いに、周りで見ていた高等部生徒たちが驚いていた。

「ちょっと、あの男の子は秀才と名高いロベール伯爵の嫡男よ!」

「えぇ、存じてるわよ。
弟が教えてくれたわ。
入学からずっと、首席ですってよ」

「大体、ロベール姉妹がそんな事をするわけないわ。
お優しいって評判の方々よ!」

その声は、第2王子たちにまで聞こえていた。

「だって見たのだもの、水をかけた時に金髪の髪をー!」

王子の隣にいた令嬢が、突然話してくる。

「えっ!それだけ?
金髪の髪なんて他にもいますよね。
たったそれだけの理由で、姉たちを疑うのですか?
それによく見てください。
私たちロベール家は、金髪ではなく明るい栗毛くりげです」

ラファエルの話を聞き、周りから声が上がった。

「本当にですわ!
金髪みたいですけど、明るい栗毛でしてよ!」

「何だ、ただの見間違いじゃないか!?
酷いなぁ~!」

周りで観ていた野次馬やじうまたちが、文句を言い出している。

「お前!さっきはこの人たちだと指差したよな。
顔をちゃんと見てないのか!?」

第2王子が令嬢にもう1度焦って確認している様子を、冷たく野次馬たちはあきれて見ていたのだった。

「ええっ、だって!
近くにいたのは、この人たちだけだったわ。
この人たちに、違いないわよ!」

令嬢らしかぬ大声で2人の姉に言うと、びる様に殿下を見つめた。

「話にもならない!
犯人なら、現場にいつまでも普通はいないでしょう!
殿下、どう責任をとってくれますか?
姉たちをこんな大勢の前で怒鳴り付けるなんて、あまりにも酷くないですか?!」

ラファエルは理不尽な言いがかりに、殿下と令嬢に怒りを向けた。

「す、すまない。
許してくれ、ロベール家には改めて謝罪をする」

第2王子の先ほどの勢いは、なりをひそめてしまう。

「お姉様たちも、もういいですよね。
誤解は解けたようですし、私と一緒に屋敷に戻りましょう。
それに、殿下より犯人扱いしたご令嬢はびのひとつもないのですね!」

ラファエルは声変わりしてないせいか、後ろまでよく声が通っていた。

「聞きまして、あれだけ騒いで間違いを謝らないなんて!
非常識で、礼儀知らずではない?!」

「王子もあんな令嬢に、肩入れするんだなぁ。
何だか、ガッカリするよ!!」

それを聞いていた令嬢が、顔つきが変わってしまった。

「謝りますわ。ごめんなさいね」

取って付けたような謝罪は、見ていて気持ちよくなかった。

「もう、いいのです。
誤解は、誰でもありますもの」

長女エミリーは、仕方なく謝罪を受け取った。

次女のシモーヌは納得いかないのか不機嫌な態度で、姉の言葉を黙って聞いている。

「今度からは、むやみに人にその様な態度をしないことですね!
さぁ、お姉様たち。
もう、参りましょう!」

ラファエルはその令嬢を鋭く睨み付けてから、姉たちを引き連れてその場を離れた。

周りは殿下とその令嬢を遠回しに見ながら、コソコソ陰口を言っていた。

王子とその令嬢はこの一件で、学園の貴族の子息令嬢たちから白い目で見られるようになるのである。
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