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第1章 私は可愛い男の子?
第10話 思い出を描こう
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本来は男の子なのに、すっかりお嬢様扱いをメイドたちからされていた。
「ラル様、今日は何色のドレスに致しましょうか?
昨日はピンクでしたから、寒色系にしましょう」
寒色の色の意味がよく分からず、メイドに首を傾げる。
「寒色とは、青とか緑とか涼しい感じのお色を言います」
メイドは、ラファエルのサファイア色の美しい瞳に合わせた空色のドレスを持ってきた。
「うわぁ~、キレイな色ね。
それに襟や袖に裾にも、白のレースがヒラヒラしてカワイイわ!」
上の姉二人が、丁度彼と同じぐらいの年から急に太ったために沢山のドレスが新品で眠っていたのだった。
「気に入って頂けましたか?!
今日のドレスは、此方にしましょうね!
髪型は、ハーフアップで編込みして結びましょうか?!」
「えぇ、似た色のおリボンを付けてね!
可愛くして!
私は、キレイで可愛いのが大好きなの!」
鏡の中の自分が可愛くされていくのが、嬉しくてたまらない様子だった。
「まぁ、ラル様!
まるで天使のようですわ。
今日は絵師を呼んでますから、奥様が描いて頂いたらと仰ってましたわ」
別のメイドが、ラファエルに肖像画の話をしてきた。
「私の絵を書くの?!
いいのかしら?
私は、本当は男の子でしょう?!」
「奥様が、良いと言われてますわ。
それに、ラル様以上に愛らしい方はなかなかいません!」
メイドの言葉に気を良くしたラファエルは、画家のいるサロンに向かうのだった。
サロンに入ると、キャンパスを立てて用意をしていた絵師と目が合った。
母アリシアから習いたてのカーテシーをすると、絵師はその可愛らしいお辞儀に目を細めて会釈を返した。
「なんと、愛らしいお嬢様ですな!
頑張って、描かなくては!ハハハ」
絵師はラファエルに、椅子に座り遠くを見るように頼んでくるのだった。
窓の外には夏バラが咲き乱れていて、彼はそのバラの花の美しさに見とれていた。
絵師はその表情に満足しながら、筆を進めていくのだった。
「ずっと、同じポーズでは疲れませんか?!
少しだけなら、動かれても平気ですよ。
大まかな部分は描きましたからな」
「そうなの、早いのですね。
私だからなの?!」
ラファエルは、適当に描かれたのかと誤解をしていた。
「いいえ、私は肖像画の専門ですので慣れているだけです。
それに、頭と心にお姿を留めておりますからね。
特に、お嬢様は1番愛らしいですからな!」
お世辞をまだ知らない、本気で絵師の言葉を受け取っていた。
メイド達は、絵師が気に入られようとそうラファエルに言っていると勘違いしていた。
彼は本当にそう思い、話していたのに。
「今日は、ここまでに致しましょうか。
次の日は、色を付けていきます。
髪や肌の色、そして美しい瞳を塗りますよ!」
「はい!宜しくお願いします。
キレイに描いて下さいね!」
ラファエルは心から願い、笑顔を絵師に向けていた。
一枚目の絵が描き終わった。
「まぁまぁ、キレイに描かれて良かったわね。ラル!」
母アリシアは、絵の出来上がりにご満悦。
「お母様、おしとやかそうに見えますわ。
でも、もう一枚描いて欲しいの」
ジョン爺と一緒の絵を、描いて欲しかったのだ。
「もう一枚?
これでは満足出来ないの?」
母アリシアにラファエルが、誕生日プレゼントは暫く要らないからとお願いをしてきた。
「元気がいい、私の絵が欲しいのです。
庭の薔薇とジョン爺も一緒に!
駄目かしら?
だって、もうドレスを着れなくなるのでしょう?
私は、男の子にならなくてはいけないんでしょう?!」
母アリシアは、息子の言葉に胸が傷んだ。
「ラル!!
私がバカな考えをして、貴方を振り回してしまったのね。
すまなかったわ。
いいわ!
女の子だった思い出を、もう一枚描きましょう。
いつか、貴方が成長した時に自慢できる絵をね!」
母はこの話を忘れるかも知れないけど、私はしっかりと覚えているわよ。
母には感謝してるの、だってお得でしょう!
男の子と女の子の時代があるなんて!
きっと、大きくなっても忘れないわ。
素敵な私だけの思い出としてね。
「ラル様、今日は何色のドレスに致しましょうか?
昨日はピンクでしたから、寒色系にしましょう」
寒色の色の意味がよく分からず、メイドに首を傾げる。
「寒色とは、青とか緑とか涼しい感じのお色を言います」
メイドは、ラファエルのサファイア色の美しい瞳に合わせた空色のドレスを持ってきた。
「うわぁ~、キレイな色ね。
それに襟や袖に裾にも、白のレースがヒラヒラしてカワイイわ!」
上の姉二人が、丁度彼と同じぐらいの年から急に太ったために沢山のドレスが新品で眠っていたのだった。
「気に入って頂けましたか?!
今日のドレスは、此方にしましょうね!
髪型は、ハーフアップで編込みして結びましょうか?!」
「えぇ、似た色のおリボンを付けてね!
可愛くして!
私は、キレイで可愛いのが大好きなの!」
鏡の中の自分が可愛くされていくのが、嬉しくてたまらない様子だった。
「まぁ、ラル様!
まるで天使のようですわ。
今日は絵師を呼んでますから、奥様が描いて頂いたらと仰ってましたわ」
別のメイドが、ラファエルに肖像画の話をしてきた。
「私の絵を書くの?!
いいのかしら?
私は、本当は男の子でしょう?!」
「奥様が、良いと言われてますわ。
それに、ラル様以上に愛らしい方はなかなかいません!」
メイドの言葉に気を良くしたラファエルは、画家のいるサロンに向かうのだった。
サロンに入ると、キャンパスを立てて用意をしていた絵師と目が合った。
母アリシアから習いたてのカーテシーをすると、絵師はその可愛らしいお辞儀に目を細めて会釈を返した。
「なんと、愛らしいお嬢様ですな!
頑張って、描かなくては!ハハハ」
絵師はラファエルに、椅子に座り遠くを見るように頼んでくるのだった。
窓の外には夏バラが咲き乱れていて、彼はそのバラの花の美しさに見とれていた。
絵師はその表情に満足しながら、筆を進めていくのだった。
「ずっと、同じポーズでは疲れませんか?!
少しだけなら、動かれても平気ですよ。
大まかな部分は描きましたからな」
「そうなの、早いのですね。
私だからなの?!」
ラファエルは、適当に描かれたのかと誤解をしていた。
「いいえ、私は肖像画の専門ですので慣れているだけです。
それに、頭と心にお姿を留めておりますからね。
特に、お嬢様は1番愛らしいですからな!」
お世辞をまだ知らない、本気で絵師の言葉を受け取っていた。
メイド達は、絵師が気に入られようとそうラファエルに言っていると勘違いしていた。
彼は本当にそう思い、話していたのに。
「今日は、ここまでに致しましょうか。
次の日は、色を付けていきます。
髪や肌の色、そして美しい瞳を塗りますよ!」
「はい!宜しくお願いします。
キレイに描いて下さいね!」
ラファエルは心から願い、笑顔を絵師に向けていた。
一枚目の絵が描き終わった。
「まぁまぁ、キレイに描かれて良かったわね。ラル!」
母アリシアは、絵の出来上がりにご満悦。
「お母様、おしとやかそうに見えますわ。
でも、もう一枚描いて欲しいの」
ジョン爺と一緒の絵を、描いて欲しかったのだ。
「もう一枚?
これでは満足出来ないの?」
母アリシアにラファエルが、誕生日プレゼントは暫く要らないからとお願いをしてきた。
「元気がいい、私の絵が欲しいのです。
庭の薔薇とジョン爺も一緒に!
駄目かしら?
だって、もうドレスを着れなくなるのでしょう?
私は、男の子にならなくてはいけないんでしょう?!」
母アリシアは、息子の言葉に胸が傷んだ。
「ラル!!
私がバカな考えをして、貴方を振り回してしまったのね。
すまなかったわ。
いいわ!
女の子だった思い出を、もう一枚描きましょう。
いつか、貴方が成長した時に自慢できる絵をね!」
母はこの話を忘れるかも知れないけど、私はしっかりと覚えているわよ。
母には感謝してるの、だってお得でしょう!
男の子と女の子の時代があるなんて!
きっと、大きくなっても忘れないわ。
素敵な私だけの思い出としてね。
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