【完結】君はバラより美しく!     ドクダミよりもたくましい?

愚者 (フール)

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第1章 私は可愛い男の子?

第9話  庭師ジョン爺

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 庭師のジョン爺と草取りをしているラファエルは、いつもより大人しかった。

「どうしましたか、ラル様。
何かお困りですかなぁ?
お顔がいつもより暗いですぞ。
役に立たない年寄りですが、お話だけでも聞けます。
このジョンに話してくれますか?!」

「ジョン爺、私は剣を習いたくない。
人を叩いたり、ましてや叩かれるなんて怖くて嫌なの。
どうして、貴族の男性は剣術をしなくてはダメなの?!」

草をちょびちょび抜きながら話す、可愛い坊っちゃんの悩みに答える庭師。

「どうしてですかねぇ。
では、叩かれそうになったら逃げなさい」

「逃げると、先生に怒られると思うわ!」

「なら、けていると言いなさい。
物は言いようですぞ!」

「どうしても、人を叩くときはどうしたらいいの?!」

ジョン爺は困り顔で、ラファエルの悩みに一緒に真剣に考えてあげていた。

「ラル様は、お心がお優しいからのう。
1度で終わるようにしなされ!
たくさん叩くのは、お辛いでしょうから。
上手くなれば、その分早く習い事も終わりますぞ!」

「そうか、強くなればいいのか!うん、ジョン爺!
ありがとう、この話は誰にも内緒ね。
ねぇ、庭のお世話をまた手伝いに来てもいい?!」

「もちろんですとも、ラル様は綺麗なお花がお好きですなぁ!」

「ジョン爺には、負けるよ!
アハハハ!」

2人は仲良く並んで、雑草取りをするのであった。

  ラファエルは、父と母の言い付けどおりに剣術を習い始めた。

冗談じゃないわよ!
こんな熊みたいな先生の剣を、まともに受けたら吹っ飛ぶし死んじゃうわ!

先生の打ち込みに逃げるラファエルを、先生はしかるがジョン爺の言うとおりに話す。

「先生!私は逃げてるのではない。
けているのだ!まだ、初日ですよ。
剣筋がわからないのは当然です!」

堂々とした言い訳に、教え子に納得するしかない先生。
ラファエルの口のうまさに、剣術の先生もタジタジだった。

ジョン爺に相談して話をして正解だった。
当分はこれでいいと思うわ。
ラファエルはホッとし、一先ひとまずは安堵あんどした。

そんな息子の剣術の報告を父が聞いたのか、ラファエルに苦言を言ってきた。

「ラル、剣の先生がお前は剣を避けるのが上手だと誉めていたぞ!だが、避けてばかりでは駄目だろう。
もう少し、頑張ってみろ!」

「お父様!
相手の剣筋がわかりましたら、打ち込みます。
私は手数より、1度で終わらせたいのです。
やみくもに叩いても、体力がなくなりますよ」

父親までも、言い負かす息子。
どこまでも口が達者な、ラファエルであった。

 またまたまた、メイドの休憩室に遊びに来ているラファエル。

 「ねぇねぇ、最近お母様の顔の色が悪いの。
病気なのかしら?
お父様は違うと仰るのよ!?」

若様がお茶を飲み、私たちのお菓子を摘まみながらたずねてきた。

「ラル様には旦那様は、何も伝えていないのですね。
私たちからは、話せませんわ」

1人のメイドが、ラファエルにお断りをした。

「えー!教えてよ、絶対内緒にするから。
私は無口よ。
たまに、女言葉がでるからね!」

無意識に女言葉を話す、次期当主に困り果てるメイドたち。

「今がその時ですよ。
また、その悪い癖が出てますわ!ラル様」

「心配で夜眠れないのよ。
どうしてお母様は、お辛そうなの?
最近は、昼でもベッドに横になるのよ」

3人のメイドたちは、ラファエルを見て可哀想になってしまう。

「本当に内緒ですよ。
奥様に赤ちゃんができました。
ラル様に、弟か妹ができるのですよ。
でも、今は赤ちゃんが育つために大事な時期です。
お母様を、休ませてあげて下さい」

「そうです。
良い子なり、迷惑をかけないようにして下さいね!」

「ラル様は、迷惑をかけていませんよ。
逆に、たくさん迷惑をかけられてますわ!」

3人の話を聞いて、ラファエルは暗い顔から笑顔になっていた。

「えーっ!
私に弟か妹がー!!
私がお兄様になるのね?!
凄く、嬉しいわぁ。
弟なら、この家を継いでくれるじゃない?
そうしたら、私はまたドレスを着られるようになるかしら?!
やったわぁー!!」

3人のメイドたちはラファエルの言葉に直ぐに違いますと言い、何度も顔を左右に振っていたのである。

全然メイドたちの話を聞いていないラファエルは、弟が生まれるのを神に必死に祈るのであった。

 
 
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