【完結】君はバラより美しく!     ドクダミよりもたくましい?

愚者 (フール)

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第1章 私は可愛い男の子?

第7話  娘から息子へ戻すには

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  その後からラファエルは、ひたすら泣き続けた。

「旦那様ー!
いきなりでは、ラルが可哀想です。
姉たちをここまでするのに、1年以上かかりました。
ゆっくりと直していきましょう。
ラル、貴方は剣でも習いなさい。
その時は、ドレスは禁止ですよ!」

母アリシアが、ラファエルを指差し命令をする。

「おぉー、流石さすがは我が妻だ。
良い案だ、早速に剣を教える先生を探そう!」

父モーリスは、機嫌よく部屋を出て行ってしまった。

剣ってあの物騒ぶっそうなものを振り回して、人を叩く!?
もしも、体に当たったら痛いんではなくって?
刺繍ししゅうで指に針を刺すのと、どちらが痛いのかしら?

ひどいわー、私は何もしてないのに。
両親に、ただ振り回されているだけではないの?!

「お姉様方聞きまして、今の会話を!
私はまったく悪くないのに、今度は男に戻れって!
剣を習えと仰るわ。
あぁー、私はどうしたらいいのかしら?!」

美少女ラファエルはソファーに倒れ込むように座る。
その様子は、か弱く庇護欲ひごよくがわく。

「なんて、可哀想なラル!
私たちが、デブだったせいですわ!」

「ごめんなさいね。
迷惑をかけてばかりで、こんな姉たちを許して頂戴ちょうだいな!」

2人の姉妹は美しくなった顔を、涙でらすのであった。

「泣かないで、いつかは男に戻る日が来るのです。
私は女心がわかった事を喜んでますのよ。
立派な男性になりますわぁ。
姉上たち、どうか見ていて下さいませ!」

母は3人の話を聞き吹き出し笑い、メイドたちはそっと目頭を指で拭く仕草しぐさをした。

 
 剣の稽古けいこの前に、男言葉の訓練をすることになった。

男言葉を教える先生は、なんと母アリシアがすることにした。

何せ長男が女性になっているとは、外には絶対にらしてはいけない。

隠密おんみつに事を進めるのだ。

「ラル、お話の中で言葉を正していきますわよ。
いいですわね!」

「はい、お母様。
何をお話しましょうか?クスっ」

「それよ!
笑いかたは、クスクスでは駄目よ。
アハハハにしなさい!」

「え~!嫌ですわ。
大口開けて笑うなんて、はしたなくてよ。お母様!」

側で聞いていたメイドたちは、心の中でこれは無理ではと思った。
 
あれから1時間も、この攻防こうぼうは続いた。
疲れ果てた母アリシアは、ハッキリ息子に命じた。

「ラル、貴方は今日から無口になりなさい!
言葉は、そうだな。
ありがとうと、またなでいいです!」

「はい?何でですか?
その言葉の意味は…。
そんなので、会話が通じますか?!」

「例えば誰かに話しかける。
その事にそうだな。
何かしてくれたら、ありがとう。話が終わったらまたな。
後は、静かに黙ってなさい!」

母はさじを投げて、部屋を出て行ってしまった。

ラファエルは紅茶を優雅に飲み、近くのメイドに聞いた。

「ねぇ、本当にあれで大丈夫だと思う?
私はダメだと思うわ。
貴女はどう思って?」

「ラル様、しばらくは奥様のおっしゃる通りにしてみたらいかがでしょうか。
そのうちに男性のお言葉に慣れるかもしれません」

「うーん、そうね。
まだ時間あるし、何とかなるかも。
悪いけど貴女、何かあったら助けてね!」

メイドは、また余計な仕事が増えたとなげくのであった。

  またまたメイドたちの休憩室に、入り浸りのラファエルが皆に意見をきく。

「ねぇねぇ、私って変かしら?
女心のわかる男っておかしい?
気持ち悪い?」

「今は可愛いからいいですが、ラル様が男らしくお成りなら話は違いますわ」

「早く、普通になられた方がいいですよ。
この先、ご苦労が目に見えます」

「女性の生活をして、1年ちょっとですよ。
若様って、適応能力あり過ぎます!」

3人の仲の良いメイドたちは、主人の息子に容赦ようしゃなかった。

「もう!酷いですわね。
私は、女に生まれたかったわ。
絶対に男の自分より、幸せになれると思うの。
神って意地悪ですのね。
うらみしますことよ!」

3人のメイドたちは、その姿を見るとため息をつきながら頭を振るのである。

  その日の夕方に、使用人たちは集まり相談している最中さいちゅうであった。

「ラル様がお気の毒ですわ。
奥様も旦那様も息子を振り回すなんて。
まだ、たった4つですのよ」

「言葉遣いは、すっかりお嬢さまです。
どう男性に戻すか、皆さん考えて下さい!」

例の3人のメイドたちは、必死にお願いをしていた。

「庭師のジョン爺に頼んでは?
彼なら、優しく導くのではないかなぁ?!」

「そうですな!
孫のような若様を、あのよしよし爺さんなら何とかしてくれるはずだ」

「では、私からジョンに頼んでみよう。
体力作りとの名目にして、庭仕事を手伝いながら。
いいですか、ラル様はこのロベール家の未来の主になるお方です。皆さんで、お助けしなければなりません!」

執事長しつじちょうが皆をひとつにした。

「はい!私は、ラル様もこのロベール家の方々を尊敬しております。
皆さん、頑張りましょう!」

皆が力強く返事をしたことは、当のロベール家の家族たちは知らなかった。


 翌朝、執事長は旦那様で主である伯爵に提案を伝えにいく。

「旦那様、ラル様の件でお願いがございます。
発言をお許しください」

「おおっ、何だ言ってみよ!」

「ラル様のお言葉遣いですが体力作りも兼ね、庭師のジョンに頼んではいかがでしょう。
彼なら、きっとラル様のお役に立つと存じます!」

伯爵は執事長の話を聞き、笑顔になった。

「いい案ではないか!
ジョンなら、ラルとうまくやれそうだ。
お前からジョンに頼んでもらえるか、ラルには私から話そう!」

ロベール伯爵は妻が息子の言葉づかいにさじを投げて、夫の自分に泣きついていたのを悩んでいた。

その悩みを解決してくれた、執事長に丁寧に礼を述べたのであった。
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