【完結】君はバラより美しく!     ドクダミよりもたくましい?

愚者 (フール)

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第1章 私は可愛い男の子?

第5話  母の秘密

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   母を探してひたすら家の中を歩き続けた。
姉2人は日頃の運動不足のせいと体型をあってか、息を切らし休みたいとラファエルにお願いしてきた。

そんな二人に困っていた時に、偶然窓を見たら外に母が目に入ってきた。
 庭で帽子や手袋をして、伯爵夫人らしくない姿で土いじりをしていたのである。

「あ~ら、どうしたの貴女たち!
ちょっと、もう少しで終わるから。
誰か~、来て頂戴ちょうだいなー!
子供たちをお願いね」

子供たちにお茶を出すようにメイドに頼むと、自分は手袋を外し手を洗いに行った。
 
汚れを落とした伯爵夫人は、お茶を飲みながら子供たちの話に耳を傾け聞くことにする。

居間で落ち着いて座り、子供らは伯爵夫人の母を目の前にしている。
ラファエルは母にお茶会の話をし、姉の友人たちは今までの行いをロベール家の女主人にびた。

「あなた方の話はよく分かりました。
デブを放置していた、私にも責任があるわね。
子供だから、まだ先でいいかと思っていたのよ。
まさか、そんな悪口を言われていたなんてね」

伯爵夫人はお茶を一口飲んでから、思うことがあるのか深くため息をつく。

「お母様、私たちせたいの。
デブとかみにくいとか、言われて本当は悲しかったわ!」

「でも、言い返せなかった。
デブは、本当なんですもの……」

二人の姉妹たちが、母に今まで黙っていた本心を伝える。

「安心しなさい。
この母も子供の頃は、おデブでした。
確かに子供って、平気で傷付けることを言います。
母が動きまわるのは、おデブ時代に戻るのが怖くてです。
庭いじりも運動のつもりでしているのよ!」

衝撃的な母の過去の告白を、驚きながら聞く子供たち。

「お母様も、太っていたのですか?
私は太ってないですわよ?」

ラファエルは、お腹をさすりながら質問をしてきた。

「ラルは、お父様に似たんではなくて?
娘たちは、私にどうやら似てしまったのね」

母アリシアは、ダンスの手習いをロベール家ですることを決めた。

良かったら一緒にと誘う主旨しゅしの手紙を、姉の友人たちの家に出すと約束をしてくれたのである。

「お姉様たち、良かったですね。ダンスのレッスンが始まる前に、もうちょっとだけ痩せしょうよ!」

ラファエルは嬉しさのあまり、気持ちが先走っていた。

「ラル、痩せるのは時間がかかります。
あせらずに、お菓子も食べていいのよ。
普通の分量ならね。
あなた達は、以前は食べ過ぎよ。お茶会をするときは、母が同席して見てます。
二人とも、楽しく痩せましょう」

母アリシアは、過去の自分を見てる気持ちになるのであった。

 週1回ロベール伯爵家で、ダンス教室を開くことになった。
ラファエルは男の子なので、男性パートを習うのが普通のはずが…。

「私も、女性パートを習いたいです。
両方出来たほうがお得でしょう!?」

意外に彼は才能あるらしく、またたに覚えてしまった。

問題は、あの姉たちであった。
気持ち少し痩せたが、まだまだ動きがにぶくテンポがずれて上手くいかない。

他の友人たちはステップは出来ていて、組んで踊るまで上達している。

「ねぇ、シモーヌ!
私たち、どうみてもお荷物ですわね?!」

「デブって、損だったのね。
早く気づいて良かったわ。
エミリーお姉さま!」

2人の姉たちは、デブでも卑屈ひくつにならずにいた。
姉妹の前向きな明るい性格に、痩せる努力を楽しんでいるかの様に周りには思えた。

「お母様、ロベール家って鈍感で打たれ強いですわね。
まるで、そうですわ!
雑草に似てませんこと」

隣で姉妹を見守る母アリシアに、息子でなく娘ラファエルは姉たちの感想を正直に語るのだった。

「そうよ。
何処どこでも生きていけるのは、強くて素晴らしいことよ。私たちは明日から平民になっても、普通に暮らせると思うわ」

それを無言で姉の友人たちは聞いていて、つい吹き出して笑ってしまった。
  
「クスクス、ダンスをここで習って良かったですわ!」

「ええ、楽しくて週1回が待ち遠しいのですのよ!」

姉の友人の情報によると、あの例の令嬢は2人の友人を失ってから孤独らしい。

この2人と姉たちだから、友人として付き合えたのだろう。
ラファエルは、そっとほくそ笑み心の中で思う。

天罰だわ、いい気みよ!

後は学園に通う前に、姉たちが痩せるのを祈るだけだわ。

  季節は秋が終わり冬になる頃、姉妹は見事におデブからぽっちゃりに変化していた。

誰が見ても痩せたと、分かるぐらいになっていたのだ。

ロベール家の家族と友人たち、そして全使用人たちの努力が実を結ぶ。

「ここからが、肝心かんじんよ。
痩せた後に、何故か太るのよ。
いいこと娘たち!
自分を強く保つのよ!」

母アリシアは、昔の自分の失敗を娘たちに味わわさせたくなかった。
そう、彼女は何度も失敗をし続けて今があるのだった。

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