【完結】君はバラより美しく!     ドクダミよりもたくましい?

愚者 (フール)

文字の大きさ
上 下
1 / 59
第1章 私は可愛い男の子?

第1話  鏡よ鏡、鏡さん!

しおりを挟む
 今日も鏡の中を見てため息をつく、美幼女ならぬ美男児。

彼の名は、ラファエル・ロベール。
このとき、まだたった4歳になったばかりの男の子である。

男の子なのにピンクのヒラヒラのドレスを身につけ、メイドに金髪に近い栗毛の長い髪にリボンをつけられている最中さいちゅうであった。

4歳にもなれば、これはちょっとは違うと気づくお年頃。

鏡の自分を見ると、確かに可愛いピンクドレスがよく似合っていた。

男か女か、どちらなのかわからないって?

私も、わからないのよ。
しょうがないでしょう!
そう育てられたんだもの!

母は全然物事にこだわらない方で、父は母に子育てはまかせっきり。

 ロベール伯爵家には、双子の姉妹がいた。
少しふっくら、悪く言えばおデブな体型である。

長女はエミリーと、次女はシモーヌという名だ。

神さまは、何故に2人をデブらせ太らせたのであろうか?!

ラファエルは姉たちがせたら、絶対に綺麗きれいな美女になると信じ切っていた。

普通はデブとかみにくいとか人に言われると、性格がゆがんで悪くなることが多くない?

姉君たちはそんな意地悪なことを言う友だちに、微笑ほほえんでこうおっしゃるわ。

「まぁ、本当ですわね。
なんて、私たちは醜くいおデブでしょう!ふふふっ」

私はその現場をたまたまお茶会ってどんなものかしらと思い、物陰からのぞいてその瞬間を垣間見かいまみてしまった。

それはそれは、驚き衝撃的でしたわよ!
姉たちを友人たちが、目の前で普通に悪気わるぎなく平然と悪口を言ってるのよ!

それも我が家がわざわざ呼んで、おもてなしをしているお茶会で!
だから、私はそのやり取りに余計に驚いてしまった。

あり得ないし、おかしいですわよー!!

女の世界の恐ろしさを、ラファエルはたった4歳で知らされてしまったのである。

春のうららかな日差しが、まるで極寒ごっかんの雪山の中にいる感じがしたのであった。

そんな姉たちの打たれ強さにあ然としてから、友人たちはつまらなそうに話題を変えていく。
お茶会そのものは、表面上楽しそうな少女たちのかたらいに見える。

  ラファエルはピンクのドレスをひるがえし、部屋に戻るとすぐに鏡の前に立った。

「私は、そんなにみにくくないしデブでもないわ。
姉たちは、あのお菓子を食べ過ぎよ。
お茶会では、たくさんお食べてになっていたわ。
刺繍ししゅうや本を読んでいてばかりで、全然体を動かないせいよ!」

彼女いや彼は、ほほに手をえてため息をつく。
その容姿は、天使のように愛らしいお嬢様!

本当はお坊ちゃまのラファエルを見てメイドたちは、どう呼び掛けていいのか最初は悩んでいた。

ロベール家伯爵家の由緒ゆいしょ正しき長男が、可愛らしいドレスを身に着けている理由わけがあった。

 それは彼が3歳の時に、家族そろってお茶を飲み団らんしていた時だ。

「旦那様、聞いて下さいませ。
せっかく上の娘たちに作ったドレスが、2人とも太って入らなかったのよ。
もったんないわ!
ラルに着せても、宜しいかしら?この子、美人さんで似合いそうですわよ?!」

母アリシアは何を血迷ったか、夫に変なお願いをしてきた。

「そうだな。
まだ幼いから外出しないし、屋敷の中ならかまわん。
しかしなぁ、ラファエルは一応は男の子だからな?!」

父のモーリスが難色なんしょくしめすと、上の二人の姉妹が父に話しかけた。

「お父様、お話をしても宜しいですか?
私たちのせいで、ごめんなさい。どうして、こんなに太っちゃったのかしら?!」

「太りたくて、太ったつもりはないのです!
本当に申し訳ありません」

2人の可愛い娘たちが今にも泣きそうな顔で、父である自分に謝るてくるのだ。

「あっ!お前たちは悪くない!
健康で元気でさえあればよいのだ。
ラルには、ドレスを着せてもいいぞ!
かわいい娘が3人いると、思えばよいではないか!ハッ、ハハハ」

父はあっさりと、女性3人に簡単に負けたのだ。
女性の涙に男は弱いと、たった3歳のラファエルがぼんやりと感じたひとこまであった。
 
  それから母アリシアは、素早くに行動を起こした。
屋敷の全使用人たちを庭に集めて、ドレスに着替えたラファエルを前に宣言した。

「皆さんー!
今日から長男ラファエルは、男であって男ではなく。
女のように見えて、女ではありません。
コホン、姉たちが着る予定のドレスを無駄むだにしたくありませんの。
ねぇー見て、この子ドレスがよく似合うでしょう?
しばらくはドレス着せるけど、気にしなくていいわ。
皆さん、分かりましてー!」

母アリシアは、使用人たちが戸惑とまどいながら聞いているのを完全に無視していた。

執事長しつじちょうとメイド長が、代表して冷静に奥様の話に質問する。

「奥様の主旨しゅしはわかりますが、どうお名前をお呼びすれば宜しいのでしょうか?」

「そうでございますわ。
奥様!おぼちゃま、お嬢様どちらなんですか?!」

使用人たちが動揺どうようしザワつく中を、女主人はビシッと指示した。

「もう、ラル様でいいわよ。
ラファエルって呼びづらいでしょう?
何でそんな名にしたのかしらね?
ラル、ラルもラル様でいいですよね?!」

まだ3歳の息子に丸投げするとは、母親をジーっと無表情で見ていた幼いラファエル。

「お母様、どうだっていい。
もう、好きに呼んでよ!」

ロベール家の適当な考えの遺伝子は、着々と受け継がれていたのがわかった瞬間である。

使用人たちも、呼び名が決まればどうでもいい雰囲気ふんいき
 一同いちどうは、仕事に戻らないとしか考えがなく急ぎ解散した。


  
    
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

処理中です...