【完結】君はバラより美しく!     ドクダミよりもたくましい?

愚者 (フール)

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第1章 私は可愛い男の子?

第1話  鏡よ鏡、鏡さん!

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 今日も鏡の中を見てため息をつく、美幼女ならぬ美男児。

彼の名は、ラファエル・ロベール。
このとき、まだたった4歳になったばかりの男の子である。

男の子なのにピンクのヒラヒラのドレスを身につけ、メイドに金髪に近い栗毛の長い髪にリボンをつけられている最中さいちゅうであった。

4歳にもなれば、これはちょっとは違うと気づくお年頃。

鏡の自分を見ると、確かに可愛いピンクドレスがよく似合っていた。

男か女か、どちらなのかわからないって?

私も、わからないのよ。
しょうがないでしょう!
そう育てられたんだもの!

母は全然物事にこだわらない方で、父は母に子育てはまかせっきり。

 ロベール伯爵家には、双子の姉妹がいた。
少しふっくら、悪く言えばおデブな体型である。

長女はエミリーと、次女はシモーヌという名だ。

神さまは、何故に2人をデブらせ太らせたのであろうか?!

ラファエルは姉たちがせたら、絶対に綺麗きれいな美女になると信じ切っていた。

普通はデブとかみにくいとか人に言われると、性格がゆがんで悪くなることが多くない?

姉君たちはそんな意地悪なことを言う友だちに、微笑ほほえんでこうおっしゃるわ。

「まぁ、本当ですわね。
なんて、私たちは醜くいおデブでしょう!ふふふっ」

私はその現場をたまたまお茶会ってどんなものかしらと思い、物陰からのぞいてその瞬間を垣間見かいまみてしまった。

それはそれは、驚き衝撃的でしたわよ!
姉たちを友人たちが、目の前で普通に悪気わるぎなく平然と悪口を言ってるのよ!

それも我が家がわざわざ呼んで、おもてなしをしているお茶会で!
だから、私はそのやり取りに余計に驚いてしまった。

あり得ないし、おかしいですわよー!!

女の世界の恐ろしさを、ラファエルはたった4歳で知らされてしまったのである。

春のうららかな日差しが、まるで極寒ごっかんの雪山の中にいる感じがしたのであった。

そんな姉たちの打たれ強さにあ然としてから、友人たちはつまらなそうに話題を変えていく。
お茶会そのものは、表面上楽しそうな少女たちのかたらいに見える。

  ラファエルはピンクのドレスをひるがえし、部屋に戻るとすぐに鏡の前に立った。

「私は、そんなにみにくくないしデブでもないわ。
姉たちは、あのお菓子を食べ過ぎよ。
お茶会では、たくさんお食べてになっていたわ。
刺繍ししゅうや本を読んでいてばかりで、全然体を動かないせいよ!」

彼女いや彼は、ほほに手をえてため息をつく。
その容姿は、天使のように愛らしいお嬢様!

本当はお坊ちゃまのラファエルを見てメイドたちは、どう呼び掛けていいのか最初は悩んでいた。

ロベール家伯爵家の由緒ゆいしょ正しき長男が、可愛らしいドレスを身に着けている理由わけがあった。

 それは彼が3歳の時に、家族そろってお茶を飲み団らんしていた時だ。

「旦那様、聞いて下さいませ。
せっかく上の娘たちに作ったドレスが、2人とも太って入らなかったのよ。
もったんないわ!
ラルに着せても、宜しいかしら?この子、美人さんで似合いそうですわよ?!」

母アリシアは何を血迷ったか、夫に変なお願いをしてきた。

「そうだな。
まだ幼いから外出しないし、屋敷の中ならかまわん。
しかしなぁ、ラファエルは一応は男の子だからな?!」

父のモーリスが難色なんしょくしめすと、上の二人の姉妹が父に話しかけた。

「お父様、お話をしても宜しいですか?
私たちのせいで、ごめんなさい。どうして、こんなに太っちゃったのかしら?!」

「太りたくて、太ったつもりはないのです!
本当に申し訳ありません」

2人の可愛い娘たちが今にも泣きそうな顔で、父である自分に謝るてくるのだ。

「あっ!お前たちは悪くない!
健康で元気でさえあればよいのだ。
ラルには、ドレスを着せてもいいぞ!
かわいい娘が3人いると、思えばよいではないか!ハッ、ハハハ」

父はあっさりと、女性3人に簡単に負けたのだ。
女性の涙に男は弱いと、たった3歳のラファエルがぼんやりと感じたひとこまであった。
 
  それから母アリシアは、素早くに行動を起こした。
屋敷の全使用人たちを庭に集めて、ドレスに着替えたラファエルを前に宣言した。

「皆さんー!
今日から長男ラファエルは、男であって男ではなく。
女のように見えて、女ではありません。
コホン、姉たちが着る予定のドレスを無駄むだにしたくありませんの。
ねぇー見て、この子ドレスがよく似合うでしょう?
しばらくはドレス着せるけど、気にしなくていいわ。
皆さん、分かりましてー!」

母アリシアは、使用人たちが戸惑とまどいながら聞いているのを完全に無視していた。

執事長しつじちょうとメイド長が、代表して冷静に奥様の話に質問する。

「奥様の主旨しゅしはわかりますが、どうお名前をお呼びすれば宜しいのでしょうか?」

「そうでございますわ。
奥様!おぼちゃま、お嬢様どちらなんですか?!」

使用人たちが動揺どうようしザワつく中を、女主人はビシッと指示した。

「もう、ラル様でいいわよ。
ラファエルって呼びづらいでしょう?
何でそんな名にしたのかしらね?
ラル、ラルもラル様でいいですよね?!」

まだ3歳の息子に丸投げするとは、母親をジーっと無表情で見ていた幼いラファエル。

「お母様、どうだっていい。
もう、好きに呼んでよ!」

ロベール家の適当な考えの遺伝子は、着々と受け継がれていたのがわかった瞬間である。

使用人たちも、呼び名が決まればどうでもいい雰囲気ふんいき
 一同いちどうは、仕事に戻らないとしか考えがなく急ぎ解散した。


  
    
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