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第6章  黒い森の戦い

第28話 隠密の沙汰は高く言え

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  食後は真剣な話し合いになり、討論会とうろんかい並みになっていた。
最初はまだ子供の私は除外してはと意見があったが、余りにも深く全て知りに関わってしまっていたので最後まで付き合うことになる。

「なんと、西のランシがその様になっていたのか。
治安が悪くなっているとは、風の噂で聞いていたが本当だったのだな」

東の将軍スクード公爵が、話をうかがっていると厳しい顔つきになった。

ヴェントが西の将軍になってから、税金が段々と高くなり暮らしが苦しくなっていった。
そうなると、食べる為に盗みや時には人を害するなど問題が増えてしまう。

「その高くした税で、今回の戦いの準備に資金を当てたんだな。
領民たちは、税に不満や抗議しなかったのか?!」

ヘイズ王はランシの民たちを思い、なぜ静かに黙っていたのか不思議になるのである。

「領民たちには芝居や祭りなどを無料で行い観せてました。
関心をそちらに向けさせていたようであります。
それにより、良い領主と思われてたようです」

北の将軍チューダー侯爵は、ヴェントがあやしいと分かると部下たちをランシに行かせた。
内緒で、秘密に調査を命じていたのである。

「民とは、単純な者が多い。
娯楽ごらくを無料で提供すれば、すぐに飛びつく。
治安が悪化したのも、祭りに来ているよそ者だと思い込ませる。
ヴェントは、なかなか巧妙こうみょうやつだったようだ」

祖父グレゴリーは、腕を組むと座って的確な憶測おくそくを述べた。

そうだったのか。
私がヴェントの奥方を、強盗ごうとうから助けた時から治安が悪かった。
ごろつきが集まれば、その者たちを雇えば兵になる。

『どうせ、彼らはヴェントからすれば捨てこまだわ。
傷つこうが死ぬのうがどうでもいい』

「プリムは鋭いのう。
我が孫だけあるわい。
しかし、女が口にする言葉ではないぞ。
気をつけなさい!」

じじバカなグレゴリーは孫娘の大きな独り言に笑っていたが、釘を差すのは忘れてない。
真っ赤な赤い顔で口を閉じ、うつむく彼女は体温が上昇していた。

「そうなりますと。
ヴェントが、西の将軍になったのは3年前。
その間準備していたとは、我々はまったく気づきもしなかった」

『3年前ですって?!』

チューダー侯爵の話に食い付く、プリムローズ。
またベルナドッテ公爵夫人が、お隠れになった年と同じ時期だわ。
偶然すぎて、これは…。

「マーシャルの弟をどう処遇しょぐう致しますか?
兄の伯爵が無事なら、彼をどうしたとなりますよ」

「なら、いっそう自害する前に閉じ込めた場所を伝えた。
そして、我らが助けた事にしたらどうだ?!」

チューダー侯爵とスクード公爵が考え、ここまでの話の道筋みちすじ提案ていあんする。

「良い考えだと思う!
だがその弟をいずれにかくまわせて、暮らさせれば良いのだ!?」

「わが国エテルネル!
わしの領地ではどうだな?
ゲラン親子やそのつかえていた者たち。
大勢がヘイズからコチラに流れている。
言葉は、最低限は困らんぞ」

王の言葉にクラレンス公爵が、助け舟だし難問を退しりぞけた。

「【隠密おんみつ沙汰さたは高く言え】を、実行を致しましょう。
ここで話された事を、全国民に対して公言するです」

「なるほど、ひそひそ話すと人の好奇心をき立てるものだ。
普通にした方が、目立たずに秘密は守れるかもしれん」

祖父グレゴリーはこの話しに乗る言葉を言うと、ヘイズ王も二人の発案をよいと判断した。

「では、早速その様に進めましょう。
また兄弟が離ればなれになりますが、生き抜くためです。
辛いことですがな…」

「生きていれば、またいつかきっと会えますわ。
そこまで、落ち込んで暗くなりなさるな」

チューダー侯爵の後ろ向きな発言を、消し去るように未来ある若い少女は大人たちに発破はっぱをかける。

相変わらず子供のくせに、物怖じしないのう。大きな態度する孫を、グレゴリーはチラリと横目に見てニヤける。

『やはりどう見ても、ヴィクトリア似じゃな。
幼いからまだ可愛いいと笑って許されるが、そろそろ言い聞かせなくてはならんのう~』

この性格を自分に似たとはけして認めないグレゴリーは、胸の中だけでつぶやく。

西の将軍をどう処罰するのか。
税を国の定めるより高くし、娘の恋路こいじのためにスクード公爵の嫡男ちゃくなんかどわかして誘惑しようとした事。
一緒にいた兄ブライアンを、恐らくエリアスと間違え誘拐事件ゆうかいじけんを起こした罪。

将軍職を辞して領地鞍替くらがえ、侯爵から位下げして王家の監視かんしかに一生見張られ終わりか。
納得できないけど、それ以上は無理だろう。
それは大人の事情で、常識の範囲内で決着つけるしかない。

彼女はそんな結末を考え退屈そうに聞いていたら、どうも寝落ねおちちする一歩手前。
薄れゆく意識の中で、お祖父様と他の方々の笑い声を聞いたような気がして眠りに落ちるのだった。
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