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第6章 黒い森の戦い
第27話 千里の道も一歩から
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夕食は、会話も和やかにそれからは進んでいた。
最後にデザートが出された時に、甘いものに目がない彼女がそれを食べた瞬間に驚く。
「このねっとりとした甘み。
かかった蕩けたチョコレートと生クリームとの絶妙なハーモニー。
うぅ~ん、美味しいわ!
これは?!
ねっとりとした甘い食材は、これは何ですか?」
行儀悪くフォークで何度も刺しながら、彼女は口に入れる度に興奮状態になる。
横に座るスクード公爵が笑いながら、その食べ物の正体を教えてくれた。
「バナナと言う果物ですわい。
ヘイズは南国じゃあ。
貴国とは、違う食べ物がたくさんと思うぞ!」
「バナナと言いますのね!
この食べ物を、私の店でお出しして広めたいですわ。
こんなにも美味しいんですもの!」
頬に手を添えて、目を閉じて味わうように首を傾げる。
悩ましい顔つきする少女を笑って見ていたヘイズ王は、良いことを考えたとばかりに手を一度叩いた。
「そうだ、マーシャル!
プリムローズ嬢の願いをかなえてあげよ!
そなたは弟が、彼女に怖い思いをさせた。
その罪滅ぼしを致すのだ」
端に座るマーシャル伯爵に、主君として命じたのである。
「仰せの通り、陛下。
今からバナナをお見せしたら如何ですか?
食事中の余興にもなります」
「それは面白いな。
今すぐに、青い物と普通と甘熟した品を持って参れ!」
王の指示を聞いていた臣下たちも、それは良いと感心しているようであった。
プリムローズ独りがバナナの正体が分からないので、不思議顔していると自然にまた笑みが漏れてくる。
給仕の者が銀の大皿に3本のバナナを乗せ、ヘイズ王の前に持参する。
「これがバナナと申します。
これが沢山ついたのを、一本ずつ切って持ってきた。
青から黄色に変わり、黒い斑点が出たら甘熟しておる」
「これがバナナというものですの。
陛下は、バナナにお詳しいのですね。
どうやって食するのですか?」
質問すると、王が真ん中の黄色を手にして皮を剥き始めた。
「こうして中身を出して、がぶりつくのだ。
行儀悪いけど人が居ない時は、余はいつもこうしておるぞ」
言われた通りに渡されたバナナを、彼女は小さく開けた口に入れて食べてみる。
「しっかりした食感で、今食べたのよりも甘みが抑えられてますわ。
美味しさは変わりませんが…」
「では、次は甘熟を食べてみるがよい!
甘みの違いがわかるはずだ。」
外から匂いがする黒い斑点のあるバナナをゴワゴワ持ち、彼女は剥くと一口だけ口にした。
「あっま~い!!
固さも先程より柔らかいですわ。
これをデザートに使用しましたのね」
エテルネルの店で使いたい、この味をどうしても皆に伝えたいと決心する。
「この美味しいバナナを、エテルネルに運べませんでしょうか?
私が出店している店で、お出ししたいのです。
駄目でしょうか?!」
紫の瞳をキラキラ輝かして、お願いポーズで必死アピール。
「それは、余は別に構わんぞ。
これをエテルネルとの輸入の先駆けとして徐々に国交を開く足がかりにしたいと思う」
ヘイズ王の許可を受けて、彼女はバナナの皿を天井に向けて掲げた。
「素晴らしい日になりました。
このバナナが、両国の架け橋になります。
どんなことも、言ってみるものですわね」
チューダー侯爵がつい口に挟む。
この会話で思い出した言葉を話すと、その場を盛り上げてくれた。
「いやいや、これはー。
【千里の道も一歩から】ですな。
バナナはその一歩に値しますと、私は感じたのです」
「千里のような遠い道も、最初の一歩を踏み出さなくては前には進まない。
開国を目指して歩もう!」
ヘイズ王のお言葉に感動しつつ深く心に響く中、彼女は現実に直面し言葉を発した方に質問してみた。
「チューダー侯爵様、そのお考えは素敵ですわ。
ですが、このバナナは腐らずにエテルネルまで運べますのかしら?!」
「大丈夫ですよ。
青いままで運べば、1ヶ月位で黄色に変化する。
ですから、戦などの食料にも適しているんです」
バナナを産地にしている領主のマーシャル伯爵は、案じてる少女に後ろの席より控えめに説明する。
「安心しましたわ。
お祖父様、エテルネルに持って帰って下さいませんか?!
レシピも添えて、カリスでお出ししたいのです」
前に座る祖父に伝えると、承諾して首を縦に振る。
突如思い出したかのよう、困りことを口にする。
「帰りで思い出した!
思ったより、旅の日数がかかってしもうたわい。
兄ブライアンの学園が始まる前に、帰国が出来ぬやもしれん。
ほんに、参った。
困ったのう…」
『それは大問題だわ。
アルゴラにいるルシアン殿下が、ヘイズにいると思っていないはず。
秘密で来てしまっている訳だし、戻れないのをどう言い訳をすればいいのよ!?』
頭を抱えそうになるクラレンス公爵と孫娘を、ヘイズ王は意外な解決策を与えてくれた。
「グレゴリー殿、案ずるな。
特別に南の海路から、アルゴラに向けて船を出せば良い。
王命で許可する。
マーシャルよ!
ヘイズで1番早い船で、必ずやクラレンス公爵を送り届けるのだ」
「御意!
勅命確かに承りました。
直ぐにでも、船の手配をいたします」
マーシャル伯爵は、胸に手を置いて承諾し頭を下げた。
「ほぉ~、助かったわい。
ずっと、どうして良いか考えておってな。
妻ヴィクトリアを、急ぎコチラに呼ばんとならん」
お祖父様を助けるために、今度は孫娘が急ぎ動いた。
「お祖父様、ピーちゃんを報せに飛ばせますわ。
明日には、おばあ様にお知らせ出来ます」
彼女は中座して手紙をしたためると、ピーちゃんを指笛で呼び出し頼むのである。
「超特急便でこの手紙をメリーとおばあ様に渡して下さい!
ピーちゃん、気をつけて飛ん行ってね!」
真剣にお願いされて、1度鳴くと窓から飛び立つ。
『おばあ様たちが来る前に、私も急いで長寿の泉を汲みに行こう!』
空の彼方に飛んでいた姿は、どんどん小さくなり見えなくなってしまった。
ピーちゃんをベランダの手すりに捕まって、プリムローズは見送り行動に移す。
最後にデザートが出された時に、甘いものに目がない彼女がそれを食べた瞬間に驚く。
「このねっとりとした甘み。
かかった蕩けたチョコレートと生クリームとの絶妙なハーモニー。
うぅ~ん、美味しいわ!
これは?!
ねっとりとした甘い食材は、これは何ですか?」
行儀悪くフォークで何度も刺しながら、彼女は口に入れる度に興奮状態になる。
横に座るスクード公爵が笑いながら、その食べ物の正体を教えてくれた。
「バナナと言う果物ですわい。
ヘイズは南国じゃあ。
貴国とは、違う食べ物がたくさんと思うぞ!」
「バナナと言いますのね!
この食べ物を、私の店でお出しして広めたいですわ。
こんなにも美味しいんですもの!」
頬に手を添えて、目を閉じて味わうように首を傾げる。
悩ましい顔つきする少女を笑って見ていたヘイズ王は、良いことを考えたとばかりに手を一度叩いた。
「そうだ、マーシャル!
プリムローズ嬢の願いをかなえてあげよ!
そなたは弟が、彼女に怖い思いをさせた。
その罪滅ぼしを致すのだ」
端に座るマーシャル伯爵に、主君として命じたのである。
「仰せの通り、陛下。
今からバナナをお見せしたら如何ですか?
食事中の余興にもなります」
「それは面白いな。
今すぐに、青い物と普通と甘熟した品を持って参れ!」
王の指示を聞いていた臣下たちも、それは良いと感心しているようであった。
プリムローズ独りがバナナの正体が分からないので、不思議顔していると自然にまた笑みが漏れてくる。
給仕の者が銀の大皿に3本のバナナを乗せ、ヘイズ王の前に持参する。
「これがバナナと申します。
これが沢山ついたのを、一本ずつ切って持ってきた。
青から黄色に変わり、黒い斑点が出たら甘熟しておる」
「これがバナナというものですの。
陛下は、バナナにお詳しいのですね。
どうやって食するのですか?」
質問すると、王が真ん中の黄色を手にして皮を剥き始めた。
「こうして中身を出して、がぶりつくのだ。
行儀悪いけど人が居ない時は、余はいつもこうしておるぞ」
言われた通りに渡されたバナナを、彼女は小さく開けた口に入れて食べてみる。
「しっかりした食感で、今食べたのよりも甘みが抑えられてますわ。
美味しさは変わりませんが…」
「では、次は甘熟を食べてみるがよい!
甘みの違いがわかるはずだ。」
外から匂いがする黒い斑点のあるバナナをゴワゴワ持ち、彼女は剥くと一口だけ口にした。
「あっま~い!!
固さも先程より柔らかいですわ。
これをデザートに使用しましたのね」
エテルネルの店で使いたい、この味をどうしても皆に伝えたいと決心する。
「この美味しいバナナを、エテルネルに運べませんでしょうか?
私が出店している店で、お出ししたいのです。
駄目でしょうか?!」
紫の瞳をキラキラ輝かして、お願いポーズで必死アピール。
「それは、余は別に構わんぞ。
これをエテルネルとの輸入の先駆けとして徐々に国交を開く足がかりにしたいと思う」
ヘイズ王の許可を受けて、彼女はバナナの皿を天井に向けて掲げた。
「素晴らしい日になりました。
このバナナが、両国の架け橋になります。
どんなことも、言ってみるものですわね」
チューダー侯爵がつい口に挟む。
この会話で思い出した言葉を話すと、その場を盛り上げてくれた。
「いやいや、これはー。
【千里の道も一歩から】ですな。
バナナはその一歩に値しますと、私は感じたのです」
「千里のような遠い道も、最初の一歩を踏み出さなくては前には進まない。
開国を目指して歩もう!」
ヘイズ王のお言葉に感動しつつ深く心に響く中、彼女は現実に直面し言葉を発した方に質問してみた。
「チューダー侯爵様、そのお考えは素敵ですわ。
ですが、このバナナは腐らずにエテルネルまで運べますのかしら?!」
「大丈夫ですよ。
青いままで運べば、1ヶ月位で黄色に変化する。
ですから、戦などの食料にも適しているんです」
バナナを産地にしている領主のマーシャル伯爵は、案じてる少女に後ろの席より控えめに説明する。
「安心しましたわ。
お祖父様、エテルネルに持って帰って下さいませんか?!
レシピも添えて、カリスでお出ししたいのです」
前に座る祖父に伝えると、承諾して首を縦に振る。
突如思い出したかのよう、困りことを口にする。
「帰りで思い出した!
思ったより、旅の日数がかかってしもうたわい。
兄ブライアンの学園が始まる前に、帰国が出来ぬやもしれん。
ほんに、参った。
困ったのう…」
『それは大問題だわ。
アルゴラにいるルシアン殿下が、ヘイズにいると思っていないはず。
秘密で来てしまっている訳だし、戻れないのをどう言い訳をすればいいのよ!?』
頭を抱えそうになるクラレンス公爵と孫娘を、ヘイズ王は意外な解決策を与えてくれた。
「グレゴリー殿、案ずるな。
特別に南の海路から、アルゴラに向けて船を出せば良い。
王命で許可する。
マーシャルよ!
ヘイズで1番早い船で、必ずやクラレンス公爵を送り届けるのだ」
「御意!
勅命確かに承りました。
直ぐにでも、船の手配をいたします」
マーシャル伯爵は、胸に手を置いて承諾し頭を下げた。
「ほぉ~、助かったわい。
ずっと、どうして良いか考えておってな。
妻ヴィクトリアを、急ぎコチラに呼ばんとならん」
お祖父様を助けるために、今度は孫娘が急ぎ動いた。
「お祖父様、ピーちゃんを報せに飛ばせますわ。
明日には、おばあ様にお知らせ出来ます」
彼女は中座して手紙をしたためると、ピーちゃんを指笛で呼び出し頼むのである。
「超特急便でこの手紙をメリーとおばあ様に渡して下さい!
ピーちゃん、気をつけて飛ん行ってね!」
真剣にお願いされて、1度鳴くと窓から飛び立つ。
『おばあ様たちが来る前に、私も急いで長寿の泉を汲みに行こう!』
空の彼方に飛んでいた姿は、どんどん小さくなり見えなくなってしまった。
ピーちゃんをベランダの手すりに捕まって、プリムローズは見送り行動に移す。
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