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第6章 黒い森の戦い
第26話 いらぬお世話の蒲焼
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お菓子とお茶を堪能して、独りで部屋に戻ろうとした時に何かを激しく叩き合う音がした。
木の陰からそっと覗き見すると、ルシアン殿下と祖父グレゴリーが木刀を持っていた。
『ほぉー、お祖父様が稽古をつけてるのか。
泉の水の力は本物だ。
衰え知らずで、動きが軽快なこと。
殿下は…。まだまだですわね』
よしよしと頷き、彼女はまた歩いて部屋に向かう。
今度は下品な笑い声が気になり、そちらに出向くとギルを中心にタルモ殿たちと子分らが夕方になる前から酒盛りをしている。
朝っぱらからではないが、今から飲んで夜はどうなんだと様子を見て思っていた。
「いやーっ、生きて帰れて良かった。
あの謀反を、訓練で収めるみたいたぜ!」
「私はそれで良いと思います。
怪我は最低限で、死人は出なかったのですから」
ギルとタルモの会話を盗み聞き、自分は腑に落ちない。
ヘイズ王が、そうだと言うならそう落ちつくのであろう。
「お嬢は納得するかなぁ?
きっと駄々こねて、王様にとんでもない事を、言ってくるんじゃないか?!」
輪になって座っていた子分の一人がそう話すと、だよなーと皆が同じ意見なのか騒ぎだした。
『アイツらに、そう思われているとは心外だわ。
報酬は欲しいな。
こんなに振り回されて、何もなしでは使われ損よね』
何がいいか、よくよく考えてみよう。
ちゃかりした、いい性格していた彼女である。
彼らに、気づかれないように気配を消し、不気味な含み笑いをしてその場を後にした。
夕食になると彼女に用意された席順に違和感を感じ、少し緊張気味に座っていた。
『どうして、私がヘイズ王の側近くの席になっているの?!』
ここに座るのは、スクード公爵様が妥当のはずだ。
席の前には、祖父がいつもみたいに偉そうに座っている。
『もしや、私へのご機嫌取りか』
他国の私たちに、口止めするために媚びを売ろうとしているのだろうか。
このようなことに関して、彼女は実に勘が鋭い持ち主だった。
「余がしっかりと国を統治していれば、臣下を迷わすこともなかった。
マーシャル伯爵夫妻には、辛い思いをさせてしもうた。
ゆっくりとだが、他国の文化を取り入れるよう開国を目指そうと思う」
ヘイズ王が食事前にそう話すと、スクード公爵が話したげな態度して陛下の許しを得ていた。
「過ぎ去った事は、巻き戻すことは出来ません。
しかし、未来への一歩になりましょう。
食事後にまた皆様で話し合いますが、儂は陛下のご意志に賛同致しますぞ」
強い意思表示を表すと、後ろに席を構える北の将軍チューダー侯爵が強く首を縦に振る。
少しバツの悪気なマーシャル伯爵夫妻は、座ったままだが深く頭を垂れていた。
「では、食事にさせて貰おうか。
プリムローズ嬢には若い者が居なくて退屈かも知れんが、エテルネルの話でも余にしてくれぬか?」
私だけでここにいて、兄扱いのルシアン殿下は除外されている。
お祖父様との稽古で倒れたか。
これからの話し合いに、邪魔者扱いされたかの理由ね。
「そんな事は御座いませんわ。
ヘイズ王のお近くで、ご尊顔を拝してお食事ができる。
それだけで、エテルネル国民を代表して光栄でございます」
周りの者は、本当に心から言っているのか疑っていた。
あれだけ陛下に無礼な物言いをして、もう忘れておるのかとー。
前に座る祖父は、自分と同じく他国出身の立場。
同じくシラーっとした態度で、早く話が終わらないかと詰まらなそうに黙って聞いていた。
「エテルネルから留学しに来ただけで、このような事に巻き込まれて申し訳ない。
そちらには、夢でも見たと忘れてくれぬか?!」
軍事訓練と理由をつけて、お咎めなしにするおつもりだわ。
「ですがマーシャル伯爵は良いとして、西の将軍は…」
「プリムローズ!
【いらぬお世話の蒲焼】であるぞ」
妙な言葉を言い出してくるので、まさか寿命は延びたかもしれんがボケたのではと心配になり祖父に言い返す。
「蒲焼ってなんですか?
どんな意味ですか?お祖父様」
どうもここにいる人たちも、首を捻りたい顔をしていた。
「蒲焼はウナギという、長いにょろにょろする魚だそうだ。
儂も聞いただけで、実際に見たこともない。
それを捌いてタレをつけて焼いて食べるものである」
「珍しい食べ物ですね。
私も、食してみたくなりましたわ」
食べ物には目がない彼女は、子供らしいこと言ってきた。
その会話で場が、少しだけ和やかになってくる。
「世話を焼くとその蒲焼をかけて言う。
言葉遊びの洒落じゃな。
要するに余計なお節介という訳だ」
下を向き彼女は反省して、全員に謝るように詫びるのだった。
「若輩で他国の者が、貴国の事に対して意見を述べて申し訳ありません。
どうか、お許し下さいませ」
「ハハハ、良いのじゃあ。
プリムローズ嬢が居なければ、分からぬ悪事だったからのう。
余も闇から、ようやく抜け出せた気がする。
エリアスという、光が側にいる。
それは、貴女のお陰である」
それからは、エテルネルからヘイズに来てから間の中で違いを聞かれたりした。
学園生活の違いを、存分に皆に話して聞かせたのである。
始まりの緊張感は解けて、笑い声がする夕食になっていった。
木の陰からそっと覗き見すると、ルシアン殿下と祖父グレゴリーが木刀を持っていた。
『ほぉー、お祖父様が稽古をつけてるのか。
泉の水の力は本物だ。
衰え知らずで、動きが軽快なこと。
殿下は…。まだまだですわね』
よしよしと頷き、彼女はまた歩いて部屋に向かう。
今度は下品な笑い声が気になり、そちらに出向くとギルを中心にタルモ殿たちと子分らが夕方になる前から酒盛りをしている。
朝っぱらからではないが、今から飲んで夜はどうなんだと様子を見て思っていた。
「いやーっ、生きて帰れて良かった。
あの謀反を、訓練で収めるみたいたぜ!」
「私はそれで良いと思います。
怪我は最低限で、死人は出なかったのですから」
ギルとタルモの会話を盗み聞き、自分は腑に落ちない。
ヘイズ王が、そうだと言うならそう落ちつくのであろう。
「お嬢は納得するかなぁ?
きっと駄々こねて、王様にとんでもない事を、言ってくるんじゃないか?!」
輪になって座っていた子分の一人がそう話すと、だよなーと皆が同じ意見なのか騒ぎだした。
『アイツらに、そう思われているとは心外だわ。
報酬は欲しいな。
こんなに振り回されて、何もなしでは使われ損よね』
何がいいか、よくよく考えてみよう。
ちゃかりした、いい性格していた彼女である。
彼らに、気づかれないように気配を消し、不気味な含み笑いをしてその場を後にした。
夕食になると彼女に用意された席順に違和感を感じ、少し緊張気味に座っていた。
『どうして、私がヘイズ王の側近くの席になっているの?!』
ここに座るのは、スクード公爵様が妥当のはずだ。
席の前には、祖父がいつもみたいに偉そうに座っている。
『もしや、私へのご機嫌取りか』
他国の私たちに、口止めするために媚びを売ろうとしているのだろうか。
このようなことに関して、彼女は実に勘が鋭い持ち主だった。
「余がしっかりと国を統治していれば、臣下を迷わすこともなかった。
マーシャル伯爵夫妻には、辛い思いをさせてしもうた。
ゆっくりとだが、他国の文化を取り入れるよう開国を目指そうと思う」
ヘイズ王が食事前にそう話すと、スクード公爵が話したげな態度して陛下の許しを得ていた。
「過ぎ去った事は、巻き戻すことは出来ません。
しかし、未来への一歩になりましょう。
食事後にまた皆様で話し合いますが、儂は陛下のご意志に賛同致しますぞ」
強い意思表示を表すと、後ろに席を構える北の将軍チューダー侯爵が強く首を縦に振る。
少しバツの悪気なマーシャル伯爵夫妻は、座ったままだが深く頭を垂れていた。
「では、食事にさせて貰おうか。
プリムローズ嬢には若い者が居なくて退屈かも知れんが、エテルネルの話でも余にしてくれぬか?」
私だけでここにいて、兄扱いのルシアン殿下は除外されている。
お祖父様との稽古で倒れたか。
これからの話し合いに、邪魔者扱いされたかの理由ね。
「そんな事は御座いませんわ。
ヘイズ王のお近くで、ご尊顔を拝してお食事ができる。
それだけで、エテルネル国民を代表して光栄でございます」
周りの者は、本当に心から言っているのか疑っていた。
あれだけ陛下に無礼な物言いをして、もう忘れておるのかとー。
前に座る祖父は、自分と同じく他国出身の立場。
同じくシラーっとした態度で、早く話が終わらないかと詰まらなそうに黙って聞いていた。
「エテルネルから留学しに来ただけで、このような事に巻き込まれて申し訳ない。
そちらには、夢でも見たと忘れてくれぬか?!」
軍事訓練と理由をつけて、お咎めなしにするおつもりだわ。
「ですがマーシャル伯爵は良いとして、西の将軍は…」
「プリムローズ!
【いらぬお世話の蒲焼】であるぞ」
妙な言葉を言い出してくるので、まさか寿命は延びたかもしれんがボケたのではと心配になり祖父に言い返す。
「蒲焼ってなんですか?
どんな意味ですか?お祖父様」
どうもここにいる人たちも、首を捻りたい顔をしていた。
「蒲焼はウナギという、長いにょろにょろする魚だそうだ。
儂も聞いただけで、実際に見たこともない。
それを捌いてタレをつけて焼いて食べるものである」
「珍しい食べ物ですね。
私も、食してみたくなりましたわ」
食べ物には目がない彼女は、子供らしいこと言ってきた。
その会話で場が、少しだけ和やかになってくる。
「世話を焼くとその蒲焼をかけて言う。
言葉遊びの洒落じゃな。
要するに余計なお節介という訳だ」
下を向き彼女は反省して、全員に謝るように詫びるのだった。
「若輩で他国の者が、貴国の事に対して意見を述べて申し訳ありません。
どうか、お許し下さいませ」
「ハハハ、良いのじゃあ。
プリムローズ嬢が居なければ、分からぬ悪事だったからのう。
余も闇から、ようやく抜け出せた気がする。
エリアスという、光が側にいる。
それは、貴女のお陰である」
それからは、エテルネルからヘイズに来てから間の中で違いを聞かれたりした。
学園生活の違いを、存分に皆に話して聞かせたのである。
始まりの緊張感は解けて、笑い声がする夕食になっていった。
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