134 / 142
第6章 黒い森の戦い
第26話 いらぬお世話の蒲焼
しおりを挟む
お菓子とお茶を堪能して、独りで部屋に戻ろうとした時に何かを激しく叩き合う音がした。
木の陰からそっと覗き見すると、ルシアン殿下と祖父グレゴリーが木刀を持っていた。
『ほぉー、お祖父様が稽古をつけてるのか。
泉の水の力は本物だ。
衰え知らずで、動きが軽快なこと。
殿下は…。まだまだですわね』
よしよしと頷き、彼女はまた歩いて部屋に向かう。
今度は下品な笑い声が気になり、そちらに出向くとギルを中心にタルモ殿たちと子分らが夕方になる前から酒盛りをしている。
朝っぱらからではないが、今から飲んで夜はどうなんだと様子を見て思っていた。
「いやーっ、生きて帰れて良かった。
あの謀反を、訓練で収めるみたいたぜ!」
「私はそれで良いと思います。
怪我は最低限で、死人は出なかったのですから」
ギルとタルモの会話を盗み聞き、自分は腑に落ちない。
ヘイズ王が、そうだと言うならそう落ちつくのであろう。
「お嬢は納得するかなぁ?
きっと駄々こねて、王様にとんでもない事を、言ってくるんじゃないか?!」
輪になって座っていた子分の一人がそう話すと、だよなーと皆が同じ意見なのか騒ぎだした。
『アイツらに、そう思われているとは心外だわ。
報酬は欲しいな。
こんなに振り回されて、何もなしでは使われ損よね』
何がいいか、よくよく考えてみよう。
ちゃかりした、いい性格していた彼女である。
彼らに、気づかれないように気配を消し、不気味な含み笑いをしてその場を後にした。
夕食になると彼女に用意された席順に違和感を感じ、少し緊張気味に座っていた。
『どうして、私がヘイズ王の側近くの席になっているの?!』
ここに座るのは、スクード公爵様が妥当のはずだ。
席の前には、祖父がいつもみたいに偉そうに座っている。
『もしや、私へのご機嫌取りか』
他国の私たちに、口止めするために媚びを売ろうとしているのだろうか。
このようなことに関して、彼女は実に勘が鋭い持ち主だった。
「余がしっかりと国を統治していれば、臣下を迷わすこともなかった。
マーシャル伯爵夫妻には、辛い思いをさせてしもうた。
ゆっくりとだが、他国の文化を取り入れるよう開国を目指そうと思う」
ヘイズ王が食事前にそう話すと、スクード公爵が話したげな態度して陛下の許しを得ていた。
「過ぎ去った事は、巻き戻すことは出来ません。
しかし、未来への一歩になりましょう。
食事後にまた皆様で話し合いますが、儂は陛下のご意志に賛同致しますぞ」
強い意思表示を表すと、後ろに席を構える北の将軍チューダー侯爵が強く首を縦に振る。
少しバツの悪気なマーシャル伯爵夫妻は、座ったままだが深く頭を垂れていた。
「では、食事にさせて貰おうか。
プリムローズ嬢には若い者が居なくて退屈かも知れんが、エテルネルの話でも余にしてくれぬか?」
私だけでここにいて、兄扱いのルシアン殿下は除外されている。
お祖父様との稽古で倒れたか。
これからの話し合いに、邪魔者扱いされたかの理由ね。
「そんな事は御座いませんわ。
ヘイズ王のお近くで、ご尊顔を拝してお食事ができる。
それだけで、エテルネル国民を代表して光栄でございます」
周りの者は、本当に心から言っているのか疑っていた。
あれだけ陛下に無礼な物言いをして、もう忘れておるのかとー。
前に座る祖父は、自分と同じく他国出身の立場。
同じくシラーっとした態度で、早く話が終わらないかと詰まらなそうに黙って聞いていた。
「エテルネルから留学しに来ただけで、このような事に巻き込まれて申し訳ない。
そちらには、夢でも見たと忘れてくれぬか?!」
軍事訓練と理由をつけて、お咎めなしにするおつもりだわ。
「ですがマーシャル伯爵は良いとして、西の将軍は…」
「プリムローズ!
【いらぬお世話の蒲焼】であるぞ」
妙な言葉を言い出してくるので、まさか寿命は延びたかもしれんがボケたのではと心配になり祖父に言い返す。
「蒲焼ってなんですか?
どんな意味ですか?お祖父様」
どうもここにいる人たちも、首を捻りたい顔をしていた。
「蒲焼はウナギという、長いにょろにょろする魚だそうだ。
儂も聞いただけで、実際に見たこともない。
それを捌いてタレをつけて焼いて食べるものである」
「珍しい食べ物ですね。
私も、食してみたくなりましたわ」
食べ物には目がない彼女は、子供らしいこと言ってきた。
その会話で場が、少しだけ和やかになってくる。
「世話を焼くとその蒲焼をかけて言う。
言葉遊びの洒落じゃな。
要するに余計なお節介という訳だ」
下を向き彼女は反省して、全員に謝るように詫びるのだった。
「若輩で他国の者が、貴国の事に対して意見を述べて申し訳ありません。
どうか、お許し下さいませ」
「ハハハ、良いのじゃあ。
プリムローズ嬢が居なければ、分からぬ悪事だったからのう。
余も闇から、ようやく抜け出せた気がする。
エリアスという、光が側にいる。
それは、貴女のお陰である」
それからは、エテルネルからヘイズに来てから間の中で違いを聞かれたりした。
学園生活の違いを、存分に皆に話して聞かせたのである。
始まりの緊張感は解けて、笑い声がする夕食になっていった。
木の陰からそっと覗き見すると、ルシアン殿下と祖父グレゴリーが木刀を持っていた。
『ほぉー、お祖父様が稽古をつけてるのか。
泉の水の力は本物だ。
衰え知らずで、動きが軽快なこと。
殿下は…。まだまだですわね』
よしよしと頷き、彼女はまた歩いて部屋に向かう。
今度は下品な笑い声が気になり、そちらに出向くとギルを中心にタルモ殿たちと子分らが夕方になる前から酒盛りをしている。
朝っぱらからではないが、今から飲んで夜はどうなんだと様子を見て思っていた。
「いやーっ、生きて帰れて良かった。
あの謀反を、訓練で収めるみたいたぜ!」
「私はそれで良いと思います。
怪我は最低限で、死人は出なかったのですから」
ギルとタルモの会話を盗み聞き、自分は腑に落ちない。
ヘイズ王が、そうだと言うならそう落ちつくのであろう。
「お嬢は納得するかなぁ?
きっと駄々こねて、王様にとんでもない事を、言ってくるんじゃないか?!」
輪になって座っていた子分の一人がそう話すと、だよなーと皆が同じ意見なのか騒ぎだした。
『アイツらに、そう思われているとは心外だわ。
報酬は欲しいな。
こんなに振り回されて、何もなしでは使われ損よね』
何がいいか、よくよく考えてみよう。
ちゃかりした、いい性格していた彼女である。
彼らに、気づかれないように気配を消し、不気味な含み笑いをしてその場を後にした。
夕食になると彼女に用意された席順に違和感を感じ、少し緊張気味に座っていた。
『どうして、私がヘイズ王の側近くの席になっているの?!』
ここに座るのは、スクード公爵様が妥当のはずだ。
席の前には、祖父がいつもみたいに偉そうに座っている。
『もしや、私へのご機嫌取りか』
他国の私たちに、口止めするために媚びを売ろうとしているのだろうか。
このようなことに関して、彼女は実に勘が鋭い持ち主だった。
「余がしっかりと国を統治していれば、臣下を迷わすこともなかった。
マーシャル伯爵夫妻には、辛い思いをさせてしもうた。
ゆっくりとだが、他国の文化を取り入れるよう開国を目指そうと思う」
ヘイズ王が食事前にそう話すと、スクード公爵が話したげな態度して陛下の許しを得ていた。
「過ぎ去った事は、巻き戻すことは出来ません。
しかし、未来への一歩になりましょう。
食事後にまた皆様で話し合いますが、儂は陛下のご意志に賛同致しますぞ」
強い意思表示を表すと、後ろに席を構える北の将軍チューダー侯爵が強く首を縦に振る。
少しバツの悪気なマーシャル伯爵夫妻は、座ったままだが深く頭を垂れていた。
「では、食事にさせて貰おうか。
プリムローズ嬢には若い者が居なくて退屈かも知れんが、エテルネルの話でも余にしてくれぬか?」
私だけでここにいて、兄扱いのルシアン殿下は除外されている。
お祖父様との稽古で倒れたか。
これからの話し合いに、邪魔者扱いされたかの理由ね。
「そんな事は御座いませんわ。
ヘイズ王のお近くで、ご尊顔を拝してお食事ができる。
それだけで、エテルネル国民を代表して光栄でございます」
周りの者は、本当に心から言っているのか疑っていた。
あれだけ陛下に無礼な物言いをして、もう忘れておるのかとー。
前に座る祖父は、自分と同じく他国出身の立場。
同じくシラーっとした態度で、早く話が終わらないかと詰まらなそうに黙って聞いていた。
「エテルネルから留学しに来ただけで、このような事に巻き込まれて申し訳ない。
そちらには、夢でも見たと忘れてくれぬか?!」
軍事訓練と理由をつけて、お咎めなしにするおつもりだわ。
「ですがマーシャル伯爵は良いとして、西の将軍は…」
「プリムローズ!
【いらぬお世話の蒲焼】であるぞ」
妙な言葉を言い出してくるので、まさか寿命は延びたかもしれんがボケたのではと心配になり祖父に言い返す。
「蒲焼ってなんですか?
どんな意味ですか?お祖父様」
どうもここにいる人たちも、首を捻りたい顔をしていた。
「蒲焼はウナギという、長いにょろにょろする魚だそうだ。
儂も聞いただけで、実際に見たこともない。
それを捌いてタレをつけて焼いて食べるものである」
「珍しい食べ物ですね。
私も、食してみたくなりましたわ」
食べ物には目がない彼女は、子供らしいこと言ってきた。
その会話で場が、少しだけ和やかになってくる。
「世話を焼くとその蒲焼をかけて言う。
言葉遊びの洒落じゃな。
要するに余計なお節介という訳だ」
下を向き彼女は反省して、全員に謝るように詫びるのだった。
「若輩で他国の者が、貴国の事に対して意見を述べて申し訳ありません。
どうか、お許し下さいませ」
「ハハハ、良いのじゃあ。
プリムローズ嬢が居なければ、分からぬ悪事だったからのう。
余も闇から、ようやく抜け出せた気がする。
エリアスという、光が側にいる。
それは、貴女のお陰である」
それからは、エテルネルからヘイズに来てから間の中で違いを聞かれたりした。
学園生活の違いを、存分に皆に話して聞かせたのである。
始まりの緊張感は解けて、笑い声がする夕食になっていった。
20
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
農地スローライフ、始めました~婚約破棄された悪役令嬢は、第二王子から溺愛される~
可児 うさこ
恋愛
前世でプレイしていたゲームの悪役令嬢に転生した。公爵に婚約破棄された悪役令嬢は、実家に戻ったら、第二王子と遭遇した。彼は王位継承より農業に夢中で、農地を所有する実家へ見学に来たらしい。悪役令嬢は彼に一目惚れされて、郊外の城で一緒に暮らすことになった。欲しいものを何でも与えてくれて、溺愛してくれる。そんな彼とまったり農業を楽しみながら、快適なスローライフを送ります。
婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
私がいなくなっても、あなたは探しにも来ないのでしょうね
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族家の生まれではありながらも、父の素行の悪さによって貧しい立場にあったエリス。そんな彼女は気づいた時、周囲から強引に決められる形で婚約をすることとなった。その相手は大金持ちの御曹司、リーウェル。エリスの母は貧しい暮らしと別れを告げられることに喜び、エリスが内心では快く思っていない婚約を受け入れるよう、大いに圧力をかける。さらには相手からの圧力もあり、断ることなどできなくなったエリスは嫌々リーウェルとの婚約を受け入れることとしたが、リーウェルは非常にプライドが高く自分勝手な性格で、エリスは婚約を結んでしまったことを心から後悔する…。何一つ輝きのない婚約生活を送る中、次第に鬱の海に沈んでいくエリスは、ある日その身を屋敷の最上階から投げてしまうのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる