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第6章  黒い森の戦い

第16話 迷う者は路を問わず

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   罪人ざいにんとなった西トラモントを治めているヴェント侯爵一家が王宮の地下牢ちかろうに入れられるのを領民たちは想像もしないだろう。
彼らはそれなりに、領民たちに対して良い統治していたからだ。

「お父様、私たちはこれからどうなるのでしょうか?」

本当に父は、そんな大罪を犯したの?
西の将軍になられた時に、あんなにお喜びになられていたのに。

「サンドラ、お前だけは命を助けて嘆願たんがんをする。
父を恨め!
私は夢を見すぎたのだな」

自分は欲をかき、運にかけてみた。
もしかしたら、もっと権力を手に入れられるのではないかと勘違いしたのだ。

「お父様とお母様と、どこまでもご一緒致します。
サンドラを独り残さないで!」

なわは外されていたので、抱き合い側に寄り添う父娘。

二人は囚人しゅうじんが入れられるおりのような馬車に乗せられて、王宮の牢屋を目指して揺られるのだった。

   
  常勝の道から出られたプリムローズ一行は、今の自分達がいる場所を把握してなかった。

「ギル~!
ここは何処だと思う?
私たちが、じんをはっていた場所とは違うよね?!」

「違うぜ!
だとしたら、南のマーシャルの領地ではねぇか?!」

方向音痴ほうこうおんちを発揮させ二人で打ち合わせしても、本当に目的地にたどり着けるのか心配になる。

「冷静に、あの時のことを考えたの。
マーシャルは私の放った矢が当たって、お祖父様たちに捕まっていると思うわ」

「お嬢って、ずげぇ自信家だよな!
まとが外れたとか思わねぇの?」

ギルの言葉に、彼女はちょっと揺らぎ始める。

「うぅー、変な事を言わないでよ!
手応えはあったわ。
引き付けて放ったしね」

「そうなると、マーシャルの城を占領せんりょうしているな。
じゃあ、方角は南だ!」

二人がまた同時に違う方角を指し示すと、ヴァンブランが全然違う方へ熊と共に一緒に歩きだした。

「またよ!
私たちと違う方向へ歩きだしたわ。
野生の勘なのかしら?」

主人を完全無視の馬と熊を見ては、ついて行くかどうかと思案する。

「ついて行ってみますか?
お嬢、あの熊をどうするんですかい?
やはり、飼うんですかい?」

ヴァンブランの後ろをトコトコ歩く熊を見て、彼女はペットを思い出してみる。

たかに馬に雪ヒョウ。
馬は普通だし、鷹はりに使えるわ。
ヒョウと熊は、あまりと言うか聞かないよね。
熊って、大体人間に飼えるものなの?」

「さぁ~、知りませんが良いんじゃねぇ?」

聞いた相手が悪かった。
コイツは適当な返事しかしない、お調子者だった。

「仕方ない、ヴァンブランに付いていくわよ」

馬に運命を預けた、人間の二人であった。

  
 馬と熊と人間二人は草原の向こうに家が密集していて街のように見える場所に、その先に湖の側に城らしきものを発見した。

「あれっていかにも、領主の城っぽくない?
きっと、マーシャルの城よね!?」

以前、東の領地のアウローラがあるスクード公爵の城も湖の中洲なかすに建っていたのを思い出していた。

「それっぽいな。
あれが、マーシャルの城とは限らないぜ。
ヘイズには、南にマーシャル以外の領主は他にも居るしな」

プリムローズは喜びが半減して、そんな発言するギルに向かい口をとがらす。

「私、お腹すいた!
だって、まともな食事を最近していないんだよ。
育ち盛りなのに~!
ふぇーん、倒れそう~」

成長しきった大人の男性は、まだ成長途中の女の子を見てデリカシーのない事を言い出した。

「もし栄養失調になったりしたら、出るところが出なくなるかもよ。
そしたら、将来嫁にいけなくなって大変だもんな」

プリムローズは、ギルのむこうずねをばした。

「ねぇ~!
私たちって、【迷う者はみちを問わずなの】かなぁ?
だって、ヴァンブランにけなされている感じがする。
私、これでもご主人様なのに」

彼女は悲しい顔をして、ヴァンブランに乗りながら顔を下に向けた。
ヴァンブラウンはそうじゃないよと、すぐさま首を振ってくれた。

「お嬢!
確かに俺らは方向音痴だと思うが、それ意味違うと思うぞ」

「えっ!
方向音痴のクセに、人に聞かないで勝手に動いて自滅じめつするではないの?
意味、違うの?」

「まぁ、近いけど正式はこうだ。
道に迷う人ほど、人に尋ねたりしない。
学問や生き方の面で賢人や師に、先輩に問わない人を言うんだぜ!」

ウィル親方の息子だけあって結構もの知りだな。
喋り方が、馬鹿っぽくって残念だけどね。
心の中だけにそれを留めとく、彼女であった。

「へぇ~、なら私はちゃんと問うっているわよ。
お祖父様やウィル親方にも」

自慢げに胸を張る姿を支えるように後ろで乗っていて、吹き出して笑い転げそうになるのである。

「ギル!
後ろでバカ笑いすんなー!」

そんなにぎやかな会話していた二人は、常勝の道から出て初めて人間に出会うことになった。
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