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第6章 黒い森の戦い
第13話 我田引水
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マーシャル伯爵の城を占拠したヘイズ王は、彼が何故このような戦をしたのか理由を聞こうとしていた。
「彼の怪我が落ち着いてから、尋問なさった方が宜しいかと存じます」
そうスクード公爵が進言すると、そうかと納得してくれた。
昔から周りに気遣いすぎの主君に、彼は複雑な思いを感じていた。
チューダー将軍と戦の神は、風呂に入り食事していた。
目に入れても可愛い孫娘が行方知れずのせいか、どことなく沈んでいる。
それは至極当然でその心持ちは、勝ち戦が敗戦したような気分になっていた。
ルシアンはニルスに、あの時の状況を確認したかった。
プリムローズの側にあの瞬間居たのは、自分と彼が1番近かったからだ。
「ニルス殿、あの時彼女に矢が飛んできてましたよね。
私には…。
彼女の胸、心臓に刺さる手前に見えました」
「貴方さまもそう見ましたか。
ずっと、あれから気になってました」
二人の考えが一致していたら、彼女の胸には矢が刺さっている状態だ。
ルシアンとニルスは、彼女の現状を心配していた。
祖父のクラレンス公爵に、伝えるかどうか悩んでしまう。
それに、ルシアンは不思議な物を見てしまっていた。
彼女を庇うかのように熊より前に、人らしいものが前に立ちはだかっていたのをー。
『あれは、幽霊かもしれない。
こんな話を言って、誰が信じてくれるというのか』
ルシアンは疲労して幻覚を見たと決めつけて、幽霊を忘れることにした。
それよりも、プリムローズがぶじに戻るよう神に祈っていた。
皆が心を痛めている中心人物は、洞窟の中で熊と泉に来ていた。
「うぁ~、湧水がある!
キレイで大きな泉じゃないの。
では、喉を潤わせて頂こうじゃない」
両手で水を掬おうとしたら、熊がドコからかカップを持ってきて彼女に渡す素振りをした。
熊ちゃんの分と2個キレイに洗って用意する。
「まぁまぁ、熊ちゃんはお行儀いいのね。
何でこんな場所に、カップがあるのかしらね?
では、今度こそ飲みますわね」
カップに水をいれて一口飲むと、体の細胞がピチピチとする感覚がした。
「なにかしら?
この体の奥底から漲る力はー!!
ほぉー、若返るわぁ~!」
まだ11歳とは思えない年よりくさい話ぶりに、周りに誰も居なくて良かったと思えてくる。
熊も横で、上手にカップで飲んでいた。
ほぼカップの水は溢れて、やはり泉に近づき直飲みしている。
ただ、人の真似してみたかったのか。
「もしかしたら、この辺の動物はこうして飲んでいるの?
しかし、美しい絵柄のカップね。
何処の窯元が作ったのかしらね?!」
ひっくり返して底を見て、驚き何度も見つめては叫びだした。
「これはアルゴラ王家の紋章!
それも赤紫色!
アルゴラ常勝王のお品だわ。
幻のカップではないのよ!
この世に、一個も現存しない代物よー!!」
変わった方で、余の使いし物は破壊せよって馬鹿な遺言を残したのよね。
その遺言を無視して、王宮とか残している物は多少あるけどさ。
別名二つ名、破壊王とも陰で言われてるのよ。
まさか、この場所は私が探し求めていた長寿の泉なの!
そうそう、泉の近くには常勝王の剣が刺さってあるはずだが…。
「あっ、あったー!!
これは、かなり汚すぎる。
ただの汚れた棒が、クッ刺さっているしか見えん!」
彼女は持っていた布を切り、水に濡らしてそれを少しだけ拭いてみた。
「ひゃあ~~!!
これ黄金の剣だ!欲しい!
伝承を読んで、憧れていたのよ!
まるで勇者の剣みたいで、貰っても良いかなぁ?
良いよね、私は祖先だしね」
ちょい待ち、考えたらこういう類いは引っこ抜いたらその人に呪いがふりかかる。
最悪はあの世行き、案外抜いたら地震が起きるとか。
いやー、此処に閉じ込められて戻れなくなるのではないだろうか。
「いやいや、やめよう!
この剣には、常勝王の魂と想いが残されている」
彼女は目を瞑り口を固く結ぶと、片方の口元をあげて微笑した。
本音とは裏腹に我慢する時、出てしまう彼女の癖であった。
焚き火をする為に小枝を集めようと彼女は探しに行く。
独りなので必死に中腰で集めている彼女の目の前に、長い棒が差し出された。
「あら、有難うね。
熊ちゃんも枝を拾ってくれたのね!」
気が利くわねと受け取ると、やたらずっしりと重さを感じた。
「もしや、常勝王の勇者の剣!
熊ちゃん、引っこ抜いちゃったの?!」
振り向くと熊は、プリムローズに笑っているように見えた。
つぶらな瞳は、私を見て無邪気に笑い。
そして、褒__ほめ__#められたそうにしているようだ。
抜いてしまったし、わざわざしてくれた熊ちゃんのご好意を無下にはできない。
「【我田引水】の言葉が頭に浮かぶ。
自分の都合のいいように考えたり、物事を進めること。
いいえ、違う!
これは、私の手に渡る運命だったのよ」
嬉しそうに舌を出して喜んでる様子に、優しく頭を撫でてやる。
「熊ちゃん、ありがとうね。
欲しがっているのを分かってくれたんだ。
複雑ですが、気持ちが嬉しいよ」
『しかし、何でこの熊は私にこんなに親切なんだ?』
彼女は首を傾げて、撫でられて舌をだしたまま喜ぶ熊を見つめていた。
「彼の怪我が落ち着いてから、尋問なさった方が宜しいかと存じます」
そうスクード公爵が進言すると、そうかと納得してくれた。
昔から周りに気遣いすぎの主君に、彼は複雑な思いを感じていた。
チューダー将軍と戦の神は、風呂に入り食事していた。
目に入れても可愛い孫娘が行方知れずのせいか、どことなく沈んでいる。
それは至極当然でその心持ちは、勝ち戦が敗戦したような気分になっていた。
ルシアンはニルスに、あの時の状況を確認したかった。
プリムローズの側にあの瞬間居たのは、自分と彼が1番近かったからだ。
「ニルス殿、あの時彼女に矢が飛んできてましたよね。
私には…。
彼女の胸、心臓に刺さる手前に見えました」
「貴方さまもそう見ましたか。
ずっと、あれから気になってました」
二人の考えが一致していたら、彼女の胸には矢が刺さっている状態だ。
ルシアンとニルスは、彼女の現状を心配していた。
祖父のクラレンス公爵に、伝えるかどうか悩んでしまう。
それに、ルシアンは不思議な物を見てしまっていた。
彼女を庇うかのように熊より前に、人らしいものが前に立ちはだかっていたのをー。
『あれは、幽霊かもしれない。
こんな話を言って、誰が信じてくれるというのか』
ルシアンは疲労して幻覚を見たと決めつけて、幽霊を忘れることにした。
それよりも、プリムローズがぶじに戻るよう神に祈っていた。
皆が心を痛めている中心人物は、洞窟の中で熊と泉に来ていた。
「うぁ~、湧水がある!
キレイで大きな泉じゃないの。
では、喉を潤わせて頂こうじゃない」
両手で水を掬おうとしたら、熊がドコからかカップを持ってきて彼女に渡す素振りをした。
熊ちゃんの分と2個キレイに洗って用意する。
「まぁまぁ、熊ちゃんはお行儀いいのね。
何でこんな場所に、カップがあるのかしらね?
では、今度こそ飲みますわね」
カップに水をいれて一口飲むと、体の細胞がピチピチとする感覚がした。
「なにかしら?
この体の奥底から漲る力はー!!
ほぉー、若返るわぁ~!」
まだ11歳とは思えない年よりくさい話ぶりに、周りに誰も居なくて良かったと思えてくる。
熊も横で、上手にカップで飲んでいた。
ほぼカップの水は溢れて、やはり泉に近づき直飲みしている。
ただ、人の真似してみたかったのか。
「もしかしたら、この辺の動物はこうして飲んでいるの?
しかし、美しい絵柄のカップね。
何処の窯元が作ったのかしらね?!」
ひっくり返して底を見て、驚き何度も見つめては叫びだした。
「これはアルゴラ王家の紋章!
それも赤紫色!
アルゴラ常勝王のお品だわ。
幻のカップではないのよ!
この世に、一個も現存しない代物よー!!」
変わった方で、余の使いし物は破壊せよって馬鹿な遺言を残したのよね。
その遺言を無視して、王宮とか残している物は多少あるけどさ。
別名二つ名、破壊王とも陰で言われてるのよ。
まさか、この場所は私が探し求めていた長寿の泉なの!
そうそう、泉の近くには常勝王の剣が刺さってあるはずだが…。
「あっ、あったー!!
これは、かなり汚すぎる。
ただの汚れた棒が、クッ刺さっているしか見えん!」
彼女は持っていた布を切り、水に濡らしてそれを少しだけ拭いてみた。
「ひゃあ~~!!
これ黄金の剣だ!欲しい!
伝承を読んで、憧れていたのよ!
まるで勇者の剣みたいで、貰っても良いかなぁ?
良いよね、私は祖先だしね」
ちょい待ち、考えたらこういう類いは引っこ抜いたらその人に呪いがふりかかる。
最悪はあの世行き、案外抜いたら地震が起きるとか。
いやー、此処に閉じ込められて戻れなくなるのではないだろうか。
「いやいや、やめよう!
この剣には、常勝王の魂と想いが残されている」
彼女は目を瞑り口を固く結ぶと、片方の口元をあげて微笑した。
本音とは裏腹に我慢する時、出てしまう彼女の癖であった。
焚き火をする為に小枝を集めようと彼女は探しに行く。
独りなので必死に中腰で集めている彼女の目の前に、長い棒が差し出された。
「あら、有難うね。
熊ちゃんも枝を拾ってくれたのね!」
気が利くわねと受け取ると、やたらずっしりと重さを感じた。
「もしや、常勝王の勇者の剣!
熊ちゃん、引っこ抜いちゃったの?!」
振り向くと熊は、プリムローズに笑っているように見えた。
つぶらな瞳は、私を見て無邪気に笑い。
そして、褒__ほめ__#められたそうにしているようだ。
抜いてしまったし、わざわざしてくれた熊ちゃんのご好意を無下にはできない。
「【我田引水】の言葉が頭に浮かぶ。
自分の都合のいいように考えたり、物事を進めること。
いいえ、違う!
これは、私の手に渡る運命だったのよ」
嬉しそうに舌を出して喜んでる様子に、優しく頭を撫でてやる。
「熊ちゃん、ありがとうね。
欲しがっているのを分かってくれたんだ。
複雑ですが、気持ちが嬉しいよ」
『しかし、何でこの熊は私にこんなに親切なんだ?』
彼女は首を傾げて、撫でられて舌をだしたまま喜ぶ熊を見つめていた。
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