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第6章  黒い森の戦い

第12話 目は心の鏡

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    一人の男が、森の入口近くの小高い丘にたたずんでいた。
辺りの様子を見てみると、どうやら最近に陣地じんちを離れた形跡けいせきがみられる。

「あいつらは…、どこへ行ったんだ?!」

周りを見渡しても広野こうやが広がるばかりで、つい独り言ってぼやく。 

「おーい!兄貴あにき?!
ギルの兄貴だろう?!」

そこへ現れたのは、ルシアンを探しに来た例のお間抜まぬけな二人組であった。

「おめえら、どうして此処ここにいる!
お嬢はー、お嬢はどうしたんだぁー!!」

眼光鋭くにら怒鳴どなる男を、物怖ものおじもせずすがりつく。
二人の男たちの情けない声が、殺風景な草原に響き渡る。

「「あっ、兄貴~~い!!」」

突如とつじょ、泣きながら勢いよく突進して来る。
野郎やろう二人に、ついつい怖気づくギルであった。

 二人並んで地べたにひたいをつけながら、今までのことを説明していた。

「簡単に言うと、お嬢から頼まれた命令に失敗してブライアンを逃がしたんだな。
でっ、探しに来てここに来たら俺がいたという訳だ!」

「へぇ~、そうです。
ギルの兄貴!
俺らは、どうしたらいいんですか?!
お嬢に殺されるかも~」

すがる目つきをされて、つい本音をらす非情な男。

「俺が、知るかよー!
お嬢に会ってたら、まっさきにびるんだ。
いいか、覚悟しろ!
俺が、後はキチンと骨は拾ってやるからよ」

物騒ぶっそうな話をしていたら、一人の男が馬に乗って近づいてきた。

「その声はギル殿ですか?
私は、タルモです!
タルモ・コルホネンです」

「おっ、タルモ殿じゃん!
お久しぶりでーす」

緊張感の欠片かけらもない男の返事に、タルモは返答に困るのである。

「言いづらいのですが、プリムローズ様に一大事いちだいじな事が起こりました。
グレゴリー様に頼まれまして、ギル殿を探していた次第しだいです。
ここで、お会いできて助かりました」

ギルはすぐに表情を変えてタルモの腕を強くつかんで、何があったかと聞き出す。
同時に二人のなさけない男たちも、立ち上がりタルモに近づく。

話を聞き終えると、二人の男たちが泣きながらあやまる。

「お、お嬢~!
マジにまねぇ~。
俺らが、あのクソガキを逃したばかりにー!」

「お嬢が、なんでこんな目になったんだぁー!
お嬢~!許してくれ!!
あのクソガキがぁー!!」

知らぬとはいえ、一国の王子をクソガキ呼ばわりする二人。

そのうるさ野太のぶとい声が、辺りにまたしてもまたしても響き渡る。

「てめえら、うるさい!
男のくせにピィピィと、少しは黙れや!
お前らが泣いて詫びても、お嬢は戻らない。
俺が必ず、探し出す!
お嬢は最後に、常勝じょうしょうの道って叫んだんだよな!タルモ殿!」

「はい、そう仰ってましたとグレゴリー様からお聞きしました。
常勝の道など聞いたことありません。
そんな場所は御座ございませんし…。
何処を探してよいのか」

そうか、お嬢はロイヤル・ゴッド・アイの持ち主だ。

「心当たりはある!
タルモ殿は、コイツらを連れて行ってくれないか?
それと、出来たら食い物あったらくれない?!」

「あっ、こんな物しかありませんが…。
やはり、私もギル殿と探しに行きます!」

「悪いが俺一人で行く。
わけは言えないが頼む」

めずやしく真剣なこの男に、彼はこの男にけることにしてみた。
それは、商売相手に対しての駆引かけひききの勘が似てうずいていたのかもしれない。

「分かりました。
では、お二人ともグレゴリー様のもとへ参りましょう」
 
大人しくタルモと馬で走っていく二人を見つめてから、その姿が見えなくなるとギルは常勝の道を開くために祈り始めた。

『お願いだ、お嬢のいる常勝の道へ俺を連れって行ってくれ!
えーっと、常勝への道ー!?』

あの不思議な女性とプリムローズを頭に思い浮かべて、彼は心で祈り続けたみた。
ヴァンブランに騎乗して、暫くして目を開くとそこはあの道であった。

「すげぇ~、俺って魔術師まじゅっしになれるかも?」

やはり、どこか楽観的らっかんてきな軽い男であった。
 
 
 タルモと知り合ったばかりの二人は、馬に揺られてゆっくりと走っていた。

「何故、ギルの兄貴のことを信じたんだ!」

「今からでも、引き返しましょうや!」

彼は二人の話は、気持ち的には理解できた。
言葉を濁して、怪しいしい。
だが、しかし‥‥。

「【目は心のかがみ】と言う言葉があります。
目はその人を映し出す鏡だ。
その人の心の様子が、分かる例えです」

「うん、兄貴の瞳は真剣だった!」

「綺麗な瞳でギラギラ、ちゃうな。
キラキラんでいた!」

先程の彼の表情を、頭で思い出しているのだろうか。
二人はそう言うと、空を見上げてへの字口にしている。
そんな姿を笑って見て、このお二人は悪そうな方々には見えないなと思っていた。

「タルモの兄貴が言うとおりだな!」

「そうだよな!
ギルの兄貴はやるときはやる!
普段はおちゃらけて、馬鹿そうにしているけどよ~」

いきなり会ったばかりの初対面で、兄貴呼ばわりされたタルモ。
意表いひょうかれた顔をして、大笑いすり人物たちとグレゴリーのいる城を目指した。

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