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第6章 黒い森の戦い
第2話 笑う門には福来たる
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黒い森で将軍同士の戦いが本格的に始まる前に、王宮では王妃を筆頭にヘイズ王の軍が勝利するよう密かに祈りを捧げていた。
ヘイズ王のお考えで他国の侵略された際の軍事訓練と、嘘の布令だし出兵されたのである。
波風立てずに、静かに終わらせたい。
都合がよいが、王のそんな願いが込められていた。
自分の夫とかわいい孫娘が、危険に晒されているかも知れぬヴィクトリア。
公爵夫人ニーナとて、総大将の夫を思うと気が気ではない。
そんなヴィクトリアとスクード公爵夫人ニーナの姿を見ていて、王弟殿下の遺児にあたるエリアスは、神様に祈るしか出来ない自分を情けないと思っていた。
「エリアス、きっと陛下や皆さんは無事に戻ります。
信じてお待ちしましょう」
ヘイズ国王妃は、優しげにお声をかける。
子がいたら、こんな気持ちになるのかしら。
心配げにしているこの子を安心させてあげたくなる気持ちは、母性愛に近い気持ちなの?
「はい、毎日私も皆様も神様に願っています。
きっと、願いはかないますよね」
頬を優しく撫でながら、互いに微笑み会う二人を側で仕えている者たちは温かく見つめる。
「そうじゃあ、笑顔です。
【笑う門には福来たる】ですよ」
ヴィクトリアが、3人に笑顔で明るく語りかけた。
「笑う…、門には。
福来たるですか!?」
初めて聞く言葉に、意味が分からずに首を傾げてヴィクトリアの笑みを見ていた。
「いつも笑いが溢れている人たちやその家には、自然に幸福がやって来るということですよ」
目の前にいる彼に孫娘プリムローズを重ねて見ているのか、優しい目付きと口調で言葉の意味を伝え教える。
「苦しい時や悲しい時でも、落ち込んだりせずに希望を持ち朗らかに生きれば幸せが訪れるという意味もあります」
ニーナも続けて詳しく付け加えると、彼は理解できたのか納得して頷いた。
「素敵な言葉ですね。
悲しい事より楽しい事。
泣いているより、笑顔の方がいいです。
必ず、また皆さん揃って笑い合えます」
三人の淑女たちは、互いに笑みを浮かべ笑い合うのであった。
王宮より離れた場所でにこやかな上機嫌な女性と、小枝を集めてきて夕飯の事しか頭にない能天気な男がいた。
「おっ、メリー機嫌良くなって元気そうだな!
さぁ、飯食おうぜー!
俺、腹を空いて限界です」
子供かよと思ったが、彼がいてくれて良かったと心底思っていた。
独りでこんな場所にいたら、心が落ち込んでいたわ。
焚火をおこす、ギルの顔を見つめそう感じるのである。
「ギル師匠、かなり古いのですが動物の皮で出来た水筒らしいものがありましたよ」
「これに泉の水を入れようぜ。
水は貴重だ、なるべくたくさん持っていこう!」
突如、暗闇から白い鳥が舞い降りてきた。
「ピーちゃん、ピーちゃんなの?!!」
「ピー、ぴ~ぃ!!」
メリーの呼びかけに、鳴くお利口な鷹である。
「おっ、ピーじゃん!
俺たちを迎えに来てくれたのか!!」
足を見ろと羽をバタつかせ必死アピールする鷹を、雪ヒョウのヒンメルが近寄って見る素振りをする。
思わず食べないか心配する、人間の二人。
「ヒッ、ヒンメル~!
こっちに果物あるからね!
生肉ではないけど、干し肉食べる~?!」
ピーちゃんから、ヒンメルを引き離す。
メリーはもし食べられたら、お嬢様が悲しむと思わず声が裏返る。
「メリー、大変だ!
お嬢と親父様が、戦うために森に入ると書いてあるぞ!」
ピーちゃんの足から外した手紙を、見せて内容を話した。
「そんな、お嬢様が…。
ギル師匠、もしお二人に何かありましたらどうしましょう!?
早く地上に、お嬢様のもとへ」
「落ち着け、お前は戦場に行かせない!」
明らかに不満な態度になり、前に立つ男を見上げて無言で鋭い目を向けていた。
「ルシアン殿下と人質のサンドラと言う令嬢は、王宮に連れて行くようにしたそうだ。
メリー、お前も馬で王宮に行くんだ!
分かったな、命令だ!!」
彼女は冷静になる努力して、心を落ち着けるようにした。
最初から私は、ヴィクトリア様たちと行動を共にするはずだった。
ルシアン王子があんな無鉄砲な事をしなければ、ここには来なかったのだ。
「ギル師匠の言う通りにします。
ですが、貴方がお二人に力を貸して下さい!」
勿論言われる前から、彼女の願いを聞き入れるつもりでいた。
「ませろとは言えないが、出来る限りの努力はする!
お二人は、俺にとっては大事な大切な方々だ。
もう、寝ようぜ。
明日には、地上に出ないとな」
「確かに、そうですね…」
そう話すがお嬢様たちを思い、彼女はなかなか寝れそうもない。
煌めく星を見上げては、彼女たちの身を神に祈る。
メリーは、無理にでも瞳を閉じて眠るのだった。
ヘイズ王のお考えで他国の侵略された際の軍事訓練と、嘘の布令だし出兵されたのである。
波風立てずに、静かに終わらせたい。
都合がよいが、王のそんな願いが込められていた。
自分の夫とかわいい孫娘が、危険に晒されているかも知れぬヴィクトリア。
公爵夫人ニーナとて、総大将の夫を思うと気が気ではない。
そんなヴィクトリアとスクード公爵夫人ニーナの姿を見ていて、王弟殿下の遺児にあたるエリアスは、神様に祈るしか出来ない自分を情けないと思っていた。
「エリアス、きっと陛下や皆さんは無事に戻ります。
信じてお待ちしましょう」
ヘイズ国王妃は、優しげにお声をかける。
子がいたら、こんな気持ちになるのかしら。
心配げにしているこの子を安心させてあげたくなる気持ちは、母性愛に近い気持ちなの?
「はい、毎日私も皆様も神様に願っています。
きっと、願いはかないますよね」
頬を優しく撫でながら、互いに微笑み会う二人を側で仕えている者たちは温かく見つめる。
「そうじゃあ、笑顔です。
【笑う門には福来たる】ですよ」
ヴィクトリアが、3人に笑顔で明るく語りかけた。
「笑う…、門には。
福来たるですか!?」
初めて聞く言葉に、意味が分からずに首を傾げてヴィクトリアの笑みを見ていた。
「いつも笑いが溢れている人たちやその家には、自然に幸福がやって来るということですよ」
目の前にいる彼に孫娘プリムローズを重ねて見ているのか、優しい目付きと口調で言葉の意味を伝え教える。
「苦しい時や悲しい時でも、落ち込んだりせずに希望を持ち朗らかに生きれば幸せが訪れるという意味もあります」
ニーナも続けて詳しく付け加えると、彼は理解できたのか納得して頷いた。
「素敵な言葉ですね。
悲しい事より楽しい事。
泣いているより、笑顔の方がいいです。
必ず、また皆さん揃って笑い合えます」
三人の淑女たちは、互いに笑みを浮かべ笑い合うのであった。
王宮より離れた場所でにこやかな上機嫌な女性と、小枝を集めてきて夕飯の事しか頭にない能天気な男がいた。
「おっ、メリー機嫌良くなって元気そうだな!
さぁ、飯食おうぜー!
俺、腹を空いて限界です」
子供かよと思ったが、彼がいてくれて良かったと心底思っていた。
独りでこんな場所にいたら、心が落ち込んでいたわ。
焚火をおこす、ギルの顔を見つめそう感じるのである。
「ギル師匠、かなり古いのですが動物の皮で出来た水筒らしいものがありましたよ」
「これに泉の水を入れようぜ。
水は貴重だ、なるべくたくさん持っていこう!」
突如、暗闇から白い鳥が舞い降りてきた。
「ピーちゃん、ピーちゃんなの?!!」
「ピー、ぴ~ぃ!!」
メリーの呼びかけに、鳴くお利口な鷹である。
「おっ、ピーじゃん!
俺たちを迎えに来てくれたのか!!」
足を見ろと羽をバタつかせ必死アピールする鷹を、雪ヒョウのヒンメルが近寄って見る素振りをする。
思わず食べないか心配する、人間の二人。
「ヒッ、ヒンメル~!
こっちに果物あるからね!
生肉ではないけど、干し肉食べる~?!」
ピーちゃんから、ヒンメルを引き離す。
メリーはもし食べられたら、お嬢様が悲しむと思わず声が裏返る。
「メリー、大変だ!
お嬢と親父様が、戦うために森に入ると書いてあるぞ!」
ピーちゃんの足から外した手紙を、見せて内容を話した。
「そんな、お嬢様が…。
ギル師匠、もしお二人に何かありましたらどうしましょう!?
早く地上に、お嬢様のもとへ」
「落ち着け、お前は戦場に行かせない!」
明らかに不満な態度になり、前に立つ男を見上げて無言で鋭い目を向けていた。
「ルシアン殿下と人質のサンドラと言う令嬢は、王宮に連れて行くようにしたそうだ。
メリー、お前も馬で王宮に行くんだ!
分かったな、命令だ!!」
彼女は冷静になる努力して、心を落ち着けるようにした。
最初から私は、ヴィクトリア様たちと行動を共にするはずだった。
ルシアン王子があんな無鉄砲な事をしなければ、ここには来なかったのだ。
「ギル師匠の言う通りにします。
ですが、貴方がお二人に力を貸して下さい!」
勿論言われる前から、彼女の願いを聞き入れるつもりでいた。
「ませろとは言えないが、出来る限りの努力はする!
お二人は、俺にとっては大事な大切な方々だ。
もう、寝ようぜ。
明日には、地上に出ないとな」
「確かに、そうですね…」
そう話すがお嬢様たちを思い、彼女はなかなか寝れそうもない。
煌めく星を見上げては、彼女たちの身を神に祈る。
メリーは、無理にでも瞳を閉じて眠るのだった。
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