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第5章 常勝王の道
第22話 願を懸ける
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先程からずっと上り道で、メリーの足には負担がかかり過ぎていた。
もう地面に足が張り付いて、限界で一歩も動かせずにいた。
顔は血の気が引いて、冷や汗が出そうになっている。
「ギル師匠、もう限界です」
足がガクガクして、痙攣をおこしていた。
「まずいな。水分も取っていない。
何処か水があって、休める場所はないかなぁ」
ヒンメルがそれを聞き、付いて来いという動作をしてきた。
彼はその様子を見て、動物の本能に頼るのを決断する。
「メリー、ほらっ!
おんぶしてやるから、恥ずかしがったり遠慮するな!」
彼女は一歩も歩けない。
意地を張るのをやめて、素直に背中に飛び乗った。
彼の背中の広さと体温の温かさが伝わり、思わず顔を赤らめた。
ギルは彼女の胸が背中に当たり鼻の下を伸ばすだらしがない顔して、足元に気をつけてヒンメルの後をついていく。
「おっ、止まった!洞窟みたいだな。
おーい、中に入って大丈夫なのかよ!」
「ヒンメルが先に入って、様子を見てくれてるみたいですわ。
ギル師匠、だいぶ足も休めました。
降りて歩きますので、しゃがんで下さいませんか。
有り難うございました」
「そっか?
お前の胸の当たって気持ち良かったぞ!」
「へ、変態!!」と、言うと思いきり後頭部を叩いた。
「お、お前痛いし!
あぶねーだろうが!
もう少しで、落とすところだったぞ。
普通ぐらいの大きさで、恥ずかしがるなよ!
女だって理解されて良かったな」
「さ、最低!
戻ったらお嬢様に、叱って頂きますからね!」
全然付いてこない二人を、振り返りヒンメルは伏せをして待っていた。
「ヒンメル、ごめんさいね。
この変態スケベがすべて悪いのよ」
酷い言われように、おぶってやったのによーってブツくさ言う情けない男。
奥に入ると、広い洞窟の中に湧水が湧いていた。
誰かが入ったのか、ボロボロの木の箱が何個もあった。
ヒンメルが湧き水をゴクゴク飲むと、何やら元気になったのか尻尾をフリフリしている。
「へえ~キレイな水だな。
俺も飲もうとするか!」
ギルがごっくんごっくん飲むと、プッはぁ~と声を出した。
「メリー、お前さんも早く飲めよ。
なんか力が湧くように、元気になるぜ!」
手を洗い両手で、水をすくい飲んでみた。
冷たくて甘みを感じ、本当に体が喜んで力がみなぎるのだ。
彼は焚き火になる枝を探しに洞窟から一人出る。
ヒンメルとメリーは、そこでお留守番だ。
「じゃあ、お前はそこで休んでいろ!
ヒンメル、メリーを頼む!」
何だかんだ言って頼りがいがあると感じ、彼女はさっきから気になっていた木箱の中身を確認する。
「これは、食器?
カップとソーサか。
洗って、どんなのか見てみよう」
天井からの明かりで、洗ったカップを見て彼女は驚く。
「このカップの底にある模様は、アルゴラ王家のものだわ。
それにこの色は、幻と言われている赤紫!
常勝王の時代のものが、どうしてこんな場所に…」
ヒンメルは、泉近くに刺さる棒らしき周りをうろついていた。
そうこの場は、プリムローズが探し求めていた。
あの長寿の泉だったのだ!
地上ではまさか先にメリーたちが長寿の泉を発見し、自分より早く飲んでいるとは知らない彼女。
短くなった彼女の髪を見ては、王子や子分らから訳を教えろとの喧しい合唱の途中であった。
「あー、煩い黙れ!
【願を懸けた】のだ。
神仏に、自分の願い事がかなうよう祈った証だ!」
正確には生ける戦の神、自分の祖父グレゴリーだが。
プリムローズが、そう叫んで訳を怒鳴る。
「たがらとて、髪を切らなくても良かったんではないか?!
君って、理解できない事するよね」
ルシアンがそう代表して話すと、何やらあちらコチラで頷く子分たち。
「ブライアン!
お前はこの場には相応しくない!
よって、サンドラと共にヘイズ王とスクード公爵のいるところへ送る。よいな!」
あえて兄の名を言う。
彼女は周りに王子でなく、公爵令息として扱えと示唆する。
髪を切ったせいか、彼女は女性だが男らしく変身した。
「イヤだ、私もあの森で君と戦う。
年が下で女性に行かせて、私が逃げるなんて末代の恥だ!」
なんと聞き分けない、まるで赤子ようではないか。
「そうか…。
戦いたいのか。
私でも足手まといで、力不足なのに。
お前がのう~」
そう言うと、極上の微笑みを王子に返しながら近づく。
その笑みを了承したと思い込み、彼女に微笑み返した。
「なら、夢物語は寝てからにしろやー!!!
ドスン、ドースッ、ズーサッ!」
彼の脇腹を左右同時に叩き、意識失くして倒れ込んだ。
ワザと顔面を狙わずに、脇腹を拳で打ち込む。
不意打ちとはズルく賢い戦い方と、彼女の戦法に感心した。
「今すぐ、出発しろ!
私に不快な者たちを見せるな!
いいか、ちゃんと送り届けよ。
さもないと、お前らもこれをするからな」
震える足で子分は王子を背負うと、直ちにサンドラを連れてヘイズ王の陣地に向かうのである。
本格的な戦いは、まだこれからである。
留学から、どうしてこうなった。
だが彼女は不思議と恐れの中で、ワクワクする気持ちが芽生えて抑えられない。
「寒気がしたな。
武者震いってやつかしら?
お祖父様もこんな思いを、幾度も経験したのかしら?」
独り言を言っては、天を仰いだ。
風が短くなってしまった髪を、舞うように吹きつける。
明日、黒い森での戦いがきって落とされるのだ。
もう地面に足が張り付いて、限界で一歩も動かせずにいた。
顔は血の気が引いて、冷や汗が出そうになっている。
「ギル師匠、もう限界です」
足がガクガクして、痙攣をおこしていた。
「まずいな。水分も取っていない。
何処か水があって、休める場所はないかなぁ」
ヒンメルがそれを聞き、付いて来いという動作をしてきた。
彼はその様子を見て、動物の本能に頼るのを決断する。
「メリー、ほらっ!
おんぶしてやるから、恥ずかしがったり遠慮するな!」
彼女は一歩も歩けない。
意地を張るのをやめて、素直に背中に飛び乗った。
彼の背中の広さと体温の温かさが伝わり、思わず顔を赤らめた。
ギルは彼女の胸が背中に当たり鼻の下を伸ばすだらしがない顔して、足元に気をつけてヒンメルの後をついていく。
「おっ、止まった!洞窟みたいだな。
おーい、中に入って大丈夫なのかよ!」
「ヒンメルが先に入って、様子を見てくれてるみたいですわ。
ギル師匠、だいぶ足も休めました。
降りて歩きますので、しゃがんで下さいませんか。
有り難うございました」
「そっか?
お前の胸の当たって気持ち良かったぞ!」
「へ、変態!!」と、言うと思いきり後頭部を叩いた。
「お、お前痛いし!
あぶねーだろうが!
もう少しで、落とすところだったぞ。
普通ぐらいの大きさで、恥ずかしがるなよ!
女だって理解されて良かったな」
「さ、最低!
戻ったらお嬢様に、叱って頂きますからね!」
全然付いてこない二人を、振り返りヒンメルは伏せをして待っていた。
「ヒンメル、ごめんさいね。
この変態スケベがすべて悪いのよ」
酷い言われように、おぶってやったのによーってブツくさ言う情けない男。
奥に入ると、広い洞窟の中に湧水が湧いていた。
誰かが入ったのか、ボロボロの木の箱が何個もあった。
ヒンメルが湧き水をゴクゴク飲むと、何やら元気になったのか尻尾をフリフリしている。
「へえ~キレイな水だな。
俺も飲もうとするか!」
ギルがごっくんごっくん飲むと、プッはぁ~と声を出した。
「メリー、お前さんも早く飲めよ。
なんか力が湧くように、元気になるぜ!」
手を洗い両手で、水をすくい飲んでみた。
冷たくて甘みを感じ、本当に体が喜んで力がみなぎるのだ。
彼は焚き火になる枝を探しに洞窟から一人出る。
ヒンメルとメリーは、そこでお留守番だ。
「じゃあ、お前はそこで休んでいろ!
ヒンメル、メリーを頼む!」
何だかんだ言って頼りがいがあると感じ、彼女はさっきから気になっていた木箱の中身を確認する。
「これは、食器?
カップとソーサか。
洗って、どんなのか見てみよう」
天井からの明かりで、洗ったカップを見て彼女は驚く。
「このカップの底にある模様は、アルゴラ王家のものだわ。
それにこの色は、幻と言われている赤紫!
常勝王の時代のものが、どうしてこんな場所に…」
ヒンメルは、泉近くに刺さる棒らしき周りをうろついていた。
そうこの場は、プリムローズが探し求めていた。
あの長寿の泉だったのだ!
地上ではまさか先にメリーたちが長寿の泉を発見し、自分より早く飲んでいるとは知らない彼女。
短くなった彼女の髪を見ては、王子や子分らから訳を教えろとの喧しい合唱の途中であった。
「あー、煩い黙れ!
【願を懸けた】のだ。
神仏に、自分の願い事がかなうよう祈った証だ!」
正確には生ける戦の神、自分の祖父グレゴリーだが。
プリムローズが、そう叫んで訳を怒鳴る。
「たがらとて、髪を切らなくても良かったんではないか?!
君って、理解できない事するよね」
ルシアンがそう代表して話すと、何やらあちらコチラで頷く子分たち。
「ブライアン!
お前はこの場には相応しくない!
よって、サンドラと共にヘイズ王とスクード公爵のいるところへ送る。よいな!」
あえて兄の名を言う。
彼女は周りに王子でなく、公爵令息として扱えと示唆する。
髪を切ったせいか、彼女は女性だが男らしく変身した。
「イヤだ、私もあの森で君と戦う。
年が下で女性に行かせて、私が逃げるなんて末代の恥だ!」
なんと聞き分けない、まるで赤子ようではないか。
「そうか…。
戦いたいのか。
私でも足手まといで、力不足なのに。
お前がのう~」
そう言うと、極上の微笑みを王子に返しながら近づく。
その笑みを了承したと思い込み、彼女に微笑み返した。
「なら、夢物語は寝てからにしろやー!!!
ドスン、ドースッ、ズーサッ!」
彼の脇腹を左右同時に叩き、意識失くして倒れ込んだ。
ワザと顔面を狙わずに、脇腹を拳で打ち込む。
不意打ちとはズルく賢い戦い方と、彼女の戦法に感心した。
「今すぐ、出発しろ!
私に不快な者たちを見せるな!
いいか、ちゃんと送り届けよ。
さもないと、お前らもこれをするからな」
震える足で子分は王子を背負うと、直ちにサンドラを連れてヘイズ王の陣地に向かうのである。
本格的な戦いは、まだこれからである。
留学から、どうしてこうなった。
だが彼女は不思議と恐れの中で、ワクワクする気持ちが芽生えて抑えられない。
「寒気がしたな。
武者震いってやつかしら?
お祖父様もこんな思いを、幾度も経験したのかしら?」
独り言を言っては、天を仰いだ。
風が短くなってしまった髪を、舞うように吹きつける。
明日、黒い森での戦いがきって落とされるのだ。
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