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第5章 常勝王の道
第11話 阿吽の呼吸
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ニルスことトンボは、仲間と動物たちを一箇所に集めて整列させる。
雪ヒョウであるヒンメルの前に膝をつきながら、このように丁重な低姿勢な口調で話を始めた。
「ヒンメル、これで全部になりますか?
お仲間さんは、一匹残らずココにいるのですか?」
ヒンメルは振り返ると、もう一度仲間を確認しているのか。
クマやオオカミやキツネに、目立つ獣たちに伺っている様子。
終わったのか戻ってくると、ニルスの足を顔でナデナデしてくれた。
彼はお返しとばかりに、ヒンメルの背中を優しく撫でてやる。
「ヨシ、出発する!
静かに速やかに行動してくれ!」
子分たちは声も出さずに【阿吽の呼吸】で、整然と事を進め動き出した。
彼らはまだ朝日が昇りだす前の薄暗い森の中を、敵に悟られぬように出入り口を急いで歩く。
その1日前には、ピーちゃんがタルモ殿を見つけて彼が独りのスキを狙って近寄り飛んできた。
タルモはその鳥に気づくと手を振り、白い歯を見せて鷹に笑いかける。
「ぴぃ、ぴぃー!」
挨拶しているような鳴き声に、挨拶で返す明らかに人間のタルモ。
「ご機嫌は如何ですか?!
お久しぶりです、ピー様。
プリムローズ様に、手紙を届けてくれたのですね」
彼は彼女の瞳の色を思い出させる、薄紫薄のラベンダーに似た手紙を鷹の足から解き外す。
首に巻かれていた物体も一緒に外して、中身をマジマシと見つめていた。
急ぎ読み始めて眉を上げると、仲間たちを呼びだす指示をした。
「ここにとどまっている、鳥たちの首に巻かれた荷を解いてくれ!
ラベンダーの匂い袋を一人1個ずつ配るのだ。
何か言われたら、体臭消しだと言って誤魔化してくれ!」
「分かった、タルモ!」
信用しているのか彼らは、阿吽の呼吸で行動を開始した。
「ハハハ、小さな悪魔ですな。魅惑的にはまだまだですが、底意地悪で悪魔以上のお方かもですよ。
ピー様、しばしお待ちをー!」
懐から携帯用のペンを出すと紙にスラスラ書きインクが渇くまで、水や塩漬けされないまだ新鮮な肉を与えてみた。
「さぁー、これをプリムローズ様へ!
ここは危険ですから、早くお立ちを!」
「ぴぃー!」と、返事すると仲間を引き連れて主人のいる方向へ空高く消えていく。
「うまくバレないようにしなくてはならん。
仲間に話して、食事に手を出さない様に。
腹痛の演技も、うまくしないとな」
タルモは愉快そうに笑って、手にしている腹下しの薬を握りしめた。
こちらの件も、速やかに仲間内に伝達していく。
ギルとメリー、そしてルシアンはひたすら一本道を歩いていた。
辺りは不気味に静まり、鳥のさえずりや獣たちの気配が感じられない。
「何だが、異空間に迷い込んだようだ。
ここは、自分たちが生存している世界なのだろうか!?」
ワケわからない話をしだした、王子にメリーは底意地悪い質問する。
「殿下は、想像力がおありなんですね。
お嬢様に好意ございますのも、思い込みではありませんの?!」
ギルとメリーに挟まれて馬に乗る彼は、後ろで自分についてきている彼女に馬ごと振り返った。
「貴女は、私に対して悪意ある言い方をする。
私の伴侶になる人は、未来の一国の王妃になるんだ。
生半可な令嬢にはつとまらん!」
「あらあら、とうとう本音が出ましたわ!
お嬢様なら、立派な王妃になりますからね。
ですが、そんなことを望んでおりませんわ」
「何でわかるんだよ!
近くにいても、思いまで同じではあるまいに!!」
ギルは馬の歩みを止めて馬から降り立つと、二人の間に割ってはいる。
「お前たち、やめろ!
こんな時は、不安になりイライラする。
この道は不思議な道なんだよ。
俺が小さい時に、今のお嬢ぐらいのときに迷い込んだのさ」
彼は二人の頭を冷やすために、この道の発見当時を話す。
それが不安を消す最良な考えだと思ったのだ。
ギルは一休みしよう言って馬を木に繋ぎ、木の下に座ると二人にも促してきた。
立っている人たちを無視して、彼は子供時代の思い出を勝手に話し出してくる。
木漏れ日が昔の空間に引き戻す、そんな感覚に陥りそうになりそうだ。
それは、摩訶不思議な夢みたいな話であった。
雪ヒョウであるヒンメルの前に膝をつきながら、このように丁重な低姿勢な口調で話を始めた。
「ヒンメル、これで全部になりますか?
お仲間さんは、一匹残らずココにいるのですか?」
ヒンメルは振り返ると、もう一度仲間を確認しているのか。
クマやオオカミやキツネに、目立つ獣たちに伺っている様子。
終わったのか戻ってくると、ニルスの足を顔でナデナデしてくれた。
彼はお返しとばかりに、ヒンメルの背中を優しく撫でてやる。
「ヨシ、出発する!
静かに速やかに行動してくれ!」
子分たちは声も出さずに【阿吽の呼吸】で、整然と事を進め動き出した。
彼らはまだ朝日が昇りだす前の薄暗い森の中を、敵に悟られぬように出入り口を急いで歩く。
その1日前には、ピーちゃんがタルモ殿を見つけて彼が独りのスキを狙って近寄り飛んできた。
タルモはその鳥に気づくと手を振り、白い歯を見せて鷹に笑いかける。
「ぴぃ、ぴぃー!」
挨拶しているような鳴き声に、挨拶で返す明らかに人間のタルモ。
「ご機嫌は如何ですか?!
お久しぶりです、ピー様。
プリムローズ様に、手紙を届けてくれたのですね」
彼は彼女の瞳の色を思い出させる、薄紫薄のラベンダーに似た手紙を鷹の足から解き外す。
首に巻かれていた物体も一緒に外して、中身をマジマシと見つめていた。
急ぎ読み始めて眉を上げると、仲間たちを呼びだす指示をした。
「ここにとどまっている、鳥たちの首に巻かれた荷を解いてくれ!
ラベンダーの匂い袋を一人1個ずつ配るのだ。
何か言われたら、体臭消しだと言って誤魔化してくれ!」
「分かった、タルモ!」
信用しているのか彼らは、阿吽の呼吸で行動を開始した。
「ハハハ、小さな悪魔ですな。魅惑的にはまだまだですが、底意地悪で悪魔以上のお方かもですよ。
ピー様、しばしお待ちをー!」
懐から携帯用のペンを出すと紙にスラスラ書きインクが渇くまで、水や塩漬けされないまだ新鮮な肉を与えてみた。
「さぁー、これをプリムローズ様へ!
ここは危険ですから、早くお立ちを!」
「ぴぃー!」と、返事すると仲間を引き連れて主人のいる方向へ空高く消えていく。
「うまくバレないようにしなくてはならん。
仲間に話して、食事に手を出さない様に。
腹痛の演技も、うまくしないとな」
タルモは愉快そうに笑って、手にしている腹下しの薬を握りしめた。
こちらの件も、速やかに仲間内に伝達していく。
ギルとメリー、そしてルシアンはひたすら一本道を歩いていた。
辺りは不気味に静まり、鳥のさえずりや獣たちの気配が感じられない。
「何だが、異空間に迷い込んだようだ。
ここは、自分たちが生存している世界なのだろうか!?」
ワケわからない話をしだした、王子にメリーは底意地悪い質問する。
「殿下は、想像力がおありなんですね。
お嬢様に好意ございますのも、思い込みではありませんの?!」
ギルとメリーに挟まれて馬に乗る彼は、後ろで自分についてきている彼女に馬ごと振り返った。
「貴女は、私に対して悪意ある言い方をする。
私の伴侶になる人は、未来の一国の王妃になるんだ。
生半可な令嬢にはつとまらん!」
「あらあら、とうとう本音が出ましたわ!
お嬢様なら、立派な王妃になりますからね。
ですが、そんなことを望んでおりませんわ」
「何でわかるんだよ!
近くにいても、思いまで同じではあるまいに!!」
ギルは馬の歩みを止めて馬から降り立つと、二人の間に割ってはいる。
「お前たち、やめろ!
こんな時は、不安になりイライラする。
この道は不思議な道なんだよ。
俺が小さい時に、今のお嬢ぐらいのときに迷い込んだのさ」
彼は二人の頭を冷やすために、この道の発見当時を話す。
それが不安を消す最良な考えだと思ったのだ。
ギルは一休みしよう言って馬を木に繋ぎ、木の下に座ると二人にも促してきた。
立っている人たちを無視して、彼は子供時代の思い出を勝手に話し出してくる。
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