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第5章 常勝王の道
第3話 策士策に溺れる
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やっと追い付いて此方に近づいてくる体格の良い鎧の御仁は、半ば呆れ顔して声を気安くかけてきた。
「おやおや、置いて行かれてしまった。
一応は総大将なんじゃがのう。
首尾は、上手くいっておりますのかな?!」
「久しぶりだな、スクード将軍!
ハーヴモーネ侯爵が、全て指揮しておられます。
ほら、あれをご覧あれ。
獣たちに追われて、出てきた兵を捕まえてますよ」
縛られて転がっている兵士たちを見て、笑いだしている将軍たち。
「お祖父様、おばあ様たちは無事にアウローラに到着出来るかしら?!」
「うむっ、ヴィクトリアは強い女だ。
平気じゃろ。
たまに、儂と手合わせをしているしのう。」
「ええーっ!おばあ様もお祖父様と稽古していたのですか?!
どうして、私に教えてくれないのです!」
プリムローズは、また膨れっ面して文句をたれていた。
「おやっ、また兵士たちが森から出てきたぞ!」
祖父の声を聞き、その先を見た。
「トンボ?!それにヒンメル!!」
彼女は、一人と一匹に近寄るため走り出した。
もちろん、警戒は怠りない剣をいつでも出せるようにしている。
「お嬢!お久し振りです。
ヒンメルは、賢く良い子ですよ」
ニルスことあだ名トンボは、茶色のウェーブがかかった髪に金色に近い薄茶の瞳を輝かして笑顔で挨拶する。
「トンボ、動物たちはケガしていない?!
戦況は…、どんな様子なの?!」
森の方を見て、心配そうに目を凝らした。
「その言い方、懐かしいですよ。
このラベンダーの匂いで、区別出来て助かりました。
動物たちとは、顔合わせして相性の良い組み合わせにして、敵と戦っています。
組み合わせは、親父様の指示です!」
やるわね、さすがお祖父様!
相性は大事、組合せするとは戦の神の考えは的確だわ。
「では、私たちが優勢でいいのね。
あちらの将軍は、森の中で戦っているの?!」
「それは分かりません。
兵士を全員、森に入れてるのか。
先に、少数だけで戦っているのか?
とにかく、目の前に現れた敵を相手にしております」
二人とヒンメルの近くによると、祖父たちはニルスの話に耳を傾けていた。
「マーシャルは、森に入らず迂回してコチラに来るやもしれぬ。
おそらくは、森の中の異変を感じているに違いない」
チューダー将軍は祖父たちに、そう話していると森から敵を捕まえて味方の子分たちが出てきた。
「おーい、この方達にお前たち話をするんだ!」
子分の一人が、縄で手を後に縛っている敵兵に命令した。
「俺たちは下っ端だ。
この森を抜けて、都を目指すとしか聞いてない」
「俺……もだ!
何人かは動物に襲われて、引き返している」
嘘は付いていないようである。
「うーん、両サイドから迂回して私たちを取り囲む可能性があるんではないでしょうか?」
プリムローズは、地図を思い出して大人たちに意見を伺ってみた。
「あり得るが得策ではない。
何せ、かなりの遠回りだ!
兵と馬が、それだけ疲労する」
「それに見てくれれば分かるが、傾斜の厳しい山道を走らなければならない。
危険だし、落馬の恐れもある」
スクード公爵とチューダー侯爵、両将軍は同じ意見を述べた。
左右に、山が1つづそびえる。
その真ん中に取り囲まれたように、ミュルクヴィズと呼ばれる森がある。
山々が森を暗くする、「黒い森」と呼ばれる由縁だ。
「あちらも西と南の将軍だ。
南から行くのに、この森を通らなくてはならない。
西からは、アウローラを通らないと王都に着けぬ。
西は軍を動かして、東を攻めるかのう?!」
祖父グレゴリーは腕を組み、みずからの思う疑問を吐き出した。
「アウローラに入るには、あの橋を渡らなくてはならぬ。
絶対に無理だ!」
「しかし、谷底に橋をかけたりしたら?
ここまで、長きに渡り機会を待っていたのです。
準備している可能性はありませんか?!」
彼女の意見に、スクード公爵は不安になってきた。
もしかしたら、他の場所に探して橋を作っているのかもしれん。
「ヴェントは、アウローラに来ておらん。
西の領地にも戻っておらぬ。
王都ヴァロにおるはず!」
スクードは、不安を打ち消すように否定するのだった。
「いや、将軍が居なくとも腹心はおる。
裏をかかれたかも知れぬ。
儂らを1箇所に集めて、ヴァロを狙う手筈だったのか!」
祖父グレゴリーは、初めて曇った顔してみせた。
「では、チューダー侯爵に目の前の敵を任せる。
都には王の軍が居ますから、まだ時間は稼げるから間に合うでしょう?
問題はアウローラです。
スクード公爵は、ヘイズ王を守らなくてはならない」
プリムローズは、頭をフル回転させて話しだした。
「アウローラには、儂らが行く!
コチラの部下にも連絡を取らなくてならん。
スクード公爵は、領地にいる腹心宛に手紙を書いてくれぬか?」
「お祖父様、ヴァロを出るには橋を渡りますわ。
敵に抑えられていたらどうしますか?
もしかしたら、もう橋を切り離して……」
「それはない、橋を切り落とせるのは王のみ!
それを破ったら叛逆だ!!」
彼女は、チューダー侯爵の言葉に反論するのをやめた。
すでに、謀反を犯している者には関係ないのではと…。
「【策士策に溺れる】。
あちらは、1枚も上手だったのう」
確信があった作戦だったのに、逆に失敗に終わるというのか!
プリムローズは、挫折感と絶体絶命その中にいた。
堪らずに、空を見上げる。
青空に鳥の鳴き声と、白い羽を羽ばたかせる鷹が目に映る。
「おやおや、置いて行かれてしまった。
一応は総大将なんじゃがのう。
首尾は、上手くいっておりますのかな?!」
「久しぶりだな、スクード将軍!
ハーヴモーネ侯爵が、全て指揮しておられます。
ほら、あれをご覧あれ。
獣たちに追われて、出てきた兵を捕まえてますよ」
縛られて転がっている兵士たちを見て、笑いだしている将軍たち。
「お祖父様、おばあ様たちは無事にアウローラに到着出来るかしら?!」
「うむっ、ヴィクトリアは強い女だ。
平気じゃろ。
たまに、儂と手合わせをしているしのう。」
「ええーっ!おばあ様もお祖父様と稽古していたのですか?!
どうして、私に教えてくれないのです!」
プリムローズは、また膨れっ面して文句をたれていた。
「おやっ、また兵士たちが森から出てきたぞ!」
祖父の声を聞き、その先を見た。
「トンボ?!それにヒンメル!!」
彼女は、一人と一匹に近寄るため走り出した。
もちろん、警戒は怠りない剣をいつでも出せるようにしている。
「お嬢!お久し振りです。
ヒンメルは、賢く良い子ですよ」
ニルスことあだ名トンボは、茶色のウェーブがかかった髪に金色に近い薄茶の瞳を輝かして笑顔で挨拶する。
「トンボ、動物たちはケガしていない?!
戦況は…、どんな様子なの?!」
森の方を見て、心配そうに目を凝らした。
「その言い方、懐かしいですよ。
このラベンダーの匂いで、区別出来て助かりました。
動物たちとは、顔合わせして相性の良い組み合わせにして、敵と戦っています。
組み合わせは、親父様の指示です!」
やるわね、さすがお祖父様!
相性は大事、組合せするとは戦の神の考えは的確だわ。
「では、私たちが優勢でいいのね。
あちらの将軍は、森の中で戦っているの?!」
「それは分かりません。
兵士を全員、森に入れてるのか。
先に、少数だけで戦っているのか?
とにかく、目の前に現れた敵を相手にしております」
二人とヒンメルの近くによると、祖父たちはニルスの話に耳を傾けていた。
「マーシャルは、森に入らず迂回してコチラに来るやもしれぬ。
おそらくは、森の中の異変を感じているに違いない」
チューダー将軍は祖父たちに、そう話していると森から敵を捕まえて味方の子分たちが出てきた。
「おーい、この方達にお前たち話をするんだ!」
子分の一人が、縄で手を後に縛っている敵兵に命令した。
「俺たちは下っ端だ。
この森を抜けて、都を目指すとしか聞いてない」
「俺……もだ!
何人かは動物に襲われて、引き返している」
嘘は付いていないようである。
「うーん、両サイドから迂回して私たちを取り囲む可能性があるんではないでしょうか?」
プリムローズは、地図を思い出して大人たちに意見を伺ってみた。
「あり得るが得策ではない。
何せ、かなりの遠回りだ!
兵と馬が、それだけ疲労する」
「それに見てくれれば分かるが、傾斜の厳しい山道を走らなければならない。
危険だし、落馬の恐れもある」
スクード公爵とチューダー侯爵、両将軍は同じ意見を述べた。
左右に、山が1つづそびえる。
その真ん中に取り囲まれたように、ミュルクヴィズと呼ばれる森がある。
山々が森を暗くする、「黒い森」と呼ばれる由縁だ。
「あちらも西と南の将軍だ。
南から行くのに、この森を通らなくてはならない。
西からは、アウローラを通らないと王都に着けぬ。
西は軍を動かして、東を攻めるかのう?!」
祖父グレゴリーは腕を組み、みずからの思う疑問を吐き出した。
「アウローラに入るには、あの橋を渡らなくてはならぬ。
絶対に無理だ!」
「しかし、谷底に橋をかけたりしたら?
ここまで、長きに渡り機会を待っていたのです。
準備している可能性はありませんか?!」
彼女の意見に、スクード公爵は不安になってきた。
もしかしたら、他の場所に探して橋を作っているのかもしれん。
「ヴェントは、アウローラに来ておらん。
西の領地にも戻っておらぬ。
王都ヴァロにおるはず!」
スクードは、不安を打ち消すように否定するのだった。
「いや、将軍が居なくとも腹心はおる。
裏をかかれたかも知れぬ。
儂らを1箇所に集めて、ヴァロを狙う手筈だったのか!」
祖父グレゴリーは、初めて曇った顔してみせた。
「では、チューダー侯爵に目の前の敵を任せる。
都には王の軍が居ますから、まだ時間は稼げるから間に合うでしょう?
問題はアウローラです。
スクード公爵は、ヘイズ王を守らなくてはならない」
プリムローズは、頭をフル回転させて話しだした。
「アウローラには、儂らが行く!
コチラの部下にも連絡を取らなくてならん。
スクード公爵は、領地にいる腹心宛に手紙を書いてくれぬか?」
「お祖父様、ヴァロを出るには橋を渡りますわ。
敵に抑えられていたらどうしますか?
もしかしたら、もう橋を切り離して……」
「それはない、橋を切り落とせるのは王のみ!
それを破ったら叛逆だ!!」
彼女は、チューダー侯爵の言葉に反論するのをやめた。
すでに、謀反を犯している者には関係ないのではと…。
「【策士策に溺れる】。
あちらは、1枚も上手だったのう」
確信があった作戦だったのに、逆に失敗に終わるというのか!
プリムローズは、挫折感と絶体絶命その中にいた。
堪らずに、空を見上げる。
青空に鳥の鳴き声と、白い羽を羽ばたかせる鷹が目に映る。
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