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第4章 光と闇が混ざる時
第26話 疾風に勁草を知る
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部屋が静かでなければ、消えてしまうほどの声だった。
誰が1番に話しかけるのか、普通は牽制しあってしまうだろう。
「こんな愚かな統治者は、なかなかお目にかかれない。
プリムローズ、王の最低限の役割をコヤツに教えてやれ!」
祖父グレゴリーは骨の髄まで呆れ笑って、唐突に私に話を突然振ってきた。
「はっ…、はい。
民を飢えさせない。
それをまとめる貴族たちに、尊敬される人格を持つ努力する。
何より、後継者争いをしないように…。
子孫を産まなくてはならない」
「そうじゃのう!
王妃との間に子が出来ぬ場合は、側室を迎える。
ヘイズ王は、それを放棄したと言われた」
祖父グレゴリーは、今まで礼儀正しくしていたが態度を崩した。
「プリム、エルアス殿をエテルネルに連れて帰るとしよう。
王よ、侯爵の地位はこの場で返上する。
そして、儂らはエテルネルに戻る。
貴方様は、最後までヘイズ王として生きなされ」
これは完全に、突き放した。
祖父グレゴリーは、普段は怒ったとしても何処か愛情がある方。
この冷静な物言いは、見捨てにかかりましたわ。
しかし、なぜヘイズ王はそんな事をしたのかしら?!
「お祖父様、ピーちゃんたちは配置についてます。
最後までされたら如何ですか?
敵から逃げては、クラレンス家の名誉に傷がつきますわ」
「プリムは優しいのう。
こんなクズに等しい者に、慈悲をかけるとはな。
有り難く思え!
可愛い孫の頼み、仕方ない今回だけ助けてやるわい。
お前の父も頼りなかったが、お主はそれ以上だ!
この愚王めー」
誰一人、反論してこないと言うことは認めているのね。
クズと愚王を‥。
祖父の怒声が響いている部屋に、慌てて駆け足で1人の男が大声を出して入ってくる。
「陛下、大変ございます!
謀反でございます!!
西の将軍ヴェント侯爵と南の将軍マーシャル伯爵が、軍を動かしていると報告がございました」
はいっ??南は呑気者で、攻めて来ないって豪語していたわよね。
ここにいる東の将軍様がー!
「落ち着け、謀反ではない!
それは、軍事演習だ。
これを伝えようと呼び出した。
すまぬ、半年前にヴェントとマーシャルから軍の大規模な演習をしたいと提案してきていた。
受託したのを忘れておったのだ……」
「…………、お祖父様!
私の考えは間違ってました。
今すぐに、我が国エテルネルに帰国しましょう」
もう何もかも投げ出して、プリムローズも国に戻る決心する。
この時、目的そのものが頭から飛んでいた。
「すまぬ、スクード。
期日が近くなったら、ヴェントから話が出ると思っていたが実戦に入ると昨日報せが来た。
実行日と内容を発案者に委ねる箇所を、余は見逃してしまっておった」
「馬鹿か、貴様はー!
此方は有事に備えてはおったが、それでも不利ではないか!
ヘイズ王、演習と言うが信じられるか?
軍事力を弱め、スクード将軍に落ち度あるときは責めますぞ」
黙るスクード公爵と対照的なお祖父様は、今までにない怒りを表していた。
「お待ち下され、お願いします。
どうか、我らを見捨てないで下され。
陛下、直ちに演習に向けての軍を動かす王命をー!
因みに場所はどこですか?」
スクード公爵は陛下に片膝を折り、頭を垂れて懇願する。
「赦す!場所は、黒い森だ!」
「プリムローズ、どうする?
場所はお前の考え通りであったが、助けて恩を売るか?
かなり、この国に恩を売っている気がするのう」
どうでもいいと言う様に、隣の孫娘に決定させるみたいで聞いてきた。
「今回は、ヘイズ王に是非とも頑張って頂きたいものですわ。
先頭に立って、陣頭指揮をして戦って下さいませ」
ヘイズ王とスクード公爵は、二人の会話に驚く表情を見せた。
「【疾風に勁草を知る】を、余にしろと申すのか!
激しい風が吹くことではじめて、風にも折れぬ強い草を見分けることができる」
君主の王が、プリムローズたちに向かい己のことを尋ねてきた。
「まぁ、そうとも言えますわね。
陛下はこの国の王で、全ての民の代表でございましょう?」
彼女は、親子程に年が上の方を諭す。
「苦難や事変に遭遇してはじめて、その人の意思や節操の強さは逆境にあって真価がわかる。
そうではないかのう!?」
戦の神と呼ばれる者は、物凄い眼力でヘイズ王に迫るように話す。
その場にいる者はプリムローズを除き、鬼神グレゴリーの視線に血の気を引くのだった。
「スクード、そなたに全権を委ねる。
余も準備したら、そなたの元へ馳せ参じる!」
「は、はーっ!
有り難き幸せ!陛下!」
ヘイズの臣下の会話を聞いていて、またしても本音がつい口にでてしまっていた。
「何が有り難きよ!
しっかりと書類を見て、最低限統治してればー。
無用なことをしなくて済んだのに、アホらしい」
「これこれ、プリム!
他国の王に対して、無礼ですよ。
気持ちは、妾も一緒であるがのう」
アルゴラ、もと王女は呆れている様子で嗜めた。
「失礼しました、お祖母様。
お祖父様も、初陣はこんな感じでしたの?」
沈黙の間の話を思い返していた、プリムローズ。
「おっ?!そうじゃな!
あの出戻り王女のせいで、ほんに苦労したわ。
勝ったから良かったが、負けたら目も当てられん。
無能な主君を持つと、尻拭いに臣下は大変じゃのう?
なぁ、スクード公爵!」
誰も否定する人がいないのが、実に胸が痛いと感じる。
私たちは急ぎ戦の準備に、各自の屋敷に戻るのだった。
帰りの馬車は沈黙で、重苦しい空気。
黙っては、それぞれ別々に窓の外ばかり眺めていた。
戦いでは、絶対の勝利はない。
命だけでも無事に、贅沢言えば無傷に祖国に帰国したいと願っていた。
不安だらけの彼女の初陣は、間もなく近づいていた。
誰が1番に話しかけるのか、普通は牽制しあってしまうだろう。
「こんな愚かな統治者は、なかなかお目にかかれない。
プリムローズ、王の最低限の役割をコヤツに教えてやれ!」
祖父グレゴリーは骨の髄まで呆れ笑って、唐突に私に話を突然振ってきた。
「はっ…、はい。
民を飢えさせない。
それをまとめる貴族たちに、尊敬される人格を持つ努力する。
何より、後継者争いをしないように…。
子孫を産まなくてはならない」
「そうじゃのう!
王妃との間に子が出来ぬ場合は、側室を迎える。
ヘイズ王は、それを放棄したと言われた」
祖父グレゴリーは、今まで礼儀正しくしていたが態度を崩した。
「プリム、エルアス殿をエテルネルに連れて帰るとしよう。
王よ、侯爵の地位はこの場で返上する。
そして、儂らはエテルネルに戻る。
貴方様は、最後までヘイズ王として生きなされ」
これは完全に、突き放した。
祖父グレゴリーは、普段は怒ったとしても何処か愛情がある方。
この冷静な物言いは、見捨てにかかりましたわ。
しかし、なぜヘイズ王はそんな事をしたのかしら?!
「お祖父様、ピーちゃんたちは配置についてます。
最後までされたら如何ですか?
敵から逃げては、クラレンス家の名誉に傷がつきますわ」
「プリムは優しいのう。
こんなクズに等しい者に、慈悲をかけるとはな。
有り難く思え!
可愛い孫の頼み、仕方ない今回だけ助けてやるわい。
お前の父も頼りなかったが、お主はそれ以上だ!
この愚王めー」
誰一人、反論してこないと言うことは認めているのね。
クズと愚王を‥。
祖父の怒声が響いている部屋に、慌てて駆け足で1人の男が大声を出して入ってくる。
「陛下、大変ございます!
謀反でございます!!
西の将軍ヴェント侯爵と南の将軍マーシャル伯爵が、軍を動かしていると報告がございました」
はいっ??南は呑気者で、攻めて来ないって豪語していたわよね。
ここにいる東の将軍様がー!
「落ち着け、謀反ではない!
それは、軍事演習だ。
これを伝えようと呼び出した。
すまぬ、半年前にヴェントとマーシャルから軍の大規模な演習をしたいと提案してきていた。
受託したのを忘れておったのだ……」
「…………、お祖父様!
私の考えは間違ってました。
今すぐに、我が国エテルネルに帰国しましょう」
もう何もかも投げ出して、プリムローズも国に戻る決心する。
この時、目的そのものが頭から飛んでいた。
「すまぬ、スクード。
期日が近くなったら、ヴェントから話が出ると思っていたが実戦に入ると昨日報せが来た。
実行日と内容を発案者に委ねる箇所を、余は見逃してしまっておった」
「馬鹿か、貴様はー!
此方は有事に備えてはおったが、それでも不利ではないか!
ヘイズ王、演習と言うが信じられるか?
軍事力を弱め、スクード将軍に落ち度あるときは責めますぞ」
黙るスクード公爵と対照的なお祖父様は、今までにない怒りを表していた。
「お待ち下され、お願いします。
どうか、我らを見捨てないで下され。
陛下、直ちに演習に向けての軍を動かす王命をー!
因みに場所はどこですか?」
スクード公爵は陛下に片膝を折り、頭を垂れて懇願する。
「赦す!場所は、黒い森だ!」
「プリムローズ、どうする?
場所はお前の考え通りであったが、助けて恩を売るか?
かなり、この国に恩を売っている気がするのう」
どうでもいいと言う様に、隣の孫娘に決定させるみたいで聞いてきた。
「今回は、ヘイズ王に是非とも頑張って頂きたいものですわ。
先頭に立って、陣頭指揮をして戦って下さいませ」
ヘイズ王とスクード公爵は、二人の会話に驚く表情を見せた。
「【疾風に勁草を知る】を、余にしろと申すのか!
激しい風が吹くことではじめて、風にも折れぬ強い草を見分けることができる」
君主の王が、プリムローズたちに向かい己のことを尋ねてきた。
「まぁ、そうとも言えますわね。
陛下はこの国の王で、全ての民の代表でございましょう?」
彼女は、親子程に年が上の方を諭す。
「苦難や事変に遭遇してはじめて、その人の意思や節操の強さは逆境にあって真価がわかる。
そうではないかのう!?」
戦の神と呼ばれる者は、物凄い眼力でヘイズ王に迫るように話す。
その場にいる者はプリムローズを除き、鬼神グレゴリーの視線に血の気を引くのだった。
「スクード、そなたに全権を委ねる。
余も準備したら、そなたの元へ馳せ参じる!」
「は、はーっ!
有り難き幸せ!陛下!」
ヘイズの臣下の会話を聞いていて、またしても本音がつい口にでてしまっていた。
「何が有り難きよ!
しっかりと書類を見て、最低限統治してればー。
無用なことをしなくて済んだのに、アホらしい」
「これこれ、プリム!
他国の王に対して、無礼ですよ。
気持ちは、妾も一緒であるがのう」
アルゴラ、もと王女は呆れている様子で嗜めた。
「失礼しました、お祖母様。
お祖父様も、初陣はこんな感じでしたの?」
沈黙の間の話を思い返していた、プリムローズ。
「おっ?!そうじゃな!
あの出戻り王女のせいで、ほんに苦労したわ。
勝ったから良かったが、負けたら目も当てられん。
無能な主君を持つと、尻拭いに臣下は大変じゃのう?
なぁ、スクード公爵!」
誰も否定する人がいないのが、実に胸が痛いと感じる。
私たちは急ぎ戦の準備に、各自の屋敷に戻るのだった。
帰りの馬車は沈黙で、重苦しい空気。
黙っては、それぞれ別々に窓の外ばかり眺めていた。
戦いでは、絶対の勝利はない。
命だけでも無事に、贅沢言えば無傷に祖国に帰国したいと願っていた。
不安だらけの彼女の初陣は、間もなく近づいていた。
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