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第4章 光と闇が混ざる時
第21話 急がば回れ
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朝日が登る薄暗さの中、屋敷に忍び込むことを決めた3人。
ピーちゃんとお仲間さんが、捕まっている部屋らしき木の枝に留まっていた。
目立つ事は、この上ない。
何せ、小鳥ではなく鷹だ。
プリムローズはその様子を見て、敵に気づかれる前に何とかしなくてはと思っていた。
それはゲラン親子も一緒で、顔には焦りが見え隠れしている。
外から木を登り侵入しようとプリムローズが登ろうとしたときに、ウィリアムがそれを阻止した。
「プリムローズ様、秘密の通路があります。
危険から逃げるために作られた、その道を使いましょう」
彼女はウィリアムを無言で睨み、どうして半分も登ってから言い出すのよと不満げであった。
3人は、周りを警戒しながら古井戸の前に来ていた。
「これは井戸に見せてますが、実は屋敷に通じる秘密の通路なのです。
さぁ、ハシゴが取り付けてあります。
慎重に降りましょう!」
順番はウィリアムの次にプリムローズ、ギルが最後と決まった。
決まると行動は早いこの3人、小さな松明に火を付けて片手に持つとウィリアムが降りて行く。
小さな口笛の音を合図に、プリムローズたちも後に続いた。
冒険気分の彼女はこうでも思わないと、汚い井戸を降りる事に耐えられなかった。
冒険ごっこを楽しく思うのと、実際経験するのは雲泥の差だと思うのである。
ウィリアムの気配は、狭い井戸の中には無い。
良く見ると横に、人が一人ぐらい通れる穴が空いていた。
3人は息を止めたり、ハンカチで鼻と口を覆っていた。
そこをくぐってちょっと頭を掲げて歩くと、がらんとした部屋の中に出る。
「コホン、コボン…。
ここは…、昔は物置でした。
屋敷の1番端で、普段は誰も入らない部屋ですよ」
ウィリアムは懐かしいのだろうか、目を細めてどこか悲しそうに話していた。
仕えていた主人たちを助けることも出来ずに、天国へ旅立たせた積年の思いが込められているのだろうか。
「お嬢、父上!
夜が明ける前に仕事をしようぜ!」
ギル掛け声に、現実世界に戻された。
そう私たちには使命がある。
あの愚か者たちを、救うという使命が…。
部屋の前には見張りが一人も居ない。
なんと、不用心な!
この場所を知られないと、絶対の自信のあらわれなのか。
3人はこう思うと、目を合わせて思わず苦笑する。
扉のドアノブに手をかけて引くと扉が開くとー。
部屋の中には、ベッドで寝ている愚か者が一人いた。
隣のベッドには、もう一人寝ているはずの人が見当たらない。
プリムローズは、寝ている者の肩を乱暴に揺さぶって無理やり起こす。
「ルシアン殿下!
ちょっと、起きなさい!」
静かに命じたプリムローズは、寝起き悪い男にハンカチで口を抑えた。
息をしにくくして、無理やり目覚めさせる。
かなり、危険な行為だが確実でもあった。
咳きこむルシアンに、彼女は詰問をした。
「オスモ様は、何処にいるのですか!
早く、答えなさいよ!!」
自分の無事よりも、オスモだけ安否確認する。
そんな彼女に、ルシアンはすこしだけ傷ついた。
「夜中に知らない女性が、男を2名引き連れてやって来た。
そして、彼だけを連れて行った」
女性?なぜ、オスモ様だけを…。
「殿下、その女性は髪が短かったですか?!」
「あぁ、アゴくらいしかなかったよ。
平民みたいで、変わった髪型だった」
「あの女ー!!
修道院に、居るはずではなかったの?!
これは、完全にヤバい!
オスモ様の○貞が、あの女に奪われてしまう!!」
プリムローズはパニックになり、令嬢らしからぬ言葉を放った。
サンドラとオスモ様が一線を越えたら、ライラ様はどんなお気持ちになられるの!?
「許せぬ!サンドラー!
ギル、私について来なさい!
オスモ様を、すぐに助けに行くー!!」
プリムローズは、腰にある剣を引き抜くとギルに命令した。
ギルは、プリムローズの発言にピーンときた。
サンドラについては、散々乗馬のお供で聞かされた悪女。
オスモに懸想して、婚約者ライラ様を虐めていた令嬢だ。
「お嬢、もう間に合わないかもしれませんぜ!」
「余計な事を言うな!
口に出すな、黙れー!
それなら、墓場まで持っていき喋らせない!
サンドラは、○◯す!
そうすれば、死人に口なしだぁー!!」
プリムローズの瞳の色が変化したのを見ると、ゲラン親子は黙った。
こうなったら、この方を誰もとめられない。
この状態になると、プリムローズは通常よりも強くなるのを二人は知っていた。
「……、お待ちなさい。
【急がば回れ】ですぞ!
プリムローズ様、まずは落ち着きなさい!」
ウィリアムは教え子を諭して、冷静になるように言うのだった。
「お嬢、そうだぞ!
物事は慌てずに、着実に行こうぜ!
ここは一度、深呼吸でもして落ち着け~~」
ルシアンは寝ぼけていた頭が冴え始めて、会話の内容が理解し始めていた。
あのときにもっと抵抗しておくべきだったと、後悔していたが3人の成り行きをみていた。
「フゥー、フゥ~。
助けに行きますよ。
ギル、手足を縛る縄はあるわね。
捕獲したら縛るわ」
「私にも手伝わせて下さい!
クラレンス嬢!」
ルシアンが彼女に言うと、襟ぐりを掴まれた。
「あんだけ気をつけてと言っていたのに、捕まり迷惑かけて何を言うか!
お前は足手まといなのよ。
大人しくしろ、バカ王子!
ウィリアム様、この方を宜しく!」
彼の乱暴に掴んでいた襟を離し、ギルと一緒に部屋を足音立てずに走り出ていく。
ルシアンは、彼女は自分に対して呆れているのを実感して落ち込んでいた。
ピーちゃんとお仲間さんが、捕まっている部屋らしき木の枝に留まっていた。
目立つ事は、この上ない。
何せ、小鳥ではなく鷹だ。
プリムローズはその様子を見て、敵に気づかれる前に何とかしなくてはと思っていた。
それはゲラン親子も一緒で、顔には焦りが見え隠れしている。
外から木を登り侵入しようとプリムローズが登ろうとしたときに、ウィリアムがそれを阻止した。
「プリムローズ様、秘密の通路があります。
危険から逃げるために作られた、その道を使いましょう」
彼女はウィリアムを無言で睨み、どうして半分も登ってから言い出すのよと不満げであった。
3人は、周りを警戒しながら古井戸の前に来ていた。
「これは井戸に見せてますが、実は屋敷に通じる秘密の通路なのです。
さぁ、ハシゴが取り付けてあります。
慎重に降りましょう!」
順番はウィリアムの次にプリムローズ、ギルが最後と決まった。
決まると行動は早いこの3人、小さな松明に火を付けて片手に持つとウィリアムが降りて行く。
小さな口笛の音を合図に、プリムローズたちも後に続いた。
冒険気分の彼女はこうでも思わないと、汚い井戸を降りる事に耐えられなかった。
冒険ごっこを楽しく思うのと、実際経験するのは雲泥の差だと思うのである。
ウィリアムの気配は、狭い井戸の中には無い。
良く見ると横に、人が一人ぐらい通れる穴が空いていた。
3人は息を止めたり、ハンカチで鼻と口を覆っていた。
そこをくぐってちょっと頭を掲げて歩くと、がらんとした部屋の中に出る。
「コホン、コボン…。
ここは…、昔は物置でした。
屋敷の1番端で、普段は誰も入らない部屋ですよ」
ウィリアムは懐かしいのだろうか、目を細めてどこか悲しそうに話していた。
仕えていた主人たちを助けることも出来ずに、天国へ旅立たせた積年の思いが込められているのだろうか。
「お嬢、父上!
夜が明ける前に仕事をしようぜ!」
ギル掛け声に、現実世界に戻された。
そう私たちには使命がある。
あの愚か者たちを、救うという使命が…。
部屋の前には見張りが一人も居ない。
なんと、不用心な!
この場所を知られないと、絶対の自信のあらわれなのか。
3人はこう思うと、目を合わせて思わず苦笑する。
扉のドアノブに手をかけて引くと扉が開くとー。
部屋の中には、ベッドで寝ている愚か者が一人いた。
隣のベッドには、もう一人寝ているはずの人が見当たらない。
プリムローズは、寝ている者の肩を乱暴に揺さぶって無理やり起こす。
「ルシアン殿下!
ちょっと、起きなさい!」
静かに命じたプリムローズは、寝起き悪い男にハンカチで口を抑えた。
息をしにくくして、無理やり目覚めさせる。
かなり、危険な行為だが確実でもあった。
咳きこむルシアンに、彼女は詰問をした。
「オスモ様は、何処にいるのですか!
早く、答えなさいよ!!」
自分の無事よりも、オスモだけ安否確認する。
そんな彼女に、ルシアンはすこしだけ傷ついた。
「夜中に知らない女性が、男を2名引き連れてやって来た。
そして、彼だけを連れて行った」
女性?なぜ、オスモ様だけを…。
「殿下、その女性は髪が短かったですか?!」
「あぁ、アゴくらいしかなかったよ。
平民みたいで、変わった髪型だった」
「あの女ー!!
修道院に、居るはずではなかったの?!
これは、完全にヤバい!
オスモ様の○貞が、あの女に奪われてしまう!!」
プリムローズはパニックになり、令嬢らしからぬ言葉を放った。
サンドラとオスモ様が一線を越えたら、ライラ様はどんなお気持ちになられるの!?
「許せぬ!サンドラー!
ギル、私について来なさい!
オスモ様を、すぐに助けに行くー!!」
プリムローズは、腰にある剣を引き抜くとギルに命令した。
ギルは、プリムローズの発言にピーンときた。
サンドラについては、散々乗馬のお供で聞かされた悪女。
オスモに懸想して、婚約者ライラ様を虐めていた令嬢だ。
「お嬢、もう間に合わないかもしれませんぜ!」
「余計な事を言うな!
口に出すな、黙れー!
それなら、墓場まで持っていき喋らせない!
サンドラは、○◯す!
そうすれば、死人に口なしだぁー!!」
プリムローズの瞳の色が変化したのを見ると、ゲラン親子は黙った。
こうなったら、この方を誰もとめられない。
この状態になると、プリムローズは通常よりも強くなるのを二人は知っていた。
「……、お待ちなさい。
【急がば回れ】ですぞ!
プリムローズ様、まずは落ち着きなさい!」
ウィリアムは教え子を諭して、冷静になるように言うのだった。
「お嬢、そうだぞ!
物事は慌てずに、着実に行こうぜ!
ここは一度、深呼吸でもして落ち着け~~」
ルシアンは寝ぼけていた頭が冴え始めて、会話の内容が理解し始めていた。
あのときにもっと抵抗しておくべきだったと、後悔していたが3人の成り行きをみていた。
「フゥー、フゥ~。
助けに行きますよ。
ギル、手足を縛る縄はあるわね。
捕獲したら縛るわ」
「私にも手伝わせて下さい!
クラレンス嬢!」
ルシアンが彼女に言うと、襟ぐりを掴まれた。
「あんだけ気をつけてと言っていたのに、捕まり迷惑かけて何を言うか!
お前は足手まといなのよ。
大人しくしろ、バカ王子!
ウィリアム様、この方を宜しく!」
彼の乱暴に掴んでいた襟を離し、ギルと一緒に部屋を足音立てずに走り出ていく。
ルシアンは、彼女は自分に対して呆れているのを実感して落ち込んでいた。
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