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第4章  光と闇が混ざる時

第19話 忠臣は二君に仕えず

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 指示通りに公爵に言われた料理は、イーダの機転か肉料理が多く用意されていた。
食事中で話すような内容とは思えない事を、バクバクぱくぱくとよく食べてしゃべる二人。

「でっ、誰があのマヌケ達を助けに行くのじゃあ?!
居場所も分からないんではないか。
検討けんとうもつかんのう?!」

豪快に骨付き肉をかぶり付くハーヴモーネ侯爵こと、エテルネルのクラレンス公爵グレゴリー。

「お祖父様~。
森の中か、その周辺の屋敷ではなくって?!
交渉事の人質ですから、いざとなったら見せつけなきゃいけないしね!」

こちらは上品に肉を切り分けて口に運ぶ、クラレンス公爵令嬢プリムローズ。

スクード公爵オレフは、二人の会話を食べながら耳を傾けていた。
平然と話をする化け物たちは、何故か生き生きして食事している様子にみえた。

わしが、息子オスモの身を案じているのが分からんのか。
憔悴しょうすいして、食事もノドも通らずにおるのに』

公爵は二人に気を使い、無理に食べ物を口に入れていた。

「もしかしたら、ピーちゃんが居場所を知っているかも知れないわ」

「なに、お前の飼っておる鷹が?!」

「はい、たぶん。
ピーちゃんが、お仲間に頼んでいましたから…。
一羽ぐらいは、見張ってもおかしくありませんわ」

「プリムローズでかしたぞ!
お前は、賢くて役立つな。
では、その仲間とやらに案内させよ!
お前の護衛には、ギルとウィルに頼むとする」

「ウィルって、ウィリアム・デラン!
ウィル親方ですか?!」

「幼かったお前は、ウィリアムって上手く何故か発音出来なかったな。
それで、ウィル呼びになってしまった。
懐かしいなことだ…」

スクード公爵は驚いたた表情に変化して、お祖父様につめめ寄った。

「あのウィリアム・ゲランなのか!?
王弟殿下の側で仕えて護衛長だった、あの者か?!
王弟夫妻が亡くなった馬車の事故で、責任をとって自害したはずじゃ」

プリムローズは、スクード公爵の話にビックリした。
ウィル親方が、過去にそんな方だった知らなかったわ。 
家庭教師の先生だったから、護衛って印象がなかった。

「ああ、そうじゃよ。
だが、ヘイズで一度死にエテルネルでよみがえったのだ。
殺すには、惜しい男だ。
知識人で腕も立ち、子爵の称号もあった。
ちなみにギルは、ウィルの息子だぞ!」

これにプリムローズは、またまた驚きして声を出してくる。

「えーえ~~!!
あの二人がー!
全然似てませんよ!」

「母親に似ていたんじゃろ。
これは、あやつらの名誉回復になるやもしれん!
ウィリアムは現状を知り、かなり怒っておるぞ」

スクード公爵オレフは、怒りどころではないだろうと思う。

「ハーヴモーネ侯爵、10年前の王弟殿下夫妻の不慮ふりょの事故。
そして、ご子息の行方不明。
祖先の海賊たちの争いと、複雑な思いがからみ合っておりますぞ!」

オレフは、どう争い事を収めるか考えつかなかった。
まだ、表立っては何もない。
王妃様や側室たちに薬を盛っていたことさえ秘密裏にしている。

「先に、オスモ様とバカタレを何とかしなくてはなりせんわ。
ウィルの親方とギルの親子。
二人だけで、なんとかなりますか?!
お祖父様?!」

「何言ってんのじゃ?
ピーちゃんという鷹は、お前の命令しか聞かんじゃろ。
プリムローズ、お前も一緒に行くのだ!!」

あー、お祖父様の言うとおりだ!
私が居ないと、ピーちゃんは絶対に何もしないわ。

「【忠臣は二君にくんに仕えず】ですかな。
忠臣とは一度主君を決めて仕えたら、他の者には主君に仕えないという意味があるのです」

スクード公爵は、ピーちゃんを感心して思い出しながら彼女に説明した。

「まぁ、お前の場合はすり込み効果じゃろう。
ひねから、ここまで育てたからのう」

お祖父様の命令で、私とデラン親子と共に人質奪還ひとじちだっかんをすることになった。
敵からの脅迫や犯行声明が出される前に奪還できたら、傷は浅くなるとスクード公爵は仰っていた。

行く前に重圧をかけてどうすんだと、プリムローズは二人に文句を言いたいのを我慢する。

 

 翌朝、ゲラン親子がプリムローズの元へ作戦会議の為に訪れた。

「ギルとウィルの親方がねぇ。
確かに、よく見ると骨格が似ているようね。
それで、旅の支度したくは出来てますか?!
明日にでも、捜索に行きましょう」

「お嬢!張り切っているみたいですが、本当にピーが居場所を知っているんですかい?!」

「これ、ギャスパル!
相変わらず、礼儀を知らん奴だ!」

父親が、息子の非礼をびていた。
これを見る限りでは、両親の性格はどちらに似たのかとプリムローズは思ってしまった。

「信じろと言われても、ハイそうですかとは言えないわよね」

そう二人に返事すると、窓を大きく開けると指笛で呼び出す。

「ピー!ピッピー」

ピーちゃんは、お仲間を従えて参上した。
マジにこの子鷹でなく人間並みか、それ以上の頭脳があるんてはないか?!
飼い主でも一歩引く、プリムローズ。

「この私の飼っている鷹だけあるわ。
気がいていて最高よ。
ピーちゃん、お仲間さん!
私のアホな兄の居場所を、何処か存じ上げているかしら?!」

「ピーピィー!ピィ~!!」

どうやら、俺にまかせろ的に自慢気に鳴いて見える鷹たち。

「ギル、……だそうよ。
ピーちゃんたちに案内させるわ。
出発前に、ヒンメルにも森のお仲間に頼んで貰わないとね!
オーホホホ!」

ヨシヨシと鷹たちの頭を指で優しく撫でて、もう片手で口元に手をかざして高笑いのプリムローズ。
高飛車たかびしゃにしか見えない公爵令嬢を、ひたすら冷静に眺める男たち。

この3人で、果たして人質奪還は成し遂げるられるのか?!
不安を感じながらもニヤつき会話を盗み聞くと、静かにお茶を淹れていたメイド長イーダであった。
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