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第3章  暗躍と毒女たちとの戦い

第24話 好きこそものの上手なれ

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 ライラ様とお昼のランチしていたら、笑顔でトレーを持ったフレデリカ様が私たちの席に近づいてくる。

「プリムローズ様、ご覧遊らんあそばせ。
どうやらピアノ演奏は、無事に成功したみたい。
あれが見えまして、あの満面の笑みです」

「フフ、安心しましたわ。
あんなに練習をしたんですもの」

2人はフレデリカの為に毎日時間を使っていて、お疲れになっていたのだった。

「ごきげんよう、聞いてくださいませ。
失礼、お食事を一緒しても宜しいわよね」

当たり前のように言われ嫌とは言えない二人は、どうぞと返すしかなかった。

「この度は、ご協力有り難うございました。
ふふふ、大成功でした。
祖母は嬉し泣きで、いつ死んでもいはないとおっってくれました」

嬉しげに報告するが、なんとも不吉な話をするんもんだと思う二人。
こんなに喜ばれて、助けて良かったとプリムローズは胸の中でうなづく。

「おばあ様、そんなに喜ばれて良かった。
頑張ったかいがありましたね」

「これを機に、お母上様と和解して下さい。
親子は、仲がいい方がいいわ。
1度こじれると、厄介やっかいいよ」

ライラの後にプリムローズは、昔の自分を思いだしフレデリカに話すのだった。

「実は…、もう和解しました。
母は私がピアノを弾けないのではと、気が気でなかったんですって!
弾けた私に、どうしてとうるさく尋ねて大変でした」

そうでしょうとも、あんなに下手くそでしたもの。
二人は、胸の内で同じ事を考えていた。

「【好きこそものの上手なれ】、という言葉がございます。
ピアノを好きになり、続けてくれると私も嬉しく思います」

プリムローズの言葉に、フレデリカは感動したのか手を握ってきた。

「母のことで意地になりピアノを嫌いでしたが、今回で好きになりました。
母に教えて貰うことになり、今は未熟ですが…。
いつか、お二人に私のピアノをお聴かせしたいです」

なんだ、仲直りしていたのか。
一瞬、エテルネルにいる母と姉を思い出した。

『姉はポール殿と仲良くしているかしら?
流石に3度目の婚約破棄だけは、ならないで欲しい』

「貴女!パーレン伯爵令嬢になんと仰いましたの?」

私たちが明るい話題で盛り上がっていたら、近くもない場所から言い争う声がする。

「本当のことでしょう?
婚約者がいる子息に、嘘ばかり話すのは最低ですわよ!
これでまた破談になったら、貴女どう責任をとるおつもり?!」

その激しい言い争いに、私たちも視線をそちらに動かす。

「あれが、水仙すいせん組の○女さまなの?
なにやら、またもめめてますわ」

「プリムローズ様、テレーシア様ですわよ。
またまた婚約者のいる方に、猛毒をふりかえて遊ばれていますのね」

遊ぶって、あんな険悪けんあくな遊びを普通します?
ライラ様の横顔を見て、プリムローズはまた心の声を呟いていた。

「あらまぁ、いくら自分が婚約していないからひがまなくてもねぇ~。
私は、とても恥ずかしくて真似できませんわ」

同じ毒女でも、色々タイプは違う訳か。
嫌味を言う3大毒女のフレデリカを、奥が深いと思い横目で見る。

「嘘は、一言も伝えてないわ。
私のことをデブで婚約できないと、陰で貴女が仰ってましたでしょう?
貴女の本性を、婚約者さまにお教えしただけです」

「太っていて、婚約者がいないのは本当でしょう?
パーレン伯爵令嬢!
どうして、婚約者のいる令嬢たちの婚約者にわざわざ告げ口するのよ!
まさしく、水仙の毒女!
水仙は全てが毒でできている。皆さまもお、気をつけ遊ばした方がいいわ!」

怒って言うだけ言うと、仲間を連れてその場を去っていった。

「あーら、みっともないこと。
あんな大声をお出しになって、ホホホ」

恐ろしい場面でした。
あれが、最強の毒女さま。
打たれ強く、何事も動じずに見事に普通に笑っている。
雰囲気がポレット夫人に似ているが、あんなに陰険いんけんなお方ではないわ。
似ていても、中身は真逆!
あの方は女性には親切で、反対に男性には厳格ですけどね。

「彼女あれで、見事に何組も婚約破棄させたのよ。
殿方の間でも有名で、婚約話も来ないから開き直ってやりたい放題。
父親は元王子なので、表立って強く言えないから困りものです」

まさに最強、女を捨てた人はたくましましい。
プリムローズはテレーシアの毒に当てられまくっていた。
大きい瞳を、ますます大きくして彼女を眺めている。

「ちょっと、何を見てるのよ!
見せ物じゃないからね!」

「パーレン伯爵令嬢は、被害者なの! 
あの令嬢は、なんて無礼だわ!
テレーシア様、さぁ参りましょう」

取り巻きたちも、大きいというか太っていて迫力がある。
歩く足音がドシドシと、こちらにも聞こえるかの様に感じる。

「プリムローズ様、プリムローズ様ったら!
お食事しませんと、お時間なくなりますわよ!」

ライラ様のお声で、ハッと我に返った。

お腹も彼女に驚いたのか、珍しく食事を残す事になったプリムローズ。
しかし、デザートは相変わらず食べきるのだった。
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