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第3章 暗躍と毒女たちとの戦い
第22話 膿んだら潰せ
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二人が帰られた後に、公爵夫妻は急に暗く真面目な表情になっていた。
あのテレーシア・パーレン伯爵令嬢の名を出されてから、どうも態度がおかしい。
「先程、公爵夫人はテレーシア様のお母上も毒…。
意地悪なお方ですと仰ってましたよね?」
私がニーナ様にお聞きすると、妻の様子を気にしつつスクード公爵が代わりに話された。
「プリムローズ嬢、これから話すことは他言無用だ!
パーレン伯爵は、例の黒幕の一人。
ヴェント侯爵はわかりやすく行動するが、彼らは暗闇の様で先が見えん!」
「公爵!犯人を特定しておりますの!
1番の黒幕は、いったい何方なのですか?!」
プリムローズは、何も知らせてくれないスクード公爵に我慢できなくなっていた。
「そろそろ動き出しそうだ。
これは長い話になる。
食後に、全て洗いざらい話そうとしよう」
スクード公爵は固い表情すると、横で妻のニーナが公爵の腕を掴んで首を振った。
「旦那様、それは危険ですわ。
プリムローズ嬢は他国の方です。
何かありましたら、クラレンス公爵にどうお詫びしますの?!」
その話す内容で、よっぽど闇深いのだと悟った。
「エリアスを救った時に、もう首を突っ込んでます。
本当のご両親のことに、話が繋がるのですね」
そう二人に聞き出すと、プリムローズにそうだという仕草をした。
将来のヘイズ王の継承問題が関わっているのだ。
未来だけではないのではと、彼女の胸の中に疑問がよぎる。
客人を迎えた時は、和やかで和気あいあいしていたのに。
不思議になりながら、見守る使用人たち。
いつもは明るい食事だが、給仕する者が変に緊張する中で食べ終えた。
食後3人は、1番信頼しているイーダにお茶の給仕を頼む。
「約束どおりに話すとするか。
みっともない話だ。
最初に、ヘイズの国の始まりからだ」
スクード公爵が話には、この島に2つの海賊たちが各々の存在を知らずに離れて住みついていた。
何時からどちらが先か未だに判明しないことだと、公爵は苦笑しながら言う。
「へぇ~っ、この国の祖先たちは海賊でしたのね。
先読みしますと、言い争いが頭に浮かびます」
率直に意見を述べると、公爵夫人がお笑いになる。
「オレフは、その1つの海賊のお頭の右腕の祖先よ。
プリムローズ嬢の予想より悪いことに、海賊たちの縄張り争いが始まりました」
「そうじゃ、海賊は血の気が多い。
海の荒くれは、陸もあがっても同じだったのだ」
夫妻が代わる代わる話す内容は、スクード公爵の祖先がいる海賊に軍配が上がった。
「負けた海賊たちはどうなりましたか?
海に逃げ帰りましたの?!」
海賊たちの争い話に、目を輝かし聞き惚れている。
「彼らは、我らの祖先の臣下に下った。
今回はもしかしたら、その負けた祖先の仇討ちを考えておるかも知れぬぞ」
「坊っちゃんも、賢く思慮深くおなりになりました。
私も、その負けた方の祖先ですよ。
全くもって、執念より怨念近い行いだね。
恥ずかしいやら、情けないやらー」
イーダは、空になったカップにお茶を注ぎ話の仲間に入ってきた。
使用人なのに公爵より偉そうなイーダを、ある意味尊敬して彼女は眺めていた。
「黒幕の親分は、その祖先のお方たちですか?
結束は強そう、何代も前のお話でしょう?!」
「何代より、何十代になる者もおるぞ!
それに、負けた祖先を持つ者たちだけではないからのう」
意味深な発言に、国を動かす人間関係の複雑さを考える。
祖国エテルネルで、プリムローズたちがした事柄を思い出した。
「恐ろしいお話です。
オレフ、もしかして内乱になりますの?
今まで平和だったヘイズは、これから荒れるのでしょうか?!」
「ニーナ、覚悟を決める時がくるやもしれん。
膿を出し切り新たな未来を、エリアス様に渡さなければならない。
その者たちを傍観して、王弟夫妻はあんな事になってしまった」
公爵夫妻の話し合いに、彼女らしい言葉を発した。
「【膿んだら潰せ】の言葉がございます。
ここまで膿んだらしまったら、潰して出し切るしかありませんわね」
「令嬢は正しい、外の人はハッキリ言える。
ごだごた言わず、思い切って取り除く方が良いとイーダも思います」
お年寄りはせっかちですもの。
聞いていただけで、イラついてるみたい。
「イーダったら!
相手は、王の実の兄上にあたりますのよ。
慎重にしなくては、いけないと思うの。
穏便に内密に収めたらと、私はそう思っております」
プリムローズは耳を疑った。
現ヘイズ王に…、兄がいたの…?!
何故、長男なのに継がなかったかしら?
そっか、継げなかった訳があるんだわ。
それが闇の正体を知る手掛かりになるのではと、彼女は3人の話を聞き感じた。
これから話すのは、衝撃的な内容だった。
母や姉のお下がりの小説を読んだが、真実は小説よりも奇なり。
それが現実に起きた事とは、信じられない思いをした。
あのテレーシア・パーレン伯爵令嬢の名を出されてから、どうも態度がおかしい。
「先程、公爵夫人はテレーシア様のお母上も毒…。
意地悪なお方ですと仰ってましたよね?」
私がニーナ様にお聞きすると、妻の様子を気にしつつスクード公爵が代わりに話された。
「プリムローズ嬢、これから話すことは他言無用だ!
パーレン伯爵は、例の黒幕の一人。
ヴェント侯爵はわかりやすく行動するが、彼らは暗闇の様で先が見えん!」
「公爵!犯人を特定しておりますの!
1番の黒幕は、いったい何方なのですか?!」
プリムローズは、何も知らせてくれないスクード公爵に我慢できなくなっていた。
「そろそろ動き出しそうだ。
これは長い話になる。
食後に、全て洗いざらい話そうとしよう」
スクード公爵は固い表情すると、横で妻のニーナが公爵の腕を掴んで首を振った。
「旦那様、それは危険ですわ。
プリムローズ嬢は他国の方です。
何かありましたら、クラレンス公爵にどうお詫びしますの?!」
その話す内容で、よっぽど闇深いのだと悟った。
「エリアスを救った時に、もう首を突っ込んでます。
本当のご両親のことに、話が繋がるのですね」
そう二人に聞き出すと、プリムローズにそうだという仕草をした。
将来のヘイズ王の継承問題が関わっているのだ。
未来だけではないのではと、彼女の胸の中に疑問がよぎる。
客人を迎えた時は、和やかで和気あいあいしていたのに。
不思議になりながら、見守る使用人たち。
いつもは明るい食事だが、給仕する者が変に緊張する中で食べ終えた。
食後3人は、1番信頼しているイーダにお茶の給仕を頼む。
「約束どおりに話すとするか。
みっともない話だ。
最初に、ヘイズの国の始まりからだ」
スクード公爵が話には、この島に2つの海賊たちが各々の存在を知らずに離れて住みついていた。
何時からどちらが先か未だに判明しないことだと、公爵は苦笑しながら言う。
「へぇ~っ、この国の祖先たちは海賊でしたのね。
先読みしますと、言い争いが頭に浮かびます」
率直に意見を述べると、公爵夫人がお笑いになる。
「オレフは、その1つの海賊のお頭の右腕の祖先よ。
プリムローズ嬢の予想より悪いことに、海賊たちの縄張り争いが始まりました」
「そうじゃ、海賊は血の気が多い。
海の荒くれは、陸もあがっても同じだったのだ」
夫妻が代わる代わる話す内容は、スクード公爵の祖先がいる海賊に軍配が上がった。
「負けた海賊たちはどうなりましたか?
海に逃げ帰りましたの?!」
海賊たちの争い話に、目を輝かし聞き惚れている。
「彼らは、我らの祖先の臣下に下った。
今回はもしかしたら、その負けた祖先の仇討ちを考えておるかも知れぬぞ」
「坊っちゃんも、賢く思慮深くおなりになりました。
私も、その負けた方の祖先ですよ。
全くもって、執念より怨念近い行いだね。
恥ずかしいやら、情けないやらー」
イーダは、空になったカップにお茶を注ぎ話の仲間に入ってきた。
使用人なのに公爵より偉そうなイーダを、ある意味尊敬して彼女は眺めていた。
「黒幕の親分は、その祖先のお方たちですか?
結束は強そう、何代も前のお話でしょう?!」
「何代より、何十代になる者もおるぞ!
それに、負けた祖先を持つ者たちだけではないからのう」
意味深な発言に、国を動かす人間関係の複雑さを考える。
祖国エテルネルで、プリムローズたちがした事柄を思い出した。
「恐ろしいお話です。
オレフ、もしかして内乱になりますの?
今まで平和だったヘイズは、これから荒れるのでしょうか?!」
「ニーナ、覚悟を決める時がくるやもしれん。
膿を出し切り新たな未来を、エリアス様に渡さなければならない。
その者たちを傍観して、王弟夫妻はあんな事になってしまった」
公爵夫妻の話し合いに、彼女らしい言葉を発した。
「【膿んだら潰せ】の言葉がございます。
ここまで膿んだらしまったら、潰して出し切るしかありませんわね」
「令嬢は正しい、外の人はハッキリ言える。
ごだごた言わず、思い切って取り除く方が良いとイーダも思います」
お年寄りはせっかちですもの。
聞いていただけで、イラついてるみたい。
「イーダったら!
相手は、王の実の兄上にあたりますのよ。
慎重にしなくては、いけないと思うの。
穏便に内密に収めたらと、私はそう思っております」
プリムローズは耳を疑った。
現ヘイズ王に…、兄がいたの…?!
何故、長男なのに継がなかったかしら?
そっか、継げなかった訳があるんだわ。
それが闇の正体を知る手掛かりになるのではと、彼女は3人の話を聞き感じた。
これから話すのは、衝撃的な内容だった。
母や姉のお下がりの小説を読んだが、真実は小説よりも奇なり。
それが現実に起きた事とは、信じられない思いをした。
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