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第3章 暗躍と毒女たちとの戦い
第21話 羊頭狗肉
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残り1週間に迫った誕生日パーティーに向け、実際に本番を想定して演奏会をする事にした。
フレデリカ様に彼女だけは、事前に何も知らせてはいない。
スクード公爵夫妻や使用人たちのたくさん方々の前で、彼女は約1ヶ月間練習した曲を弾くことになる。
「フレデリカ様、あんなに練習をしたのです。
自信を持ってくださいね」
「少し緊張しますが、当日はもっとですものね。
気合を入れて頑張りますわ!」
ライラ様が励ましていると、公爵夫妻も彼女に声をかけてくれた。
「今日はピアノ演奏を聴かせてくれるとか、楽しみにしておったわい!」
「フフ、笑顔ですよ!
練習を聴かせ頂きましたが、最後の方では音に余裕すら感じらましたもの」
公爵夫人のニーナ様が、私たちの練習を聞いていたとは驚きでしたわ。
「おばあ様の誕生日祝いと伺いましてなぁ。
このイーダを、そのお方と重ねて弾きなさい!」
メイド長イーダも、公爵夫妻の側に控えていた。
あの執事長ヤンネの仕事も兼任して、イーダは年寄りをこき使ってと毎日ボヤいていた。
まぁ、あれは口癖なので気にするなと公爵様に言われましたわ。
ヤンネは、今は極秘で王宮の牢屋に入っている。
家族が人質に捕られていた者は、公爵の手の者がヘーディン侯爵の屋敷に忍び込み助け出していた。
あれだけ派手に動いているのに、敵は何故か大人しい。
プリムローズは不気味な静けさに、どう敵が仕掛けてくるか不安になる。
「では皆様、お耳汚しになりますが聴いてくださいませ」
そうフレデリカ様が合図すると、ゆったりしたテンポでピアノを奏でる。
途中で2箇所わからない程度のつま付きはあったが、合格を出せる範囲の演奏してくれた。
「良かったですよ。
本番まで少し時間がありますので、引き締めて練習しましょう!」
私がフレデリカ様に話すと、ホッとした表情をして息を軽くつく。
「はい、何箇所か引っ掛かりましたが最後まで弾く事が出来ました。
たくさんの方々の視線を感じましたら、緊張して指が震えましたわ」
使用人たちも拍手を送り、笑みが溢れる発表会となった。
その後に公爵夫妻を交えて、お茶を飲み学園の話で盛り上がる。
「私が百合組の毒女と、あだ名を付けられていたのは存じてましたわ。
ただ、露骨に媚びへつらう者にお灸を据えただけです」
フレデリカ様は、堂々と虐めた理由を述べた。
「お気持ちはわかりますわよ。
しかし、それは彼女たちもしたくてした訳ではないんではなくて?
両親から指示され貴女と仲良くして、きっとチューダー家に取り入りたかったのよ」
ヘーディン侯爵令嬢ことライラは、自分も覚えがあると暴露した。
「どこの国も、同じですね。
我がエテルネルの場合は王子殿下に体を近づけ、無理やりスリ寄るご令嬢たちには嫌悪しましたわ!」
プリムローズが色々思い出したのか、怒りの表情でヘイズの方々にお話をする。
「王子さまは大人気だのう。
この国に王子が生まれてないので、そんな騒ぎにはならんがの」
公爵は笑いご令嬢たちに話すと、妻のニーナが興味深げに尋ねてきた。
「先ほど毒女と言われてましたけど…。
チューダー侯爵とヴェント侯爵のご令嬢の他に、まだどなたかいらっしゃいますの?!
私たちの代にも、意地の悪い方はおりましたけど…」
ニーナ様は、毒女呼びに関心を示したらしい。
「私も、セント・ジョン学園の3大毒女ですからね。
その中でも、1番は彼女で間違いありません」
毒女の中に入っている本人フレデリカは、ある人物を匂わせた。
「ええ、彼女しかいません」
横に座るライラも同意する。
悪女と呼ばれた彼女が押す方ですから、さぞかし素晴らしいお方なのでしょうね。悪女振りが…。
「どんなお方ですか?
キツイお顔で、冷たい美女っぽいのでしょうか?!」
プリムローズは目の前の美しく派手さを醸しだして、まさしく悪女に相応しい方に直に質問をした。
「ハズレですわ。
優しげでポッチャリして、想像しにくいほどいつも笑みを絶やさない方よ」
「虫も殺さない方とは、あの人のような風貌を指します。
だからこそ、周りは騙されんです!」
フレデリカとライラは、知らない3人に返事をするとスクード公爵が豪快に笑う。
「ハーハハ!そのご令嬢は、【羊頭狗肉】じゃあな」
「貴方ったら、そんな言葉をー。
そこまで、中身と外見が違うのかしらね?」
スクード公爵夫妻は、苦笑してご令嬢の話に乗ってきた。
「意味は、羊と言って犬の肉を売るって意味ですわよね?
実際、犬のお肉を食べていたのかしら?」
ウサギは食べているが、犬はなかったので味がどんなのか想像できない。
「昔はあったようだな。
儂も、食うたことは無いがの。
羊と偽り安い犬を売るとは、例えでも良くないことじゃあ」
「それだけ、外見と中身が全然違いますのね?
学園に通っているなら、私もお会いした事があるのかもね?!」
公爵とプリムローズが話すのを聞くと、彼女らはその人物の名を教えるのだった。
「学年が2つ上ですから、食堂みたいな共通の場なら会える可能性はあります」
「お名前は、テレーシア・パーレン伯爵令嬢でございますわ。
3年の水仙組です」
ライラ様が最後の毒女さまの名を告げると、スクード公爵夫人が眉間にシワを寄せて険しいお顔をされた。
「パーレン伯爵って仰いましたよね?
そのお方の母上は、私たちの代で有名なお方でしたのよ。
意地悪で自分より目立つ方を虐めぬく、まさに言い方が悪いですが毒女でしたわ」
『はぁ、親子2代で毒女さまなの?
遺伝でその才能を、受け継いだわけ?!』
毒親子が存在すると聞くと、驚き背筋が凍る恐ろしさを感じた。
プリムローズ自身が周りから恐れられていたのだが、自分の事を棚にあげてテーレシアという人物に恐怖を覚えていた。
フレデリカ様に彼女だけは、事前に何も知らせてはいない。
スクード公爵夫妻や使用人たちのたくさん方々の前で、彼女は約1ヶ月間練習した曲を弾くことになる。
「フレデリカ様、あんなに練習をしたのです。
自信を持ってくださいね」
「少し緊張しますが、当日はもっとですものね。
気合を入れて頑張りますわ!」
ライラ様が励ましていると、公爵夫妻も彼女に声をかけてくれた。
「今日はピアノ演奏を聴かせてくれるとか、楽しみにしておったわい!」
「フフ、笑顔ですよ!
練習を聴かせ頂きましたが、最後の方では音に余裕すら感じらましたもの」
公爵夫人のニーナ様が、私たちの練習を聞いていたとは驚きでしたわ。
「おばあ様の誕生日祝いと伺いましてなぁ。
このイーダを、そのお方と重ねて弾きなさい!」
メイド長イーダも、公爵夫妻の側に控えていた。
あの執事長ヤンネの仕事も兼任して、イーダは年寄りをこき使ってと毎日ボヤいていた。
まぁ、あれは口癖なので気にするなと公爵様に言われましたわ。
ヤンネは、今は極秘で王宮の牢屋に入っている。
家族が人質に捕られていた者は、公爵の手の者がヘーディン侯爵の屋敷に忍び込み助け出していた。
あれだけ派手に動いているのに、敵は何故か大人しい。
プリムローズは不気味な静けさに、どう敵が仕掛けてくるか不安になる。
「では皆様、お耳汚しになりますが聴いてくださいませ」
そうフレデリカ様が合図すると、ゆったりしたテンポでピアノを奏でる。
途中で2箇所わからない程度のつま付きはあったが、合格を出せる範囲の演奏してくれた。
「良かったですよ。
本番まで少し時間がありますので、引き締めて練習しましょう!」
私がフレデリカ様に話すと、ホッとした表情をして息を軽くつく。
「はい、何箇所か引っ掛かりましたが最後まで弾く事が出来ました。
たくさんの方々の視線を感じましたら、緊張して指が震えましたわ」
使用人たちも拍手を送り、笑みが溢れる発表会となった。
その後に公爵夫妻を交えて、お茶を飲み学園の話で盛り上がる。
「私が百合組の毒女と、あだ名を付けられていたのは存じてましたわ。
ただ、露骨に媚びへつらう者にお灸を据えただけです」
フレデリカ様は、堂々と虐めた理由を述べた。
「お気持ちはわかりますわよ。
しかし、それは彼女たちもしたくてした訳ではないんではなくて?
両親から指示され貴女と仲良くして、きっとチューダー家に取り入りたかったのよ」
ヘーディン侯爵令嬢ことライラは、自分も覚えがあると暴露した。
「どこの国も、同じですね。
我がエテルネルの場合は王子殿下に体を近づけ、無理やりスリ寄るご令嬢たちには嫌悪しましたわ!」
プリムローズが色々思い出したのか、怒りの表情でヘイズの方々にお話をする。
「王子さまは大人気だのう。
この国に王子が生まれてないので、そんな騒ぎにはならんがの」
公爵は笑いご令嬢たちに話すと、妻のニーナが興味深げに尋ねてきた。
「先ほど毒女と言われてましたけど…。
チューダー侯爵とヴェント侯爵のご令嬢の他に、まだどなたかいらっしゃいますの?!
私たちの代にも、意地の悪い方はおりましたけど…」
ニーナ様は、毒女呼びに関心を示したらしい。
「私も、セント・ジョン学園の3大毒女ですからね。
その中でも、1番は彼女で間違いありません」
毒女の中に入っている本人フレデリカは、ある人物を匂わせた。
「ええ、彼女しかいません」
横に座るライラも同意する。
悪女と呼ばれた彼女が押す方ですから、さぞかし素晴らしいお方なのでしょうね。悪女振りが…。
「どんなお方ですか?
キツイお顔で、冷たい美女っぽいのでしょうか?!」
プリムローズは目の前の美しく派手さを醸しだして、まさしく悪女に相応しい方に直に質問をした。
「ハズレですわ。
優しげでポッチャリして、想像しにくいほどいつも笑みを絶やさない方よ」
「虫も殺さない方とは、あの人のような風貌を指します。
だからこそ、周りは騙されんです!」
フレデリカとライラは、知らない3人に返事をするとスクード公爵が豪快に笑う。
「ハーハハ!そのご令嬢は、【羊頭狗肉】じゃあな」
「貴方ったら、そんな言葉をー。
そこまで、中身と外見が違うのかしらね?」
スクード公爵夫妻は、苦笑してご令嬢の話に乗ってきた。
「意味は、羊と言って犬の肉を売るって意味ですわよね?
実際、犬のお肉を食べていたのかしら?」
ウサギは食べているが、犬はなかったので味がどんなのか想像できない。
「昔はあったようだな。
儂も、食うたことは無いがの。
羊と偽り安い犬を売るとは、例えでも良くないことじゃあ」
「それだけ、外見と中身が全然違いますのね?
学園に通っているなら、私もお会いした事があるのかもね?!」
公爵とプリムローズが話すのを聞くと、彼女らはその人物の名を教えるのだった。
「学年が2つ上ですから、食堂みたいな共通の場なら会える可能性はあります」
「お名前は、テレーシア・パーレン伯爵令嬢でございますわ。
3年の水仙組です」
ライラ様が最後の毒女さまの名を告げると、スクード公爵夫人が眉間にシワを寄せて険しいお顔をされた。
「パーレン伯爵って仰いましたよね?
そのお方の母上は、私たちの代で有名なお方でしたのよ。
意地悪で自分より目立つ方を虐めぬく、まさに言い方が悪いですが毒女でしたわ」
『はぁ、親子2代で毒女さまなの?
遺伝でその才能を、受け継いだわけ?!』
毒親子が存在すると聞くと、驚き背筋が凍る恐ろしさを感じた。
プリムローズ自身が周りから恐れられていたのだが、自分の事を棚にあげてテーレシアという人物に恐怖を覚えていた。
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