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第3章 暗躍と毒女たちとの戦い
第19話 人を助くるは菩薩の行い
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今日は合同授業、それは音楽の時間だった。
祖国エテルネルでは学園では音楽がなく、他のクラスとも授業はしなかったなぁと過去を振り返る。
そう考えるとヘイズの教え方は他のクラスメイトとの交流が持てて、祖国エテルネルにもぜひ参考にしたいと考えて授業を受ける。
先生がクラスの代表者に、ピアノを弾いて貰いましょうと言い出す。
ピアノのねぇ~。
私の先生は、アルゴラの一流ピアニストだったわ。
まだ小さいのに、難しい曲をバンバン練習させられてたっけ懐かしい。
「先生~!エテルネルから留学された方に、弾いて頂きませんか?!
ヘイズとは、きっと違う異国の曲が聞けましてよ!」
先ほどの仕返しとばかりに、百合組の毒女ことチューダ侯爵令嬢が先生に意見を述べてきた。
この私に、恥をかかせようとしているのがまる分かりだった。
「では、ヘイズの素晴らしい曲を先に聞かせて下さい!
チューダー侯爵令嬢、どうか宜しくお願い致します」
プリムローズが頼むと、先生もチューダー侯爵令嬢にお願いねと頼んできた。
「えっ!私がですの?!」
侯爵令嬢だし、ピアノくらい習っているはず。
目をキョロキョロして、ピアノの席に着くと自信なさそうに鍵盤を弾き出した。
『へぇー、これがヘイズの曲~?!
個性的なテンポでズレているのか、曲調がまったく理解できない』
私が不思議そうな顔をして、横にいるライラ様を見たら口元をピクピクして聴いていた。
どうやら、下手だったようね。
先生も不思議そうに、首を傾げてる。
「…、そこまでで結構よ!
チューダー侯爵令嬢、有難うございました。
先生は新しい曲は疎くて、どの曲を弾いてくれたのか。
教えてくれるかしら?」
先生の問いかけに顔を赤らめて下を向く彼女は、かろうじて聞こえる声で返事する。
「恋人たちの踊り…、ですわ」
プリムローズは知らない曲だが、ヘイズでは舞踏会では必ず踊られるワルツだそうだ。
実に踊りにくそうなワルツで、恋人に足を踏まれてテンポを外すのを想像する曲であった。
「コホン、曲名でやっと分かりました。
評価はしませんから、ちゃんと弾けるようにしなさいね」
先生は評価に値しないと、遠まわしに言われた。
「クラレンス嬢は、私たちにどんな曲を聞かせてくれるのかしら?」
「はい、先生!
私とアルゴラの作曲家フランソワ・パユのピアノ協奏曲です。
まだ、未発表ですが特別に両国友好の証として弾きます。
長くなりますので、最後のパートを弾かせて貰います」
パユ様はヘイズでも噂で存じているようで、ご令嬢たちからもフランソワ様って声があがっている。
プリムローズが奏でると、音がまるで宝石の様に光り輝く。
あれだけ早いテンポで、一音ずつ強弱がつけられるのが不思議なぐらいであった。
先生も驚いてつい側まで行き、弾いてる鍵盤を直視している。
弾き終えると教室の誰もが拍手喝采。
あの毒女フレデリカでさえ、惜しみない拍手していた。
「凄く、素晴らしかったです!
メランコリーな感じの中、強弱をつけ速いテンポなのに音にズレがない!
最後に向けて、華やかで盛り上がり終わる曲でした」
先生は感動して手を取りながら感想を言い、今度は全部聞かせて欲しいとお願いをしてきた。
「先生、この曲は私の成人を祝う時にお披露する予定ですの。
ですから、今日は特別ですわ」
そう伝えると残念そうな顔をすると、教室からため息があちらこちらから聞こえましたわ。
「プリムローズ様、ピアノ素敵でした!#
刺繍__ししゅう__#も素晴らしかったのに、ピアノもお上手ですね。
もう、完璧すぎて出来ないこと無いのではなくて?!」
私が席に座ると、直ぐに話しかけてきた。
少し離れた席から、チラチラと見る視線を感じられる。
「ライラ様、フレデリカ様が此方を見てる気がしますわ」
「あら、イヤだわ!
で目線は悪い感じがしないわね。
あの方のお母上様は、ピアノが確か話によるとお上手なのよね。
弾いてる姿に惹かれて、チューダー侯爵が婚約を申し込まれた逸話がありますのよ」
「ロマンチックですわ!
それなら、娘のフレデリカ様はあんな演奏になったのか不思議ね?」
プリムローズは授業が終わり、ライラと食堂に向かう渡り廊下を歩いてる途中。
凄い速さで、私たちの前に現れた。
フレデリカ様は、赤いお顔をして突然話し出してくる。
「く、くっクラレンス嬢!
折り入ってお話がございますのー!!」
「ちょっと、なんなのよ!
食堂のあの席には、私たちは座らないわよ」
「ちが、違いますの。
私を…、あの助けて頂きたいのです」
この感じは面倒に巻き込まれると、プリムローズたちは察する。
逃げたいが、彼女は弱者にはめっぽう弱い。
アルゴラの王妃さまの言葉が浮かんだわ。
確か、【人を助くるは菩薩の行い】だったっけ!
菩薩とは遠い異国の神様って、王妃さまが仰いましたわよね。
「人の苦しみを助けることは、菩薩の行いに等しい立派な行いか。
彼女の助けは、どんなものよ?
私は別に、菩薩になりたくなくてよ!」
ぶつぶつ変な言葉を呟くプリムローズを、ライラが無理やり腕を引っ張って食堂に向かった。
何故かフレデリカ様の話を、食事しながら伺う羽目になるのだった。
祖国エテルネルでは学園では音楽がなく、他のクラスとも授業はしなかったなぁと過去を振り返る。
そう考えるとヘイズの教え方は他のクラスメイトとの交流が持てて、祖国エテルネルにもぜひ参考にしたいと考えて授業を受ける。
先生がクラスの代表者に、ピアノを弾いて貰いましょうと言い出す。
ピアノのねぇ~。
私の先生は、アルゴラの一流ピアニストだったわ。
まだ小さいのに、難しい曲をバンバン練習させられてたっけ懐かしい。
「先生~!エテルネルから留学された方に、弾いて頂きませんか?!
ヘイズとは、きっと違う異国の曲が聞けましてよ!」
先ほどの仕返しとばかりに、百合組の毒女ことチューダ侯爵令嬢が先生に意見を述べてきた。
この私に、恥をかかせようとしているのがまる分かりだった。
「では、ヘイズの素晴らしい曲を先に聞かせて下さい!
チューダー侯爵令嬢、どうか宜しくお願い致します」
プリムローズが頼むと、先生もチューダー侯爵令嬢にお願いねと頼んできた。
「えっ!私がですの?!」
侯爵令嬢だし、ピアノくらい習っているはず。
目をキョロキョロして、ピアノの席に着くと自信なさそうに鍵盤を弾き出した。
『へぇー、これがヘイズの曲~?!
個性的なテンポでズレているのか、曲調がまったく理解できない』
私が不思議そうな顔をして、横にいるライラ様を見たら口元をピクピクして聴いていた。
どうやら、下手だったようね。
先生も不思議そうに、首を傾げてる。
「…、そこまでで結構よ!
チューダー侯爵令嬢、有難うございました。
先生は新しい曲は疎くて、どの曲を弾いてくれたのか。
教えてくれるかしら?」
先生の問いかけに顔を赤らめて下を向く彼女は、かろうじて聞こえる声で返事する。
「恋人たちの踊り…、ですわ」
プリムローズは知らない曲だが、ヘイズでは舞踏会では必ず踊られるワルツだそうだ。
実に踊りにくそうなワルツで、恋人に足を踏まれてテンポを外すのを想像する曲であった。
「コホン、曲名でやっと分かりました。
評価はしませんから、ちゃんと弾けるようにしなさいね」
先生は評価に値しないと、遠まわしに言われた。
「クラレンス嬢は、私たちにどんな曲を聞かせてくれるのかしら?」
「はい、先生!
私とアルゴラの作曲家フランソワ・パユのピアノ協奏曲です。
まだ、未発表ですが特別に両国友好の証として弾きます。
長くなりますので、最後のパートを弾かせて貰います」
パユ様はヘイズでも噂で存じているようで、ご令嬢たちからもフランソワ様って声があがっている。
プリムローズが奏でると、音がまるで宝石の様に光り輝く。
あれだけ早いテンポで、一音ずつ強弱がつけられるのが不思議なぐらいであった。
先生も驚いてつい側まで行き、弾いてる鍵盤を直視している。
弾き終えると教室の誰もが拍手喝采。
あの毒女フレデリカでさえ、惜しみない拍手していた。
「凄く、素晴らしかったです!
メランコリーな感じの中、強弱をつけ速いテンポなのに音にズレがない!
最後に向けて、華やかで盛り上がり終わる曲でした」
先生は感動して手を取りながら感想を言い、今度は全部聞かせて欲しいとお願いをしてきた。
「先生、この曲は私の成人を祝う時にお披露する予定ですの。
ですから、今日は特別ですわ」
そう伝えると残念そうな顔をすると、教室からため息があちらこちらから聞こえましたわ。
「プリムローズ様、ピアノ素敵でした!#
刺繍__ししゅう__#も素晴らしかったのに、ピアノもお上手ですね。
もう、完璧すぎて出来ないこと無いのではなくて?!」
私が席に座ると、直ぐに話しかけてきた。
少し離れた席から、チラチラと見る視線を感じられる。
「ライラ様、フレデリカ様が此方を見てる気がしますわ」
「あら、イヤだわ!
で目線は悪い感じがしないわね。
あの方のお母上様は、ピアノが確か話によるとお上手なのよね。
弾いてる姿に惹かれて、チューダー侯爵が婚約を申し込まれた逸話がありますのよ」
「ロマンチックですわ!
それなら、娘のフレデリカ様はあんな演奏になったのか不思議ね?」
プリムローズは授業が終わり、ライラと食堂に向かう渡り廊下を歩いてる途中。
凄い速さで、私たちの前に現れた。
フレデリカ様は、赤いお顔をして突然話し出してくる。
「く、くっクラレンス嬢!
折り入ってお話がございますのー!!」
「ちょっと、なんなのよ!
食堂のあの席には、私たちは座らないわよ」
「ちが、違いますの。
私を…、あの助けて頂きたいのです」
この感じは面倒に巻き込まれると、プリムローズたちは察する。
逃げたいが、彼女は弱者にはめっぽう弱い。
アルゴラの王妃さまの言葉が浮かんだわ。
確か、【人を助くるは菩薩の行い】だったっけ!
菩薩とは遠い異国の神様って、王妃さまが仰いましたわよね。
「人の苦しみを助けることは、菩薩の行いに等しい立派な行いか。
彼女の助けは、どんなものよ?
私は別に、菩薩になりたくなくてよ!」
ぶつぶつ変な言葉を呟くプリムローズを、ライラが無理やり腕を引っ張って食堂に向かった。
何故かフレデリカ様の話を、食事しながら伺う羽目になるのだった。
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