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第3章 暗躍と毒女たちとの戦い
第13話 他人の空似
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追憶の間かと心の中で呟いては、よいお名前の部屋よねと思ってあれを思い出す。
それに比べたら我がクラレンス家の沈黙の間もとい、お笑いの間は…。
あれはあれで、役には立っている。
「これが、送られてきた肖像画ですよ。
薔薇を見て微笑まれているとは、お花が大好きなんですのね」
王妃はやはり女の子は、美しい花が好きなのねとプリムローズを可愛らしく感じる。
「我がクラレンス家の庭の薔薇は、それはそれは宝石に例えられる程に見事ですのよ」
『本当のことを言えないわよ。
お菓子を食べて、笑っている姿を描かれたとは。
よくもまぁ、嘘をここまで描けるわよね。
私と薔薇を別々に描いて一緒にするとは、この画家は腕がいいわ。
絵画は、画家の創作物も入っていますものね』
残念なことにもう少し、私の気品を滲ませて描いてほしかったわ!
無理難題を胸中で呟く、わがままなご令嬢であった。
「懐かしいぞ。
近頃は、追憶の間に来なかったからな。
コチラが父上で、隣の絵は弟だ」
王は目を細めて、寂しげに愛おしいそうに絵を眺めていた。
プリムローズはその絵を見て、口からポロリと名前が出てしまった。
「あっ、エリアス!?」
その名に即座に反応したのは、ヘイズ王でその人であった。
「何故…、何故にー。
そなたは、その名を知っているのだ?
そ、それはー。
弟の子の名であるぞぉ?!」
興奮した王は、プリムローズの肩を乱暴に掴んだ。
「いっ、痛いー!」
その力強く握られた小さな肩に、痛みと驚きを感じた。
「おぉ、すまぬ!許せ…。
それで、なぜその名を知っているのだ!
お願いだ!
どうしてか教えてくれぬか!」
必死に驚き焦りながらヘイズ王は、プリムローズに頼んでくる。
『こんなにも突然、態度を変えて…。
10年間の長きに捜索したが、結局見つからなかった。
このご様子だと、ヘイズ王もエリアスを諦めていたのかもしれない』
私はゆっくりと出会ってから、今までの彼を話して聞かせた。
「そんな目に合っていたとは。
もし令嬢がその者を救ってくれなければ、命も怪ぶれていたのかもしれん。
この通り、礼を申すぞ!」
「私の話すエリアスが、絶対に同じ人物とは限りません。
ただ、肖像画を見た限り可能性はあります」
プリムローズは、慎重になっていた。
1番良いのは、ヘイズ王にエリアスを見て判断してくれたらと思うが難しいかしら?
「なるほど、【他人の空似】か。
確かに、ぬか喜びはいかんな」
王が考え込むと、王妃が助言を与えた。
「他人でも、偶然に似た者もおりましょう。
会えば分かるかもしれません。
陛下、その子供にお会いましょう!
ご令嬢、王宮へ連れて来て貰えぬか?!」
「王妃様、それは危険です!
何故なら、ネズミがこうして私たちが会っている事を知っているからです。
もしかしたら、自分たちが気づかれてるかもしれない。
ネズミを、使っている方の目星はついてますか?」
この方たちは何を考えてるのか、さっぱり分からなかった。
味方なのに、所詮は他国の人間と軽んじてるのだろうか?
それとも、子供で女だからか。
「ご令嬢はどなたか、わかりますかなぁ?!」
スクード公爵が少し目つき鋭く、私に話しかける。
「さぁ、私はヘイズに来てから3ヶ月も経ちませんのよ!
色々起こりまして、長くいるような錯覚はしますけどー」
彼女は、スクード公爵に不信を持ち始めていた。
まさか、この方がネズミの頭ではないでしょうね?!
のらりくらりで、腹の中が読めないわ。
「スクード公爵は、どなただと思いますか?
王宮だって、間者が潜んでましたのでしょう?
それほどの力がある方なら、予想して絞れますわよね?!」
プリムローズも、公爵に負けない眼力を返した。
戦の神の孫である私を、舐めないで頂きたいものですわ。
「儂と同じ地位を持ち、王族の血を引くもの。
王よ、これは血を見ないとならなくなるやも……。
謀反を許すことは出来ませんぞー!!」
今度は主君である、ヘイズ王に厳しい目を向けた。
『あ~っ、こんな時にお祖父様が側に居てくれたらなぁ~!
きっと、ビシバシとやっつけて下さるのにー』
「長年の、積もり積もった膿が出てしまったな。
ヘイズ国はこの鎖国状態から、開国しないといけない時期に入ったのやもしれない。
きっと、新しき風がヘイズに必要な時なのだ!」
話をする先には、プリムローズが居て王と公爵の目線が重なった。
私は関係ないし、ヘイズの国民でもないわよ。
どうしていつも、厄介事がついて回るの。
「お言葉を宜しいですか?
へーディン侯爵は、信じるに値しますか?!
エリアスと会う場所に、へーディン侯爵家をお使いになされませ。
ライラ様とヴェント侯爵令嬢の学園での言い争いを、うまく利用するのです」
最初はプリムローズの話の意味が、分からない4人であった。
「私から学園の話を訊いて、王妃さまが同情し元気づけたいと言い出して王さまも賛同した。そこに、スクード公爵と私も訪れるのです。
私も事件には関わっておりますわ。
そこに供として、エリアスを連れて行くのです!」
「それは良い考えだ!
話を聞くかぎり、不自然ではない。
これなら、相手も気づかないだろう!
ご令嬢は凄腕の策士になりそうだ」
ヘイズ王は、彼女の奇策に驚くのであった。
王妃とスクード公爵夫人も、この小さき令嬢の賢さに感心した。
それと同じくらいに、この機転に恐ろしさも感じる。
王と王妃は、へーディン侯爵のライラ嬢に会うために先触れの日程を組むことにした。
それに比べたら我がクラレンス家の沈黙の間もとい、お笑いの間は…。
あれはあれで、役には立っている。
「これが、送られてきた肖像画ですよ。
薔薇を見て微笑まれているとは、お花が大好きなんですのね」
王妃はやはり女の子は、美しい花が好きなのねとプリムローズを可愛らしく感じる。
「我がクラレンス家の庭の薔薇は、それはそれは宝石に例えられる程に見事ですのよ」
『本当のことを言えないわよ。
お菓子を食べて、笑っている姿を描かれたとは。
よくもまぁ、嘘をここまで描けるわよね。
私と薔薇を別々に描いて一緒にするとは、この画家は腕がいいわ。
絵画は、画家の創作物も入っていますものね』
残念なことにもう少し、私の気品を滲ませて描いてほしかったわ!
無理難題を胸中で呟く、わがままなご令嬢であった。
「懐かしいぞ。
近頃は、追憶の間に来なかったからな。
コチラが父上で、隣の絵は弟だ」
王は目を細めて、寂しげに愛おしいそうに絵を眺めていた。
プリムローズはその絵を見て、口からポロリと名前が出てしまった。
「あっ、エリアス!?」
その名に即座に反応したのは、ヘイズ王でその人であった。
「何故…、何故にー。
そなたは、その名を知っているのだ?
そ、それはー。
弟の子の名であるぞぉ?!」
興奮した王は、プリムローズの肩を乱暴に掴んだ。
「いっ、痛いー!」
その力強く握られた小さな肩に、痛みと驚きを感じた。
「おぉ、すまぬ!許せ…。
それで、なぜその名を知っているのだ!
お願いだ!
どうしてか教えてくれぬか!」
必死に驚き焦りながらヘイズ王は、プリムローズに頼んでくる。
『こんなにも突然、態度を変えて…。
10年間の長きに捜索したが、結局見つからなかった。
このご様子だと、ヘイズ王もエリアスを諦めていたのかもしれない』
私はゆっくりと出会ってから、今までの彼を話して聞かせた。
「そんな目に合っていたとは。
もし令嬢がその者を救ってくれなければ、命も怪ぶれていたのかもしれん。
この通り、礼を申すぞ!」
「私の話すエリアスが、絶対に同じ人物とは限りません。
ただ、肖像画を見た限り可能性はあります」
プリムローズは、慎重になっていた。
1番良いのは、ヘイズ王にエリアスを見て判断してくれたらと思うが難しいかしら?
「なるほど、【他人の空似】か。
確かに、ぬか喜びはいかんな」
王が考え込むと、王妃が助言を与えた。
「他人でも、偶然に似た者もおりましょう。
会えば分かるかもしれません。
陛下、その子供にお会いましょう!
ご令嬢、王宮へ連れて来て貰えぬか?!」
「王妃様、それは危険です!
何故なら、ネズミがこうして私たちが会っている事を知っているからです。
もしかしたら、自分たちが気づかれてるかもしれない。
ネズミを、使っている方の目星はついてますか?」
この方たちは何を考えてるのか、さっぱり分からなかった。
味方なのに、所詮は他国の人間と軽んじてるのだろうか?
それとも、子供で女だからか。
「ご令嬢はどなたか、わかりますかなぁ?!」
スクード公爵が少し目つき鋭く、私に話しかける。
「さぁ、私はヘイズに来てから3ヶ月も経ちませんのよ!
色々起こりまして、長くいるような錯覚はしますけどー」
彼女は、スクード公爵に不信を持ち始めていた。
まさか、この方がネズミの頭ではないでしょうね?!
のらりくらりで、腹の中が読めないわ。
「スクード公爵は、どなただと思いますか?
王宮だって、間者が潜んでましたのでしょう?
それほどの力がある方なら、予想して絞れますわよね?!」
プリムローズも、公爵に負けない眼力を返した。
戦の神の孫である私を、舐めないで頂きたいものですわ。
「儂と同じ地位を持ち、王族の血を引くもの。
王よ、これは血を見ないとならなくなるやも……。
謀反を許すことは出来ませんぞー!!」
今度は主君である、ヘイズ王に厳しい目を向けた。
『あ~っ、こんな時にお祖父様が側に居てくれたらなぁ~!
きっと、ビシバシとやっつけて下さるのにー』
「長年の、積もり積もった膿が出てしまったな。
ヘイズ国はこの鎖国状態から、開国しないといけない時期に入ったのやもしれない。
きっと、新しき風がヘイズに必要な時なのだ!」
話をする先には、プリムローズが居て王と公爵の目線が重なった。
私は関係ないし、ヘイズの国民でもないわよ。
どうしていつも、厄介事がついて回るの。
「お言葉を宜しいですか?
へーディン侯爵は、信じるに値しますか?!
エリアスと会う場所に、へーディン侯爵家をお使いになされませ。
ライラ様とヴェント侯爵令嬢の学園での言い争いを、うまく利用するのです」
最初はプリムローズの話の意味が、分からない4人であった。
「私から学園の話を訊いて、王妃さまが同情し元気づけたいと言い出して王さまも賛同した。そこに、スクード公爵と私も訪れるのです。
私も事件には関わっておりますわ。
そこに供として、エリアスを連れて行くのです!」
「それは良い考えだ!
話を聞くかぎり、不自然ではない。
これなら、相手も気づかないだろう!
ご令嬢は凄腕の策士になりそうだ」
ヘイズ王は、彼女の奇策に驚くのであった。
王妃とスクード公爵夫人も、この小さき令嬢の賢さに感心した。
それと同じくらいに、この機転に恐ろしさも感じる。
王と王妃は、へーディン侯爵のライラ嬢に会うために先触れの日程を組むことにした。
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