43 / 142
第3章 暗躍と毒女たちとの戦い
第10話 敵を欺くにはまず味方から
しおりを挟む
セント・ジョンズ学園の薔薇組に入ると、ライラ様が健気にも登校していた。
「プリムローズ様、ご機嫌よう。
ご覧になって下さい。
助言して頂いた通りに、切られた髪で付け毛を作りました。
伸びるまで、これで我慢します」
プリムローズは切られた髪を拾い集め、ライラに自毛で付け毛を作ればと渡したのだった。
「ライラ様、とっても似合っていますわ!
髪はすぐに伸びますわ。
それよりも、お心が心配です。
おそろしい目に遭われたんですもの」
ライラの髪を切られた時の悲痛な悲鳴が、まだプリムローズの耳にこびりついている。
「思い出すと…、身体が震えてきます。
ですが、両親やオスモ様が慰めて頂き元気が出てきました。
スクード公爵様からも、お見舞いのお手紙やお品を頂きましたのよ」
彼女の笑顔を見られて、少しだけ一安心するのだった。
ヴェント侯爵令嬢のサンドラが今後どうなるかは、まだ結論が出ていない。
噂では、父である侯爵が学園に復学を懇願しているみたいだ。
なんと、図々しい方々なの。
あの方々を、思い出すだけでムカムカしてくる。
この事件は衝撃的だったみたいで、長い間生徒たちに噂をされていた。
それから10日後に、王様と王妃様のご拝謁が正式決定した。
メリーは、プリムローズの王宮で王族方に謁見するドレスを選んでいた。
禁色を調べると、翡翠の様な色だそうだ。
「落ち着いた薄いローズピンクにしましょう!
お嬢様の美しい紫水晶の瞳に、絶対にお似合いになります」
プリムローズの髪に飾るピンクの薔薇を貰えるか、庭師を探していた時に話し声が聞こえてくる。
「お前、明日やるのかよ。
旦那様たちが、王宮に出掛ける時に狙うのか?!」
「しょうがないだろ!
やらないと、人質になっている家族が危ないんだ」
声をする方へ行くか、悩むが止めておいた。
もし、見つかったらと思ったからだ。
それより、先にお嬢様に相談した方がいいですわ。
そっと気づかれないよう、その場を静かに離れる。
残念ですがピンク薔薇は、今回は諦めるしか仕方ないみたい。
『あっ、そうですわ!
あのルビーの石のついた、髪飾りにしよう。
やっと、ピーちゃんの宝石が日の目を見るのね』
なんとも切り替えの早い、呑気な彼女であった。
主人に仕えていると、性格も似てくるのであろうか。
プリムローズが学園から帰宅すると、メリーから庭での密談話を聞かされた。
「まだ、そんな人が屋敷に居たの?!
それも、2人も!」
「お嬢様、2人とは限りません。
しかし、物騒ですわ…」
「スクード公爵は、ワザと傍観するつもりかしら。
どうなっているのかを、全然私に教えてくれないのよ。
信用がないのかなぁ?」
「心配させたくないのでは?
お嬢様、公爵様にこの件をお知らせしますか」
プリムローズは、少し考える様に窓の外を見ていた。
「お嬢様、ギル師匠に伝えますか?」
メリーは、まだギルにも教えてないようだった。
彼女は、あくまでもプリムローズが1番である。
「メリー、誰にも知らせないでくれない。
私が独りで始末つける」
黙って一礼すると、メリーは部屋を出ていった。
「【敵を欺くにはまず味方から】ね。
先人の教えは的確で素晴らしい、本当にいいこと言う」
ギルは、私を裏切らない。
分かっているが、態度で敵に知られたら好機が無くなりやすい。
黙っていて後から知ると、ギルは怒るかなぁ?
まぁ、大丈夫でしょう!
敵は、2人か…。
家族が囚われていたら、本気で襲ってくるわよね。
久し振りに、真剣に剣を振るのか。
今から、少し明日のために素振りでもしましょうか。
こちらも、呑気な主人であった。
ヘイズ王にお会いするハレの日なのに、準備が出来たドレス姿を見て心配そうな目でプリムローズを眺める。
「武器を仕込み過ぎではありませんか?
もし、ドレスが切れたり汚れたりしたらと気が気でありません」
プリムローズは心配するところは、そこかいと突っ込みそうになる。
「メリー、敵は2名とは限らないでしょう。
目を眩ませる道具と、ぶっ叩く剣や投げつける武器は必須よ!」
「お嬢様、私も助太刀します。
女性なら油断して、驚き隙を見せます。
この国の女性はどうやら軟弱に育てられている様ですし、私たちなら殺れますわ!」
二人は、目を合わすと不気味に微笑む。
「よし!じゃあ、メリー!
気合い入れて行きますわよ!
どうせギルとスクード公爵も、襲ってきたらしゃしゃり出るに違いない。
その前に、出来たらキレイに片付けるからね」
仕込んだ武器の重さを感じない、優雅な歩行で玄関ホールを歩く。
公爵夫妻が待っているのを確認すると、周りの気配に注意を払うのだった。
襲撃場所は、きっと馬車の前だわ。
メリーに目で合図して、彼女も察知したのか目を細める。
襲撃まで、後10歩。
プリムローズとメリー、二人の女性が待つ戦いが目の前に待っていた。
「プリムローズ様、ご機嫌よう。
ご覧になって下さい。
助言して頂いた通りに、切られた髪で付け毛を作りました。
伸びるまで、これで我慢します」
プリムローズは切られた髪を拾い集め、ライラに自毛で付け毛を作ればと渡したのだった。
「ライラ様、とっても似合っていますわ!
髪はすぐに伸びますわ。
それよりも、お心が心配です。
おそろしい目に遭われたんですもの」
ライラの髪を切られた時の悲痛な悲鳴が、まだプリムローズの耳にこびりついている。
「思い出すと…、身体が震えてきます。
ですが、両親やオスモ様が慰めて頂き元気が出てきました。
スクード公爵様からも、お見舞いのお手紙やお品を頂きましたのよ」
彼女の笑顔を見られて、少しだけ一安心するのだった。
ヴェント侯爵令嬢のサンドラが今後どうなるかは、まだ結論が出ていない。
噂では、父である侯爵が学園に復学を懇願しているみたいだ。
なんと、図々しい方々なの。
あの方々を、思い出すだけでムカムカしてくる。
この事件は衝撃的だったみたいで、長い間生徒たちに噂をされていた。
それから10日後に、王様と王妃様のご拝謁が正式決定した。
メリーは、プリムローズの王宮で王族方に謁見するドレスを選んでいた。
禁色を調べると、翡翠の様な色だそうだ。
「落ち着いた薄いローズピンクにしましょう!
お嬢様の美しい紫水晶の瞳に、絶対にお似合いになります」
プリムローズの髪に飾るピンクの薔薇を貰えるか、庭師を探していた時に話し声が聞こえてくる。
「お前、明日やるのかよ。
旦那様たちが、王宮に出掛ける時に狙うのか?!」
「しょうがないだろ!
やらないと、人質になっている家族が危ないんだ」
声をする方へ行くか、悩むが止めておいた。
もし、見つかったらと思ったからだ。
それより、先にお嬢様に相談した方がいいですわ。
そっと気づかれないよう、その場を静かに離れる。
残念ですがピンク薔薇は、今回は諦めるしか仕方ないみたい。
『あっ、そうですわ!
あのルビーの石のついた、髪飾りにしよう。
やっと、ピーちゃんの宝石が日の目を見るのね』
なんとも切り替えの早い、呑気な彼女であった。
主人に仕えていると、性格も似てくるのであろうか。
プリムローズが学園から帰宅すると、メリーから庭での密談話を聞かされた。
「まだ、そんな人が屋敷に居たの?!
それも、2人も!」
「お嬢様、2人とは限りません。
しかし、物騒ですわ…」
「スクード公爵は、ワザと傍観するつもりかしら。
どうなっているのかを、全然私に教えてくれないのよ。
信用がないのかなぁ?」
「心配させたくないのでは?
お嬢様、公爵様にこの件をお知らせしますか」
プリムローズは、少し考える様に窓の外を見ていた。
「お嬢様、ギル師匠に伝えますか?」
メリーは、まだギルにも教えてないようだった。
彼女は、あくまでもプリムローズが1番である。
「メリー、誰にも知らせないでくれない。
私が独りで始末つける」
黙って一礼すると、メリーは部屋を出ていった。
「【敵を欺くにはまず味方から】ね。
先人の教えは的確で素晴らしい、本当にいいこと言う」
ギルは、私を裏切らない。
分かっているが、態度で敵に知られたら好機が無くなりやすい。
黙っていて後から知ると、ギルは怒るかなぁ?
まぁ、大丈夫でしょう!
敵は、2人か…。
家族が囚われていたら、本気で襲ってくるわよね。
久し振りに、真剣に剣を振るのか。
今から、少し明日のために素振りでもしましょうか。
こちらも、呑気な主人であった。
ヘイズ王にお会いするハレの日なのに、準備が出来たドレス姿を見て心配そうな目でプリムローズを眺める。
「武器を仕込み過ぎではありませんか?
もし、ドレスが切れたり汚れたりしたらと気が気でありません」
プリムローズは心配するところは、そこかいと突っ込みそうになる。
「メリー、敵は2名とは限らないでしょう。
目を眩ませる道具と、ぶっ叩く剣や投げつける武器は必須よ!」
「お嬢様、私も助太刀します。
女性なら油断して、驚き隙を見せます。
この国の女性はどうやら軟弱に育てられている様ですし、私たちなら殺れますわ!」
二人は、目を合わすと不気味に微笑む。
「よし!じゃあ、メリー!
気合い入れて行きますわよ!
どうせギルとスクード公爵も、襲ってきたらしゃしゃり出るに違いない。
その前に、出来たらキレイに片付けるからね」
仕込んだ武器の重さを感じない、優雅な歩行で玄関ホールを歩く。
公爵夫妻が待っているのを確認すると、周りの気配に注意を払うのだった。
襲撃場所は、きっと馬車の前だわ。
メリーに目で合図して、彼女も察知したのか目を細める。
襲撃まで、後10歩。
プリムローズとメリー、二人の女性が待つ戦いが目の前に待っていた。
20
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
想い合っている? そうですか、ではお幸せに
四季
恋愛
コルネリア・フレンツェはある日突然訪問者の女性から告げられた。
「実は、私のお腹には彼との子がいるんです」
婚約者の相応しくない振る舞いが判明し、嵐が訪れる。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう
天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。
侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。
その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。
ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。
[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで
みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める
婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様
私を愛してくれる人の為にももう自由になります
愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。
梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。
ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。
え?イザックの婚約者って私でした。よね…?
二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。
ええ、バッキバキに。
もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる