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第3章  暗躍と毒女たちとの戦い

第9話 油断大敵

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 ネズミの一部を捕まえた公爵は、あれからヤンネを取り調べたらしい。
私には、詳しくはお話をされないみたいだ。

彼の持ってきた私のお茶には、毒では無いが腹痛を引き起こす物が混入していた。
生意気な私を、ただ苦しめたかったのだろうか。

公爵はこれだけ話すと、私に銀の細い小さな小指ぐらいの棒を渡した。
どうやら毒が入っていないか、調べてから食べたり飲んだりしなさいということね。

ヘイズ王の重臣で公爵家に滞在しているので、かなり安心はしていたけど…。
どうも、身の回りを警戒しなくてはならなくなった。

そうなると、王弟の残された遺児が気になるわね。
行方不明の彼は生きているのか。
もうこの世に居なく、何処かの土の下に埋またいる可能性もある。


 夕食時に私はスクード公爵から、ヘイズ王に謁見えっけんを願い出たと教えて頂いた。

「スクード公爵様、我が祖父からの手紙を預かっています。
是非ぜひとも、エテルネルの国民を代表としてご挨拶を申したいです」

ヘイズ王との謁見の際に、その王弟殿下の肖像画を拝見したいと思っていた。

そうそう、私の肖像画は王宮にありますのよね。
返却して頂けなくては、恥ずかしくて王都の街を歩けなくてよ。
何をされるのか、分かりませんものね。

「おお、そうじゃのう。
お茶の件でゴタゴタして、すっかり後回しになった。
学園に通うようになって、はや1ヶ月になろうとしている。
王宮に、陛下にご挨拶しに参ろうぞ」

公爵夫人ニーナ様も王妃様にご挨拶したいと申し出されて、3人で王宮におもむくことに決まった。

 
 プリムローズは気分が悪く寝付けないと思い入浴前に、メリーを連れエリアスたちのいる部屋を訪れた。

「エリアス、ギル!
君たちは、生きてるかい?!」

ギルはプリムローズの第一声に苦笑し、乗りよく生きてるぜって返してくる。

エリアスも声を出して笑いながら返事すると、ヒンメルがプリムローズに飛びかかってきた。

「ヒンメル~、また大きくなって!
尾っぽも立派になったね。
ママは嬉しいよ!!」

ヒンメルに、顔を埋めて毛の柔らかさを堪能たんのうした。

「あ~っ、やされますわ!
学園や先ほどの件も、消えて無くなりそうですよ~」

「お嬢、何かありましたな。
良かったら、俺たちにも聞かせてくれや?!」

プリムローズの様子からギルは何か感じてか、珍しく真剣に聞いてくる。

少しだけ考えたが、この先自分と関わるものがねらわれる可能性は高い。
今回は、巻き込まれ事件になるけど…。

「そうね、話しをするわ。
重大な話なので、絶対に他言無用たごんむようですからね。
3人共々、よく聞いて」

「聞きたくないような、聞きたいような。
変な気持ちになりますぜ」

ギルは冗談っぽく言ってきたが、いつもの彼よりは表情を引き締めている。

「もし怖くなったら、エテルネルに帰国しなさい。
エリアスも我が祖国の民になるように、私から王とお祖父様に頼むから」

そう言うとプリムローズは、図書館で偶然に聞いた話から始める。
小さな声で4人と一匹は、肩を寄せ合い円陣を組むのである。
なぜかヒンメルは、真ん中で鎮座ちんざしていた。

「きなくさくなってきた。
お嬢、エテルネルに戻りますかい?」

ギルは祖父グレゴリーから、いざ何かあったら頼むと全権をゆだねられていたのだ。

「下手に動いたら、敵にかんつかれるわ。
それに…、エリアス。
貴方のお亡くなりになった、ご両親は…。
あのね、エリアスごめんね。
本当のご両親なのかしら?!」

プリムローズは、エリアスが王弟の息子さんではと思っていた。

「えっ?!はい!
両親は金髪ではありませんが、亡くなった祖父は金髪だからと聞かされてました」

不思議そうな表情で、主人である彼女に答えた。

「そうなの?
私の勘違いだったのね。
学園では、友達できたのかしら?!」

学園の話題に変えると、エリアスは一変いっぺんして明るい表情になっていく。

「クラスメートたちは、親切で皆さん優しくしてくれてます」

同年代の生徒たちと、勉強したりして楽しいのだろう。

貴族の学園とは違い、ドロドロ腹の探り合いとは無縁で良かった。
あの女の園は、毒花ばかりよ。

サンドラの事件は、面白おかしくご令嬢たちは話題にしているしね。
被害者のライラ様まで、悪く言う方もいる始末だわ。
女生徒たちだけなのが、問題ではないだろうか?!

「ギルは、エリアスの警護をしなさい。
私も十分に気をつけます。
スキは見せないようにね」

プリムローズが命じると、黙ってギルはうなづいた。

「メリー、貴女もです。
絶対に独りでフラフラしないことよ。
小説の中で、専属メイドが狙われる物語を読んだことあるわ」

メリーは驚きの顔をして、主人に聞き返していた。

「私が…、襲われるのでございますか?!
お嬢様…、まあ分かりました。
短剣を持つようにしますが、お屋敷の中でも持参じさんするのですか?!」

「もちろん、【油断大敵ゆだんたいてき】よ!
とにかく、皆も気を抜かないことよ。
みんなもいいわね!」

3人に強く言うと、ヒンメルが先に鳴いて返事してくれた。

「あらあら、まぁ!
ヒンメルが1番お利口さんみたいね。クスクス」

エリアスが、ヒンメルの頭を撫でて質問する。

「お嬢様、学園でも気をつけて過ごすようにしますがー。
ずっと、この生活が続くのですか?」

不安そうな顔を一瞬、プリムローズに見せる。

「事態は、必ずや動くはずよ。
ヴェント侯爵がヤンヌの事を知ったら、公爵は自分を疑うと思う。
そうしたら、必ずアチラは焦りだし尻尾を見せる」

黙って頷くと3人の顔を見て、主は言うのだった。

「ヘイズの王族や、もしかしたら国政に関わる事になるかもしれない。
これから慎重にしなくていけないわ。
今までまりに溜まったうみが出て、キレイになるまでは見届けたいと思うのよ」

彼女は自分が厄介事を引き寄せてしまう運命に、なかばあきれてしまうのだった。

     
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