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第3章 暗躍と毒女たちとの戦い
第7話 覆水盆に返らず
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腰の長さまであった、ライラの美しい炎のような見事な赤髪。
それは切り揃えると、肩下までの髪の長さになってしまった。
お抱えの理容師を学園にお呼びになり、空いている部屋で髪を切り揃えて貰う。
気丈にも、あれから泣きもせず。
落ち着き冷静な態度していたが、恐らく今は心ココに有らず。
一点を見つめされるがまま、ボー然としている様に見えた。
私はその様子を見てしまい、辛くなりその場を離れた。
長い髪の私が側にいたら、私ならとつい考えてしまうから…。
午後の授業は取りやめになり、ライラ様のご両親が連絡を受けて学園に急ぎ駆けつけて来る予定。
急きょ授業がなくなったのは、何故なのか?
被害者よりも、加害者のサンドラの両親。
ヴェント侯爵夫妻が、学園長や先生方に対して大騒ぎして乗り込んで来たのが原因だった。
子が子なら、親もそういうお方たちなんだろう。
船から降りた際に、侯爵夫人を強盗から助けた時の態度を見れば明らかだ。
不思議なことに学園長の部屋の応接間には、プリムローズがヴェント侯爵夫妻と対面していた。
彼女の隣には、担任と現場にいた家庭科担当教師が座っている。
その両者を挟むように斜め前では、学園長がまるで裁判官の様だった。
「貴女がー、私たちの大事な娘の髪を切りましたの!
娘は混乱して、手がつけられないのよ!
あの髪では、どこも行けないではないの!」
ヴェント侯爵夫人こと、セレーナがプリムローズに会うなり怒鳴りつけたのである。
「まぁ~、失礼な!
会うなりご挨拶もしないで、この私を怒鳴りつけてー!」
こちらも負けず嫌いの性格のプリムローズ、夫人にあからさまに文句を言ってくる。
ぎょっとした学園長が、2人の間を割って宥める前に…。
「ヘイズの淑女は、礼儀知らずですね。
嫌になっちゃうわ!
常識がなくて、オーホホホ」
プリムローズの嫌味と高笑いが、侯爵夫人に向けて放たれた。
残された他の者たちが、オタオタして見守る。
そんな周りを無視しては、つけ入る隙さえ与えず続けて攻める。
「あなた方のご令嬢は、この私に髪を切ると、ハサミで襲いました。
これは脅迫罪もしくは、傷害罪にあたります」
部屋にいる全ての人たちは、その言葉に息を呑んだ。
「それは、すこし言いすぎではないか。
クラレンス嬢、娘が冗談で言ったんだ。
そうに違いない!」
ヴェント侯爵ことエドアルドが立ち上がり、プリムローズを脅すかの様に大声で言う。
「あなた方に対し、発言の許しはしてません。
私はエテルネルの公爵令嬢にして、アルゴラ王家の血筋の者です。
地位的には、貴方よりは上のはずよ」
プリムローズの威厳は、部屋全体に威圧感を与えるのに十分だった。
怒りの表情を隠しつつ、侯爵は立ち上がると夫人も夫に続き立ち上がりプリムローズに謝罪と挨拶して発言を求めた。
「許しましょう。
お座りなさい」
その瞬間に主導権は、プリムローズに完全に渡った。
学園長も先生方も、この少女が次に何を言うのか予測できなく内心はビクつきものだった。
「ヴェント侯爵夫妻はご令嬢に対し、どんな教育しておりますの?
あれは、貴族のご令嬢がする所業ではございませんことよ。
ねぇ、先生も目の前でご覧遊ばしたわよね」
突然話を振られて、気が動転する家庭科担当教師である。
「あ…、あの。
ヴェント侯爵夫妻、発言を致します。
クラレンス嬢の仰る通りでございます。
ご令嬢は、自分の刺繍を馬鹿にされたと思い込みました。
突然、へーディン嬢にハサミで嫌がる彼女の髪を切りましたわ。
異常な行動でした」
聞いていた侯爵夫妻は、顔を強張らせて体が自然に震えだした。
「コホン、クラレンス嬢!
ヴェント嬢を、本当に法的に訴えるのですかなぁ?!」
学園長は両者を落ち着かせて、穏便に持っていくようだった。
「なにを仰っているのです、学園長!
貴方様も、蚊帳の外ではございませんのよ。
長たるものが、このような事案に毅然と判断出来ずにいる!
ヘイズの留学に夢見て海を渡ったのにー。
ああ、いまココで失望しましたわ」
まさかこの場で、自分に向けて飛んできた火の粉に驚愕する。
部屋が重苦しく、沈黙して誰がどう彼女に返事してよいか悩んでいた。
「でっ?!
この事件の解決は、どう始末しますのよ?!
ほとほと、疲れました。
ヴェント侯爵令嬢を退学にしますか?
ヴェント侯爵夫妻は、彼女を平民にするか修道院に入れますか?
早く、この場でお決めて下さいませ!」
「「「………」」」、決断に悩んで無言の人たち。
「お茶も出ないし、喋りすぎて喉が渇きました」
茶を所望する、我が道を行き過ぎる公爵令嬢。
慌ててプリムローズだけ、とり急ぎ紅茶が出された。
「まぁまぁ…、ですわ!
いつも飲む茶葉よりは、数段落ちるますけどー」
気遣いお茶を出せば散々な言葉を言い、周りの空気を無視し彼女の高笑いが響き渡る。
茶を飲んでいる間に、どうやら学園としてのヴェント侯爵令嬢の処罰が決まったようだ。
「退学は、彼女の今後を考えると無理ですな。
自主退学で、如何なものしょう?」
学園長が、ヴェント侯爵夫妻に申し渡す。
「学園長ー、そんな!
学園を出て行けとは、これでは良家に嫁げなくなるわ」
侯爵夫人が目に涙を溜めて、学園長に考え直すようにすがってきた。
「娘は学園を休学して、領地へ静養させます。
どうか、復学の道を残して下さいませんか?!」
父親の侯爵が、学園長に頭を下げて頼み込む。
何故かまたプリムローズを見る、セント・ジョン学園のトップの学園長である。
「はぁ~、ヴェント侯爵!
【覆水盆に返らず】のお言葉を知っておられますか?」
歳の割には古い言葉を知る令嬢に、何やらバカにされた気分になる面々。
「1度したことは、戻せないのですよ!
へーディン侯爵令嬢に、もう謝罪されましたか?
そちらの許しを得るのが先決では?!」
正論すぎて、侯爵夫妻も言葉が出ない様子で項垂れる。
平行線のまま結論は持ち越しとなり、この話し合いは終わりを迎えた。
とんだ留学生が来たもんだと、学園長を含めた先生方は呑気にお茶を飲む彼女を見ていたのである。
それは切り揃えると、肩下までの髪の長さになってしまった。
お抱えの理容師を学園にお呼びになり、空いている部屋で髪を切り揃えて貰う。
気丈にも、あれから泣きもせず。
落ち着き冷静な態度していたが、恐らく今は心ココに有らず。
一点を見つめされるがまま、ボー然としている様に見えた。
私はその様子を見てしまい、辛くなりその場を離れた。
長い髪の私が側にいたら、私ならとつい考えてしまうから…。
午後の授業は取りやめになり、ライラ様のご両親が連絡を受けて学園に急ぎ駆けつけて来る予定。
急きょ授業がなくなったのは、何故なのか?
被害者よりも、加害者のサンドラの両親。
ヴェント侯爵夫妻が、学園長や先生方に対して大騒ぎして乗り込んで来たのが原因だった。
子が子なら、親もそういうお方たちなんだろう。
船から降りた際に、侯爵夫人を強盗から助けた時の態度を見れば明らかだ。
不思議なことに学園長の部屋の応接間には、プリムローズがヴェント侯爵夫妻と対面していた。
彼女の隣には、担任と現場にいた家庭科担当教師が座っている。
その両者を挟むように斜め前では、学園長がまるで裁判官の様だった。
「貴女がー、私たちの大事な娘の髪を切りましたの!
娘は混乱して、手がつけられないのよ!
あの髪では、どこも行けないではないの!」
ヴェント侯爵夫人こと、セレーナがプリムローズに会うなり怒鳴りつけたのである。
「まぁ~、失礼な!
会うなりご挨拶もしないで、この私を怒鳴りつけてー!」
こちらも負けず嫌いの性格のプリムローズ、夫人にあからさまに文句を言ってくる。
ぎょっとした学園長が、2人の間を割って宥める前に…。
「ヘイズの淑女は、礼儀知らずですね。
嫌になっちゃうわ!
常識がなくて、オーホホホ」
プリムローズの嫌味と高笑いが、侯爵夫人に向けて放たれた。
残された他の者たちが、オタオタして見守る。
そんな周りを無視しては、つけ入る隙さえ与えず続けて攻める。
「あなた方のご令嬢は、この私に髪を切ると、ハサミで襲いました。
これは脅迫罪もしくは、傷害罪にあたります」
部屋にいる全ての人たちは、その言葉に息を呑んだ。
「それは、すこし言いすぎではないか。
クラレンス嬢、娘が冗談で言ったんだ。
そうに違いない!」
ヴェント侯爵ことエドアルドが立ち上がり、プリムローズを脅すかの様に大声で言う。
「あなた方に対し、発言の許しはしてません。
私はエテルネルの公爵令嬢にして、アルゴラ王家の血筋の者です。
地位的には、貴方よりは上のはずよ」
プリムローズの威厳は、部屋全体に威圧感を与えるのに十分だった。
怒りの表情を隠しつつ、侯爵は立ち上がると夫人も夫に続き立ち上がりプリムローズに謝罪と挨拶して発言を求めた。
「許しましょう。
お座りなさい」
その瞬間に主導権は、プリムローズに完全に渡った。
学園長も先生方も、この少女が次に何を言うのか予測できなく内心はビクつきものだった。
「ヴェント侯爵夫妻はご令嬢に対し、どんな教育しておりますの?
あれは、貴族のご令嬢がする所業ではございませんことよ。
ねぇ、先生も目の前でご覧遊ばしたわよね」
突然話を振られて、気が動転する家庭科担当教師である。
「あ…、あの。
ヴェント侯爵夫妻、発言を致します。
クラレンス嬢の仰る通りでございます。
ご令嬢は、自分の刺繍を馬鹿にされたと思い込みました。
突然、へーディン嬢にハサミで嫌がる彼女の髪を切りましたわ。
異常な行動でした」
聞いていた侯爵夫妻は、顔を強張らせて体が自然に震えだした。
「コホン、クラレンス嬢!
ヴェント嬢を、本当に法的に訴えるのですかなぁ?!」
学園長は両者を落ち着かせて、穏便に持っていくようだった。
「なにを仰っているのです、学園長!
貴方様も、蚊帳の外ではございませんのよ。
長たるものが、このような事案に毅然と判断出来ずにいる!
ヘイズの留学に夢見て海を渡ったのにー。
ああ、いまココで失望しましたわ」
まさかこの場で、自分に向けて飛んできた火の粉に驚愕する。
部屋が重苦しく、沈黙して誰がどう彼女に返事してよいか悩んでいた。
「でっ?!
この事件の解決は、どう始末しますのよ?!
ほとほと、疲れました。
ヴェント侯爵令嬢を退学にしますか?
ヴェント侯爵夫妻は、彼女を平民にするか修道院に入れますか?
早く、この場でお決めて下さいませ!」
「「「………」」」、決断に悩んで無言の人たち。
「お茶も出ないし、喋りすぎて喉が渇きました」
茶を所望する、我が道を行き過ぎる公爵令嬢。
慌ててプリムローズだけ、とり急ぎ紅茶が出された。
「まぁまぁ…、ですわ!
いつも飲む茶葉よりは、数段落ちるますけどー」
気遣いお茶を出せば散々な言葉を言い、周りの空気を無視し彼女の高笑いが響き渡る。
茶を飲んでいる間に、どうやら学園としてのヴェント侯爵令嬢の処罰が決まったようだ。
「退学は、彼女の今後を考えると無理ですな。
自主退学で、如何なものしょう?」
学園長が、ヴェント侯爵夫妻に申し渡す。
「学園長ー、そんな!
学園を出て行けとは、これでは良家に嫁げなくなるわ」
侯爵夫人が目に涙を溜めて、学園長に考え直すようにすがってきた。
「娘は学園を休学して、領地へ静養させます。
どうか、復学の道を残して下さいませんか?!」
父親の侯爵が、学園長に頭を下げて頼み込む。
何故かまたプリムローズを見る、セント・ジョン学園のトップの学園長である。
「はぁ~、ヴェント侯爵!
【覆水盆に返らず】のお言葉を知っておられますか?」
歳の割には古い言葉を知る令嬢に、何やらバカにされた気分になる面々。
「1度したことは、戻せないのですよ!
へーディン侯爵令嬢に、もう謝罪されましたか?
そちらの許しを得るのが先決では?!」
正論すぎて、侯爵夫妻も言葉が出ない様子で項垂れる。
平行線のまま結論は持ち越しとなり、この話し合いは終わりを迎えた。
とんだ留学生が来たもんだと、学園長を含めた先生方は呑気にお茶を飲む彼女を見ていたのである。
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