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第2章  新天地にて

第14話 鬼が出るか蛇が出るか

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 この国ヘイズは、どうも少し我が祖国とは思考しこうが違うようだ。

男子は強く女子はおしとやかが、称賛しょうさんされるみたい。
普通はどこの国もそうだろうが、プリムローズは意外に古風で予想とかけ離れていた。

彼女は海賊が現れる噂を聞き、ご令嬢たちも勇敢ゆうかんに戦うため剣とか弓を習うのだと勝手に思い込んでいた。
独りガッカリしているようである。

もしかして、留学先を誤った?!

学園に入る前に学力検査をしたが、前に1度祖国でしたのを思い出す。

あんのじょう、ほぼ卒業に近い学力だった。
それではわざわざ船に乗り、危険をおかして海を渡った意味がない。

プリムローズは、高等部1年から入学することになった。
運良くスクード公爵嫡男ちゃくなんオスモ殿のご婚約者と、なんと同じ学年となった。

このご令嬢との出会いにより、女のどす黒いドロドロの世界に引き込まれるとは…。

何せエテルネルの学園では、彼女はただ独りの公爵令嬢で身分的にさからう者はいなかった。
いても、返り討ちにされている。
姉リリアンヌも公爵令嬢の存在を、都合よく忘れていたのは実に彼女らしい。
細かい事を気にしないと言うか、わが道を突っ走っている。

 メリーが初登校になる主人の髪を、丹念たんねんにとかして話しかけている。

「お嬢様、制服にされましたのね。
サイズがピッタリのがあり、宜しかったですわ」
 
「ドレスだと、誰がイチャモンつけるかわからないもの。
趣味が悪いとか、お国はそのようなドレスを着ますのね!って笑われるかも知れない」

「……、はじめて登校する。
他国の留学生にですか?
被害妄想では御座いませんか?!」

彼女は胸のリボンを結び、感じたことを主人にキッパリ言う。

プリムローズは一年生の白が主な色で胸のリボンやステッチは青色の配色。
ちなみに、2年生は緑色で3年生は赤色であった。

「ドレスと制服、どちらか悩みましたけど…。 
ほらっ、私はよく言いがかりを受けますからね。
前世で何かしたのかしら?」

見知らぬ知らない土地で、不安になり。
弱気な考えをしてしまったのだと首を軽く振った。

「ですが、公爵様の御子息様のご婚約者様が御一緒で心強いですわね」

「オスモ様が、ご婚約者を校門前で引き合わせてくれるそうなの。
どんなお方か楽しみ!」

どうも彼女は、平凡な生活が送れない人生らしい。

留学生活初日から…。 

彼女は、老後ぐらいは穏やかに平凡に暮らしたいと周囲に愚痴ぐちこぼすことになる。

 
 公爵一家と席に付き、朝食を食べながら学園の話になった。

「オスモは、今日からまた寄宿舎での生活だな。
体にはー、重々気をつけるようにするのだぞ」

次の学園休暇まで、しばらくは会えぬ息子を気遣う。

「はい、父上様、母上様。
お二人も、お体にお気をつけください」

実にいい家庭だと、プリムローズは感じた。
やはり、私の家庭環境は最悪でしたのね。
幼い頃の日々を思い返して、独りで納得する。

「プリムローズ嬢。
婚約者ライラ嬢が、ご迷惑をおかけしたら申し訳ない。
何卒なにとぞ、宜しくお願いします」

私の方が、頼む立場なはず?
変なお願いだと思ったが、謙虚けんきょな気持ちで仰ったのだと深く考えていなかった。
後から思えば、彼のその言葉の意味を知ることになる。

  
 二人は、馬車に乗り学園に向かうことになった。

「あれが、セント・ジョン学園だよ。
7歳から15歳は義務教育で、16歳から18歳は選択になる」

オスモ様が、近づく学園を見ながら説明してくれた。

「祖国エテルネルは義務教育ではなく、各家庭にゆだねてますわ。
余裕がないと、貴族でも通えない方がいます。
素晴らしい、画期的な制度ですわね」

プリムローズは、ヘイズの義務教育制度には感銘かんめいを受けた。
我が国も取り入れるべきだ。

ワクワクして学園の門の前に到着すると、一人の女性が立っていた。
あの方が、ライラ・へーディン侯爵令嬢ね。

「ライラ、おはよう!
待たせたかね?!」

オスモ様が近づくと、ドレスの裾を持ち軽くカーテシーして挨拶された。

「いいえ、いま参りました。
おはようございます。
オスモ様」

『まぁ、見事な赤毛ですこと!
エテルネルで学園の初日に、いちゃもんつけた赤毛を思い出すわ。
あの時を懐かしい。
しかし、また赤毛とは大丈夫かしら?!』 

侯爵令嬢の髪をじっくり見て苦い過去を思い返す、プリムローズ。

「そうか、良かったよ。
ライラ、此方が話していたご令嬢だよ。
プリムローズ・ド・クラレンス公爵令嬢だよ。
面倒を見てくれ、宜しくお願いする」

オスモ様から、私を紹介してくれました。
私がカーテシーすると婚約者の侯爵令嬢が、どうやら所作が完璧すぎて引いてしまいまったようだ。
お互いに挨拶が済むと、オスモ様は男子学生の方へ行かれました。

『そうなんです!
このセント・ジョン学園は、男女別々に学ぶ学園でしたのよ』

【鬼が出るかじゃが出るか】

『令嬢たちだらけの女の園は、私は初ての経験でしてよ』

プリムローズの前途に、何が待ち構えているのか。
予想不可能な、女だけの花園。
彼女もまだ知らない。
未知の領域に入るのだった。

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