上 下
33 / 142
第2章  新天地にて

第14話 鬼が出るか蛇が出るか

しおりを挟む
 この国ヘイズは、どうも少し我が祖国とは思考しこうが違うようだ。

男子は強く女子はおしとやかが、称賛しょうさんされるみたい。
普通はどこの国もそうだろうが、プリムローズは意外に古風で予想とかけ離れていた。

彼女は海賊が現れる噂を聞き、ご令嬢たちも勇敢ゆうかんに戦うため剣とか弓を習うのだと勝手に思い込んでいた。
独りガッカリしているようである。

もしかして、留学先を誤った?!

学園に入る前に学力検査をしたが、前に1度祖国でしたのを思い出す。

あんのじょう、ほぼ卒業に近い学力だった。
それではわざわざ船に乗り、危険をおかして海を渡った意味がない。

プリムローズは、高等部1年から入学することになった。
運良くスクード公爵嫡男ちゃくなんオスモ殿のご婚約者と、なんと同じ学年となった。

このご令嬢との出会いにより、女のどす黒いドロドロの世界に引き込まれるとは…。

何せエテルネルの学園では、彼女はただ独りの公爵令嬢で身分的にさからう者はいなかった。
いても、返り討ちにされている。
姉リリアンヌも公爵令嬢の存在を、都合よく忘れていたのは実に彼女らしい。
細かい事を気にしないと言うか、わが道を突っ走っている。

 メリーが初登校になる主人の髪を、丹念たんねんにとかして話しかけている。

「お嬢様、制服にされましたのね。
サイズがピッタリのがあり、宜しかったですわ」
 
「ドレスだと、誰がイチャモンつけるかわからないもの。
趣味が悪いとか、お国はそのようなドレスを着ますのね!って笑われるかも知れない」

「……、はじめて登校する。
他国の留学生にですか?
被害妄想では御座いませんか?!」

彼女は胸のリボンを結び、感じたことを主人にキッパリ言う。

プリムローズは一年生の白が主な色で胸のリボンやステッチは青色の配色。
ちなみに、2年生は緑色で3年生は赤色であった。

「ドレスと制服、どちらか悩みましたけど…。 
ほらっ、私はよく言いがかりを受けますからね。
前世で何かしたのかしら?」

見知らぬ知らない土地で、不安になり。
弱気な考えをしてしまったのだと首を軽く振った。

「ですが、公爵様の御子息様のご婚約者様が御一緒で心強いですわね」

「オスモ様が、ご婚約者を校門前で引き合わせてくれるそうなの。
どんなお方か楽しみ!」

どうも彼女は、平凡な生活が送れない人生らしい。

留学生活初日から…。 

彼女は、老後ぐらいは穏やかに平凡に暮らしたいと周囲に愚痴ぐちこぼすことになる。

 
 公爵一家と席に付き、朝食を食べながら学園の話になった。

「オスモは、今日からまた寄宿舎での生活だな。
体にはー、重々気をつけるようにするのだぞ」

次の学園休暇まで、しばらくは会えぬ息子を気遣う。

「はい、父上様、母上様。
お二人も、お体にお気をつけください」

実にいい家庭だと、プリムローズは感じた。
やはり、私の家庭環境は最悪でしたのね。
幼い頃の日々を思い返して、独りで納得する。

「プリムローズ嬢。
婚約者ライラ嬢が、ご迷惑をおかけしたら申し訳ない。
何卒なにとぞ、宜しくお願いします」

私の方が、頼む立場なはず?
変なお願いだと思ったが、謙虚けんきょな気持ちで仰ったのだと深く考えていなかった。
後から思えば、彼のその言葉の意味を知ることになる。

  
 二人は、馬車に乗り学園に向かうことになった。

「あれが、セント・ジョン学園だよ。
7歳から15歳は義務教育で、16歳から18歳は選択になる」

オスモ様が、近づく学園を見ながら説明してくれた。

「祖国エテルネルは義務教育ではなく、各家庭にゆだねてますわ。
余裕がないと、貴族でも通えない方がいます。
素晴らしい、画期的な制度ですわね」

プリムローズは、ヘイズの義務教育制度には感銘かんめいを受けた。
我が国も取り入れるべきだ。

ワクワクして学園の門の前に到着すると、一人の女性が立っていた。
あの方が、ライラ・へーディン侯爵令嬢ね。

「ライラ、おはよう!
待たせたかね?!」

オスモ様が近づくと、ドレスの裾を持ち軽くカーテシーして挨拶された。

「いいえ、いま参りました。
おはようございます。
オスモ様」

『まぁ、見事な赤毛ですこと!
エテルネルで学園の初日に、いちゃもんつけた赤毛を思い出すわ。
あの時を懐かしい。
しかし、また赤毛とは大丈夫かしら?!』 

侯爵令嬢の髪をじっくり見て苦い過去を思い返す、プリムローズ。

「そうか、良かったよ。
ライラ、此方が話していたご令嬢だよ。
プリムローズ・ド・クラレンス公爵令嬢だよ。
面倒を見てくれ、宜しくお願いする」

オスモ様から、私を紹介してくれました。
私がカーテシーすると婚約者の侯爵令嬢が、どうやら所作が完璧すぎて引いてしまいまったようだ。
お互いに挨拶が済むと、オスモ様は男子学生の方へ行かれました。

『そうなんです!
このセント・ジョン学園は、男女別々に学ぶ学園でしたのよ』

【鬼が出るかじゃが出るか】

『令嬢たちだらけの女の園は、私は初ての経験でしてよ』

プリムローズの前途に、何が待ち構えているのか。
予想不可能な、女だけの花園。
彼女もまだ知らない。
未知の領域に入るのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

処理中です...