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第2章 新天地にて
第13話 治に居て乱を忘れず
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目を合わせると、どう表現したらいいか分からない顔つきをしていた。
先にプリムローズが、少しだけ震える声でスクード公爵に話す。
「公爵様、2人の会話で片方の名前を呼ぶ声が耳に入りました。
今から教えますが、心して聞いて下さませんか?!」
公爵が名を聞いて倒れたら、どうしようかと悩んだ。
なにせ、相手は祖父グレゴリー並の巨体。
もしも倒れて支えた瞬間に、一緒に倒れ込むのは困る。
「うむっ、承知した!
儂は、東の将軍じゃあ~!
安心致せ、さぁ~!
……、話すが良いぞ!」
本当に平気なのかと、不安になりつつも腹を括る。
「一人の男が、こう言いましたわ。
世継ぎがいなければ、我らの選んだ者が王になる。
それまでの辛抱だ…。
のう、ヴェント!って…」
プリムローズの話とその人名に、オレフは驚き怒りの目の色に変化した。
ちょっと~、怖いってもんじゃないわよ。
私が言ったのではない。
そう睨まないで欲しい。
「ヴェント…、ヴェントだと申すのか。
4大将軍のくせに、王家を裏切っただとー。
あの者ー、許せんわぁ~」
「ひゃあ~、落ち着いて下さい。
そんな大声では、驚いて誰かが部屋に飛び込んで来たらどうするのです」
静かにはなるスクード公爵だが、怒りが収まらない態度であった。
「ハァ~、もうイヤだ。
もう一人の方は、分かりませんでした。
あの方々より先に、探している行方不明の子供を確保しなくてはなりませんわ。
この屋敷にも、もしかして…。
その者たちの手下がいるかもしれません」
部外者からか、冷静に一歩引いて判断できる。
「この我が屋敷にか?!
身元が確かな者しか、儂は雇っておらぬぞ」
プリムローズは、公爵は一度信じると疑うことをしないお方だと思った。
その点では、祖父は他人には厳しい方だ。
『お父様たちは違っていたわ。
お祖父様は、好き嫌いが激しそうだからな。
差別しているのかしら?』
「もう1度、徹底的に調べて下さい。
雇った時は潔白でも、もし途中で心変わりしたらどうしますか?!」
「それでは、誰を信じれば良いのじゃあ?!
西の方は気が合わなくとも、同じ将軍として仲間と思っておったのに…」
『あ~~、こりゃあ駄目だ!
ショックでかすぎて、頭と心が乱れまくっている』
こんな時は独りにさせて、冷静になる時間を与えなくてはならない。
他国から来た私だって、話の内容が衝撃で動揺しましたもの。
自国の公爵様なら、尚更だ。
「……、スクード公爵様。
信じるか信じないかは、とうぞ御自分でお決めて下さいませ。私は聞いたことを、包み隠さず伝えました」
公爵様にお辞儀して部屋を出た。
何故、家にいる者を調べろと公爵にお願いしたのか。
私は、ある人物が気になるのだ。
あくまでも勘だが。
私の勘は自分で思うが、あまり外れたことがない。
それにしても、精神的に疲れた1日だった。
その後、夕食は夫人と令息と3人ですることになった。
「母上、父上はどうされましたか?!」
「旦那様は、何やら慌てて王宮に用事があると出かけました。
私はお父様のお仕事には、あまり関心ないから詳しくないのよ」
私は黙って母子の話を聞いていたが、今頃は裏で大事になっているだろう。
翌日、公爵から私は剣の手合わせで呼び出された。
おそらくは、昨日の王宮で起こったことを知らせてくれるのかしら。
「プリムローズ嬢……。
あれから調べた。
微量の薬が盛られていた。
医師から解毒剤を渡され、飲んで毒を出すことに専念している。
王妃様も側室の方々も、驚き精神的に打撃を受けてしまった」
しょんぼり肩を落としては、彼女に詳細を伝えてくれた。
そうでしょうね。
うまく毒が、消えてくれれば良いのだけど…。
「【治に居て乱を忘れず】を思い出した。
平穏な生活を送っている時にも万一の場合に備えよと、戒めになったわい。
どうやら、敵は外より内にあったようだ」
昨日より平静になっているが、これからが大変になる。
「西の将軍様を捕らえますか?!
それとも、しばらくは泳がせて様子を見ますか?」
プリムローズは、公爵の顔をあえて見ないで質した。
「泳がせるわい!
もう一人の首謀者を、あぶり出さなければならぬ!」
その声は、怒りに満ちて震えているように感じる。
「はぁ…、左様ですか。
公爵は周辺に気をつけて下さい。
奥様、ご令息や嫁がれた伯爵夫人もです」
オレフは、プリムローズの隙のない考えに驚かされた。
このご令嬢は、普通の少女ではない。
儂よりも、先を読んで助言してくれている。
そして、ヘイズの闇の秘密を知ってしまった。
この先とんでもない事に、首を突っ込ませてしまうのではないかと彼は考えた。
一方の彼女の思うことは、不思議な泉を探さなくてはならないことだ。
使命を果たせず、お国の騒動にも巻き込まれるのはごめんだ。
『ああん、もうトホホ…だわ』
眉を自然に潜めていたプリムローズに、スクードは気の毒そうに言ってくる。
「すまんな、これから何が起こるか儂でも読めんのだ。
どうじゃあ、いっそエテルネルに帰国せんか?!」
「心配してくれて感謝します。
ですが、私が帰国したり変な動きをすれば怪しまれますわ。
このままで、いきましょう」
スクード公爵は目をつぶり、すまないと言って私に頭を下げてくれた。
危険と隣り合わせな留学生活になりそうと、プリムローズはため息をついたのである。
そして、本来の目的。
ヘイズでの学園の留学生活が始まろうとしていた。
先にプリムローズが、少しだけ震える声でスクード公爵に話す。
「公爵様、2人の会話で片方の名前を呼ぶ声が耳に入りました。
今から教えますが、心して聞いて下さませんか?!」
公爵が名を聞いて倒れたら、どうしようかと悩んだ。
なにせ、相手は祖父グレゴリー並の巨体。
もしも倒れて支えた瞬間に、一緒に倒れ込むのは困る。
「うむっ、承知した!
儂は、東の将軍じゃあ~!
安心致せ、さぁ~!
……、話すが良いぞ!」
本当に平気なのかと、不安になりつつも腹を括る。
「一人の男が、こう言いましたわ。
世継ぎがいなければ、我らの選んだ者が王になる。
それまでの辛抱だ…。
のう、ヴェント!って…」
プリムローズの話とその人名に、オレフは驚き怒りの目の色に変化した。
ちょっと~、怖いってもんじゃないわよ。
私が言ったのではない。
そう睨まないで欲しい。
「ヴェント…、ヴェントだと申すのか。
4大将軍のくせに、王家を裏切っただとー。
あの者ー、許せんわぁ~」
「ひゃあ~、落ち着いて下さい。
そんな大声では、驚いて誰かが部屋に飛び込んで来たらどうするのです」
静かにはなるスクード公爵だが、怒りが収まらない態度であった。
「ハァ~、もうイヤだ。
もう一人の方は、分かりませんでした。
あの方々より先に、探している行方不明の子供を確保しなくてはなりませんわ。
この屋敷にも、もしかして…。
その者たちの手下がいるかもしれません」
部外者からか、冷静に一歩引いて判断できる。
「この我が屋敷にか?!
身元が確かな者しか、儂は雇っておらぬぞ」
プリムローズは、公爵は一度信じると疑うことをしないお方だと思った。
その点では、祖父は他人には厳しい方だ。
『お父様たちは違っていたわ。
お祖父様は、好き嫌いが激しそうだからな。
差別しているのかしら?』
「もう1度、徹底的に調べて下さい。
雇った時は潔白でも、もし途中で心変わりしたらどうしますか?!」
「それでは、誰を信じれば良いのじゃあ?!
西の方は気が合わなくとも、同じ将軍として仲間と思っておったのに…」
『あ~~、こりゃあ駄目だ!
ショックでかすぎて、頭と心が乱れまくっている』
こんな時は独りにさせて、冷静になる時間を与えなくてはならない。
他国から来た私だって、話の内容が衝撃で動揺しましたもの。
自国の公爵様なら、尚更だ。
「……、スクード公爵様。
信じるか信じないかは、とうぞ御自分でお決めて下さいませ。私は聞いたことを、包み隠さず伝えました」
公爵様にお辞儀して部屋を出た。
何故、家にいる者を調べろと公爵にお願いしたのか。
私は、ある人物が気になるのだ。
あくまでも勘だが。
私の勘は自分で思うが、あまり外れたことがない。
それにしても、精神的に疲れた1日だった。
その後、夕食は夫人と令息と3人ですることになった。
「母上、父上はどうされましたか?!」
「旦那様は、何やら慌てて王宮に用事があると出かけました。
私はお父様のお仕事には、あまり関心ないから詳しくないのよ」
私は黙って母子の話を聞いていたが、今頃は裏で大事になっているだろう。
翌日、公爵から私は剣の手合わせで呼び出された。
おそらくは、昨日の王宮で起こったことを知らせてくれるのかしら。
「プリムローズ嬢……。
あれから調べた。
微量の薬が盛られていた。
医師から解毒剤を渡され、飲んで毒を出すことに専念している。
王妃様も側室の方々も、驚き精神的に打撃を受けてしまった」
しょんぼり肩を落としては、彼女に詳細を伝えてくれた。
そうでしょうね。
うまく毒が、消えてくれれば良いのだけど…。
「【治に居て乱を忘れず】を思い出した。
平穏な生活を送っている時にも万一の場合に備えよと、戒めになったわい。
どうやら、敵は外より内にあったようだ」
昨日より平静になっているが、これからが大変になる。
「西の将軍様を捕らえますか?!
それとも、しばらくは泳がせて様子を見ますか?」
プリムローズは、公爵の顔をあえて見ないで質した。
「泳がせるわい!
もう一人の首謀者を、あぶり出さなければならぬ!」
その声は、怒りに満ちて震えているように感じる。
「はぁ…、左様ですか。
公爵は周辺に気をつけて下さい。
奥様、ご令息や嫁がれた伯爵夫人もです」
オレフは、プリムローズの隙のない考えに驚かされた。
このご令嬢は、普通の少女ではない。
儂よりも、先を読んで助言してくれている。
そして、ヘイズの闇の秘密を知ってしまった。
この先とんでもない事に、首を突っ込ませてしまうのではないかと彼は考えた。
一方の彼女の思うことは、不思議な泉を探さなくてはならないことだ。
使命を果たせず、お国の騒動にも巻き込まれるのはごめんだ。
『ああん、もうトホホ…だわ』
眉を自然に潜めていたプリムローズに、スクードは気の毒そうに言ってくる。
「すまんな、これから何が起こるか儂でも読めんのだ。
どうじゃあ、いっそエテルネルに帰国せんか?!」
「心配してくれて感謝します。
ですが、私が帰国したり変な動きをすれば怪しまれますわ。
このままで、いきましょう」
スクード公爵は目をつぶり、すまないと言って私に頭を下げてくれた。
危険と隣り合わせな留学生活になりそうと、プリムローズはため息をついたのである。
そして、本来の目的。
ヘイズでの学園の留学生活が始まろうとしていた。
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