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第2章 新天地にて
第8話 開いた口が塞がらない
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馬車は、王都ヴァロに入る橋を渡ろうとしている。
大きく幅広い橋に驚き、川の幅はまるで海の上にいる気分だ。
ここから落ちたらと思うと、恐怖感が胸に広がる。
「ガッハァハ、落ちたりはせんよ。
この橋は、まだ新しい」
プリムローズの顔色を見て、安心させるように笑って伝えてきた。
「は、はい!
正直申しますと、ここまで幅のある川の橋を渡ったことはありません」
「クスクス、ヘイズでは1番大きな川ですわ」
公爵夫人が説明するには、この川にはこの橋の他にも3つの橋がかかっているそうだ。
「それだけではない。
もし他国がこの橋を渡って攻めて来たら、すぐに橋を壊すようになっとる」
イーダが力強く、隣に座るプリムローズに教えた。
プリムローズは、彼女なりに考えてみた。
ヘイズは島国だし、我が国エテルネルより安全安心ではないかと…。
何せエテルネルは、他国が取り囲んでいる。
この言葉を、自国の平和ボケしている王や重臣たちに聞かせてやりたい気持ちがした。
そう思いため息をつくプリムローズに、なにやらまたしても幻聴が聞えるようであった。
「プリムローズ様~!
ようこそ、ヴァロへー!」
『誰かが、私の名前を叫んでいる。
幻聴が聞こえる。
体調がわるいのかな?
私…、長生きできないかも』
ハッとして窓の外を見ると、手を振る人々がいる。
『まさか、これは再びか!?』
プリムローズは前に座る公爵の顔を見て、声が上ずり彼に伺ってみた。
「スクード公爵さま、王都に掲示しましたの?
また、私の絵姿をー」
「王都は儂は知らん。
やるなら陛下じゃな、きっと……」
陛下って、ヘイズ国王の事を言っているのかしら?
「祖父は、いったい何枚の絵姿を送って寄越されましたの?!」
プリムローズは普通1枚だが、あの祖父なら普通ではないかもと気づき嫌な予感がした。
「あの絵は全て、みんな美しくって可愛らしかったですわね。ねっ、貴方!」
オットリと微笑み話す、公爵夫人。
「まぁ、普通は現物よりよく描かれているがなぁ。
お嬢様は、絵と同じでしたな!」
メイド長イーダも、横で感想を漏らす。
「3枚じゃよ!
1番の綺麗に、描かれたのを陛下に送ったわい。ハハハ」
笑い事じゃないわよ!
普通、絵姿を王様に送るものなの?
「【開いた口が塞がらない】とはこの事よ。
お祖父様ったら、3枚も絵姿を送らないでー」
プリムローズは、外から聞こえる自分の名にどうしていいのか頭を痛める。
「気にせんで、笑顔で手を振れば良い!」
イーダの一言で吹っ切れたプリムローズは、やけになり笑顔で手を振り続けた。
結果どうなったかは、後日噂で知ることになる。
彼女は祖父の話が出たところで、沿道の人々が減った時に思い切って聞いてみた。
「公爵様、教えて欲しい事がございますの?」
スクード公爵夫妻は何のことかと、プリムローズの質問に注目した。
「もし、正解なら。
ハイかイイエでいいのです。
正直にお答え下さい」
公爵はわかったと、プリムローズに言ってくれた。
「失礼ながら…。
公爵が私の留学中の後見人になることは、ある人物に命令されたのでは?」
スクード公爵は目を見開き、前の少女を見ていた。
『やはり、そうでしたのね。
だとしたら、何故?
漂着して海岸に倒れていたの?!』
「ズバリ!
祖父の知り合いにして、公爵様に命じることをできるお方は1人しかいない。
ヘイズ王でいらっしゃいますよね?!
もしくは、そのご令息かしら?」
プリムローズは、ずっと喉に引っかかった思いを言葉で公爵に向けた。
「はい!」
公爵は、本当に一言だけ答えた。
自分が質問し、答えが合っていたのにもかかわらず…。
聞いていて、驚いた表情する。
『だって、死にかけていたのよ?
次期王が、なんで~?!』
プリムローズは、これ以上推測するのを諦めた。
長い人生の中では、納得できないこともあるのではないか。
「ありがとうございます」
プリムローズは礼を言うと、精神的に疲労したのか黙り込んだ。
自分で言っときながら、開いた口は塞がらない。
そんな、今日2度目の心境だった。
大きな屋敷が見えてくる。
おそらく公爵の屋敷だ。
領地のまさしく悪魔が住んでるような黒い屋敷とは、正反対の白を基調としていた。
プリムローズのヘイズでの新たな居住地の場所になる。
その門をくぐるのであった。
大きく幅広い橋に驚き、川の幅はまるで海の上にいる気分だ。
ここから落ちたらと思うと、恐怖感が胸に広がる。
「ガッハァハ、落ちたりはせんよ。
この橋は、まだ新しい」
プリムローズの顔色を見て、安心させるように笑って伝えてきた。
「は、はい!
正直申しますと、ここまで幅のある川の橋を渡ったことはありません」
「クスクス、ヘイズでは1番大きな川ですわ」
公爵夫人が説明するには、この川にはこの橋の他にも3つの橋がかかっているそうだ。
「それだけではない。
もし他国がこの橋を渡って攻めて来たら、すぐに橋を壊すようになっとる」
イーダが力強く、隣に座るプリムローズに教えた。
プリムローズは、彼女なりに考えてみた。
ヘイズは島国だし、我が国エテルネルより安全安心ではないかと…。
何せエテルネルは、他国が取り囲んでいる。
この言葉を、自国の平和ボケしている王や重臣たちに聞かせてやりたい気持ちがした。
そう思いため息をつくプリムローズに、なにやらまたしても幻聴が聞えるようであった。
「プリムローズ様~!
ようこそ、ヴァロへー!」
『誰かが、私の名前を叫んでいる。
幻聴が聞こえる。
体調がわるいのかな?
私…、長生きできないかも』
ハッとして窓の外を見ると、手を振る人々がいる。
『まさか、これは再びか!?』
プリムローズは前に座る公爵の顔を見て、声が上ずり彼に伺ってみた。
「スクード公爵さま、王都に掲示しましたの?
また、私の絵姿をー」
「王都は儂は知らん。
やるなら陛下じゃな、きっと……」
陛下って、ヘイズ国王の事を言っているのかしら?
「祖父は、いったい何枚の絵姿を送って寄越されましたの?!」
プリムローズは普通1枚だが、あの祖父なら普通ではないかもと気づき嫌な予感がした。
「あの絵は全て、みんな美しくって可愛らしかったですわね。ねっ、貴方!」
オットリと微笑み話す、公爵夫人。
「まぁ、普通は現物よりよく描かれているがなぁ。
お嬢様は、絵と同じでしたな!」
メイド長イーダも、横で感想を漏らす。
「3枚じゃよ!
1番の綺麗に、描かれたのを陛下に送ったわい。ハハハ」
笑い事じゃないわよ!
普通、絵姿を王様に送るものなの?
「【開いた口が塞がらない】とはこの事よ。
お祖父様ったら、3枚も絵姿を送らないでー」
プリムローズは、外から聞こえる自分の名にどうしていいのか頭を痛める。
「気にせんで、笑顔で手を振れば良い!」
イーダの一言で吹っ切れたプリムローズは、やけになり笑顔で手を振り続けた。
結果どうなったかは、後日噂で知ることになる。
彼女は祖父の話が出たところで、沿道の人々が減った時に思い切って聞いてみた。
「公爵様、教えて欲しい事がございますの?」
スクード公爵夫妻は何のことかと、プリムローズの質問に注目した。
「もし、正解なら。
ハイかイイエでいいのです。
正直にお答え下さい」
公爵はわかったと、プリムローズに言ってくれた。
「失礼ながら…。
公爵が私の留学中の後見人になることは、ある人物に命令されたのでは?」
スクード公爵は目を見開き、前の少女を見ていた。
『やはり、そうでしたのね。
だとしたら、何故?
漂着して海岸に倒れていたの?!』
「ズバリ!
祖父の知り合いにして、公爵様に命じることをできるお方は1人しかいない。
ヘイズ王でいらっしゃいますよね?!
もしくは、そのご令息かしら?」
プリムローズは、ずっと喉に引っかかった思いを言葉で公爵に向けた。
「はい!」
公爵は、本当に一言だけ答えた。
自分が質問し、答えが合っていたのにもかかわらず…。
聞いていて、驚いた表情する。
『だって、死にかけていたのよ?
次期王が、なんで~?!』
プリムローズは、これ以上推測するのを諦めた。
長い人生の中では、納得できないこともあるのではないか。
「ありがとうございます」
プリムローズは礼を言うと、精神的に疲労したのか黙り込んだ。
自分で言っときながら、開いた口は塞がらない。
そんな、今日2度目の心境だった。
大きな屋敷が見えてくる。
おそらく公爵の屋敷だ。
領地のまさしく悪魔が住んでるような黒い屋敷とは、正反対の白を基調としていた。
プリムローズのヘイズでの新たな居住地の場所になる。
その門をくぐるのであった。
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