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第2章 新天地にて
第2話 一望千里
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はやる気持ちを隠しきれずに、馬車に3人が乗り込むとドアが閉められた。
そして、窓もギーッと音を立てて板みたいなものを下ろされた。
「こう、公爵様!
真っ暗で何も見えませんことよ!」
プリムローズは不安で、隣に座るメリーの手を暗闇の手探りで求める。
「メリ~、ドコに居ますか?怖いですわ!
お願いですから、手を握って下さいませ」
いつもは強気な彼女は、意外にこんな可愛いところもあった。
「お嬢様~、隣に居ます。
私も気持ちは同じですよ。
死ぬ時は一緒ですわ!」
彼女は不吉な言葉を、主人に言いながら手を握りしめる。
「ハハハ、大事ないぞ!
すぐに通り抜けるから」
スクード公爵は豪快に笑っては、真っ暗な中で二人に言ってくる。
長く感じた暗闇が、少しずつ開けられて光が差し込んできた。
「旦那様、滝から出ました。
外は、とても良いお天気でございます」
馭者が外から声をかけてくると、公爵は勢いよくドアを開ける。
「客人たちよ、ようこそ!
わが領地、アウローラへー!」
彼は誇らしげに、プリムローズたちに見せつけるように呼びかけた。
「わぁー、素晴らしい眺望なの!
下の畑や家が、一目で全部見渡せるわ。
あのずっと、先に見えるお城らしきものは、スクード公爵様のお城かしら?」
立っている場所から下の絶景を見ながら、自覚なしに話をする。
「そうであろう!
まさに、【一望千里】だろう?!
あれが我が城で、あの先には王都ヴァロが待っている」
先にある黒っぽい建造物を指差し、プリムローズたちに教えていた。
「公爵様、あの水田のお水は滝の水を使っていますの?
あれなら、水を調節するだけでいいわね。
各家々にも、ああして流しているのですか?」
「おっ、なかなか賢い。
そうじゃ、わざわざ井戸から汲まなくていいのだ」
なんて、画期的な進んだ考え方なの!
地形を生かし工夫されているけど、エテルネルもこらなら使用人たちも楽なのにー。
祖国とヘイズの差を、目の当たりにする。
「凄く自分が大きくなった気がします。
腕を広げたら、家も牛や馬。
そして、田畑もー」
エリアスは4年間、船中しか知らなかった。
狭い船内から、広い世界へ来て感動していたのだ。
あぁ、太陽も空も近くに感じる。
気がつけば目から涙が溢れて、強い風がそれを吹き飛ばす。
そんなエリアスに隣りにいたギルが、ポーンと肩を軽く叩くと言う。
「エリアス、忘れるな。
この景色を、この思いをー。
お前はこれから、もっともっと感動するんだ。
俺がお前の成長を助ける。
お前にたくさんの水を与えてやる」
ギルも#暫__しばら__暫く振りに見た祖国を、感慨深く見つめていた。
一行はまた馬車に乗り、スクード公爵の領地アウローラの街を目指す。
「行きは登り坂でしたが、今はなだらかな下り坂ですわね」
反対の窓からメリーも、外を見ながら話に入ってくる。
「ウフフ、だんだん家々とか田畑が大きくなってきましたわ。
お嬢様、何だか楽しい気分ですね」
こんな態度を行儀悪いって散々怒っていたのに、なんという変わり身の早さよ。
プリムローズは、メリーのそんなところが嫌いになれなかった。
「あらっ、手を振っていますわ。
公爵様はご領民たちに、随分と慕われてますのね」
「そうか!?
嬉しいことを言ってくれるのう」
「ちょっと、私も手を振り返してみようかしら」
好奇心から上機嫌で手を振ると、また向こうもさらに大きく振り返す。
こういう交流っていいわよね、
昔初めて、クラレンス領へ行った事を思い出すわ。
「たぶん、プリムローズ嬢を歓迎しとるのじゃよ。
今日、到着するのを知っとるからのう」
えっ?私の歓迎って仰った?!
窓から領地たちをジッと見ていたら、自分の名を呼ぶ声が聞こえてくる。
「ようこそー!アウローラに!プリムローズ様~!!」
やはり、私の名前を叫んでいる。
「いま、私の名を呼びましたわ。
この年で、もう幻聴が聞こえちゃっているの」
「私に向かっても、お嬢様の名前を呼んでいます」
主に急ぎ報告を始めてきた忠誠心の塊、専属メイドメリー。
「いやはや、済まんのう。
広場にかわら版を貼った。
領地たちにエテルネルから、客人を迎えるので宜しくと書いたのじゃあ」
二人は無言で、前に座る人の話を聞いていた。
『は、恥ずかしいですわ。
これって、公爵の領地アウローラだけですよね』
彼女は恥ずかしくなり、赤らめて顔を下に向けた。
「お嬢様、宜しいではありませんか。
歓迎されて、他国からきてるんですから。
慕われた方が得でこざいます」
下を向き続ける主人を、慌てて懸命に元気づけた。
どんどん坂を下って平坦な道になると、そこには賑わう街が。
「スクード公爵様だぁ!
お客様もご一緒だぞー!」
「プリムローズ様だ!
うわぁー、本当に銀色の髪をしている!」
「わぁ、可愛いー!
まるでお人形さんみたいよ!」
道ですれ違う度に、領地たちから歓声が湧いた。
「まさか、こんなに詳しくかわら版に載せましたの?」
「グレゴリー殿から聞かされてませんか?
プリムローズ嬢の肖像画を荷物と一緒に送って来ましてな。
手紙には、どうだ美少女だろって書かれてましたぞ!」
『お祖父様は、勝手に相談もしないで何しているのよ!
まさか、領民たちに見せてないでしょうね』
心の中で、エテルネルにいる祖父に向けて文句を言っていた。
スクード公爵に向けて、真っ赤な顔で口をパクパクさせていた。
そして、窓もギーッと音を立てて板みたいなものを下ろされた。
「こう、公爵様!
真っ暗で何も見えませんことよ!」
プリムローズは不安で、隣に座るメリーの手を暗闇の手探りで求める。
「メリ~、ドコに居ますか?怖いですわ!
お願いですから、手を握って下さいませ」
いつもは強気な彼女は、意外にこんな可愛いところもあった。
「お嬢様~、隣に居ます。
私も気持ちは同じですよ。
死ぬ時は一緒ですわ!」
彼女は不吉な言葉を、主人に言いながら手を握りしめる。
「ハハハ、大事ないぞ!
すぐに通り抜けるから」
スクード公爵は豪快に笑っては、真っ暗な中で二人に言ってくる。
長く感じた暗闇が、少しずつ開けられて光が差し込んできた。
「旦那様、滝から出ました。
外は、とても良いお天気でございます」
馭者が外から声をかけてくると、公爵は勢いよくドアを開ける。
「客人たちよ、ようこそ!
わが領地、アウローラへー!」
彼は誇らしげに、プリムローズたちに見せつけるように呼びかけた。
「わぁー、素晴らしい眺望なの!
下の畑や家が、一目で全部見渡せるわ。
あのずっと、先に見えるお城らしきものは、スクード公爵様のお城かしら?」
立っている場所から下の絶景を見ながら、自覚なしに話をする。
「そうであろう!
まさに、【一望千里】だろう?!
あれが我が城で、あの先には王都ヴァロが待っている」
先にある黒っぽい建造物を指差し、プリムローズたちに教えていた。
「公爵様、あの水田のお水は滝の水を使っていますの?
あれなら、水を調節するだけでいいわね。
各家々にも、ああして流しているのですか?」
「おっ、なかなか賢い。
そうじゃ、わざわざ井戸から汲まなくていいのだ」
なんて、画期的な進んだ考え方なの!
地形を生かし工夫されているけど、エテルネルもこらなら使用人たちも楽なのにー。
祖国とヘイズの差を、目の当たりにする。
「凄く自分が大きくなった気がします。
腕を広げたら、家も牛や馬。
そして、田畑もー」
エリアスは4年間、船中しか知らなかった。
狭い船内から、広い世界へ来て感動していたのだ。
あぁ、太陽も空も近くに感じる。
気がつけば目から涙が溢れて、強い風がそれを吹き飛ばす。
そんなエリアスに隣りにいたギルが、ポーンと肩を軽く叩くと言う。
「エリアス、忘れるな。
この景色を、この思いをー。
お前はこれから、もっともっと感動するんだ。
俺がお前の成長を助ける。
お前にたくさんの水を与えてやる」
ギルも#暫__しばら__暫く振りに見た祖国を、感慨深く見つめていた。
一行はまた馬車に乗り、スクード公爵の領地アウローラの街を目指す。
「行きは登り坂でしたが、今はなだらかな下り坂ですわね」
反対の窓からメリーも、外を見ながら話に入ってくる。
「ウフフ、だんだん家々とか田畑が大きくなってきましたわ。
お嬢様、何だか楽しい気分ですね」
こんな態度を行儀悪いって散々怒っていたのに、なんという変わり身の早さよ。
プリムローズは、メリーのそんなところが嫌いになれなかった。
「あらっ、手を振っていますわ。
公爵様はご領民たちに、随分と慕われてますのね」
「そうか!?
嬉しいことを言ってくれるのう」
「ちょっと、私も手を振り返してみようかしら」
好奇心から上機嫌で手を振ると、また向こうもさらに大きく振り返す。
こういう交流っていいわよね、
昔初めて、クラレンス領へ行った事を思い出すわ。
「たぶん、プリムローズ嬢を歓迎しとるのじゃよ。
今日、到着するのを知っとるからのう」
えっ?私の歓迎って仰った?!
窓から領地たちをジッと見ていたら、自分の名を呼ぶ声が聞こえてくる。
「ようこそー!アウローラに!プリムローズ様~!!」
やはり、私の名前を叫んでいる。
「いま、私の名を呼びましたわ。
この年で、もう幻聴が聞こえちゃっているの」
「私に向かっても、お嬢様の名前を呼んでいます」
主に急ぎ報告を始めてきた忠誠心の塊、専属メイドメリー。
「いやはや、済まんのう。
広場にかわら版を貼った。
領地たちにエテルネルから、客人を迎えるので宜しくと書いたのじゃあ」
二人は無言で、前に座る人の話を聞いていた。
『は、恥ずかしいですわ。
これって、公爵の領地アウローラだけですよね』
彼女は恥ずかしくなり、赤らめて顔を下に向けた。
「お嬢様、宜しいではありませんか。
歓迎されて、他国からきてるんですから。
慕われた方が得でこざいます」
下を向き続ける主人を、慌てて懸命に元気づけた。
どんどん坂を下って平坦な道になると、そこには賑わう街が。
「スクード公爵様だぁ!
お客様もご一緒だぞー!」
「プリムローズ様だ!
うわぁー、本当に銀色の髪をしている!」
「わぁ、可愛いー!
まるでお人形さんみたいよ!」
道ですれ違う度に、領地たちから歓声が湧いた。
「まさか、こんなに詳しくかわら版に載せましたの?」
「グレゴリー殿から聞かされてませんか?
プリムローズ嬢の肖像画を荷物と一緒に送って来ましてな。
手紙には、どうだ美少女だろって書かれてましたぞ!」
『お祖父様は、勝手に相談もしないで何しているのよ!
まさか、領民たちに見せてないでしょうね』
心の中で、エテルネルにいる祖父に向けて文句を言っていた。
スクード公爵に向けて、真っ赤な顔で口をパクパクさせていた。
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