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第2章 新天地にて
第1話 驚き桃の木山椒の木
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西のランシから長い距離を2日かけて馬車で揺られて、ついに東のアウローラを目前としていた。
「プリムローズ嬢、東の我が領地に入りますぞ。
ここからは恐らく貴女のお祖父様以外は、エテルネルではコチラの人達だけです。
それだけ、クラレンス公爵はヘイズにとっては特別なお方ですわい」
スクード公爵の祖父に対しての言い方に、不自然さを度々感じていた。
『お祖父様はこの方を助けてはいないのでは?
だとすると、いったい誰を助けたの?』
「しかし、他国の留学生が過去にも居たのではないのですか?!
その方たちも、王都ヴァロに行かれたのでは?」
プリムローズは、いくら海賊が出て危険な国でも1人位はいたと思うのであった。
「そんなのはおらん!
留学生は、貴女が初めてじゃあ。
なんせ入るのも出るのも地獄の国に、誰が好き好んで船にまで乗って来るんだ。
物好きすぎるわい」
メリーは馬鹿にされた気がして、ワザとらしく咳払いをする。
強気にも、公爵に目を鋭くして睨み付けた。
「それは本当ですか?
公爵様、留学制度でヘイズは応募しておりますわ。
誰も来ないなら、そんな事をしても意味がありませんでしょう?」
なんか、腑に落ちない気分になる。
「それは儂は知らん!
そなたが初めてと聞く。
ヴァロでは話題になって、注目されておるぞ」
『嘘でしょう?
私が注目されて話題になっているの!?
スクード公爵の話を聞いて、エテルネルに戻りたくなってきた。
駄目よ、プリムローズ。
貴女には、やりたい目的があるはずよ!』
「お嬢様は、何処に言っても人気者ですわね。
良い意味でも、悪い意味でも。
やはり、私がお仕えするお方です」
褒められてるのか貶されてるのか、どっちか分からない言い方ね!
プリムローズは、この先の留学が不安になってくるのだった。
馬車の道は、上り坂が緩やかに続く。
先程から、ずっとこんな道ね。
エテルネルには山があるけど、ここまで上り坂は今まで経験がないわ。
ヘイズは島国で、他国では未開の地。
エテルネルにもヘイズの地図がなくて、地形がわからないのよね?!
何処かにないか、エテルネルとアルゴラの王立図書館で調べたけど全然ないのよね~。
いきなり馬車がとまる!
プリムローズはまた何が起きたのかと思った。
「おぉっと、着きましたな!
お二人方は少しだけお待ち下され」
スクード公爵が、プリムローズ達に断りの言葉を言うと馬車から降りてしまった。
「お嬢様、公爵さまはどうされたのでしょうか?」
メリーも困惑しながら主に伺うが、彼女も同じ表情だった。
「メリー、私たちも馬車を降りますわよ!」
プリムローズは、先に馬車から勢いよく飛び降りる。
「ち、ちょっとお待ち下さい!お嬢様~」
慌てて後を追い、飛び出すメリー。
プリムローズはスクード公爵が、何か筒のようなものに火をつけている場面に出くわしていた。
公爵さまは、何をされてるの?
スクード公爵が火をつけると、筒から花火とは違うが上空に煙上がった。
「おやっ、プリムローズ嬢!
降りて来てしまいましたか。
今から面白い物が見られますぞ」
プリムローズは、前を見たら大きな滝が見える。
よくよく見ると、前には道がなく谷底が下まで見えない深さであった。
これではどうやって、馬車は前に進むというの??
近くに寄ってきたメリーも、あ然とした顔して同じ方向を彼女と一緒に眺めていた。
「お、お嬢様??
道がありませんよね?
私の目がおかしくなったのでしょうか?!」
「いいえ、メリー……。
私も幻覚が見えるみたい。
滝と谷底しか見えなくってよ」
ギルたちも馬車から降りて、プリムローズたちに近づく。
何故か、ギルとタルモだけは落ち着いていた。
タルモ殿がプリムローズたちに説明を始めようとしたが、先に事態が進んでしまった。
滝の中から、巨大な橋が出現してくる。
上からも、滝の水が掛からないような巨大な屋根も出てきた。
「あーっ、あれはー。
橋、橋で間違いない?!
これで滝の中を渡れってこと?」
プリムローズは、興奮して絶叫に近い声で叫ぶ。
「なかなか凄いじゃろ!?
グレゴリー殿も、初めて見たときは同じ事を言われたわい」
見たこともない光景に大興奮しては、この世の素晴らしさに感動している。
「私、エテルネルから出てよかったわ!
だって、これ見てよ!
これだけでも、世界の広さを知ったのだもの!!」
プリムローズの瞳はキラキラと、いつもの色とは違う色をしていた。
「見てください、お嬢様!
凄いですね、滝から橋が出てきましたよ!
えっ、あの瞳の色が!
違っていますよー!!」
エリアスがおろおろしてプリムローズの瞳を見ては、慌ててメリーの腕を思わず掴んだ。
「エリアスを驚かしたわね!
ごめんね。
私って感情が高まると、瞳の色が変わるのよ。
別に病気じゃないから」
プリムローズの言葉にエリアスは、安心と驚きで目も口も丸くなっていた。
タルモもスクード公爵も驚き、その瞳に目が離せなくなっていた。
「お~い!
皆さん正気に戻ろうぜ!
スクード公爵様は橋渡らなくていいんすか?」
ギルは無礼だが、公爵様の顔近くで手を振りながら声をかけた。
「おっと、そうじゃな。
【驚き桃の木山椒の木】になったわい」
「何ですか、その…?
驚き桃の木?
そんな木が、ヘイズにございますの?」
公爵に向かって、彼女は真剣に聞いていた。
「プリムローズ様、ただの語呂合わせですよ。
そんな木は、私が知る限りございません」
タルモが冷静に話すとエリアスも無いのかと、少しガッカリした顔をしてみせた。
「さぁさぁー、皆さん!
あの橋を渡れば我が領地、その先がヘイズの都のヴァロですわい!馬車に乗りましょうぞ」
スクード公爵の威勢のよい声で、皆は馬車に乗り込んだ。
もうダメダメ、駄目だわ!
とっても、ワクワクしてきましたわ!
あの先に何があるのかしら?
まるで、魔法の国にでも向かう気持ちよ。
プリムローズはメリーの手を繋ぎながら、馬車の中に入っていった。
「プリムローズ嬢、東の我が領地に入りますぞ。
ここからは恐らく貴女のお祖父様以外は、エテルネルではコチラの人達だけです。
それだけ、クラレンス公爵はヘイズにとっては特別なお方ですわい」
スクード公爵の祖父に対しての言い方に、不自然さを度々感じていた。
『お祖父様はこの方を助けてはいないのでは?
だとすると、いったい誰を助けたの?』
「しかし、他国の留学生が過去にも居たのではないのですか?!
その方たちも、王都ヴァロに行かれたのでは?」
プリムローズは、いくら海賊が出て危険な国でも1人位はいたと思うのであった。
「そんなのはおらん!
留学生は、貴女が初めてじゃあ。
なんせ入るのも出るのも地獄の国に、誰が好き好んで船にまで乗って来るんだ。
物好きすぎるわい」
メリーは馬鹿にされた気がして、ワザとらしく咳払いをする。
強気にも、公爵に目を鋭くして睨み付けた。
「それは本当ですか?
公爵様、留学制度でヘイズは応募しておりますわ。
誰も来ないなら、そんな事をしても意味がありませんでしょう?」
なんか、腑に落ちない気分になる。
「それは儂は知らん!
そなたが初めてと聞く。
ヴァロでは話題になって、注目されておるぞ」
『嘘でしょう?
私が注目されて話題になっているの!?
スクード公爵の話を聞いて、エテルネルに戻りたくなってきた。
駄目よ、プリムローズ。
貴女には、やりたい目的があるはずよ!』
「お嬢様は、何処に言っても人気者ですわね。
良い意味でも、悪い意味でも。
やはり、私がお仕えするお方です」
褒められてるのか貶されてるのか、どっちか分からない言い方ね!
プリムローズは、この先の留学が不安になってくるのだった。
馬車の道は、上り坂が緩やかに続く。
先程から、ずっとこんな道ね。
エテルネルには山があるけど、ここまで上り坂は今まで経験がないわ。
ヘイズは島国で、他国では未開の地。
エテルネルにもヘイズの地図がなくて、地形がわからないのよね?!
何処かにないか、エテルネルとアルゴラの王立図書館で調べたけど全然ないのよね~。
いきなり馬車がとまる!
プリムローズはまた何が起きたのかと思った。
「おぉっと、着きましたな!
お二人方は少しだけお待ち下され」
スクード公爵が、プリムローズ達に断りの言葉を言うと馬車から降りてしまった。
「お嬢様、公爵さまはどうされたのでしょうか?」
メリーも困惑しながら主に伺うが、彼女も同じ表情だった。
「メリー、私たちも馬車を降りますわよ!」
プリムローズは、先に馬車から勢いよく飛び降りる。
「ち、ちょっとお待ち下さい!お嬢様~」
慌てて後を追い、飛び出すメリー。
プリムローズはスクード公爵が、何か筒のようなものに火をつけている場面に出くわしていた。
公爵さまは、何をされてるの?
スクード公爵が火をつけると、筒から花火とは違うが上空に煙上がった。
「おやっ、プリムローズ嬢!
降りて来てしまいましたか。
今から面白い物が見られますぞ」
プリムローズは、前を見たら大きな滝が見える。
よくよく見ると、前には道がなく谷底が下まで見えない深さであった。
これではどうやって、馬車は前に進むというの??
近くに寄ってきたメリーも、あ然とした顔して同じ方向を彼女と一緒に眺めていた。
「お、お嬢様??
道がありませんよね?
私の目がおかしくなったのでしょうか?!」
「いいえ、メリー……。
私も幻覚が見えるみたい。
滝と谷底しか見えなくってよ」
ギルたちも馬車から降りて、プリムローズたちに近づく。
何故か、ギルとタルモだけは落ち着いていた。
タルモ殿がプリムローズたちに説明を始めようとしたが、先に事態が進んでしまった。
滝の中から、巨大な橋が出現してくる。
上からも、滝の水が掛からないような巨大な屋根も出てきた。
「あーっ、あれはー。
橋、橋で間違いない?!
これで滝の中を渡れってこと?」
プリムローズは、興奮して絶叫に近い声で叫ぶ。
「なかなか凄いじゃろ!?
グレゴリー殿も、初めて見たときは同じ事を言われたわい」
見たこともない光景に大興奮しては、この世の素晴らしさに感動している。
「私、エテルネルから出てよかったわ!
だって、これ見てよ!
これだけでも、世界の広さを知ったのだもの!!」
プリムローズの瞳はキラキラと、いつもの色とは違う色をしていた。
「見てください、お嬢様!
凄いですね、滝から橋が出てきましたよ!
えっ、あの瞳の色が!
違っていますよー!!」
エリアスがおろおろしてプリムローズの瞳を見ては、慌ててメリーの腕を思わず掴んだ。
「エリアスを驚かしたわね!
ごめんね。
私って感情が高まると、瞳の色が変わるのよ。
別に病気じゃないから」
プリムローズの言葉にエリアスは、安心と驚きで目も口も丸くなっていた。
タルモもスクード公爵も驚き、その瞳に目が離せなくなっていた。
「お~い!
皆さん正気に戻ろうぜ!
スクード公爵様は橋渡らなくていいんすか?」
ギルは無礼だが、公爵様の顔近くで手を振りながら声をかけた。
「おっと、そうじゃな。
【驚き桃の木山椒の木】になったわい」
「何ですか、その…?
驚き桃の木?
そんな木が、ヘイズにございますの?」
公爵に向かって、彼女は真剣に聞いていた。
「プリムローズ様、ただの語呂合わせですよ。
そんな木は、私が知る限りございません」
タルモが冷静に話すとエリアスも無いのかと、少しガッカリした顔をしてみせた。
「さぁさぁー、皆さん!
あの橋を渡れば我が領地、その先がヘイズの都のヴァロですわい!馬車に乗りましょうぞ」
スクード公爵の威勢のよい声で、皆は馬車に乗り込んだ。
もうダメダメ、駄目だわ!
とっても、ワクワクしてきましたわ!
あの先に何があるのかしら?
まるで、魔法の国にでも向かう気持ちよ。
プリムローズはメリーの手を繋ぎながら、馬車の中に入っていった。
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